Lメモ:『第一保健室業務日誌・中編』  投稿者:でぃるくせん
某月某日、水曜日  天気(雨天)

『朝、ことも無し
  昼、ことも無し。
  放課後、ことも無し。
  …………奇跡だ!!!!
  正直なところ、明日からの揺り戻しが非常に怖い。
  特に、昼休み恒例の光景が無かったのが幸いした。風紀委員に指示してマルチに買
い出しを求める連中を軒並み連行したのが功を奏したか?  セリスらはどことなく寂
しそうだったが、それは問題無し。風見も事前に赤十字ごと爆破しておいたので、何
事も起こせず。まさか一般生徒の仕掛けた爆弾に敗れるとは思うまい(笑)
  暇だったので、保健室内の整理をする。…………なんというか…………いや、何も
言うまい。ただ、千鶴先生、この業務日誌をご覧になられる事があれば、せめて他人
に任せていかれる前に、色々片づけておかれる事を御忠告いたします。
  …………しかし、何も問題が起きないとSS使いもリーフキャラも誰も保健室に来
ないというのは、なかなかに話にしづらいものがあるなー。

本日の事故  12件
      死者  0名
      負傷者46名』


  カリカリ、カリカリ。第一保健室の中に、鉛筆の音が響く。モニターからは耕一先
生の授業の音声。ノートにつらつらと字が綴られていく。
「はぁぁぁ、なんか久々に真面目に勉強できるな」
  幸せを噛み締め、ディルクセンは涙した。今日はにじみ出る胃酸の量も少ないよう
だ。胃痛も普段ほどではない。
  …………既に慢性化しているようである。
  とにもかくにもそれはさておき。
  きーんこーんかーんこーん…………
  そして、何事もないままに授業が終る。これで今日の授業はすべて終わりだ。
  もっとも、部活が終るまでは、この教室を離れるわけにはいかない。今日一日何事
も無かったといっても、SS使い同士の大きな衝突はなかったというだけで、いつも
通りの小競り合いによる犠牲者は出ていない訳ではない。部活中に怪我して担ぎ込ま
れる者もいるだろう。
「だが、いつもを考えればこの程度、何事も起きていないに等しいというもんだな」
  保健室の窓からさっそく部活動が始まりつつあるグランドを見やって、ディルクセ
ンは苦笑を浮かべた。しばらくぼーっと外の様子を眺める。格闘部を筆頭に、サッカ
ー部や野球部、ラグビー部といった面々が(SS使いがいる、いないに関わらず)ラ
ンニングを始めていた。取り敢えず、今日は爆発の閃光も無ければ必殺技の絶叫もな
い。
「平和だ………………」
  再び涙を流して幸せを噛み締めるディルクセン。
  って、こればかりで終ってもどうしようもない訳で。取り敢えず、せっかく平和な
んだし普段忙しくて出来ない事をやってしまわなければなるまい。
「さてと、なにからやっていくとしようか…………」
  きょろきょろと周囲を見渡す。何から片づけるか?
「…………そう言えば、薬品の収納場所が無茶苦茶だったな。そこから片づけていく
とするか」
  独語し、薬品棚を開ける。この第一保健室、学園の規模に比例して非常に広い。多
数のベッドや医療設備も揃えられており、いざというときは野戦病院の役割を果たす
ほどだ。何故か拘束具(それも対鬼用)があるのはほっとくとして、当然の事薬品の
量も種類も半端でなく多い(その割に、緊急時以外は千鶴先生が一人でちょこんとい
たり誰もいなかったりたまに(=しょっちゅう)耕一先生が拉致られていたりと、い
ろんな意味でやはり魔空間)
「いや、医薬品の量が多いのは分かる。それはわかるんだが…………なんで化学薬品
がここにあるんだ?  濃硫酸だぞこれは?」
  様々な医薬品の整理をしていたディルクセンが、濃硫酸の瓶を取り出して呆気に取
られた様な声を出す。保健室になんで濃硫酸が?
「…………まさか、硼酸と間違えて…………とか…………ははっ、まさかな」
  そんな事したら失明してしまうではないか、いくら千鶴先生でもそこまで…………
いや、千鶴先生だからこそ?  いやいや、大体千鶴先生が薬品納入してるわけじゃ無
いし、いやいやいや、では誰がこんなものを保健室に間違ってため込むというのだ。
  冷汗にぐっしょり濡れながら、ディルクセンの薬品棚整理は続く。その後見つかっ
たものはというと、
