試立Leaf学園の日常――熱きプールの戦い・学園で一番暑い日の弐の巻―― 投稿者:佐藤 昌斗



 ――前略。お袋さん、お元気ですか? まさか、こんなに早くこう言うお手紙を出す
ことになろうとは、思いませんでした。
 そちらは寒くありませんか? こちらは大変暑いです。僕は暑さには強いと思ってい
ましたが、そろそろ…そ、そろそろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


            (以下文字として判別不能。とある生徒の遺言状より抜粋。)



 さあ、今回も張り切って行こう。まずは前回の復習を。




 
              試立Leaf学園は今暑い。




 以上、復讐も終わったので本編へ。なお、本編は予告編とは多少違う事もありますが、
ご了承下さい。




 試立Leaf学園の日常――熱きプールの戦い・学園で一番暑い日―― 



 さて、ここエディフェル棟にあるとある教室では、皆更衣室へと移動し生徒が一人だ
け残っていた。
(よし…誰もいなくなったな。今のうちに…っと)
 その生徒は、どうやら男である様だ。そして、彼はそう考えるや否やゆっくりと半袖
シャツのボタンを外していった。
 果たして、シャツのボタンが外れた下からは、意外に鍛えられた逞しいと言える胸元
…では無く、この暑さでかいた汗に濡れた純白の晒しであった。
 晒しの下には、男子のモノとは明らかに違う、女性特有の母性を象徴するふくよかな
乳房が、窮屈そうに巻かれた晒しに収まっていた。
 そう。この一見して優さ面の少年は、彼ではなく、”彼女”だったのであった。
 しかし、育った環境からか彼女――昴河晶にとっては、男で居る事が”普通”であり、
むしろ女として居る事の方が”異常”である、と言う認識であった。だから、彼女が彼
女である事は、周囲の人間には話してもいなければ、これから話する事もないと、彼女
は――否、彼は考えていたのだが…。
(どうするかなぁ〜。当然、男子の方で着替えないといけなんだろうし…まぁ、これは
慣れてるから良いとして、問題は…水着だと、上半身は男なら裸…だものなぁ…)
 そう。現在、学園は空度調節機の故障…と言うよりは暴走で、学園始まって以来の猛
暑に覆われており、その影響で本日の全ての授業は、プール授業へと変更されたのであ
る。従って、生徒である晶は当然ながら授業に出席しなければならない。
 まあサボる、と言う選択肢も有るが…今の暑さでは、それもかなりの根性を必要とす
るだろうし、何よりも真面目な性質(たち)である晶には、授業をサボろうとはどうし
ても出来なかったのであった。
 そして考えは結局、最初に戻ってしまう。
「どうしようかな…やっぱ、バレるのは不味いだろうし…」
 行き詰まった考えを、思わず呟く様に小さく口に出す。そうして、ふと晶が横を向く
と…。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…いつからそこに?」
「…いや、『どうしようかな…やっぱ、バレるのは不味いだろうし…』からだけど…」
 あまりにも深く考えていたせいだろうか? 晶が気が付いて見ると、傍らには何時の
間にか同学年の藤田浩之が居た。晶は無論、考えに集中していたので上着のボタンは止
めていない状態である。
 ――つまり。
「…で、見たんだな? 藤田」
 晶は、微かに動揺が感じられる声で浩之に尋ねる。
「…あっ、ああ。しっかし…どうして?」
 浩之は、かなり動揺していると言う感じで晶に応える。
「…見たんだな?」
 晶は静にもう一度浩之に尋ねた。
「…ああっ。でもなんでまた女だっつーの隠し…はうっ?!」「あたぁ!!」
 浩之は最後まで応える事は出来なかった。何故ならば…。
「あ〜…たたたたたたたたたたッ!!!!」
「へぶへぶへぶへべぇ!!!!」
 無数の突きの連打が完全に無防備だった浩之を襲ったからである。しかも、あまりの
連打の激しさに浩之の身体が僅かと言え宙に浮いている程である。
「あたたたたたたたたたたたたたたッ! あたたァ!!!! …秘拳、忘却連舞ッ!」
「ぐ…はっ…」
 およそ、百にも及ぶ突きが繰り出された後、漸く突きを止めた晶は、ゆっくりと突き
の連打から開放され崩れ落ちる浩之に、
「…無数にある人体の秘孔の内、健忘の秘孔を突いた。お前はもう…忘れている」
 と、ゆっくりと上着のボタンを止めながら静かにそう言った。
「ヒッ、ヒビネッコぉ〜〜ッ??!!」
 浩之は謎の言葉を残し沈黙した…。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
 ――数分後。
「あれ? 浩之。昴河を呼びに行ってたんだ」
「おう。一人でぼぉ〜っとしてやがったからな」
「悪かったな。ぼぉ〜っとしてて」
 男子更衣室へと向かう廊下の途中、待たせていた幼なじみで同学年の佐藤雅史と合流
した、”何事も無かったかの様な”浩之と晶の姿がそこにあった。
「あれ? 雅史。あかりのヤツは?」
 もう一人待たせていた筈の、雅史と同じく幼なじみな神岸あかりの姿がない事に気が
ついた浩之は、雅史にどうしてかを尋ねた。
「あかりちゃん? それなら志保につれていかれたよ。『ヒロなんて、まつだけ時間の
ムダよォ〜。さっさといくわよ、あかり!』…ってね」
「ちっ。志保のやつか…まぁ、いいや。行こうぜ、雅史、晶」
 雅史の応えに何時もの事か、と言う風に応えると浩之は、二人に先立ち更衣室へと歩
き出す。
「うん、そうだね。さっ、急ごう、時間も押してるようだしね」
「ああ。そうだね」
 二人も、そう言い合うと浩之の後を追い歩き出した。晶はふとその時。
(やってて良かった、暗殺拳)
 と思ったりしていた。





