多分テニス大会エントリーLメモ『死して屍、拾う者無し』 投稿者:TaS
 とりあえず理由も無いはずだが。
 TaSは焦っていた。
 ……他人が見たら、その姿の物珍しさに吹き出してしまうだろうか。だが、当人にして
みればそれどころではなかった。
 だがそんな彼の姿に、さしもの幸運の女神も哀れみを誘われたらしい。黒に塗られた顔
が、奇妙なくらい雄弁に喜色を示していた。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAっっ!! 今度こそワタシの勝ちデ〜スッ!!
イキマス必殺のぉぉっ!! ふっるっはっうっすっっっっ!!!」
「フォーカードっ☆」

 ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん…………

「TaSさん弱いね〜っ」
「たけるさんの39勝3敗、とてもポーカーとは思えない数字ですね」
「おーまいがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 ある晴れた日、カフェテリアの一席。
 緩やかな日差しに包まれたその場所に、トランプに興じる一団があった。
 川越たけると電芹、それは何ら問題ない。
 その横で目を輝かせているレミィにしても、ここにいるのが不思議な存在ではない。
 例によって問題は、何故かそこに座っているTaSだった。背中を丸めてカードを切っ
ている姿が、どこか涙を誘わなくもない。
「あうぅ、キノウに続いて負け続けデスぅ」
「ネェネェTaS。今度はアタシとやろ?」
 ひどく楽しそうなレミィの声。彼女たちだけでなく、他の人間達も興味深げに覗き込ん
では、大概はそのまま輪に加わる。そして時折沸き上がる、よくわからないが楽しそうで
はある、そんな笑い声。
「まぁ、あのくらいなら口煩く言う気は無いけどね」
 それらを見ながら、頬杖を付いた菅生誠治はあまり覇気の無い声を出していた。僅かな
諦めと小さな羨望が入り混じったその瞳は、老人のそれに似ていなくもない。
 あのくらいとは、彼らが行っている賭けについての事だろう。もっとも、TaSが勝っ
たらカフェテリアで一品だけ奢る、という程度の物だ。
 最初ははらはらして見ていた誠治だが、あまりに負け続けるTaSの姿を見ていれば、
多少は憐れみの感情も……
「沸かないなぁ」
 正直な野郎である。


「OHっ、完敗デスゥ。ミナサン強すぎマスよォ」
 やっとの事で敗北宣言である。通算100敗を超えてからでは、どう考えたとしても遅
すぎるが。
 ちなみに、川越たけるが最高の60勝12敗(うち、対TaSでは50勝6敗)でダン
トツである。
「わーいっ、勝ったぁ〜っ」踊るように電芹を持ち上げようとして、むしろ自分が振り回
されているたける。まぁ、楽しそうではあるが。
 他のメンツも、TaS以外のほとんどが勝ち組である。
「そういえば、TaSさんが負けた時の事って決めてなかったね」
「Oh! 言われてみればそうネ」たけるの発言に答えたのはレミィ。TaSと一緒にい
ると、わかりにくい事この上ない。
「おーらい、シカタありマセン……」
 多少重い声で答えるTaS。あまり似合ってないのは、この際しかたあるまい。
「コウなったら……身体でハライマ〜スッ!!」
「Shoooooooooooot!!!!」
 三秒で作れる矢アフロ制作法。
「……駄目デスカぁ?」「駄目ネ!」
 改行の暇すら与えない即座のお答え。なんだか、たまに泣きたくなったりもする。
「んーとね、んーとね……」
 たけるも考えているようだが、いまいちいいアイデアが浮かばないようだ。
 そんな時
「よろしいですか?」
 電芹が割り込んできた。
 彼女は、両手に持った二つのお盆をテーブルの上に置き、その上に置かれたグラスをテ
キパキとした手つきで配り始める。
 不思議そうな顔で見ている幾人かを見つけたのだろうか、電芹は手を休めて口を開く。
「誠治さんから、皆さんに「完勝祝い」だそうです」
 それを聞いて。
 カフェテリアの中から、今までで最大の歓声が溢れ出した。



