戦闘に関する意見はそれこそ戦士の数だけあると思う。 勝敗を分かつ要因は何かと問われれば、僕の知っている人たちはなんと答えるだろう。 ジン・ジャザムは戦いに賭ける気負いとか何かそういう熱血趣味な事を言うんだろう。 Dセリオなら多分戦闘は火力などとのたまう。 師匠なら誰かを護りたいと願う心の強さだけ、と言うんだろう。 結城君なら……時の運とでもいうのかもな。 やーみぃは絶対に正義というんだ。彼にとっての正義は絶対に勝つらしいから。 あとは財力とか自分は絶対に勝つとか言いそうな人が多いな。 ハイドラントあたりは自分は魔王の使徒だから運命に従って勝つとでもいいそうだ。 まぁ結局はそれとは別に戦闘技術なんかが必要になるんだろうけど。 でも大別してこの学園の人たちは自分の力を一番に考えてるみたいだ。 愛や正義を信じる心、熱血の度合、運、それらはみんな結局自分の力だろう。 僕はどう考えて居るんだろう? 心の中に二人の自分が居る。 今はもう喋ることのないもう一人の僕は師匠と考えを同じくしている。 そして今思うこの僕は……。 「ひなたさん?」 美加香の声で風見は我に返った。 蝉の声が耳に響いてくる。 かんかん照りの日差しが一層強く嘖んでくるように感じられる。 風見はバンダナを一度外すと、きゅっと絞ってみた。 ぽたぽたと汗の滴がしたたり落ちる。 それを再びまき直しながら、風見は薄く笑った。 「ちょっとあっちの世界に行ってた」 「大丈夫ですか?日射病なら今直ぐ保健室に行かないと……」 心配そうな美加香に首を振って答えを返すと、風見はきっと中庭の遠くを見据えた。 「生憎と悠長に寝ている場合じゃないな。大体そうしたくても安全地帯なんてここにはな いんだし」 ここは中庭のほぼ中央に位置する場所である。 直ぐ側には噴水があり、てかてかと照り返しが襲ってくる。 周囲には高い木々があり、まさに今や学園一の危険地帯であった。 だがだからこそ、風見はこの場所を選んだ。 ここが風見の闘い方に一番あった場所なのだ。 もちろん外道メテオにはこの場所は不利だ。木々の後ろに隠れられたら攻撃は当たらな い。鬼畜ストライクにも障害物が多すぎる。 だが、風見にはそんなものは些細なことだった。 風見は不意に美加香の方へ視線を帰すと、にこっと笑った。 「美加香、これが終わったら海に行きましょうか。ちび達ややーみぃも連れて……」 それを聞いて美加香は目を丸くした。 「ひ、ひなたさん………」 不思議そうに風見は美加香を見た。 美加香は震える手で風見を指さす。 「暑さのせいでどっか頭の配線イっちゃいましたか?」 ばきっ。 数秒後、頭を押さえてかがみ込む美加香と血管を頭に頭に浮かべてひくひくと笑う風見 の姿があった。 「なんで僕が海に行こうっつったら発狂したことになる!?」 「ふぇぇ、だってひなたさんが優しげな事を言い出すなんてヘンですから」 「ほぉう」 風見はにっこりと無邪気な笑みを浮かべると、血管を浮かせたまま言った。 「んじゃ海流に乗せて30キロ漂流させた上で体中にアイスキャンデー刷り込んでついで に日焼けしてる最中に背中に『ムネナシ』ってシール貼り付けて白い痕残してやるから海 に行こうか☆」 「あぁぁ、それもやだなぁ………」 そう言いつつも結構楽しそうな美加香である。 二人はクスクスと笑いながら、そんなわけのわからない妄想について話し合った。 ひとしきり笑った後に、風見は突然表情を引き締めた。 「ま、この戦いの報酬と考えれば過当なもんじゃないでしょ」 「そうですね………どうも相手もおいでなさったようですし……」 美加香の表情もいつもより真剣なものになり、目の中に冷徹な光が宿る。 蝉の声がぴたりと止んだ。 まるで毒気に当てられ死んでしまったかのように。 斜め前にあった大木がめきめきと音を立てて倒れる。 それと同時に上空から一匹の鬼が舞い降りてきた。 「ウオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」 咆吼を上げながら爪を振りかざして落下してくる鬼。 