    第2話 北北西に進路を取れ…より変更。女の戦いの幕は上がった。

 


 さて、所変わってここは男子禁制の女性の園。Leaf学園の女子更衣室である。
「水着は水着だけど…いいのかしら?」
 二年生である来栖川綾香は、壁側にずらりと並びハンガーに架けられた、様々なサイ
ズが揃う色とりどりの数十種類にも及ぶ水着を眺めながら、呟く様に言った。
 そう。何故なら世間一般でプールの授業と言えば、飾り気の無い生徒共通の水着を着
て受けるのが当たり前である。
 だが、第二購買部部長であるbeakerが用意したのは、デパート等で市販されて
いる所謂”普通の水着”であった。
(なんか…裏がありそうなのよね)
 綾香はそう思うと、手短にある水着を手に取って見た。
 その水着は、青を下地にハイビスカス柄がプリントされたビキニタイプで、一見した
ところは普通の水着と何ら変わらない様に見える。
 だが、beakerを少しは知るものならばこう言うであろう。
「そこがまた、うそ臭いのよね〜」
 と。
 何故綾香がこうも疑うのかと言えば、それには理由がある。
 それは、beakerが商人であるからである。
 つまり、善意だけで(水着代等はきちんと請求してるであろうが)この様な用意をす
る事はなく、いつも『一石二鳥。転んでもタダでは起きない、が商売人の鉄則です』と
公言して憚らず、実際にその様に実行して来たと言う、”過去の実績”があるからであ
った。
(まさか…水に濡れると透ける生地、とかじゃないでしょうね…)
 そう考えると、水着の生地を念入りに確認する。
 いくらなんでも、慎重すぎる行動だが…綾香の場合は、友人でありbeakerの恋
人でもある同学年の坂下好恵から、色々と苦労話等を聴かされているからこそ、この様
に疑り深く行動している、と言う理由(わけ)である。
「なあ…綾香。いくらなんでも、そこまで調べなくても良いんじゃ?」
 流石に綾香の過剰なまでの疑り深さに、直ぐ横で水着の物色をしていたらしい先輩の
柏木梓が、見かねた様に綾香にやや呆れた感じに言った。
「あら? じゃあ、梓は狼たちの前でその大きなバストを披露したいの? あなたくら
いだと、見応えもあるでしょうけど」
 綾香は急な声にも驚いた素振りもなく、梓の豊かなバストをわざとぶしつけに眺めな
がら、からかう様に言った。
「そんなの、もちろんごめんだよ。でもねぇ〜…ちょっと過剰過ぎない?」
 梓は、手短なビキニタイプの水着を手に取り眺めながら綾香に応える。
「…たしかに、そうかもねぇ〜」
「…もしかして、嫌味でしてたのか?」
「ええ。まぁ、あのbeakerが何もしないのは変だと思ったのは確かだけどね」
 梓はその言葉に漸く綾香を見た。綾香の顔はまるで悪戯っ子の様な、そんな顔をして
いた。二人は暫らくの間無言で見詰め合い、そして。
「…あははははははっ」
「あはははははははっ」
 自然と二人に笑みがこぼれた。
 と、その時。
「きゃぁああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
 突然、梓が悲鳴を上げた。綾香が気が付くと、いつの間に取り付いたのか同学年の日
吉かおりが、背後から梓に抱き着き胸を握っている姿があった。
「あ・ず・さ・せんぷわぁ〜い♪」
「か、かおりィ?! こらぁ! む、胸をもむなァ!!!!」
 梓はこの不埒な人物が誰だか解ると、抗議の声を上げながら慌てて引き剥がそうと試
みた。
 だがしかし、
「これよ! やっぱりこの胸の感触がイイのよォ!! 梓せんぷわ〜ぃ! 激ラブッす!!!!」
「こらッ! いい加減に…あっ、ん…ッ。いい加減にしろォッ!!!!」
 まるですっぽんの如く、梓がどんなに力を入れて引き剥がそうとしても、かおりはま
ったく放れる気配はない――否、それどころかますます絡み付いて来る。
「綾香! 見てないで手伝えッ!!」
 自分一人では無理と悟り、傍らに居る綾香に助けを求める梓だったが…。
「わたしには、人の恋路をじゃまする趣味はないわ。じゃあ〜ね〜ッ」
 死刑宣告(それだけ)を梓に言うと、手をひらひらと振りながら綾香は梓達から離れ
て行ったのだった。しかも、その声には明らかに、いかにも楽しげ、と言うニュアンス
を含んでいる。
「この…薄情ものォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」
「さぁ〜せっかくの来栖川さんのご好意です! 梓先輩! イクところまでいきましょうッ!!!!」
「イクところって…何処だァ!!!!」
 この後、まだ誰も居ないシャワールームに連れて行かれた梓は、シャワー室から出て
来た後、”何故か”真っ赤な顔で皆の前に現れたと言う…合掌。

