私的Lメモ「君のメガネに恋してる」 投稿者:霜月祐依

○月×日晴れ

 私は理科の実験で使った器具を柳川先生の科学部に返す為に、一人で運んでいたの。
ほら、うちの学校ってよくモノが壊れるでしょ?
 それで授業で使う分が足りなくなっちゃって。
 たまたま私が日直だからって、クラスの男子も一人ぐらい手伝ってくれてもいいじゃない。
ちょっとヒドイよね。
 …って考え事をしながら歩いてたの。そしたら――

「うわっ」 「きゃっ」

 ドンッ、 ガッシャァーーーン!

「あいたぁ…」
「大丈夫?」

 あ、やっちゃったぁ。
 ビーカーとか粉々だよ。柳川先生に怒られちゃうなぁ…。

「あ、血が出てる。ちょっと手を出して」
「え?」

 ぶつかったその人は、しりもちをついたままの私の右手を取って、跪くようにして
割れたビーカーで切った私の指先を口付けするように血を吸って…

 ドキン!

「応急措置だから、後で保健室に行って見てもらってね」
「はぃ…」

 その人は自分のハンカチで丁寧に私の指先を包帯のように巻いてくれた。
 私は真っ赤になった顔を気付かれないように、俯かせながら答えたの。

「ホントごめんね。ちょっと眩しさに目が眩んじゃっ――」
「えっ?」

 私が聞き返そうとすると、その人はハッとしたような表情を見せる。

「いや、な、なんでもないよ。
 ちょっとホウキとチリトリ借りてくるから!!」

 その人は照れ隠しするような表情を見せて慌てて掛けていった。
 それから割れたビーカーを片付けてくれて、一緒に柳川先生に謝ってくれた。

 たった、たったこれだけの事だけど。
 私、砧 夕霧(きぬた ゆうき)にとっては初恋。

 そして、運命の人は――岩下 信。

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           私的Lメモ「君のメガネに恋してる」
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「♪ニンジン、ニンジン、タマネギ、タマネギ〜」
 トン、トンとリズミカルな音を立てて鼻歌に出てきた野菜が刻まれる。
「これで、塩コショウをまぶして……っと、いけないっ」
 下ごしらえをしている野菜に気を取られすぎていて、隣でお湯が沸騰しているのに
気が付いて慌てて火力を調整する。
 料理に勤しむ彼女は制服の上からエプロンをつけて頭には頭巾。パタパタと周囲を
せわしなく動くのがなんとも微笑ましい光景だ。

「ん〜、なにやってんすか?」
 奥からひょっこりと男性の声。
 ここだけ切り取ればちょっとした新婚夫婦の光景。
 もしくは風見夫婦だったり、OLH夫婦だったり、柏木(ちーちゃんに非ず)家だったり。

 ところがどっこいそこに現れたのはアフロ。

 クサッ

 心地よい音を立てて、アフロの脳天に生えるように突き刺さったのは…メス。

「ぬおぉぉぉっっっ、メスが、メスが頭にぃ、頭にぃーーーー!!!」

 当然のように転げまわるアフロ――Yinに対してやれやれといったリアクションで
向き直るエプロン姿の少女。
「調理中は邪魔しないでって言ったでしょ?」
「うぉぉっ、イテェ、脳味噌に突き刺さっているーー!!」
 なおも転げまわるYin。
「アフロの防御力は絶対じゃなかったのかよ!
 騙したんだなっ、父さん僕を騙したんだね!?」
 そこはかとなく間違った発言を続けようとしたYinに――

 トス トス トス

 ――更に三本のメスが刺さって沈黙した。
「邪・魔・し・な・い・で!」
「ふぁぃ…。でー、何やってんですか? 夕霧さん」
「見てわからないの? この姿を見て」
「見てわからないのって言われましても……」
 といってYinは夕霧の向こうに視線を移す。

