その頃地下迷宮入り口では。 「ぜぇ…ぜぇ…や、やっと地上だ……」 「ううっ、死ぬかと思ったよぅ……」 「閣下が広瀬委員長の説明を無視するからこんなことにぃぃ……がふっ!?」 「ええいっ、うるさいいっ!!」 命からがら生還した部下の頭を蹴倒しながらディルクセンは叫んだ。 「おのれ風見めっ!! この恨み晴らさずにいると思うなよっ!!」 「あのー、彼は別に挑発以外何もしてないと思うんですけ……ぐがっ!?」 要らない事を言った部下をゲバルト棒で叩き伏せながら、ディルは叫んだ。 「諸君、直ちに粛清計画を練れ!! なおこの事は他言無用だ!!」 「言われなくても言いやしませんよ、こんなこと……ぎゅがっ!?」 「永井あたりに知られたら物笑いの種ですね……ごげっ!?」 また二人沈んだ。 ゲバルト棒を振って血を落としながら、忌々しげに呟く。 「くそ、奴は危険分子だ。もっとも一人では到底何も出来るとは思えんが……」 そう言いかけたとき、ディルは右の方から何か物凄い音が近づいてくるのを感じた。 振り返れば土煙や瓦礫と共に一人の少女が全力で突撃してくるところだった。 その暴走トラックを思わせるあまりのスピードと迫力に圧倒されたディルは慌てて 少女に向かって呼びかけた。 「ちょ、ちょっと!? そこの少女、停まりなさい!!」 「まさたにゃーーーーん!! どこにゃーー、愛を受け取るんだにゃーーーーっ!!」 「ああっ、聞いてない!?」 ディルはこれは台風に呼びかけるようなものだと悟り、急いで反対方向を振り向いた。 「総員、退避ーーーーっ!!」 『ラ、ラジャーーーーーッ!!!』 だが、反対方向からも何か巨大な物体が迫って来ていた。 それは巨大なライオンに乗った一人のショタっ子であった。 「あっ、猫耳を発見したですぅ!! ひび獅子、あれを倒して30匹目にするです!!」 『がおーーーーー!!』 それを見たゆかたは狂暴極まりない口調で叫ぶ。 「むっ!? まさたにゃんとゆかたの愛を邪魔するにゃか!? 猫に蹴られて死ぬにゃ!!」 ディルは恐怖の表情で叫んでいた。 「み、右ですかぁぁぁ!?」 『NO!! NO!! NO!! NO!!』 風紀委員の皆さんは泣きながら絶叫した。 「それーーーっ、ひび獅子やっちゃうですーーーっ!!」 『がおーーーーーー!!』 ディルは恐怖の表情で叫んでいた。 「ひ、左ですかぁぁぁ!?」 『NO!! NO!! NO!! NO!!』 二者は戦闘意欲の塊となって突き進んで行く。間に泣き叫ぶ風紀の一団を挟んで。 「まさたにゃーーーーん、愛してるにゃーーーーーーーっ!!!」 「目指せ百獣マスター!!」 『がおおーーーーーーー!!!』 ディルは恐怖の表情で叫んでいたんだよ。 「りょ、両方ですかぁぁぁ!?」 『YES!! YES!! YES!! YES!!』 ディルは恐怖の表情で叫んでいたんだったら!! 「もしかしてペシャンコですかぁぁぁぁぁ!?」 『YES!!! YES!!! YES!!! YES!!』 ぶちっ!!!! 「なあ、いい加減に機嫌直してくださいな」 「つーん」 美加香は膨れて、そっぽを向いてしまっている。 まさたと風見のやりとりのせいですっかり怒ってしまったらしい。 「だから別にあれはお前の事を言ったんじゃないんですって」 「私じゃなくてもゆかたちゃんを貶した事には変わりないでしょう」 「事実を言っただけですよ」 「女の子には言っちゃいけない事実だってあるんです!!」 背中を向けているが、その姿から既に怒りがこちらに伝わってくる。 風見は内心参ったな、と呟いた。 (もしかしてこいつ、ゆかたと自分が似た者だって気付いてるんじゃないのか?) さもなければゆかたの悪口でここまで気分を悪くするわけもない。 何だかんだ言って、タイプが似ているゆかたへの言葉を自分への言葉に摩り替え ているのだろう。 曲がりなりにも恋する乙女ということか。尤もその対象は自分ではなく雅史なの だが。風見の評価は自分を映す鏡のようなものなのだろう。 逆を言えば風見の言葉は、美加香にとって鏡程度のものに過ぎないということだ。 (僕は所詮は鏡、か) ……ズキン。 (痛っ…?) 風見は思わず胸を押さえた。勿論痛みはない。痛かったのは心だから。 何とも馬鹿馬鹿しい話だ。無理矢理頭を振って、痛みを忘れる。 正確には痛みを感じた、という事実を忘れようとする。 (僕は鏡だ。それでいいじゃないか。鏡には鏡のやりようがあるさ) 風見は小さく息をついて、一人語散るように呟いた。 「でも、ゆかたさんは元気があるよな。ああいうとこは凄くいい」 「………!」 