  
 一方、先程の騒動より少し離れた所では…。
「あ〜お〜いちゃん♪」
「きゃっ!?」 
 一年生の隆雨ひづきが、どの水着を着ようかと一人迷っていた同学年の松原葵に声を
掛けていた。
 葵は、普段慣れない水着選びに気を取られていたせいか、まったく気が付いていなか
ったらしく、掛けられたひづきの声に驚いて声を出してしまったのだった。
「ど、どうしたの??」
「い、いえちょっと考え事してたものですから…」
 驚いた様に言うひづきに、葵も驚きを顔に浮かべながら応える。
「そうなんだ。葵ちゃんは、もうどれにするか決めたの??」
「えっ?」
「水着」
「あっ、私…こう言うの選んだことなくて…。体育でしか、そんなに泳いだことなかっ
たし」
「そっか。…よし! じゃあ、私が選んであげるね☆」
 そう言うや否や、ひづきはウィンク一つして葵の手を引くと壁側に並ぶ水着の方へと
歩き出した。
「ひ、ひづきさん!」
 葵も少し戸惑った声を上げながら、ひづきに手を引かれるままに一緒に架けられた水
着の方へと歩き出したのだった。
「よし! 着いたっと。ねっ、葵ちゃんはやっぱりワンピース? それとも…大胆にビ
キニかな?」
 壁側に水着が架けられた所まで来ると、いかにもやる気満万、と言った感じにひづき
は葵に似合う水着がどれか? とあれこれ物色し始める。
「えっ!? び、ビキニですか…? え〜っと…その、さすがにそれはちょっと…」
「そう? YOSSY君とか、ティー君とか、皆喜ぶと思うよ〜」
「えっ?! あ、あの…その…」
 ひづきの言葉に、葵は真っ赤な顔でもじもじしてしてしまう。それを見てひづきは、
「かわいぃ〜♪」
「ひ、ひづきさん?! あ、あの」
 葵に抱き着くと自分の頬と葵の頬をすりすりと擦り付ける。葵はひづきの突然の行動
にどうして良いか解らず、暫らくひづきのされるがままになってしまっていた。
 暫らくひづきのすりすり攻撃が続き、少々葵がこの境遇に慣れ始めたその時。
「あ〜ら、余裕なのね。ひづきさん」
「こ、この声は…M・Kちゃん!?」
 背後からの多少気取った感じの声にひづきは心当たりが合ったらしく、声の主の名前
を言いながら振り返った。すると、そこには、同学年であり、同時にとある事――柏木
耕一恋の争奪戦――でライバルである、M・Kが不敵とも取れる笑みを口元に浮かべて
立っていた。
「ふっ…敗れたり! 隆雨ひづきッ!!」
 ひづきが振り返ったの見計らってか、絶妙のタイミングで人差し指を突き付けながら
M・Kまるで巌流島で佐々木小次郎と相対した宮本武蔵の様に、そう言った。
「な、何に負けたと言うの!?」
 M・Kのあまりのタイミングの絶妙さに僅かに気圧されたものの、素早く立ち直ると
ひづきは恐らく誰もが思ったであろう疑問をM・Kに問う。
 しかし、M・Kは、
「ふっ…。次の授業は何かしら?」
 と、質問に質問で返すのだった。
「…な、何って。全学年合同のプール授業…はっ?!」
 M・Kの質問を反芻する事により事実に気が付くと、ひづきは愕然とした。