 顕微鏡があって、
 ビーカーにシャーレにあって、
 天秤もアルコールランプもあって、
 刻まれたニンジンなどの脇にはメスが置いてあって――。

「理科の実験器具で調理するのはやめましょうよ」

 トスッ

「だまらっしゃい」
 Yinにとって、本日5本目のメス。
「夕霧さん、頼まれたもの持って来ましたよ〜」
 夕霧を遮っていたアフロが地に伏した事で開けた視界の向こうから、葛田玖逗夜が
ザルに色々な食材を抱えて持ってくる。
「さっすが部長だけあるわね。これで、信さんも喜んでくれるわっ」
 ちょっと可愛らし目な表情を見せながら、再び調理に取りかかる。
 まずは顕微鏡の台座の上にマンドラゴラを載せて正確にミリ単位でメスで切り刻む。

「部長、あんな食材どこから取ってきたんですか?」
 復活したYinがメスを抜きながら葛田に問い掛ける。
「全てうちの部室で自家栽培している奴ですよ。ホラ、あのトマトなんて」
 葛田が指差す。

「食べて、食べて、あたしを食べてぇ〜」
 籠の中のバスケットボール大の巨大トマトがウフフとこぼれ笑いを浮かべながら
喋っている。
「貴方の口に胃袋に、真っ赤な鮮血を滴りあふらせ…ヘギャッ」

 顕微鏡でマンドラゴラを刻んでいた夕霧がメスを怪奇トマトに突き立てて、
黙らせる。
「あれ食べられたんですか?」
「食べるのは我々じゃないですし」
「さいでっか」


「ところで夕霧さん」
「なぁに? 葛田君」
「岩下さんには…その…」
 珍しく葛田が言い澱む。
「瑞穂の事でしょ。知ってるわよ」
「てか、先輩なんですし」
 動じた様子もまるでなく、葛田に返答する。Yinの突っ込みは思いっきり無視して。
「学園公認だかなんだか知らないけど、信さんはあの女に騙されているのよ。
 だから、私の愛の力で信さんを目覚めさせてあげるわ」
「騙されているとゆー根拠は?」

「信さんは私の目をじっと見詰めて『君の眩しさに目が眩んで』って言ってくれたわ。
 つまり、わたしとの出会いで信さんは目覚めるキッカケを得たのよ」

 何気に葛田の問いに対する回答になってないのはさておいて。
 更に言えば、信は確かに目が眩んだが『君の』なんて言ってない。
 もっと更に言えば、目が眩んだのは別の意味だったりするのだが。
「掃除しているときも私をじっと見ていた熱い眼差し。
 自分の身を張って柳川先生からかばってくれたあの優しさ。
 そして、心配要らないとばかりにみせた、あの大きくて広い背中…」
 夕霧がホゥ…と陶酔した表情で信との出会いを語り出す。
 さながらダンスを踊るヒロインか、舞台の箸から箸まで使って観客にアピールする
宝塚の女優か。

 とどのつまりその周囲では――
「うわわっ、夕霧さん、メス、メス、メスゥ〜!!」
 ――無軌道に振り回される夕霧が持つメスに、Yinと葛田が必死に逃げ回っていたり。
 メスが一振りされるたびに、Yinのアフロの一欠けらが舞う、舞う、舞う。
 風に乗ったアフロのいくつかは調理中のアルコールランプにまで到達して、
 ジュっ って音と共にアルコールランプで焼かれるYinのアフロ。
 ビーカーのお湯で茹でられるYinのアフロ。
 ついでに制服もいい感じで切り裂かれて…ちょっとお姉さま方が喜びそうな
せくしーポーズに……はならないか。だってアフロだし。

 宇治×ゆき×来夢の三巨頭を目指すにはまだまだらしいですぞ。

「あ〜、Yinなんてことしてくれるのよ!
 あんたのアフロの所為で信さんへの愛情料理が台無しじゃない!!」
 さすがにアフロ片が焼ける臭いに怒り心頭の夕霧。
「だから危ないって…あの? 夕霧さん?」

 トスッ グサッ 
 キィンッ グササッ
 キインッッ グサササッ

 夕霧必殺、メス三連撃。
 寸分違わぬところにメスを打ち込んで、最初に打ち込んだメスがYinの身体を
見事貫通。
「俺の所為じゃないんですって…ゴメンナサイ」
 とどめに首筋にメスをあてられて、ようやく黙り込むYin。
 Yinにとってはものすごく理不尽な仕打ちであるはずなのに、いつの頃からか
逆らえなくなっている自分がいたり。思いっきり風穴が開いているにも関わらず平気
なのは偏にアフロに拠る所が大きいのでわなかろーかと。
 アフロの核が平気な限りは平気だろうし。