ぴくっと美加香の後ろ姿が動いた。有効だ。 同一視するゆかたを貶して怒ったのだから、逆に誉めてやれば機嫌も直るはず。 手応えを感じた風見は勢いづいて続けた。 「やっぱり可愛い女の子は控えめもいいけど、元気なのは捨て難い要素だな」 「………!」 「特に向こうから好きだって迫ってくれるんだから、並の男はイチコロだよ」 「………!」 「いつでも明るくて弾けるくらい元気にアタック、これは男の夢だよなー」 「………!」 美加香の後ろ姿がありありと喜色に満ちているのがわかる。 もしも尻尾があったならぱたぱたと振り回すほど機嫌良さそうだ。 あと一押し、と判断して風見はつい口を滑らせた。 「いやあまったく、ゆかたさんは理想的な女の子だよな!」 「!!!?」 その時風見は、美加香の背中の空気のベクトルが一気に逆転するのを見た。 まずったか、と思った時にはもう遅かった。 「それなら私に言わずゆかたちゃんに告白すればいいじゃないですか!?」 美加香は地響きが聞こえそうなほどの迫力を伴った背中で、風見に叫んだ。 怒っている。滅茶苦茶に激怒している。 風見はどこだか知らないが己が失策した事を悟り愕然とした。 読みが浅い。 普通誰でもいくら同一視してるとはいえ、そこで他人を誉められたら怒る。 まあここまで怒る事はないだろうが、そこは風見が自分の存在の重さを鏡程度だと 思っていた報いのようなものだろう。 (……柄にもなく小細工なんかするんじゃなかったな) 風見は内心ため息を吐き、ごろんとあお向けになった。 (やめたやめた、もう何もしないぞ。美加香の機嫌もほっとけば元に……) その時、さーーっと爽やかなそよ風が吹いた。 うわと心の中で呟きながら目を開けた風見は、そこで。 桜色の雲を見た。 「美加香!」 「……何ですか」 その言葉は相変わらず怒気を孕んでいたが、風見は構わず言った。 「上見ろ、上!」 「……上?」 訝しげに言う美加香の声が、絶句へと変わり、やがて感歎の声となる。 「うわあ……」 そよ風に散らされ頭上一面に広がる桜の花が、まるで桜色の雲のように空を覆う。 やがてそれは桜色の霧となって辺りに満ち、桜色の雪となって降り注ぎ、そして新た なる雲が湧き上がる。それはまるで夢幻の如く。 花から雲へ、雲から霧へ、霧から雪へ、そして我が身へと舞散る桜。 「すごい……」 美加香の素直な言葉に風見は頷いた。 「仰向けになって見るとなお良いぞ」 「……ホントだ」 美加香が真実そうしているのかは風見には分からない。 しかし同じ姿勢で同じ物を見て感動している、という事が圧倒的な連帯感となる。 風見は不意に、まるで美加香の視点からこの光景を眺めているような錯覚に囚われた。 「……あのさ」 ごく自然に、風見は美加香に話し掛けていた。 美加香は黙って言葉を待っている。 「桜は、散るから綺麗なんだって言うだろ? 同じ花は二度とは咲かないんだ」 「…………」 「それは、今日も同じなんじゃないか? この光景は二度ないし、この時間も二度なくて」 風見は喋れば喋るほど、抱いていたイメージが散逸していくのを感じた。 想念を上手く伝えられない事にもどかしさを感じ、散る事に焦燥を覚える。 「だから、こうやってこの気分でこの光景を見る事も二度とはないわけで……あー」 風見は半分ヤケになりながら、イメージを一気に吐き出した。 「つまり、折角一緒の時を過ごしてるんだから、もうちょっと楽しもうってことだよ!!」 違う。ニュアンスが微妙に違う。さっきの事を蒸し返してどうする。 一体感がどうとか死生観とか、もっと気障な事を言いたかったはずなんだが。 ついでに『一緒に』ってのは何だ。デートしてるんじゃないんだぞ。 風見は穴があったら入りたい気分になった。それこそ目の前のシューターに入ってしまう くらいに。 「……私も」 「え?」 風見は美加香の方を振り向いた。 美加香はくすっと笑いながら、呟く。 「私も、同じ事考えてました」 「……そっか」 多分それは自分が本当に言いたかった事と同じなんだろうな、と風見は思う。 そうしながら二人は桜の雲を眺めている。 「綺麗だな」 「春ですから」 「……春だもんな」 二度とない四月四日はそうして過ぎて行く。 完 ========================================= ひ「はい、個人Lー(笑)」 み「読んで貰える可能性限りなく低いですー(笑)」 ひ「それも今更ですが。ディルさん、ごめんキャラ滅茶苦茶になっちゃったよ」 み「でも好きにやれ、って言われてる事ですし別にいいのでは?」 