 そのひづきの様子を見て、漸く気が付いた事を見て取ったM・Kは勝ち誇ったかの様
に――否、勝利宣言に等しい響きを含んだ声で、話出す。
「そう! 次の授業は全学年合同のプール授業! そして、職員も全てが参加するッ!!」 
「つまり…耕一さんも参加する!?」
「その通りッ! そして、まるで神の啓示が如く用意された、一般の海水浴用市販水着ッ!!」
「「となれば、耕一さんにアピールする…だ〜ぃチャ〜ンスッ!!!!」」
 何時の間にかひづきが合いの手を入れている辺り…この二人は意外と仲が良い様であ
る。
「…………」
「…………」
「…ふっ、ようやく気が付いた様ね、ひづきさん。あなたも…まだまだね」
「…くっ…。はっ?! そう言えば…何故教えてくれたの? 黙っていれば、貴方に有
利だったのに…」
「私を見くびらないで欲しいわ、ひづきさん。戦いは…フェアでないとね」
「…M・Kちゃんッ!!」
「…ひづきさんッ!!」
 はしっ、と抱き合うひづきとM・K傍らに居る葵は完全に置き去りである。あぁ、美
しき哉女の友情…。
「ふんふんふ〜ん♪ これと、これと、これと…あと、これも良いかもね〜っ♪」
 …と、そんな二人を余所に、壁に掛けられた水着を鼻歌交じりに選ぶ一人の姿が。
「え〜っと、やっぱり、ここは大胆にアピールしようかしら? あっ、でも意外な一面
として、ワンピースって言うのも良いかも」
「…………」
「…………」
「…EDGEちゃん?」「…EDGEさん?」 
 漸く人影に気が付いた二人だったが、その人影の正体を見るや二人は同時にその人影
の主――同じ一年生で、二人の耕一を巡るライバルでもあるEDGEの名前を呼んでい
た。
「あら? ひづきさんにM・Kさんじゃないの? 二人で抱き合っちゃってどうしたの?」
「…何してるの?」
「えっ? 水着選んでるのよ? 耕一さんに見てもらうんだから、少しでもアピールで
きる水着で無いといけないし…。あなたたちも、早く選んだら??」
 と、事も無げに言うEDGE。
「…………」「…………」
 それを見て二人は、漸く身体を放し横目でお互いを見…そして。
「負けてたまるかァ!! ぜぇ〜〜〜〜〜〜ったい、私が一番アピールしてやるんだから!!!!」
「葵ちゃん、行くよッ!! さぁ! 一番良いの選ぶぞォ!!!!」
「…えっ?? ちょ、ひ、ひづきさん!? あッ…あの〜〜〜〜〜〜〜〜ぉッ?!」
 M・Kは自分のサイズに合う水着が揃えられた方向へ。ひづきは呆然と傍らに立って
いた葵の手を引っ掴む様に握り、やはり自分のサイズに合った水着の揃えられた方向へ
と、猛然と歩いて行ったのだった。
「元気ねぇ〜。さっ、私も早いとこ選んじゃおッと」
 一人その場に残ったEDGEは、忽然と居なくなった二人の姿に一瞬だけ気を取られ
たが、直ぐに思い出した様に水着を選ぶのを再開したのだった。…自分が二人の火付け
役とは考えもせずに。
 こうして…女の戦いの幕は上がったのであった。