風見は袖口から超硬質ナイフを取り出したが、それで攻撃を受け止めるような愚かな真 似はせずに静かにバックステップを取った。 一瞬の後、風見が立っていた場所に轟音と砂煙、そしてアスファルトの破片をまき散ら しながら鬼が降り立つ。 爪の一撃は地を砕き、舗装された道路のアスファルトにひびを走らせる。 風見のナイフが鬼が降り立った一瞬の隙をついて切り込まれる。 だが鬼は使わなかった左手でその攻撃を受け止めていた。 みしっ、とナイフが軋み音を立てる。 「さすがに覚醒すればここまで強くなると言うわけですか……ゆきちゃん」 「ちゃん……だと?馬鹿にしているのか……獲物が狩猟者に向かって呼びかける台詞では ないな」 ゆきはいつも大人しげなその容貌にうってかわった凶暴性を顕しながら、爪に力を込め る。 後ろでは美加香が何者かに拳を叩き込む音が聞こえてくる。 ゆきははっとして顔色を変化させた。 「初音!」 ゆきの腕から力が抜ける。 だがそれはフェイントだった。ゆきは素早く一歩踏み出すと、右腕からの一撃を風見に 喰らわす。 風見の制服の切れ端が宙に舞う。見切っていた。 「体術に関しては僕の方が少しばかり上手ですからね」 そしてゆきの顎に風見の爆発的な肘打ちが決まる。 ぐっ、とうめき声を上げてゆきがしゃがみ込んだ。 風見は大きく跳び下がると、胸の切り傷を触ってみる。 上手くかわせていたようだ。切られたのは制服だけで済んだらしい。 「きゃっ!?」 本当に不意を付かれたらしい初音の悲鳴が聞こえ、美加香は風見の側に走ってくる。 風見と美加香は対になって構えを取った。 暗器と素手、構えこそ全く違うが補いあって隙がない。 再びアスファルトを蹴りつける音が響いた。 やはりあれしきの打撃では覚醒したエルクゥにダメージを与えることはない。 「風見ひなた、あなたを………狩る!」 そう叫びながらゆきは爪を振りかざして迫ってくる。 風見は冷笑を浮かべながら、ナイフを煌めかせた。 「僕は相手が女であっても殴れる男です。……やってごらんなさい、やれるものなら!」 風見の姿勢が低くなり弾丸のように初音に向かい走り出す。 方向を変えられたゆきは、美加香に攻撃を仕掛けることもせず風見を追って走り出す。 エルクゥになってもやはり気が弱そうな初音は、突然の襲撃に呆気にとられている。 ガーディアンであるゆきが闘ってくれると踏んでいたらしい。 多分自分は特殊能力で後方援護するつもりだったのだろう。 ……笑止千万。やはり初音は戦士ではない。力はあっても気概なくてはただの人だ。 「風見ぃぃぃ!初音に触るなぁぁぁ!!!」 ゆきの呻りに近い叫びに、風見は冷笑を強くした。 (その主を護ろうとする態度はエルクゥ同盟一員として敬意に値する。だがね……) 「実戦の場においてはそれが命取りとなるのですよ?」 風見の身体が急速にターンをかける。 砂塵を巻き上げて迎え撃つ風見に、全力でダッシュをかけていたゆきは対応しきれなか った。 ゆきの走りをカウンター力に加え、風見の崩拳が銃声のような音を立てて腹に命中する。 変形前とはいえ、鋼のように強くなっていたはずのゆきの腹に拳がめり込み、ゆきは泡 を吹いて崩れ落ちた。 そんなゆきに一瞥も加えず、風見は初音を置いて美加香の方へと駆け出す。 数十歩進んだところで後方から何か重いものが立ち上がる音がした。 だがそれにも構わず風見は全力で美加香の方向へと走っていた。 美加香も既に走り出している。 その側をすり抜けるとき、風見は囁いた。 「美加香、先頭に置いて一番大事なものはなんですか?」 「それが決闘なら相手に対する誠意。そしてそれが殺し合いなら……」 二人は視線を交わし合い、同時に呟いた。 『生き残る事への執着』 後方から迫る足音は二人分だ。 そしてそのどちらもが異常なスピードである。 もちろん大質量の方は小さい方に合わせて走っているが、やはり速い。 風見と美加香は頷き合うと、突然走り幅跳びのようにジャンプした。 