   ぐわっしゃぁぁぁぁぁん……
 無常を感じさせるその音は、結局無常でしかなく。
「OH、結構もろいデスネェ」
 そんな声とともに、誠治に頭痛を引き起こした。
 カフェテリアの調理場の中は、白い破片が嫌になるほど散らばっていた。それが皿であ
った頃には、一体どれほどの数だったのだろうか。
 大体、こんなアフロに皿洗いをさせるなんてのがまともな考えな訳ないだろうがっ!
 誰にとも無く毒づきたくなりながら、必死に頭痛を押さえる。
 たけるに対する負け分の清算。
 それをちゃんとしようとする態度は、まぁ誉めていいだろう。世の中には借金を踏み倒
そうと努力するような腐れ外道も掃いて捨てるほどにいる
 金が無いので労働で支払い。
 あまり感心したくはないが、それも無い事ではない。カフェテリア自体は現金での支払
以外は受け付けてないが、この件はそれとは関係ない。
 問題はない。
 どこにも無い。
 ただ、このアフロが限りなく役に立たないというだけの事だ。
 それにしても、考えてみれば菅生誠治の頭が痛くなる理由はないはずだった。
 だが、悲しいかな。
 このカフェテリアの中に、彼の他に自分の頭を痛めてくれるような人材はいなかったの
が、最大の不幸。
「もういいから、掃除でもしててくれ……」
「のんのんのんっ、ワタシが賭けで負けたのはたけるサンデスヨ〜」
 ゆっくりとした「のんのんのんっ」に合わせるように指を振る、そのふざけた物言いに
本気でぶち切れそうになりながら誠治は拳を震わせる。
 それもいい加減に限界に達し掛けた頃。

   ぐわっしゃぁぁぁぁぁん……

「出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!」



「怒りッポイ人デスネェ」
 よくもまぁ、そーゆー事が言えるな。
 とりあえずカフェテリアを追い出されたTaSは、何故か校庭のど真ん中で大の字を描
いていた。
 地面に押されてアフロがいびつに歪んでいるが、それも枕のように見えなくも無い。
 澄んだ空気が満ちていた。
 真上を見上げながら、両手を左右に投げ出したままに伸ばす。
                      (一体何をしているのだ、貴様はっ!)
 月が出ていた。
 それを見上げていると、懐かしさにも似た何かが込み上げる。
 何をするでもなく、それを見上げていた。
                (あいつはね、あれで意外と寂しがり屋だから……)
 別に何をしたかった訳でもなかった。
 ただ、今でない何かになりたかった。
 そんな時代を思い出していた。
          (守ってくれとは言いません。ただ、見ていてはくれませんか?)
 いろんな人間が、いろんな理由で生きている。
 生きていく為に、何かを変えて、自分を変えて。
 そんな人達を思い出していた。
                  (強くなりますよ、あの子は。きっと、大丈夫)
 今も、昔も、変わりないもの。
 昔から、今まで、時の流れとともに変わったもの。
 そして、今から、変わりゆくもの。
            (馬鹿は変わらんの。まぁ、お主らしいと言えなくもないが)
 変われなかった、のだろうか。
 いや。
 そんな事はない。
               (これだけは覚えているぞ。何があっても忘れん……)
 信じたかった。
 それだけは。
 それくらいの約束は、守りたかった。
                         (あれ? どうしたんですか?)
「……ふぁ」
 あくびが、零れた。



