グラップラーLメモ外伝「全てを捨てて闘うのなら、今がその時だ!」 投稿者:きたみちもどる
(このSSは、beakerさんのグラップラーLメモの外伝的作品です。
本編を見ていただければ、より一層お楽しみいただけるかと思います。)



人知れない山奥。
そのガレ場に、凄まじい音が響きわたる。
「いくぞっ!!」
どがががががががががががががががががががが
一人の男が、崖の上から大きな岩を突き落とす。
崖下にいる男、めがけて・・・・・。
ごろんごろんごろんごろんごろんごろん
唸りをあげて、巨大な岩が転げ落ちてくる。
はじめは豆粒に見えたそれは、下に落ちるにつれて徐々にでかくなってくる。
崖下にいた男は、それを見ても、全然動じなかった。
それどころか、目を閉じて平然としている。
腰に差した刀に手を添えて、まるで何かを見極めようとするかのように・・・・・。
やがて、巨大な影が彼を包み込む。
その瞬間、彼は、一瞬にして目を見開き、鋭い眼光を見せる。
そして、彼は・・・・・。
一目散に逃げ出した・・・・・・・・・・・・。



グラップラーLメモ外伝「全てを捨てて闘うのなら、今がその時だ!」



それとほぼ同時に、巨大な岩が、彼がいたところを押しつぶした。
どすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんん
鈍い音を立てて、岩が落ちた。
辺り一帯、少しクレーターのように剔れている。
それを見て、彼=佐藤昌斗は
(た・・助かったぁ〜)
何て思っちゃったりしている。
そして、崖上から岩を突き落とした男=きたみちもどるが滑り落ちてくる。
「一体何やってるんですか?何故避けるんです?
あれぐらいの岩ぐらい叩きつぶせないようだと、話にはなりませんよ」
と、佐藤に気楽に話しかける。
「い・・・いきなり、あんな大きな岩!!
落とすなんて、非道いじゃないですかっ!!」
佐藤は納得できないのか、きたみちに噛みついてくる。
「うん?でも、普通修行というと、こういう岩場で、上から岩を落として
それを受け止めたり、叩き壊したりするもんでは?」
きたみちは、さも当然という感じで答える。
それを聞いて、へっ?といった顔をしていた佐藤は、すぐに頭をぶるぶると振り
「い・・・いくらなんでも、これは非道すぎますっ!!」
きっぱりと言い放つ。
「じゃあ、クレーンにつり下げた鉄球、受け止めてみる?」
しれっと言い放つきたみち。
「それも、なにか、違いますっ!!」
佐藤の絶叫が、紺碧の空に響きわたった。



(危うく、『特訓』という言葉に酔って、命を落とすところだった・・・・・)
何て事を思いつつ、佐藤はきたみちの木刀を受け止める。
そして、すぐに斬り返す。
きたみちは、手に着けた手甲でそれを弾くと、閃光の如く佐藤の腹に
木刀を叩き込もうとする。
「!?」
佐藤はそれを一瞬で感知し、ガードする。
だが、来たのは斬撃ではなく・・・・
(蹴り?蹴りだって!!)
左脇下に、きたみちの蹴りが叩き込まれていた。
「がふっ!!」
息が止まるかのような衝撃。
それは、松原葵や、来栖川綾香、そして坂下好恵のような洗練された蹴りではない。
いささか荒っぽい蹴りだ。
いわゆる、喧嘩殺法・・・アンダーグランドのやり方だ。
我流ゆえに、その動きが読みにくかった。
実際に、息苦しくなり、膝を突く。
そして、そのまま崩れ落ちる。
意識が薄れかかった中で、佐藤はきたみちの顔をまじまじと見つめる。
それを見て、きたみちはニッと笑い
「剣同士で斬り合ってるからといって、斬撃が来るとは限らないよ」
諭すように、佐藤にいう。
それでも、信じられないものを見ているような顔で佐藤がきたみちを睨む。
「それと、断片的な情報で、人を判断しない方がいい。
こう見えても、僕は、裏世界を歩き渡ったんだ・・・・・。
それなりの格闘技術も身に付けている・・・・・」
少し、苦笑気味に佐藤に語りかける。
佐藤は、少々息苦しいながらも、してやられたといった笑みを浮かべる。
「まっ、なんにせよ、今の君の状態では、修行にならないからね・・・。
休憩としよう・・・・・」
きたみちはそう言って、佐藤の横に座った。