4、5メートルは飛んだが、それでも二人の速度は若干落ちた程度だ。 その着地と同時に後ろで爆音が響いた。 熱気がこちらまで伝わり、ざわざわと木々が葉をならす。 「こんなものが狩猟者に通用すると思ってかぁぁぁ!!!」 ゆきの怒声が聞こえてくる。 美加香はくすっと笑うと、頭を掻いた。 「やっぱり効きませんでしたね。結構火薬多くしたのに……」 それでも速度は変わらない。 一方追う方の二人は初めこそスピードも鈍っていたが、再び速度を盛り返して行く。 そしてまた数メートル走ったところで二人は跳ぶ。 「そんな花火ごとき、避けるまでもない!」 再び爆音が響く。 だがそれも所詮はゆきと初音の速度をやや鈍らせただけのものであった。 「花火、ねえ……」 風見がすこしばかり呆れたように呟く。 美加香がそんな風見に目配せした。 風見は頷きを返し、再びジャンプする。 「小細工もいい加減にしろっ!」 ゆきの声が聞こえてきた。 二人は砂埃を上げつつ立ち止まると、効果の方を確かめた。 ぶしゅうううううううううううううう。 「な、なにっ!?」 「わーん、何この白い……の………」 初音はたちまち霧の中でばったりと倒れた。 ゆきはそんな初音を抱きしめ、憎々しげに風見を睨み付ける。 「は……はかった……な?」 風見の表情は冷たかった。 「あなた達にとってスポーツでも、僕たちにとっては命がけなんですよ。殺し合いにルー ルは無用なんです」 くっ……とゆきは呻くと、重い瞼を下げて行く。 やがてゆきも煙の中に沈んでいった。 美加香はそんな二人を心配そうに見つめる。 「大丈夫でしょうか……エルクゥにも効くぐらいの濃度の催眠剤を加えましたけど……… 初音ちゃんの身体に後遺症が残らなければいいんですが……」 だが、まあそうなっても癒し手はいる。 風見は冷たい表情でゆきを見つめていた。 (お休み、良い夢を。そして願わくば次に目覚めたときは元に戻っていることを祈って…) こうして風見はエルクゥを二名捕獲した。 妹を救いに楓が現れたのはそれからしばらく経ってからのことだった。 初音は体育館の中央に転がされている。 楓はきょろきょろと周囲を見渡すと、素早く初音に向かって走り出していった。 あと数十歩まで近付いたところでその足が止まる。 楓は鋭い視線で体育館の袖から現れた男を睨んでいた。 「待っておりました、楓様」 風見は表情を凍り付かせたまま楓に話しかける。 「きっと一人で来ていただけると信じておりました。可愛い妹のためですからね」 楓は敵意に満ちた視線を風見に注ぐ。 「やはり貴方ですか、風見さん」 その視線に痛いものを感じながら、風見は黙ってそれを受け止めていた。 「卑怯者」 軽蔑したような楓の言葉に、風見はわずかに笑って見せた。 誉め言葉だ、と言わんばかりに。 それを見てますます楓は風見に対する憎しみの情を強くしたらしい。 射殺さんばかりのばかりの殺気が周囲に漂っていた。 風見は内心とは全く逆に余裕ある悪人の笑いを浮かべる。 「彼女の交換条件は貴方です。黙って保護されていただけませんか?」 「……断る、と言えば?」 風見は笑みを崩さなかった。 「止むを得ません。強硬手段に移らせていただきます」 すっ…と楓の表情が変わる。 それは笑い。 狩りを楽しむ狩猟者の笑い。 「風見さん、一つ質問しますが……」 殺気が形を取った。ねっとりと風見の身体に絡みついてくる。 「……下等な者に交換条件を出すような権利があるとお思いですか?」 風見は哄笑を上げた。 やはり、無理だったようだ。今の楓は楓ではない! (いいとも。汚れ役ならいくらでも引き受けてやる。僕はもう……) 「はっ!」 楓の空を切り裂くような叫びが耳を打つ。 途端に空気が重圧を増した。 楓の殺気が身体に染みいり、炎を巻き上げんと膨れ上がる。 だが風見はすっと息を吹き込むと、気合いを込めて叫びを上げた。 周りの空気が音を立てて崩れるような衝撃。 そしてそれはそのまま楓の表情へと伝わった。 「止められた……!?」 風見はにっと笑うと、楓に向かって手を差し伸べた。 