「ねぇ、Yin。アイラナちゃんいる?」
「今は出かけてますけど、どうかしましたか?」
 調理を再開した夕霧が野菜を刻みながら、振り向かずに問い掛ける。
「ほら、野菜ばかりじゃ信さんもちょっと物足りないでしょ」
「ヘルシーっちゃぁ、ヘルシーですが…」
「動物性たんぱく質も必要だと思わない?」
 薄々気付きながらもあえて問い掛ける。
「それとアイラナがなんの関係が…」

「天使の肉か。美味そうだな」
「でしょー」
「エビルさん……」


 三人のやり取りが気になったのか、いつの間にかやってきたエビルが核心へと
バッサリ触れてみせる。夕霧は賛同者の出現に手を叩くようにして喜びの表情を
見せる。
「ほらっ、ほらっ、それだったら超ペンギソの方が食べるところ多いし…」
「やーよ、余った肉の後始末誰がすんのよ。アイラナだったらちょうどいいじゃない。」
 Yinの要求はさくっと却下されたりもする。
「Y〜i〜nくぅ〜ん?」
「は、はいぃっっ!?」
「君はウチの瑠璃子や沙織を食べると言うのですかぁ〜、この口がっ、口がっ」
 いつになく怒りをはらんだ葛田がYinの口を左右に引っ張ってみる。
「す、すびばせぇぇ…ん。ふぉんな、ふほぉりじゃ…」
 いかんせんアフロであるが故に反省の顔色が全く読み取れないのがアレだが。
「それに超ペンギソの肉ならこの前試してみたけど、パサパサしていて食用には
ちょっと向かないわよ。アンモニア臭もキツいし。
 あれだったらアメフラシの活造りのほうがまだマシ」
「ふぉら、ふぁんな事言ってますよ、ぶひょう…」
「言い訳ですか、この口がっ」
 Yinの必死の抵抗も全く届いてなかったり。

 形成不利とみたYinは視界の端に、部室の入り口付近で我関せずの姿勢で
お茶をすすっている顧問の杜若祐司を捉える。
「せんせぇ、たすけ…」
 だが祐司はビクリとした表情をすると、おもむろに来ているワイシャツの
前ボタンを外してお腹に取り付けられたボタンらしきものを押す。
 まさにポチッとなって感じで。
「…あれ?」
 すると祐司がまるで最初からそこにいなかったかのようにYinの視界から
掻き消えた。

「ちくしょーーーっ、また『人工ガンマル装置』使いやがったぁっっっ!!」

 ※人工ガンマル装置
  装置から特殊な背景電波(なんのこっちゃ)を発し、SS使いに対しその存在を
  認識できなくさせる装置である。いつぞやにガンマルが意識変革ウイルスを依頼
  しに生物部を訪れた際に、彼の背景化能力に感嘆した祐司が作り上げた機械。
  職員会議で槍玉に挙げられた場合にも使っていることから、ただの現実逃避目的で
  はあるのだが。

「Yin君、まだ話は終わってないですよ!」
「アイラナの肉いるのか? だったら捕まえてくるぞ」
「エビルさん、それだけは勘弁してくださいっっ!」
「待っててね、信さん。私の愛情手料理を届けるから♪」

 なかなかに生物部も賑やかなようで。



 一方、こちらは昼休みが間近に迫ったジャッジの居室。
 授業はどーしたのかと突っ込みたくもなるのだが、主要面子が勢ぞろいしていた。

 ぼぉーーーーっ

「信さん?」
「瑞穂君、どうかしたかい?」
「昨日からちょっと上の空なんですけど、どうかしましたか?」
「いや、何でもない、何でもない」
 心配げな瑞穂の表情に笑顔を作って答える信。

(にしても昨日のあのコ……いいメガネだったなぁ…。
 あれはなかなかに見られない一点ものだし。
 思わずマジマジと見つめちゃったけど…変な風に思われないよな?)

