Lメモ異聞録vol.4 「修羅と鬼神」『戦う理由』"エピローグ"  投稿者:悠朔
 翌日。
 朔は終鈴直後の教室で教室から出る準備をしている綾香の前に、一振りの刀を手にして
立った。
 昨日は頬にシップを貼っていただけだったが、今日は身体のところどころに包帯が巻か
れており、昨日の戦闘の激しさを物語っている。
 近づいただけで匂ってくるシップの匂いに顔をしかめ、綾香は朔に胡乱な視線を向けた。
 今日一日、二人はこれまで一言も口をきいていない。
「………………何?」
「昨日……」
「え?」
「見に来てたんだってな。……余計な心配をかけて、悪かった」
「誰から聞いたの?」
「YOSSYからだ。泣くほど心配してたから、謝っとけって」
「……別に心配なんてしてないわよ。……ただなんであんな馬鹿な真似するのかって、腹
が立っただけ」
「そっか」
 それはやっぱり、心配していたんじゃないか?
 とは、言わないでおくことにした。
 心配して貰えたという事実があれば、その満足感があれば、無理に認めさせる必要の無
い事だ。
「今もよ?」
「ん……。わかってる。悪かった」
 フゥ、とため息を吐く。
「もういいけど……。それより何か、用があるんじゃないの?」
「ああ……。コイツを預かっといて貰おうと思ってな」
 そう言って、綾香の座る机に、手に持っていた刀を載せる。
 質素な作りの野太刀。
 だが抜き放ってもいないその刀に、奇妙な貫禄があった。
「……これは?」
「銘は"烈"。俺の家に伝わる六振りの刀のうちの一振りで、まあ継承者の証ってところか
な……」
「ちょっと!」
「二振りはまだ姉貴が持ってる。残りの"斬桜"、"秋水"、"雪風"は、それぞれハイドラン
ト、西山さん、YOSSYに預けた。だからこれはお前に預かっていて欲しい」
「……どういうつもり?」
 綾香が訝しげに朔の表情を伺う。
 それはそうだろう。
 一族の宝。家宝と呼んで差し支えない代物を、いきなり預けるなどと言われれば困惑も
する。
「昌斗に言わせるとな、どうも俺は剣士じゃないらしい」
「……え?」
「まあどんな時でも己の持つ刀のみを頼りとするあいつらと比べたら、あいつがそう思っ
ても不思議はないけどな。……少なくとも今の俺には、この刀を持つ資格が無い」
「まさか……止めるつもりなの? 武術を……」
「それこそまさか」
 心配そうに尋ねる綾香の質問を、一笑に伏す。
「剣士になるってことだけが強くなるための道って訳でもないだろ? 俺は俺なりの道を
探してみるつもりだ。だから俺がそれを見つけて、また刀が必要だと思う時まで、お前が
俺に必要だと思う時まで……それまでこれを預かっていて欲しい」
「……ハイド達はなんて?」
「"道場に飾っておく。手入れはしてやるから必要だと思ったら勝手に持っていけ"。これ
が西山さん。YOSSYは二つ返事で軽く引き受けてくれた。ハイドラントは……」
 その言葉を思い出し、口元に笑みが浮かぶ。
「"明日には質屋に並んでいるかもしれんが、それで構わんのならそこに置いていけ"……
だとさ」
「ハイドらしいわね」
 つられるように綾香も微笑む。
「わかった。これは私が預かっとくわ。……でも」
「ん?」
「一生返さないかもしれないわよ?」
「お前がそうしたいならそれでいいさ。それじゃ、俺はこれから用があるから、これで失
礼するよ」
「用って?」
「YOSSYと駅前をブラつく約束があるんだ。……また明日な」
「ええ。また明日……」
 片手を上げて教室のドアに向って一歩踏み出したところで、ピタリと踏みとどまり振り
返る。
「ああそうだ。ひとつ言い忘れてたことがあった」
「? 何?」
「賭け。お前の勝ちだ」
「賭け? ……って、なんのこと?」
「前に言ったろ? "愛されてみせる"って。俺お前が好きだ」
 綾香の顔に理解の色が浮かび上がる前に、悪戯者の笑みを浮かべてさっさと背を向ける。
「じゃな! また明日!」
「あ……ちょ、ちょっとゆーさく!」
 綾香の呼びかけに応えることなく、朔の背中が綾香の視界から消える。
「………………フゥ」
 結局追いかけないままそれを見送った綾香は、ドアの向こうに朔が去ったのを確認した
ところで、盛大にため息を吐いた。
 ――あいつ、笑ってた?
 少し火照った頬に手を当てながら、そんな事を思う。
 いつも不機嫌そうな仏頂面かすまし顔かしか表情を見せない男が、確かに笑っていた。
 ――姉さんの占い。当たってたって事ね。でも……。
「そりゃ私だって女の子だし、好きだって言われたら嬉しいけど……」
 ――やっぱり、時間と場所は選んだ方がよかったんじゃない?

