あるひ、はいどくんがくろくねっとりとしたもうそうにひたりながらあるいていると、 どこからかふえのねがきこえてきました。 おとこをなぶりころしおんなをなぐさみものにするもうそうをちゅうだんするのはすこ しおしかったのですが、なぜかそのおとにきょうみをひかれてしまい、そちらのほうへと ちかづいてゆきました。 そのおとはうらやまのじんじゃからきこえてきます。 なんと、そこではなつまつりがひらかれていたのでした。 かぞくづれやかっぷるなど、たくさんのひとがおとずれています。 おかねがなくておなかがすいていたはいどくんは、みんなのたのしそうなかおをみてむ かつきました。 もしここにゆかたすがたのあやかがいればはなしはべつだったのかもしれませんが、そ んなつごうのいいことはそうそうおこるものではありません。 「がでぃむのさけびでふきとばしてやろうか」 ふつうのひとならみのこおってしまうようなじゃあくなかんがえがうかびましたが、は いどくんはそのまえにまえによみせからたべものをかっぱらうことにしました。 うまそうなものをもとめてよみせをみていると、あるみせでからーひよこがうっていま した。 「ひよこか……」 はいどくんはとりのまるやきをおもいうかべました。 じゅる…… おもわずよだれがたれてしまいました。 「ためしにそだててみるか」 はいどくんはいちばんげんきそうなむらさきいろのひよこをかいました。 「さあ、まるまるふとったうまいにわとりにそだってくれよ」 はいどくんにはひよこのえさをかうおかねなんてありません。 だからのはらにはなしてじぶんでえさをとらせることにしました。 じんこうてきにふかさせられたほんのうをうしなったひよわなひよこにそんなことがで きるのかとすこししんぱいしていたのですが、それはきゆうにおわりました。 ひよこはじめんをつついてじりきでえさをとっています。 「えらいぞ。たくさんたべてはやくりっぱなにわとりになるんだぞ」 あるひ、はいどくんはいつものようにひよこをのはらにはなしていました。 ひよこはいっしょうけんめいじめんをつついています。 ところが、そのひよこになにものかがちかづいていました。 「ぴよっ!」 ひよこがかんだかいなきごえをあげました。 「どうしたむらさきひよこ!」 なんということでしょう。 ひよこはぶさいくなくろねこにつかまり、いままさにたべられようとしていたのです。 はいどくんはそのねこにみおぼえがありました。 「なにしやがるえーでるはいど」 はいどくんはぶあぬーくのじゃけんでくろねこをけしずみにしてかわにながしてしまい ました。 「だいじょうぶか、むらさきひよこ」 さいわいけがらしいけがはないようでした。 「よかったよかった」 はいどくんはこころのなかからそうおもいました。 さて、ひよこをかいはじめてしばらくたちました。 むらさきのひよこはぐんぐんとおおきくなり、はいどくんはそのせいちょうをみるたび にまだみぬとりのまるやきをおもいうかべてはあやしいげすいなわらいごえをあげるので した。 「さあむらさきひよこ。きょうもえさをとりにいくぞ」 はいどくんはひよこのいるへやにはいってびっくりしました。 なんと、ひよこをいれていたかごのなかにまだおさなさののこるおんなのこがはいって いたのです。 「だれだおまえは!」 「むらさきだよ、おにいちゃん」 おんなのこはとんでもないことをくちばしりやがりました。 「だれがおにいちゃんじゃ。それよりおれのだいじなひよこをどこにやった、ああん?」 はいどくんはまちのやくざもはだしでにげだすそうぜつながんとばしをしました。 ところが、むらさきとなのったおんなのこはにこにこしています。 「あたしがそのひよこだよ。だいじにそだててもらったおれいをするためにこのすがたに なったの」 「だいじにだと?」 「うん、だってねこからあたしをまもってくれたもん」 むらさきはほおをそめてほほえみました。 そのむくなえみはどんなあくにんでもかいしんさせてしまうようなかがやきをはなって いましたが、あくにんであるとどうじにへんじんでもあるはいどくんにはつうようしませ んでした。 「ふざけるな、おれのごうかなでぃなーはどうしてくれるんだ。にんげんになっちまった らたべれないじゃないか」 はいどくんは、いっしゅんべつのいみでたべてやろうかとおもいましたが、13さいいが いはじぶんのしゅびはんいではなかったのでやめました。 そのとき、げんかんがのっくされました。 「だれだ、こんなだいじなときに」 はいどくんはいるすをすることにしました。 ところが、とつじょごうおんをたててとびらがふきとびました。 あぜんとしてげんかんをのぞくと、なんということでしょう、そこにははるばーどをか まえたやよいさんがたっていたのです。 「はいどらんとさん、このまえかしたいちまんえんをかえしてください」 そのうむをいわさないつめたいしせんにさすがのはいどくんもたじたじです。 「えっと……まだかえせそうには……」 「そうですか」 やよいさんはずかずかとどそくであがりこみました。 「ちょっと、やよいさん!」 「ごしんぱいなく、かぐをしちにいれるだけですから。ゆそうのてまもかけません、じぶ んでやりますから」 へやのなかにはいり、やよいさんはかごにはいったはだかのしょうじょをみつけました。 「はいどらんとさん……」 やよいさんはあわれみにみちたみせんをむけました。 「べつにあなたがようじょをかんきんしてよなよなみだらなこういにふけるのはかってで す。でもどうせやるならもっとひとめにつかないところでやってください。けいさつにじ じょうちょうしゅされるこちらのみになってくださいよ」 「ちがう、ごかいだ!」 はいどくんはひっしになってほんとうのことをせつめいしました。 でも、やよいさんははなでわらいました。 「あんしんしてください、だれにもいいませんから。それではにまんえんぶんのしなをい ただいていきますので」 「ふえてるー!」 ちめいてきなよわみをにぎられてしまったはいどくんは、ただただなみだをながすこと しかできませんでした。 「おにいちゃん、これからもよろしくね☆」 「しくしくしくしく……」 いえのものをねこそぎもっていかれかなしみにくれるはいどくんに、むらさきはあかる いえみをむけました。 「これからいっぱいおんがえししてあげるからね」 でも、にんげんになったむらさきはなまいきにもにんげんさまとおなじたべものをよう きゅうし、はいどけのえんげるしすうをきゅうじょうしょうさせるのでした。 めでたしめでたし