 が、そんな騒動も何処吹く風…と言う者達も中には居るもので、一年の川越たけると
電芹(正式名称、HMX−13G グレース・セリオ・プロトタイプ)もそんな者達の
一人で、騒動と関係なく和気あいあいとお互いに似合いそうな水着を探していた。
「たけるさん、これはどうでしょうか? たけるさんに似合うと思うのですが」
 そう言うと電芹は、ビキニタイプの水着をたけるに差し出した。
「うん? どれどれ?? あっ、ごめんね電芹ぃ〜。私、こう言うの着れないんだよ…
ほら、”あれ”があるから…」
 始めは満面の笑みで電芹に振り返ったたけるだったが、電芹の持つ水着を見て、僅か
に顔を曇らせながら電芹に応えた。
「あっ…ごめんなさい、たけるさん」
 電芹はたけるの言う、”あれ”にはっ、と気が付くとたけると同じ様に浮かべていた
笑みを曇らせ、項垂れながらたけるに謝罪した。
 たけるの言う”あれ”とは、たけるの身体に、ふとした拍子に浮かび上がってくる痕
(きずあと)の事であった。
 何時ついたの痕なのか、たけるは語ろうとはしないので解らないが――いや、ひょっ
としたら本当に覚えが無いのかもしれない。
 だが、電芹にも感情がある。たけると同じ…女性の感情が。
 だからこそ、年頃の――いや、年頃でなくとも女性が痕を人にさらすのは、辛く悲し
く…そして、惨めだと思うであろう事は解る。だからこそ電芹は、自分の今言った、普
通なら何気無いと思える一言も、大好きなたけるを傷つけてしまったのでは? と恐れ、
そして…自分を恨めしく感じるのだった。
 そして…電芹は”ある行動”に出た。
「ううん、良いよ。電芹も私に似合うと思って選んでくれたんだし…ねっ、それよりも
…あれ? 電芹??」
 電芹気まずくさせてしまったと思ったたけるは、気分を変える為に電芹の水着をお返
しに選んであげようと思い、「これなんかどうかな?」と思い、電芹に声を掛け水着を
見せ様と振り返った…が。
 そこには電芹の姿は無かったのだった。
「あれれ?? 電芹がいないよいないよどうしよ〜どうしよ〜怒らせちゃったのかなそ
れとも悲しませちゃったのかな久々にパニックだよぉ〜一人はおろおろするよ〜ボケた
時にツッコミがないよぉ〜そんな時は一人でボケてツッコムのかなでも私はボケしかで
きないよぉ〜困ったな困ったよぉ〜電芹ぃ〜出てきて〜ッ」
 句読点の無いまるで早口言葉の様な台詞を言いながら、おろおろと辺りを行ったり来
りと軽い――いや、かなりかもしれないがパニックにたけるは陥った。
 と、そんな時。
「ねぇ…あれって、電柱よね? なんであんな所に電柱があるのかしら??」
「さぁ〜…この学園じゃあ、何が起こっても不思議じゃ無いでしょ」
 と、至極もっともな意見が、漸く落ちついたたけるの耳に聞こえて来た。
「電柱…電芹!?」
 たけるは、声の主が見つめる方向に笑顔で駆け出した。