「ところで・・・・・君には闘う理由はあるかい?」
呼吸を整えるために横になっていた佐藤に、唐突にきたみちが語りかけた。
「闘う理由・・・・・・・ですか・・・・・。
今のところは・・・・・別に・・・・たいした理由は・・・・ありませんけど・・・」
「そうか・・・・・。そうだろう・・・・・・な・・・・・・・」
「?」
苦笑混じりのきたみちを、佐藤は不思議そうに見やった。
「いいかい?佐藤君。人はみんな生命を削る。
どんな人間も、何かのために生命を削りながら生きている。
僕は、昔の『罪』を拭う為、この目に映る弱き人々や愛する者の為に
生命を削って生きてきた。
そして、君も見つけねばならない・・・・・・・・・。
己が生命を削るに値する、尊く誇り高い闘う理由を・・・・・・・」
その瞳は、愁いを帯びていた。
そして、真剣な瞳をしていた。
普段、凡庸な瞳をしているきたみちにしては、珍しい瞳だった。
その瞳に、少し気圧される感じがした佐藤は、自然と喉を鳴らした。
「忘れないで欲しい・・・・・・・。
君の闘いが・・・・・君の生命でしか出来ない闘いが・・・・・・・
どこかに必ずあるという事を・・・・・・・」
「俺の生命でしかできない・・・・・・闘い・・・・・・」
佐藤は、ぽつりと呟く。
暫く考えていた佐藤は、やおら口を開く。
「きたみち先輩は、何故俺に・・・この様な『特訓』を?」
「・・・・・う〜ん・・・・・これと言った理由はないんだけど・・・・・・・。
強いて言うなら、僕の個人的理由かな?」
「個人的理由?」
「ほら、あかりさんには『天翔熊閃』があるし、僕には『天翔鬼閃』があるだろ。
同じ『飛天』の使い手なんだから、やっぱり君も奥義を持たないとね」
にっこり。
対して、佐藤の目は点になっていた。
「・・・・・・・ただそれだけですか・・・・・・・・?」
「うん、ただそれだけ・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(ただそれだけの為に、『特訓』してくれるなんて・・・・・・・・・。
優しいんだか、暇なんだかわからない人だな・・・・・・)
などと、後頭部に漫画的な大きな冷や汗(?)を流していると
「それと・・・・・・」
きたみちが、またまた口を開く。
その表情はいつになく、真面目で固く、少し愁いを帯びていた。
「それと?」
「・・・なんというか、昔の僕と似ているんだよ・・・・・・、君が・・・・・。
だからついつい、手を貸したくなる。」
「昔の・・・・・先輩と・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「さて、いささかお喋りが過ぎたようだ・・・・・・。
そろそろ、再開するか・・・・・・」
さっきまでの表情をすぐに切り替え、立ち上がりながら、にこやかにきたみちは言う。
「そうですね」
佐藤も、立ち上がりつつそう言う。
「けど・・・・・そろそろ大会も始まるし、靜が心配してるし・・・・・・・」
そこで言葉をとぎり、そして意地悪そうに笑い
「ひづきさんも、心配してることだろうし・・・・・・・」
「んなこと、ありませんっ!!」
佐藤の絶叫がきたみちの言葉を遮る。
「なに、ムキになってるんだか・・・・・。
まぁ、とにかく次の一撃で全てを終わらせよう・・・・・」
「次の・・・・・・・一撃・・・・・・・・・?」
「次の一撃は・・・・・次の『俺』の一撃は・・・・・本気でいく・・・・・・・。
本気で、『お前』の生命を狩る・・・・・・・」
きたみちの『氣』が明らかに変わっていた。
その目には『狂気』を宿し、『狩猟者』としての本能を露にした姿がそこにあった。
その姿に佐藤は『恐怖』した。
そして、自分の左手が震えていることに気付いた。
(・・・・・『恐怖』してるのか・・・・・・彼に・・・・・・・・。
そして、その背後に迫る絶対の『死』を・・・・・・・)
その『恐怖』を振り払うかのように、手を力一杯握りしめ
(全てを捨ててでも俺は・・・・・・
今こそ・・・・自分自身の『奥義』を・・・・・・)
何時の間にか、きたみちの手には似非逆刃刀が握りしめられ
それを鞘に収め、抜刀術の体勢をとる。
(く・・・・・・・くる・・・・・・・・・・・・!?)
そしてその刹那、閃光が走る。
その閃光が、佐藤昌斗に迫る。
様々な記憶、精神状態、想い・・・・・・・。
それらが一斉に、頭の中でフラッシュパックされる。
そして、不意に意識が真っ白になった。
恐怖のあまりにそうなったのではない。
ただ、自然と心が軽くなったというか、澄み切ったのである。
心が静かで澄み切った状態。
いわゆる『明鏡止水』の極致。
佐藤の心は、今まさに『明鏡止水』の極致にあった。
(俺にはまだ、なすべき事が・・・・・・・・・・。
護るべき者が・・・・・・・・・・・・いるんだ!!
そのためには・・・・・・・)
そう思った瞬間、佐藤の手が自然と動いた。
糸より細く、光より速く・・・・・・・・・・・・・。
そして、手に何かを砕く感触が伝わった・・・・・・・・・。



