風紀動乱Lメモ:『校則による拘束の構図』後編 投稿者:でぃるくせん

「あ、部長、おはようございます〜」
「よっ、kosekiじゃねぇか」
 ぺこりと頭を下げるkoekiに、ジンは軽く手を上げて応じた。その姿にふと
違和感を感じ、kosekiは軽く首を傾げる。
「今日は空から登校じゃないんですね〜」
「ジェットスクランダーの調子が悪くってな。今日にも柳川センセに修理して
もらわねぇと」
 このままじゃさすがにDセリオと戦うのもままならねぇ、と嘆くジンに機動
性が断然違っちゃいますよねぇ、と相槌を打ちつつ、kosekiが道を空けようと
して、
「お〜い」
「っ…………あだだだだだだだっ!?」
 彼の額に黒い穴が開いた。
「チェック抜きで通しちゃダメだよ〜、kosekiくん」
 額を抑えて転げまわるkosekiの向こうから、硝煙たなびくライフルを手にし
た松原陽平が現れる。普段と変わらぬ笑顔とは裏腹に、声がやたらとつっけん
どんなのは気のせいではないだろう。
「……実弾で突っ込むのは酷いと思います〜、陽平さん」
「どーせギャグだから死なないし、それだけ分厚い装甲持ってるんだから、こ
うでもしないと非力な僕じゃキミに突っ込めないからね★」
 『どーせギャグだから』という部分に力を篭めてkosekiの抗議は封殺。即座
に彼のことは記憶の端に追いやって、取り巻きを引き連れジンを取り囲む。
「ジン・ジャザム先輩。失礼ですけど、持ちこみ禁止物と頭髪のチェックをさ
せてもらいますね?」
「持ちこみ禁止物のチェックって、要するに武装解除だろ? やなこった。」
 もちろん、それにやすやすと応じるジンではない。もともと熱血漢で情に厚
いと熱血ものの主人公そのものの性格をしたジンのことだ。高校進学直前まで、
不良だった経歴もある。今目前に立つ下級生のような、数や権力の上にふんぞ
り返って偉そうな態度をとる類の人間は好きではない。
 だが、陽平の口から続く言葉は、
「あ、先輩は武装解除しなくても良いですよ。先輩とかkosekiくんとかみたい
に、体内に武器を内蔵してる人は武装解除する必要はないって決まったんです」
 そう言って後ろを振りかえると、ちょうど目前を通り過ぎようとしていた人
物をジンに指し示す。
「だって、それ言い出すと、例えばこの人の腕とか足とか切り落とさなくちゃ
いけないですし」
 陽平の指し示した人物は、ジンにとっても大いに納得できる例示。
「……なるほどな、納得だぜ」
「でしょ?」
「……あんた達、私のこと人間凶器だとでも言いたいの?」
 もっとも、例に挙げられた当人にとっては極めて納得の行かないものだった
ようだが。
 その人物――即ち坂下好恵の怒りに満ちた詰問に、二人は素朴に意外そうな
表情を坂下に向けた。当然、その後に続くのはあまりに致命的な台詞。 
「そーじゃねぇのか? 女子生徒A」
「凶器って言うより、ジン先輩の向こうを張って人間兵器って気もしま」




 …………みなまで言い終わることなく、鋼が打ち砕かれる音と血肉が弾ける
音が続けざまに辺りに響いた。




「…………やはり、あいつに関しては腕と足を切り落としておくべきかな?」
「って言うか、弟さんをきちんと制御してください部長……」
 校門前に転がった肉塊と鉄屑を遠目にして、ディルクセンと鈴木はかかる感
想を漏らしたと言う。