ひ「……文句出ない限り良い事にしておくか。ゆかた嬢も凄い事になってるな(笑)」 み「だからそれはひどいですって(笑)」 ひ「話は飛ぶけど、綾香は干物メーカーに違いない。いや、絶対そうだ(笑)」 み「だから干物メーカーって何!?」 ひ「ピクシーサヤとかそんな感じの人々の仲魔(笑)」 み「あの、その『魔』は……?(汗)」 ひ「エナジードレインが得意技です(笑) 呪殺無効防具を忘れるなサマナー(笑)」 み「一体何の話なんですかぁぁ!?」 ひ「まあとりあえず干物メーカーの話だと思っとけ!」 み「ううっ、話が堂々巡りしてるよう……(涙)」 ひ「それにしても、後半いきなりラブコメになるのは最近の癖なのかな? 変な癖が 付いたもんだよなー」 み「あとパロディ多いですね(笑)」 ひ「桜も多いな(笑) 確か昔Lで書いた記憶がある(笑)」 み「ワンパターンですかねえ……」 ひ「猛省せにゃならんか。まあとりあえず、台無しオマケでシメ!!」 み「それでは今日はここまで!!」 ひ「『誰だよ例の初夜SS読んでひなたさん吸われてません?って言ったの』風見ひなたと!!」 み「『それにしても何故みんなあれを知ってるんでしょう?』赤十字美加香がお送りしました!!」 ============================================ おまけ「今日のハイドさん」 4月4日12時30分。 第二茶道部内の気温は実に44度。 ぐつぐつ煮え立つ鍋を囲む十三使徒は汗まみれで地獄っぽい。 ハイド「あぢぃぃぃぃぃぃ!! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 葛田「落ち着いてください、導師!! 皆の見本となるべき貴方が取り乱しては!!」 ハイド「だからって熱すぎるわぁぁぁぁぁぁ!! 春なのにサウナ級に暑くしやがって!!」 神海「おまけに昼ご飯は鍋料理ですか……」 むらさき「なべーなべー!!」 たける「私が魂を込めて作ったんだよ頑張ったよ残さず食べてね絶対だよ!!」 高橋「はぁぁぁぁぁ…このかぐわしい汗の匂い…、良い良いぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」 ベネ「誰かこの変態を黙らせてくれぇぇぇぇぇ!!(涙)」 ハイド「大体誰だ!! 4月4日はシシの日だから最強に熱くした部屋でシシ鍋を食らうのが 古来からの伝統だ、なんて言ったのは!?」 葛田「はい、弥生さんです!!」 ハイド「で、当の弥生さんは!?」 葛田「急な腹痛により早退しました!!」 ハイド「逃げたかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 神海「でも、弥生さんは三日前に自信満々にこんな行事だって言ってましたよ?」 ハイド「うーむ、あの言い方からすると行事自体は本当なんかな」 むらさき「早く食べたーい!! ねえ、もういいでしょ?」 たける「さあ食べて早く食べて!!」 高橋「はぁぁぁぁ…このかぐわしいイノシシの獣臭…、良い良いぞぉぉぉぉぉぉ!!」 ベネ「誰かこの変態を殺してくれぇぇぇぇぇぇ!!(涙)」 ハイド「うむ、ではとっとと食って外に…うわぁぁぁぁ!?」 なんか箸を伸ばすとギロリと目玉が出て来る鍋。 どくんどくんとしらたきが血管風に波打ち、かなり生きてる感じ満点。 やっぱりカオスで地獄っぽい。 ハイド「生きてる、生きてるぞぉぉぉぉぉ!?」 むらさき「だって私が魂込めたんだもんっ☆」 ハイド「意味が違うわぁぁぁぁーーーっ!!」 葛田「うーむ、何ともクトゥルフが呼び声ってますな」 神海「(SAN判定失敗、気絶)」 むらさき「あ、美味しい! 美味!!」 鍋『ピギーーーーッ!!』 たける「そーでしょーそーでしょー☆」 高橋「はぁぁぁぁ…この背徳感漂う化物の踊り食い…、良い良いぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 ベネ「誰かこの変態を異次元に放逐してくれぇぇぇぇぇぇ!!(涙)」 ハイド「わーーっ、鍋に引き込まれるーーーっ!? 誰かーーーっ!?」 葛田「ど、導師が食われるーーーーっ!! 食うのは僕だーーーっ!!!」 ハイド「止めろーーーーーーーーっ!!」 4月4日の三日前はエイプリルフールだ、ということに一同が気付いたのは おじやもすっかり食い終わった頃の事であった。 完 ========================================== 大分カンも戻って来たかな(笑) ではまたー!!