「お・・・・・お見事・・・・・・。
よく・・・よくぞ・・・・・この『僕』をとめれましたね・・・・・・」
「せ・・・先輩!!大丈夫ですかっ!?」
「・・・・ああ、心配ないよ・・・・・・」
心配する佐藤を安心させようとして、無理に笑おうとするが、力が入らない。
それどころか、額に浮かぶ脂汗が、ますます酷くなっている。
それもそのはず。
きたみちの身体には袈裟切りに、激しい傷を負っているのだから。
「どうして・・・・・・こんな・・・・・・・・・」
「ふっ、『奥義』というものは、命懸けで得るものですよ。
ああでもしなければ、短期間で『奥義』を得ることは出来なかったでしょう」
「しかし・・・・・・・・」
「この身体のことは心配しなくてもいい。じきに治る。それよりも忘れるな!」
「えっ?」
きたみちは、かっ!!と佐藤を見据えて続ける。
「今、『奥義』を放った時の気持ちを忘れるな・・・・・・・。
もし忘れなければ、君は『奥義』を自在に使いこなし
君にさらなる力を与えることになるだろう・・・・・・」
「・・・・・はいっ・・・・・・・・」
「それにしても・・・・・すごい『奥義』だ・・・・・・・・・。
僕の『天翔鬼閃』の後に発動してなお先に極まる・・・・・・・。
つまり、君の奥義はそれほどまでに速い『超々神速の抜刀術』と言うことになる」
「はい・・・・・自分でもびっくりしています・・・・・。
まさか、俺に・・・こんな力があるなんて・・・・・」
「君は、十分に強い。そんなに卑下することはない。
自身の生命を懸けて、生み出した奥義・・・・・。
いわば、『天翔命閃』(あまかけるいのちのひらめき)と言ったところか・・・。
君の奥義は・・・・・」
ようやく痛みが和らいできたのか、きたみちは、にっこりと笑う。
それにつられて、佐藤もまた笑みをこぼし
「・・・・・・きたみち先輩」
「なんだい?」
「その名前・・・・・『天翔命閃』・・・・・俺の奥義の名前に・・・・・
もらっても良いですか?」
「・・・・・ああいいとも、使ってもらえて光栄だよ・・・・・」



かくして、佐藤昌斗の奥義『天翔命閃』は誕生したのである。



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えーと、どうもきたみちです。
この話は、以前「飛天御剣流」のスキルを設定する時に
佐藤さん専用の奥義が欲しいと言って、佐藤さんに打診した所
ご了承をいただいたので、奥義設定と共に、修行話も付けちゃえと言うわけで
つくられたわけです。

というわけで、佐藤さん、今までかかってすいませんでした。
それと、少々情けなくしてすいません(恐縮)。
そして、「購買部長」ことbeakerさん、勝手に「グラップラー外伝」と名付けて
ごめんなさい。
最後に、読んで下さった方に、ありがとう。

でわ、またの作品で・・・・・。