「おはよ〜っ」
「おはよっ」
 朝である。
 その時間に相応しく、様々な挨拶が交わされている。まぁ、いかにも平和な学園といっ
た風情ではある。
 そんななか、彼女たちは急ぎ足で駆け抜けていった。
「ふにゃあぁ〜、電芹ぃ、眠いよぉ」
「頑張ってください、たけるさん」
 冷静に聞こえる電芹の声だが、何故だか間が抜けているように聞こえなくもない。
 それはともかく、川越たけると電柱セリオの二人は、まだチャイムが鳴るまでには幾分
余裕があるにもかかわらず必死に走っていた。
 理由の有無など、この際些細な問題だろう、きっと。
 そんな朝のひとときが。

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」

 一瞬で破壊され……
「あ、TaSさんおはよ〜っ」
「おはようございます」
 破壊されなかった。
 どうやら、こーいった手合いに対する耐性があるらしい、この二人。
「でも、なんで埋まってるの?」
「HAHAHAHAHAっ、アサ起きたらこうなってマシタァッ!!」
 「!」無しで話せないのかね、おのれは。
 どこぞの温泉郷のように黒く染まった首だけをグラウンドの上に出して、そのアフロは
そこにあった。
「なんかTaSさんちょっと楽しそうだよね。私もやってみたいな〜っ」
「用意しましょうか?」
 いつのまにやら、どこからか取り出したスコップを構えている電芹。
「甘いっ!! 甘いぞ電芹ぃぃぃっ!!!!! どうせなら圧死というのも気持ちのいい
物だぞっ!!!!」
「あっ、謎の覆面コーチXさんだ〜っ!」
「違う違う違うっ!! 昨日までの覆面コーチXは既に死んだ。ここにいるのは……そう
っ、謎の覆面コーチRX”復讐の王子”ロボライダーだっ!!! ちなみに、作者はろく
に見た記憶も無いくせにこーゆー事を書くので、間違ってる時は指摘してくれると嬉しい
らしいぞっ!!」
 唐突に現れた秋や……もとい、覆面コーチRXは、とりあえず手近な生徒を足場にしな
がら飛んでやってくる。
「ソノとうりデスッ!!」
 こっちは地面に埋まったままだが、例によって謎のハイテンション。
「こーゆー時コソ必殺技の見せ所デ〜スっ!! 見せてクダサイ、アナタの技をっ!!」
「はっ、はいっ!!」
 思わず反射的に返事をしてしまう電芹。基本的には素直な娘ではある。
「必殺……電柱アルティメット・クラァァァァァァァァァァァッッッッッシュ!!!!」


 説明しよう。
 電柱アルティメット・クラッシュとは超高速で振り回される電柱から発生されるエネル
ギーがある一定量を超えた時、電芹の体内に存在する「Cストーン(資金不足の為パチモ
ン)」から放たれる無限の光量と熱を持ちあわせた無限力(ちから)をその身に纏い体当
たりを敢行する、まさに命懸けの必殺技なのだっっ!!!


「うむっ! 流石はわしが認めたキング・オブ・たけぽんじゃぁぁぁぁぁっっっ!!!」
 九分九厘の方の予想通り、嬉しそうに吹っ飛んでゆく覆面コーチRX。
 つーか、出てくる予定はなかったはずなんだが……謎だ。

「ないすデスッ!!! ソノ技さえアレバてにす大会オソルルに足らズっ!!」
「テニス大会?」
 電芹が素朴な疑問を口にする。
「モチロン、ワタシとアナタとで出場スルてにす大会の事デ〜スっ!!」
 当然初耳。
「あ、そうだったんだ〜。頑張ってね、電芹っ」
「…………」
 三秒ほど考えて。
「はい」
 つい、答えてしまった。
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………………………………………………………………テニス大会参加、決定したらしい。



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 ……はて、こんな話じゃなかったはずだが?(笑)
 前半と後半とで全然話が違いますが、いつもの事です、気にしないでください。
 てな訳で、
 TaS&電芹(自薦)
 テニス大会参加します〜。
 ちなみに、VSアフロじゃないんだから反対SS書いたりしないよーに(いや、おもし
ろけりゃいいんだけど(笑))
 
 んじゃであ〜。