Lメモ私的奇譚「日常あるいは平怨な日々:その2(ちょっとダークっぽい編)」 投稿者:ギャラ
 世の中には様々な種類の人間がいるが、大別すれば二つに分けられる。
 すなわち、狩る者と狩られる者である。
 そして――この二者は時として、容易くその立場を入れ替える事になる。
 そう。例えば、ここにいる者たちのように。


  Lメモ私的奇譚「日常あるいは平怨な日々:その2(ちょっとダークっぽい編)」


 ――どこで間違ってしまったのだろう。
 男は、夢を見ているような朦朧とした頭で、そんな事を考えていた。
 ――俺たちは、「狩る側」であったはずだ。
 そう。確かに、つい先刻まではそうだった。
 夜道を歩く女を見つけ、襲いかかった。悲鳴をあげる間もなく昏倒させ、人気のない廃ビルに
連れ込んだ。あとは、五人がかりで弄ぶだけ……そのはずだった。
 女一人に対して男五人。自分たちは、圧倒的に優位にある狩人であるはずだった。
 
 だが。

 ――ああ、また死んだ。
 男の目の前で、仲間がまた一人、斬り殺された。頭を失った首から大量の血を噴き上げ、
身体が地に伏した。
 まるで悪夢を見ているかのような、現実感のない光景だった。
 恐怖も、哀惜も、まるで湧いてこない。ただただ、その異様な光景が滑稽に思えるだけだった。
 刀を持った男が、こちらを向く。
 無言のまま眼を光らせて、刀を振り上げた時――男の麻痺していた心が、僅かに正気を取り戻した。
「そうか! お前が噂の――!」
 最後まで息をしぼり出すより早く。
 男の脳天から股間までを一筋の線が走り――
 男の意識は、闇の中へと墜ちていった。


「……ふう」
 YOSSYは、外道どもの最後の一人を叩き斬って、ようやく息をついた。
 血まみれで横たわる肉塊には一瞥もくれず、奥の壁際に倒れている女性を抱え上げる。幸い、
まだコトに及ぶ前であったらしく、少々の打撲以外には怪我もないようだ。
 気を失ったままの女性を抱えて廃ビルを後にしようとした時、斬り捨てた男の最期の台詞が
脳裏をよぎった。
 ――噂、か。
 如何に目撃されないようにしているとはいえ、外道ばかりを狙って狩り続けていれば、
そういった連中の間で噂になってもおかしくはない。
 それは分かっていたが――それでも、何かが、ひどく気にかかった。
 虫の知らせというやつだろうか。
 そして、YOSSYは、その勘が正しかった事を、翌日の学園で知る事になる。


 翌日。
 ダーク十三使徒のたまり場である第二茶道部部室に、珍客の姿があった。
 YOSSY−FLAME。
 彼は確かにハイドラント達とも面識はあったが、この場にいる事は珍しいと言わざるを得ない。
「よく来てくれたな、YOSSY」
「まあ、むらさきちゃんやたけるさんにも会えますしね〜」
 ハイドラントの言葉に、へらへらと笑って答えを返すYOSSY。
 だが、ハイドラントは真剣な口調を崩さなかった。
「まずは、これを見てもらおうか」
 ハイドが懐から一枚の紙を取り出す。
 それを受け取って目を通したYOSSYの顔に、疑念の色が浮かんだ。
「……これは?」
「その中に、心当たりのある名はないか?」
 再び紙に目を通す。
 ハイドの言うとおり、そこには多数の名前らしきものが並べられていた。それも、人名など
ではない。漢字を組み合わせ、無茶な読み方をさせるもの。或いは、英単語を適当に並べたもの。
明らかに、暴走族などのチームの名称であった。
 そして、その中には覚えのある名が確かにあった。
 ――かつて狩った連中が持っていた旗に書かれていた名前。
「……確かに、ありますね。それが?」
「それは、この辺りで最近消息不明となったチームの一覧だ」
 ハイドのその言葉に、YOSSYの様子も真剣なものへと変わる。
 ――多すぎる。
 その思いを察したのか、ハイドは説明するように言葉を続けた。
「確かに、私が戯れに潰した連中もいる。お前が狩った連中もいるだろう。……だが、この
 数は異常だと思わんか?」
「確かに。狩った外道の数なんていちいち覚えてませんが……これは多すぎます」
「そう。そこで、だ――」
 ハイドの口調に熱が籠もる。
「その第三の狩人の正体を調べたい。協力してもらえるな?」
 ハイドの要求に、YOSSYは少し考え込んだ。
 ――単なる好奇心であれば、協力するのは愚かな事だ。
 だが、ハイドラントがそのような詰まらない理由で動くとも思えない。おそらくは、その第三者
の存在が自分たちに不利益を与えるかどうかを見極めておく腹積もりだろう。
 もしもそいつが外道のみを標的としているのではなく、これまでの被害が偶然外道に集中して
いるだけならば……自分としては放ってはおけない。或いは、そいつが誰かに目撃でもされた
場合、官憲による警戒が厳しくなり、外道狩りが行いにくくなるかもしれない。
 そこまで考えて、YOSSYはようやく頭を縦に振った。
「――分かりました。手伝いましょう」