「…………まぁモルヒネはわかるとして(他に麻酔はいくらでもあるだろうに……)
塩酸、青酸ナトリウム、アジ化ナトリウム、三塩化リン、その他もろもろ。何に使う
と言うんだ、こんなもの?  いや、それより入手経路はどこなんだ」
  ディルクセンは思いきり頭を抱えた。だがそうもしていられないので、取り敢えず
危ない薬品とそうでない薬品とに分けて直し込むと、さらに次の薬品棚を開けて、
「(ガラッ)……………………………………………………………………(バタン)」
  無言で閉じた。中身は各自想像の事。ヒントとしては、繁華街の裏路地なんか歩い
ていると、マル暴風の兄ちゃんが捌いてくれる白い粉、ってところだろうか?
「俺は何も見なかった、俺は何も見なかった、俺は何も見なかった…………」
  既に怯えの表情入ってます。
  って言うか、ここまでくると本当に千鶴先生が管理しているのかどうかも怪しくな
ってくる。それに、白い粉といってもそれが本当にヤバいクスリなのかどうかは分か
らない。
「考えてみると、千鶴先生しょっちゅう保健室開けて出ているしな。普通の生徒は入
ろうとは思わん所だから、絶好の隠し場所といえば隠し場所だ。一度調べてみる必要
があるかもしれんな」
  うんそうだ、そうに違いない。納得。無理矢理気を取り直して別の棚を開ける。
  そこには。
「………………料理道具とか食品とか………………他にも得体の知れないものが……
…………」
  そういえば、保健室なのになんでシステムキッチンがあるんだろうとかわざと気が
つかないふりしてた疑問は一杯あったんだよな〜。あははははは。
「…………千鶴先生、人(それも生徒)に部屋任すんでしたら、きちんと見られてま
ずいものは片づけていってくださいよ…………って、おおっ?」
  泣きながらそれでも中身を片づけていたディルクセンの視線と手が止まる。涙が滲
んだ両の目を制服の裾で拭い、ある期待を持って奥の方からその瓶を取り出した。ラ
ベルを確かめる。間違い無い、これは。
「『鬼殺し』…………いや、なんというかなぁ」
  期待に違わず、愛知名産の日本酒『鬼殺し』だった。しかし、鬼が『鬼殺し』の銘
柄の酒を飲むとは、千鶴先生も趣味が悪い。いや、耕一先生に飲ませてべろべろにし
たところで襲う算段なのか?  ほとんど飲まれてないみたいだし…………うん、大丈
夫。
「…………………待て。何を自然に、校内で一升瓶の栓を開けてコップに並々と注い
でいるんだ、俺は?」
  今まさに口をつけようとしたところで、独り言とともにディルクセンの動きが止ま
る。『今日は何事も無かった』という開放感が、今の今まで彼からいつもの冷静さを
失わせていた。冷汗を垂らしながら、完全に硬直する。
  しかし。
「コップ一杯くらい…………悪くはない…………よな?」
  正直なところ、呑みたかった。未成年の飲酒は違法です。その上校内で呑むなど、
風紀委員でもあるこの俺が!?  いや、今は保健委員だからして…………いやいやそ
ういう問題じゃないだろう。しかし、俺の眼鏡にはしっかり酒が波並みと注がれたコ
ップが映っている。
  さりげなく酒飲みだったりする彼は、珍しく激しい葛藤に襲われていた。むぅ、と
コップとにらみ合う。さて、どうしたものか。人気はないし…………一杯だけなら?
  パシャッ。
  その時、天井辺りで何かが光った。
「………………」
  無言で光の放たれた方角を見る。
  天井のパネルの一部が外れ、デコイの顔が覗いてがいた。
「………………良い絵が取れました」
  ぐっと親指を突き出し、にこやかに笑ってデコイが言う。対するディルクセンは、
「それは良かったな」
  とにっこり微笑んだ。思い切り引きつってはいたが。そして、おもむろに懐に手を
突っ込む。
「…………その写真!!  冥土の土産にくれてやろう!!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
  ワルサーPPKを取り出して実弾乱射。天井にぽこぽこ小さな穴が空き、デコイが
素早く中二階から気配を消した。ディルクセンは舌打ちすると、デコイを追って保健
室を飛び出していく。
  …………頭に血が上っていて、からかわれている事にはちっとも気づいていないら
しい。