「デコイ! 今の瞬間、ちゃんと写真に撮ったわね!? シッポと和樹はさっさとインタ
ビューに行きなさいよ! 明日のトップはこれで決まりよ〜!!」
「部長権限で発行止められるんじゃないか?」
「何言ってんのよっ! 内輪だろうが身内暴露だろうが、ネタになるならバンバン出すに
決まってるじゃない!! そんなの誰にも止める権利なんて無いわよ!」
「じゃ、当然お前に関する記事でもいいんだよな? 前々から書き溜めてあった『長岡志
保の奇行の実体』ってレポートがあるんだけど、載せていいか?」
「駄目に決まってるでしょ! ついでに没収っ!!」
「なんでだっ!?」
「志〜保さん。え〜と、『告白と同時に受け取った悠さんの家宝の刀を、一生大事にする
とコメント。今後は巻き返しを図るであろうハイドラントさんの行動に、二人が共に、い
かに立ち向かっていくかに焦点を絞りたいと思う。 著:城下和樹』 こんな感じでどう
でしょう?」
「ン〜、なかなかイイ感じじゃない。その調子で書き進めてね。あ、見出しにハデな煽り
文句も要るわよね〜」

 教室の後ろで騒いでいるデコイと情報特捜部の面々を見やり、苦笑する。
 ――ほっといてもいいわよね。……言ってくれるのを待ってたところも、あったかもし
れないし。
 顔の火照りの程度が、少し増したような気がした。
 これからどうなっていくかは自分自身でもよくわからない。
 自分がどう変わっていくのか。楽しみな反面、少し恐くもある。
 ――でも……まだまだこれから、よね!



「お。来たな」
 走ってくる人影を確認し、校門に腰掛けていたYOSSYがストンと大地に飛び降りる。
「悪い。ヤボ用でちょっと遅れた」
「気にしない気にしない。さ、とっとと行こうぜ」
「ああ。今日はオゴるよ。昨日の礼もしたいしな」
「……なんか楽しそうだな。いいことでもあったか?」
 問われて少し考えてみる。
「そうだな……。あったといえばあったかな?」
 クスッと笑い、言葉を続ける。
「人生はクソゲーだけどな、世の中そんなに捨てたもんじゃないって気付いたのさ」



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朔 「人は傷つくたびに強くなれる。悲しみを知るたびに優しくなれる」
綾香「……いきなりどうしたの? いったい」
朔 「そういう訳で、今回はYOSSYFLAME氏に御登場願いました。今後勝手に俺
  の親友だと認識させて頂きます」
綾香「……随分自己中心的に聞こえるんだけど」
朔 「良いんだよ。どうせ幻想なんだから」
綾香「?」
朔 「恋愛は理想の異性像を、親友っていうのは理想の友人という像を、相手の姿に重ね
  てるだけなんだよ。幻想と幻想が同調するのが恋愛であり、友情な訳だ」
綾香「………………」
朔 「でも同調していると感じるそれもまた、幻想にすぎない。人は決して幻想を共有す
  る事はない」
綾香「要するに、また世の中ナナメに見てる訳ね」
朔 「そうか? 例え誤解でも、信じればそれは真実になる。東西なんかこの論理を理想
  だとまで言ってたぞ?」
綾香「つまり結局なにが言いたいかと言うと?」
朔 「いまさらだけど、友達作ろう第一弾です。今回はYOSSYFLAME、佐藤昌斗、
  降雨ひづき、東西(敬称略)が対象だったんですが……YOSSY以外ほとんど出番
  なしで終わってしまいました。残念……」
綾香「他にも朔が戦う理由の中に、ハイドと戦った時、"倒す"ではなくて、"勝た"なくて
  はならないから。修行ならより強い者と戦おうとするのが当たり前……とか、いろい
  ろあったんだけどね」
朔 「そんなことばっかり考えてるとキャラが禿げそうなので削除」
綾香「禿げって……」
朔 「結局ジンには飛び道具を使わせることすら出来ませんでしたが、まあ私の強さから
  したらこんなものでしょう。……使わなかったのは彼の意地でも、あったかもしれま
  せんが」
綾香「ここまで読んでくれてありがとう」
朔 「自己中心的な話ですまん」
二人「ではでは……」


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蛇足的追加。

「オレの……オレの光牙剣……」
 そう呟き、科学部部室で折れた剣を抱いて、ジンが漢泣きに泣いていたという噂がある
が、定かではない。