 ある意味、熱い眼差しという意味では間違っていないような。
 日夜妖魔を狩り、学園の正義団体を宣言するジャッジリーダーとしての顔を持つ
岩下信。彼の隠しているようで実は全然秘密でもない秘密として、メガネ鑑定人として
な○でも鑑定団の一角を占められるようなメガネコメンテーターだったり。
 ある時はメガネ装備の綾香を見たいが為に、宿敵とも言えるハイドラントに自慢の
銀縁メガネを送って貰った事実も記憶に新しい。まだ実現はしていないが
その為ならと、ダーク十三使徒と不可侵条約を結んだとか結んでないとか。

 その時の様子を当事者であるハイドラントさんに語っていただきましょう。
 第二茶道部と中継がつながっております。
 ハイドラントさん?
「いやー綾香にメガネを付けて貰うのは大賛成なんだけどな、どうせならって事で
弥生さんにもメガネを掛けさせて欲しいなんて要求はいくらなんでも無茶だって」
 それでも似合いそうですし、見てみたいと思いません?
「普通のメガネならともかく、塩○ときの二等辺三角形メガネはいくらなんでも…」
「ハイドラントさんは、そんなメガネを掛けさせて『ざぁーます』と仰らせたいの
ですね」
「いや、弥生さん誤解だ! そんなこと全然言ってない!!」
「それとも牛乳瓶メガネを掛けてラーメンでも食べろとでも…」
「ちがぁ〜っう、誤解だ弥生さん聞いてくれ!!」
「いえ構いませんよ、人間誰しも嗜好ってありますし。
 ただハイドラントさんがそんな方面――」

 ・・・・・・え〜、以上現場からの中継でした。
 この様子を伝え聞いた信は血の涙を流すほどに悔しがったそうな。
「メガネ+スーツ+ハイヒールのOL三種の神器が一番似合うのは弥生さんじゃ
ないか。なんでみんなそれを解ってくれないんだよぉ〜」
 だそうである。
 ついでにそれを聞いた神海も漢泣きをしたそーな。

 ともあれ、そんなおはようからおやすみまでメガネと共にがキャッチフレーズな
信である。たまたまぶつかってしまった女の子のメガネに心奪われて熱い視線を送った
としても責める者は誰もいまい。
 もし許されるのであれば、そのコのメガネを手にとってマジマジと見つめて、
息を吹きかけてメガネ拭きでキュッキュッと音を立てながら磨いてみたいと思っていたり。
 そして、瑞穂君につけてもらって心行くまで眺めていたい。
 そこはほら恋人としてお願いできることであって、決してメガネ専用ディスプレイ
なんてことは決してない筈。
 もしみずぴーがコンタクトにしてきたらどーゆー反応をするのか非常に気になる
ところなのだが、その結末は怖くて書けない。っつーか、この段階で既にヤバいし。



 じーーーっっ

「み、瑞穂君、今日もメガネがステキだね」
「は?」
「あ、いやいや、そろそろお昼だよね、お腹空いたなー、ははは」
 瑞穂の視線に思わずロクでもないことを滑らせた信であったが、ちょうど腹時計が
なる準備をスタンバっていることもあって、苦しい話題転換をしてみる。
「心配しなくても、もうすぐお昼なんですし」
 ちゃんと瑞穂は信の分のお弁当も用意している。この調子だと美味しそうに平らげて
くれるかなと考えている辺り、惚れてる弱みという奴なのか。

「あの、すみません…」
 そんなひと時に来客がやってきたのはチャイム5分前の事であった。
「はい、どうしましたか?」
(おや、あのコは…)
 美加香が応対に出る中、信が入り口に立つ少女に見覚えがあった。

「あの、こちらに岩下信という方は……」
「僕だけど、君は――」
 信が少女の前まで歩み寄る。
「先日助けて頂いた砧 夕霧です」
 少女は嬉しそうな表情を浮かべて深々と頭を下げた。
「いや、大した事じゃないよ。それよりも今日はどうしたの?」