  ちなみにこの後。盗撮写真疑惑に関する風紀委員会の追求が止んだというのは、抜
群の秘密である。




某月某日、木曜日  天気(雨天)
『今日も大雨だ。
  みな気分が滅入るのか、雨の日は事件が少ない。歓迎すべき事だろう。ちなみに俺
は、事件が続出する晴れの日の方が気分が滅入る。
  朝、風紀委員会による一斉授業放棄取り締まりが行われる。抵抗した授業放棄者に
負傷者多数。
  昼、昨日と同じ対策が取られるも、マルチはともかく風見には同じ手段は通じず。
突破された挙げ句に第一保健室が報復に襲撃される。予想された襲撃だったため、大
火力でこれを撃退する事に辛うじて成功。
  …………だから、何かが違うような気がしないでもない。
  放課後、雨いまだ降り止まず。オカルト研究会で爆破事故。負傷者無し。
  色々あって、重傷を負う。

本日の事故  20件
      死者  0名
      負傷者102名』


「プアヌークの邪剣よ!!」
「真・魔皇剣!!」
「ちょっと、あんた達、いいかげんにしなさいよ!」
  業務日誌を書いている最中、外からそんな叫びと爆音が聞こえた。
  近い。っていうか、第一保健室の前か?
「………ええい、うっとおしい!!」
  ガタンと音を立てて立ち上がり、ディルクセンは壁にかけた制服から『丸い何か』
を取り出した。かちんっ、と音を立てて安全ピンを引き抜き、力任せに扉を開いて、
「やかましいぞっ、お前ら!!」
  予想通り互いに技をぶつけ合っているハイドラントと悠朔目掛けて投げつける。そ
して開いた時同様素早く扉を閉めた。続いて爆発音がする…………が、悲鳴は上がら
ない。
「やはり、あの程度では仕留めるのは無理か」
  報復すらないところを見ると、ひょっとすると気づかれてさいえないのかもしれな
い。それはそれで、かなり悲しいものがある。
「…………一応確認しておくか」
  かなり憮然とした表情で、彼は再び扉に手を掛けた。一応拳銃を抜いて、予想され
る反撃に備える。やや緊張気味に、扉を開いて上半身を外にだす。
「プアヌークの邪剣よ!!」
「真・魔皇剣!!」
「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
  ディルクセン、瞬時に黒焦げになる。
  もっとも、攻撃を放った方のハイドラントと悠朔(ついでに、巻き添え食った綾香
も)も、少なからず煤けてはいたが。さらに言うと、周囲にはやはり巻き添え(ハイ
ドvs悠朔の方)を食った一般生徒達の遺体が死屍累々と横たわっていたりする。
  ともかくけほけほっとドリフっぽく黒煙を吐き出して、ディルクセンはそれでも傲
然とした態度を崩さず三人組を睨みすえた。そして一言。
「暴れるんなら、外でやらんか」
  …………辺りを一瞬静寂が支配した。気温も下がったような気がする。やや間をお
いて、ようやくの事ハイドラントと悠が口を開く。結構殺気の篭もった声音だった様
なのは、多分気のせいではないだろう。
「いきなり手榴弾投げつけてきておいて、言う事がそれか」
「俺達だけならまだしも、綾香も巻き込まれてはな。けじめはつけてもらおう」


  そんなこんなで、消し炭になったディルクセンが保健委員に発見されるのは、それ
から一時間後の事であった。


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作「そんなこんなで、第一保健室業務日誌中編です」
ディル「なんか、保健委員とそこはかとなく無関係なような気がするのは、気のせい
か?」
作「気のせい!(断言)  そうじゃなければ国家的陰謀です!」
ディル「ならば、木曜日がどうにもパワー不足なのも?」
作「それは国際コミュ●ストの陰謀!!」
ディル「マッカーシーか貴様は(汗)」
作「だって、保健委員ネタだけで動けるかい、いくら保健室勤務だからって(笑)」
ディル「まぁ、それは確かにな。だが、後編はちゃんと保健委員するぞ。俺の立場が
  無い」
作「うぃうぃ、頑張れ〜♪」
ディル「お前が書くんだろうが!?  ったく、尻を叩かれんと動かんからな、こいつ
  は」
作「へいへいほ〜(飽くまで無責任)  では、時間もよろしいようで」
ディル「期待せずに待っていていただきたい。失礼する」