「……こんなところか」
 ハイドが通信を終えて、携帯電話の電源を切った。
 彼の黒ずくめの姿は、気を抜くと夜空に溶け込んで見えなくなってしまいそうだ。
 YOSSYは、葛田の説明に耳を傾けながらそんな事を考えていた。
「……最後に、ここ。この三十六か所に見張りを配置しました。あとは、連絡待ちですね」
 そう言いながら葛田が地図を指し示す。
「連絡を入れる前に返り討ちにあう可能性はないのかい?」
「各地点に三人ずつの人員を配置しています。全員十三使徒のメンバーですから、一瞬で全滅
 させるのは困難でしょう」
 YOSSYの疑問に葛田が答える。
 その様子を見ていた弥生が、冷たく口を開いた。
「大山鳴動鼠一匹、とならなければよいのですが」
 心配している、というよりも何処か皮肉めいた口調だった。
 ハイドは何も答えない。何も聞こえなかったかのように無視している。
 ――この二人、仲が悪いのかな?
 YOSSYの脳裏にそんな疑問が浮かぶ。
 だが次の瞬間、そんな呑気な思いは何処かに消え去っていた。

 ぷるるるるるるるるるっ!

 ハイドの腰の携帯電話が激しく音を立てる。
「どうしたっ!?」
 素早く取ったハイドの手の中で、それは、
「……て、敵襲です! 敵は……!」
 ぶつっ。
 ……つー、つー、つー……
「何処からだっ!?」
 発信元が破壊されたのか、意味の無い音を虚しく吐き出す携帯電話を手に、ハイドが怒鳴る
ように葛田に問う。
 地図を探っていた葛田の指が、一点で止まった。
「14番地区! ここから真北へ五百メートルの地点です!」
「――来る!」
 T-starが叫びをあげる。
 その時には、全員が気がついていた。
 自分たちに落ちる月の光が、翳った事に。
 ――自分たちの頭上をよぎる、巨大な黒い影に。
「プアヌークの――」
 ハイドが咄嗟に魔術の構成を編む。
 だが、それが発動するより早く、巨大な影はビルの谷間に姿を消していた。まるで――
コンクリートの森を舞う、巨大な猿(ましら)のように。
「見えましたか!?」
「いや――ごめん。逆光のうえに、あの速さじゃ……」
 弥生の問いに、YOSSYが答える。他の面々も口には出さないが、同様である事はその
表情からすぐに知れた。
「そもそも、あの巨体であんなスピードを出せる生き物がいるのかい!?」
「いや……少なくとも、僕の知識には……」
 葛田の言葉に、全員が沈黙する。
 Leaf学園生物部部長たる葛田の知識の外に存在するモノ――それは即ち、尋常の生命体
ではないという事だ。おそらくは、その戦闘力も。
「……エルクゥ」
「「「!!」」」
 ぼそり、と漏らされた弥生の呟き。
 だがその言葉は、声の大きさと反比例するかのように、巨大な衝撃をもたらした。
「なるほど……たしかに、それなら考えられる」
「だが、あの様子では、少しばかり血を引いているだけの紛い物ではないぞ。柏木一族とは
 言わずとも、それに次ぐ程度の力は……」
 柏木一族。
 ハイドラントのその言葉に、一同の顔に緊張が走る。
 Leaf学園の生徒で、その名を知らない者はいない。柏木賢二、柏木耕一、柏木千鶴の
三名を筆頭に、地上最強の名を欲しいままにする一族。彼らに次ぐほどの力の持ち主が相手と
なれば、生半可な覚悟では済まない。
 そう――狩人のはずの彼らが、獲物となる可能性も十分にあるのだ。
「しかも――知能もそれなりにあるようです」
 影が消え去って僅か数分のうちに、周囲に配した使徒たちの気配が消えている。
先に雑魚を片づけておく腹積もりか。
 ならば――