「あ、あの、お礼にと思って、お弁当を……。良かったら、た、食べてください!!」

 頭を下げた姿勢のまま、夕霧は信に向かって弁当が入っている袋を差し出す。
 成り行きを見守っていたジャッジの面々の空気がにわかに騒ぎ出す。
 と言っても、風見を始めとして全員が面白傍観モード。口を挟む気はさらさらないらしい。

 約一名を除いてだが。
(信さん…)

 永遠とも思える一瞬の沈黙。
 だがそれを破ったのは――
「そうですよね、いきなり押しかけてきてこんなことされて迷惑ですよね」
 謀ったかのように夕霧からこぼれ出た一筋の涙と――

 キーンコーンカーンコーン…

 ――信にファイナルアンサーを求める無常のチャイム。
 っても、信がここでバッサリ突き放せるほど鬼になりきれるわけもなく。
 …恋敵のSOSに対しては随分厳しいやんかという声はさておいて。
「あ、ありがたく頂くことにするよ」
 瞬間、にぱっと嬉しげな表情を見せる夕霧。
 対照的に悲しげな表情を見せる瑞穂。

「私、沙織ちゃんと約束してるので、お先に失礼します」
 瑞穂の性格的にここで対抗できるはずも無く、顔を伏せたまま足早に二人の脇を
通り抜ける瑞穂。

(ふふっ)
(……!?)

 瑞穂と夕霧の視線がすれ違った瞬間に交わされる、勝者と敗者の視線。
「……ッ、 失礼します」
 かなり小さい声ながらも口に出来たのはそれだけ。
「……」
 無言のまま転移を使ってその場から姿を消すSOS。どこに向かったのかは
言わずもがな。
「さって、我々も購買部にいかないと。美加香急ぎますよ!」
「おっと、マルチの為にもこうしちゃいられない!!」
 勝敗はついたから長居は無用と残りのメンバーも次々に居室を出て行った。
 残されたのは信と夕霧の二人のみ。

「え〜っと……」
 自分の発言の意味を一番理解していない信がポリポリと指で頬をかく。
「ここで、ご一緒しても…いいですか?」
「あ、あぁ」
 手近な机の上に持ってきた弁当を広げてコップに水筒のお茶を注ぐ。
「へぇ、美味しそうだなぁ」
「そういってもらえると嬉しい…」
 ちょっとはにかみながらわざとらしく『包丁で指先を切っちゃった跡です☆』
みたいなテープを巻いた指先を見せる。
「このコロッケ頑張ったんです。良かったら…」
 箸で二つに割ったコロッケのカケラを口元に持っていく。
「あ、ありがと…… ングング …お、美味しいよ」
 自分で食べるからいいと言おうと思った信であったが、機先を制して口元にもって
こられては食べるしかない。
 生物部謹製遺伝子操作120%の怪しい具材に満ち溢れたお弁当を口にしつつお昼休み
は過ぎて行った。



 一方その頃…
「ご馳走様!! …あ、藍原さんの分まで食べてしまいました。スミマセン!」
「いいんですよ、私もうお腹いっぱいですから。ちょっと多く作りすぎちゃってて
SOSさんのお陰で助かりました」
(藍原さん……)
 SOSにとっては瑞穂のお弁当を食べることが出来て嬉しい限りなのだが、
元々の対象が自分でない事は明白である。
「…立ち向かわなきゃダメですよ」
「え?」
「僕がこうやって立ち向かってるんですから」
 だから、思わず口走ってしまう。
「…はぃ」



 キーンコーンカーンコーン…

 放課後を告げるチャイムが鳴る。
 ホームルームを終えた生徒たちはある者は部活に。ある者は家路へと教室を出て行く。
「夕ちゃんは今日はどうするの?」
「うん、ちょっと部活に顔出してから帰ろうかなって、月代ちゃんは?」
 月代と呼ばれた活発な少女。彼女は夕霧の親友で、三井寺月代という。
「あたしは部活、大会が近いからさ。でも……」
 月代が窓の外のグラウンドに目を向ける。