「僕に貴方の力は効きませんよ。これでも僕は貴方のガーディアンですからね。…さて」 手を差し伸べたまま数歩歩いて行く。 (そうとも、僕は汚れる事なんて恐くないんだ) 「保護されていただきますよ、楓様?」 楓の顔におびえが走る。 顔を蒼白にして、あとじさった。 ……まだか? 風見は内心で舌打ちしながら大股で歩いて行く。 「こ……こないでっ!」 楓の声に数回人体発火が仕掛けられるが、ダメージはない。 普段ならサディスティックな表情を浮かべるところだが、今はそんな演技をするほどの 心のゆとりはない。 ただひたすらそのときが来るのを待ち続けながら楓に近付いて行く。 ……次善策を採るしかないのか? 風見は楓の腕を掴んだ。 そのとき窓ガラスが弾け飛ぶ! 「楓ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!」 ………来たかっ! 風見は楓に当て身を喰らわすとさっとその身体を抱き留めた。 思ったよりも抵抗はない。解っているのだろう。 その事実に確信を深めつつ、風見は楓を抱きしめて走り出す。 (だって、もう僕は取り返しのつかないくらい汚れてしまったんだから) 「師匠!楓様はいただいてゆきます!」 風見は西山に背を向ける。 「キサマ、生きて帰れると思うなよ!」 西山の怒号がびりびりと体育館全体物理的にを振動させる。 さすがにゆきとは迫力が違う。 その気迫に押されそうになるのを感じながら、風見は考えていた。 (やはり……師匠は呑まれているのか!) 隙をついて初音を回収した美加香が風見の前を走っている。 だめだ、遅い。 変形した西山はあまりにも速すぎる。 このままでは二人とも狩られてしまう。 風見は踏みとどまると、左手に楓を抱き、右手に金属爪を取り出して相対した。 ただの金属ではない。次郎衛門の刀と同じく青く輝く不思議な材質で作られた鬼を狩る ための武器だ。 楓のガーディアンとなったときに西山より譲られた家宝……らしい。 皮肉なものだ。当の西山と切り結ぶために使用する羽目になるとは。 「破邪鬼爪……貴様ごときが使えるか!?」 「使ってみせる!楓様を護るためにっ!」 風見は内心で自らの言葉に苦笑した。 意識の半分は逃げて行く美加香に向けられている。 「あらぬ方を見て俺に勝てるつもりかぁっ!」 ほぼ無意識に蒼い爪は西山の攻撃を食い止めていた。 西山が舌打ちする。 だが風見自身が誰より驚いていた。 (なんて使い心地……成程…鬼を倒すための武器か) 初めて使うのに、まるで百戦をくぐり抜けてきたように良く馴染む。 ……百匹の鬼を狩ってきたように。 (呪われた武器だな) 楓を護り、西山に師事する風見にはまさに禁忌の武器だった。 風見は西山の攻撃と拮抗する。 腕力は明らかに西山が勝っているのに、蒼い爪は風見にそれに対抗する力さえ補っていた。 「師匠………優しかった貴方は最早どこにもないのですか」 風見の言葉に、西山は歯をむき出しにして嘲笑する。 「狩猟者こそ俺の本性。鮮血こそ俺の色、慈悲など所詮まやかしよ…」 互いの力が膨れ上がり、爪同士が震える。 (師匠………申し訳ありません) 風見はありったけの気合を込めて挑戦を叩きつけた。 「西山英志、貴方を狩る!」 「やってみるがいい…ヒトの子が!」 空間が文字通りに爆裂する。 衝撃に耐えつつも、風見は西山の次の攻撃を防いでいた。 二人の瞳が至近距離で交錯し、ばちっと弾かれるように離れる。 「今の貴方は我が師ではない!」 「ほう?どこが違うという?」 打ち鳴らされる爪と爪。 付いては離れる攻撃と攻撃。 再び組み合い、二人は互いを睨み付ける。 「僕の師は貴様のように冷たい目はしていないっ!」 「ならばそいつこそが偽物なのだ!」 闘争本能の固まりとなった西山はまさに鬼神だった。 対して鬼の武器の加護を受けているとはいえ楓を抱える風見はごく不利だった。 もちろん逆転方法は存在する。 攻撃を防ぎ反撃する、最強の切り札だ。 だが風見はそれを使おうとはしなかった。 