 問題の場所は直ぐに解った。何故なら…そこに人だかりが出来ていたのだからである。
「ごめんなさ〜い、通してくださ〜い!」
 たけるは躊躇なく人込みを掻き分けながら、電柱に向かって行った。そして、電柱の
前に来ると、優しげな笑顔を顔一杯に浮かべて、
「電芹…行こっ。ねっ?」
 と、母親の様に電柱に言った。
「…………」
「…………」
「…………」
「…怒って…ないんですか?」
 数瞬の沈黙の後、おずおずと言った感じで電柱はたけるに応えた。
「うん。当たり前だよ、電芹。私と電芹はお友達でしょ?」
 たけるは電柱の声に見るものを眩しいと思わせる程の笑顔で、そう応えたのだった。
「…たけるさ〜〜〜〜〜〜んッ!!!!」
「電芹〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」
 たけるは、電芹を受け止め様と手を広げて待つ。そして、”後ろから”現れた電芹は
背後からたけるに飛び込む様に抱き着いて来た。
「………なんで、後ろから出てくるの?」
「えっ? 持ってきた電柱が邪魔そうだったので隅に置こうと思って、ここに持ってき
たんです。そして戻ろうとしたその帰りに、たけるさんに今度こそ似合いそうな水着を
見つけたので、見てもらおうと思って戻ったら、たけるさんがいらっしゃらないので、
探していたのですが…こちらから、たけるさんの声が聞こえましたので…」
「…じゃ、じゃあ、私はただの電柱に話してたの??」
「はぁ、そうかと…」
「も、もうっ、電芹のばかばかばか〜っ」
「あっ、ちょっと痛いですよ。たけるさ〜んっ」
 自分の行為が的外れだった事を知り、恥ずかしさのあまり子供の様にぽかぽかと電芹
を叩くたけるであった。
 一見、じゃれあいとも、喧嘩とも取れるその光景だが、たけるのだだっこパンチを受
ける電芹も、電芹を叩いてるたけるの顔も何処か嬉しそうであるのだった。
 こうして、物語はまたも唐突に次回へと続いてしまうのであった。




 ――次回予告。

「なんか…ジャロに訴えられそうだな、前回」
 
 初っ端から、痛い所を突く一般生徒A。

「…では、改めて。ふっふっふ…(以下略)」

  と、更衣室で熱弁するYOSSYFLAME。彼の言う”男ならば、やらねばなら
んこと”とは?(この1文はリサイクルでお送りしております)

「さて…ようやく出番…だな」

 そして、新しく登場の新SS使い。

「貴様達…しっかりやれよ」

 見送るものの暖かい声を受け、いよいよ少年達は動き出す。

 次回、試立Leaf学園の日常――熱きプールの戦い・学園で一番暑い日――「今度
こそ北北西に進路を取れ」

 に、チェーンジ! 真・エルクゥユウヤ♪

 (なお、次回予告と次回お送りするLでは必ずしも内容が一致しない場合があります)