「あーずーさ、せんぷわぁっぁぁぁいいい、マッサージの時間ですよーーーー!!!」
「今はランニングのメニューだろうがぁっ」
「そうだっ、ランニングのあとは俺と梓でくんずほぐれつのストレッチの時間だぁっ」

「……今日も自主練かな」
「そ、そだね」
「夕ちゃんもケロリンの世話しなきゃいけないもんねー」
「お腹すかせちゃうといけないから」
 ちなみに親友である月代も生物部内での夕霧の実態は知らない。
 ケロリンとは夕霧が生物部で飼っているツノガエルなのだが、飼いだして三日目
にはツノがユニコーンの角になっているわ、エサを与えないと他の食虫植物と
エサをめぐって喧嘩をするわ、気が付いたら体長3m程に巨大化しているわで
とてつもない代物と化している。
「じゃ、私先行くね」
 ひょいとカバンを肩に掛けた月代が一足先に教室を出て行く。
 手を振っていた夕霧であったが、彼女と入れ違いに入ってきた人物を見て
思わず振る手が止まった。
「瑞穂…先輩。あの、どうかしましたか?」
 瑞穂は教室の入り口に立ったまま、すこし俯き加減にしている。
 だが、胸元の辺りでギュッと何かを掴むような仕草をすると、顔を上げてこう告げた。

「私、負けませんから」

 いきなりの発言に少々面食らった夕霧だが、瑞穂の宣言にこうでなくっちゃ
面白くないと喜びも感じる。

「私は誰よりも信さんが好きです。あなたには渡しません」

 他に人もいないことだし、メスで少々脅してみようかと右手にメスを忍ばせる夕霧。
たが、ハッキリと宣言した瑞穂の目を見てすぐに無意味だと悟って止めた。

「信さんは私にとって運命の人だから――」

 教室を出る体制になっていた夕霧は、そう言いながら瑞穂の前まで歩み寄る。
 そして生物部でしか見せない、絶対の自信を持つ笑みを見せて言い切る。

「――奪い取ってあげる」

 そして、瑞穂の返答を待たずにそのまま教室を出て行った。
 この場のやり取りはすぐに志保の知れるところとなり、情報特捜部のトップニュース
として全校中に知れ渡ることとなった。

                                     End.


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 ゲーム発売されてから随分経っているような気がしないでもないですが、
 誰彼Lって事で書いてみました。まぁ、夕霧Lといった方が正しいですが。

 でー、このコ。
 元々はカエル好きとアメフラシを探してるぐらいだったよーな気もしますが、
 カエル好き→カエルと言ったら解剖→解剖と言ったらメス
 といった感じで、メスを持つと人が変わるみたいなマッドな解釈になってみたり(笑)

 んでもって、同じデコメガネ繋がりで岩下さん萌えにしてしまいました。
 これで最近勝負がつきかけていた三角関係にまた新たな火種をぶちまけてみましたが
 どうでしょう?
 是非、SOSさんに頑張って欲しいのですが。

 まずは彼女の生物部での実態と、岩下さんを巡っての瑞穂との対決宣言までと。
 第一ラウンドは夕霧の勝ちですが、みずぴー頑張れって事で。

 中盤の脱線はギャラさん風味だったりしますのですが、むぅ、あのペースを続けるのは
 難しいですなー。ちょっと後半がシリアスっつーかギャグ違うし。

 ともあれ、夕霧と月代はゲーム中でははっきりしてないのですが、見た目的にもって事で
 一年生でいいんじゃなかろーかと。月代は陸上部(何気に部員として今まで名前があるのは
 梓とかおりのふたりだけですよね(^^;)のホープって事で。
 ゲーム中だと水泳の方が得意なんだっけ? まぁ、兼部でもいいですし。

 生物部の夕霧と顧問の杜若祐司に関しては葛田さんとYinさんに了解もらってます。
 Yinさんのヒエラルキーが下がってしまいましたが、そこはそれ勘弁してつかぁさい(^^;

 俺が書くならって感じですが、ご意見などお待ちしています。
 他のキャラもキャラ立ちするようなLを楽しみですしね♪

 …実は一番困ったのがタイトルだったりする。
 全然思いつかなくて(^^;