西山が口元を歪める。 (気取られたか……) 風見は突然しゃがみ込んで西山の攻撃を外すと、まさに全力を賭けて走り出した。 咄嗟に対応しきれず、西山は空回りした攻撃態勢のまま動けない。 一瞬の隙をついて風見は舞台袖に飛び込んだ。 「ま、待て!」 西山が叫んで後を追う。 だが体育館の細部はすでに予め検分済みだった。 「ひなたさん!」 美加香の声に従って、風見は階段を駆け昇る。 そして伸びてくる美加香の腕に楓を託すと、後を追って梯子を昇っていく。 「風見っ!!!」 (早いな………) 考えながらも風見ははしごを登りきった。 そこは学園が見渡せる屋根の上だった。 ドーム形になった球形の頂上に風見達は立っていた。 「ここかっ!」 梯子のあった場所を吹き飛ばして鬼が出現する。 爪を煌めかせながら、風見と美加香を睨んでいた。 「もう逃がさん。ここで勝負を付けてやろう」 西山はそう言って身構える。 風見は美加香の側に立って、こっそりと囁いた。 『美加香、後は頼んだ』 『え?それって……』 当初の計画とは違う作戦に、美加香は困惑した。 風見はにこっと笑いかける。 『ごめんな、貴様はジャッジでもエルクゥないのにこんなことに巻きこんじまった』 美加香はぞっとした。 まるでそれは、別れの言葉。 それも今生の別れを意味する。 『ひなたさん!?』 風見はそんな美加香を見て、優しく笑って見せた。 「心配するな。僕はたとえどんな目に遭おうと……最後には絶対に、勝つ!!」 そして美加香を思い切り突き飛ばす。 両手に楓と初音を抱えたまま、美加香が屋根から滑り落ちて行く。 「風見ぃぃぃぃぃっっっ!!!!!!!!!!」 西山が屋根をへこませつつ襲いかかる。 風見は脱力したようにゆったりと蒼い爪を走らせる。 甲高い音を立て………蒼い破片が宙に舞う。 続けて西山の返す一撃が風見の胸を薙ぐ。 スローモーションのような動作の後に、風見はごふっと息を吐いて倒れた。 ぐっ……と拳を握りしめるが、西山に背中を踏まれてぱたりと動かなくなる。 突風が吹いた。 続いて上がってきた男が、西山の側に立った。 「やったか?」 「……ああ。大して美しくもない炎だった」 淡々と西山は語る。 男は一つ頷くと、ブレザーをはためかせて梯子に向き直った。 「姫達はどうする?」 「生きている可能性もあるからな……捜す」 西山の答えに満足したように男は笑うと、立ち去りかける。 その背中を西山が呼び止めた。 「おい」 男は振り返った。 怪訝そうな視線で西山を見る。 「ダリエリ様は何かおっしゃっておられたか?」 「いや……相変わらず、狩りを続けろと」 男はそれだけを残して降りていった。 後には風見を抱き抱えた西山だけが残される。 ぴくりとも動かない風見の顔を見ながら、呟いた。 「この……馬鹿者がっ………」 風見の胸が、微かに上下していた。 プールの中から楓と初音を引っ張り上げた美加香は、自らずぶぬれになりながら二人に 人工呼吸を施していた。 だがその最中にも美加香の心は別のことを考え続けていた。 (ひなたさん……待っていて下さい。必ず、助けに行きますから) そうとも、まだ終わらせない。 謝罪の言葉を別れ際に言うほど、美加香の中の風見は優しくはないのだから。 「Leaf学園の一番長い日:風見編」前編……完。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ネタパク企画今日の英志さん 「ダリエリ」 「なんだ、西山?」 「思うんだが………これからエルクゥをアピールするのに必要なのは『親しみ』では?」 「親しみ?だがそれでは狩猟者としての威厳が」 「怖がられていては親しみも生まれまい」 「だがどうすればいいのだ?」 西山はふっと笑った。 「いくぞ楓!秘技…………『いつもより多く回しております』!」 からからからからからからからからからからからからからからからからからから。 「これを狩りの前にやれば大受け間違いなしっ!」 「……………考えておこう」 意味がよくわからんな。