 ハイドラントが、最大級の魔力の構成を練り上げる。
 YOSSY−FLAMEが、喧嘩刀を手に、ばねをたわめるように力を貯めていく。
 葛田玖逗也が、超ペンギソをいつでも召還できるように気を高める。
 T-starが、己が唇を舌で湿らせ、呪文を放つ用意をする。
 篠塚弥生が、ゆっくりと呪文を刻み始める。
 むらさきの手の中で、大鎌が凶々しい光を放つ。


 そして――闇を裂いて、巨大な影が飛び込んできた!


「魔法老女セバスゥナガセ、ご奇態どおりに惨状です☆」










「「「「「「ここまで引っ張っといてそれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」」」」」」

 そのとーり。
「ふふふ……今宵もわたくしの愛の獲物がこのように……」
 にやり、とセバスゥが不気味この上ない笑みを浮かべる。
「このメンバーなら、ハイドさまと葛田さま、よっしーさまとティーさま、そして篠塚さまと
 むらさきさまのカップリング……むうっ、葛田さまにはろーずさまがいらっしゃいましたな!
 では、3(ピー)でございますかっ!!」
 なんかヤバいこと言ってるし。
 ちなみに、最近「狩られた」チームの皆さんは、立派に更正してゲイバーで働いている
ために消息不明になったのだったりする。こーゆーのを更正というのかどーかは知らんが。
「「「「「「き……」」」」」」
「……き?」
「「「「「「消えて……しまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」」

「ガディムの……叫びよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「絶! 烈風乱舞ぅぅぅぅぅ!!!」
「沙織! 葵! 瑠璃子! カモォォォォォォォン!!!」
「「「きゅぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」」」
「薔薇は調和の敵だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「シュヴァルツヴァルキューレェェェ!!!」
「いなくなっちゃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 6人がかりの最大級攻撃が炸裂する。
 その威力は、余波だけで周囲一帯を巻き込み、街の一区画を灰燼に帰すほどであった。
 ……廃ビル区域だったので、人的被害が出なかったのは不幸中の幸いである。


 かくして、悪は滅び去った。
 だが、あれが最後の魔法少女であったとは限らない。
 いつか、この世から悪の魔法少女が消えるその日まで!
 いけ、ダーク十三使徒!
 戦え、ダーク十三使徒!


「ああっ! 導師! どうしたことか、正義の味方みたいなナレーションされてます!」
「もーいい……俺は帰って寝る……」


「結局、僕は何のために……」


 後日談。
 ハイドと葛田、弥生たちは、この日の騒動でセバスゥの毒牙にかかったダーク十三使徒の
構成員を正気に戻すのに2週間かかったらしい。


 後日談その2。
 次の日もセバスゥナガセは元気でした。
 YOSSYは「頼むからアレを何とかしてくれ!」とマルティーナに泣きついたとかどーとか。


 後日談その3。
 篠塚弥生教師は、ギャラの内申書に「社会不適合者。絶海の孤島とか南極の氷の中とか
両界残高校とかの二度と帰ってこれないような場所への収容を要す」と書き込んだそーな。

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 どもども、「何故かまたセバスゥナガセでございますっ!」なギャラでございます。
 おかしいなー……当初の予定ではギャラのダークっぽい話を書こうとしてたはずなんですが
……これも運命とゆーやつでしょうか(爆)
 むぅ、奥が深い。

 あ、そうそう。突っ込まれる前に、一言言い訳を。
 携帯電話を切ると本当に「つー、つー」とか音がするのかどうか、私は知りません(爆)
ウチには普通の電話しかないもので(笑)
 そこの所の突っ込みは無用に願います(汗)

 それでは。