「って、待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!! そう簡単に鉄屑に変わる
ほど俺はヤワじゃねぇぞってー思いたいとこなんだがガン●リウムγの装甲が
紙みたいにべこべこ凹むってどんな拳してやがりますか坂下っ!? ってぇか
連邦の坂下は化け物かっ!!」
「やっぱり人間兵器もしくはスーパー地球人……」
「(きっ)」
「ひぃぃぃぃっ」
 ジンと陽平の惨状を目前にしたkosekiがおずおずと口走りかけるが、坂下の
ひと睨みでなにも言えなくなった。
「あー。ジン、生きてたんならさっさと頭髪チェック受けれ。お前の髪、よも
や整髪料を使ってないとは言わせんぞ」
 なるべく坂下とは目をあわさないようにして、なおかつ迂回ルートでディル
クセンがてくてくとジンに歩み寄った。手と足が同じ動きをしているのは多分
気のせい。
「先輩、もう行っても構いませんよね?」
「もちろんです(こくこく)」
 坂下の問いに答える姿が妙に機械的なのも抜群の秘密だ。
「残念だったな。俺はムースとかヘアスプレーのたぐいは一切使ってねぇよ。
疑うんならほれ、触って見ろよ」
 やはり坂下から微妙に視線を反らしてのジン。これ以上下手なことを口走る
と、命に関わると直感したらしい。なんとなく日頃のbeakerの苦労が偲ばれて、
ジンは心の中密かに同情の涙を流した。
(あいつ……ひょっとするとマゾなのかもしれねぇな……)
「それがお前の同情の涙か、おい」
「電波使いでもねえ癖に、人の心の呟きを読むんじゃねぇっ。あと触れとは言
ったがくしゃくしゃにしろとは言ってないぞ!」
 目前で囁かれた言葉ではっと感傷から我に帰り、ジンは髪の毛をわしゃわし
ゃと掴むディルクセンの手を振り払った。髪の毛を触ると、かなり遠慮なくい
じくられたらしく程よくぼさぼさになっている。
「いや、お前口に出してたが……良かったな、坂下に聞こえてなくて。ま、そ
れはどうでもいい。恐ろしいことだが、お前の髪は本当に地毛のようだ。どん
な髪質してたら、自然にそんなパンク入った髪形になるのかわからんが」
「だから言ったろーが。じゃ、俺は行くからな」
 もみくちゃにされた髪の毛をなおそうと悪戦苦闘しながら、ジンはさっさと
その場から立ち去ろうとする。だが、ディルクセンは彼のその動きを制するよ
うに先に回りこみ、語気を強めて告げた。
「まて。だがな、お前のような髪型をされていては、周囲の生徒に示しが付か
ん。ストレートパーマを当てるか、あるいは丸刈りにするか…………どちらか
を選んでもらわなくてはな」
「ふざけんな、なんで貴様にそんなこと決められなくちゃいけねえんだ。大
体頭髪だの不要物の持ちこみだのって言うんなら……」
 苛立たしげなジンの視線、ディルクセンの顔面から額へと移動。
「お前のそれはどうなんだよ?」






 あまりに痛い、一拍の間が周囲に流れた。
 もちろん、ほんのわずかの間のことだから一拍と言うんであって。次の瞬間
には、
「なっ、なっ、なななに抜かしよんねんこのロボ公! どうせあれやろ、ワレ
がカバンん中見せられへんの、中に『千鶴命』とかステッカー貼ったカンペン
あったりするからなんやろが!!」
「いやっ、そのっ……って、そんなもんあるかぁっ!! お前こそヅラ着けて
るくせして他人の髪型に口出ししてんじゃねぇっ!!」
「やかましいっ、俺はヅラとちゃうゆうとおやろが!! 大体さっき動揺した
んはなんやねん!」
「あっ、お前だってヅラって言われて動揺してたろうが!」
「んやとぉっ!」
「なんだ、やるかっ!?」
 やった場合、勝負は見えているというより率直にコンマ秒殺。
「部長、先輩、やめてくださいよ〜〜」
 ごごごごごごごごごご…………
「放せkosekiッ、邪魔をするな……って人振りまわすなやどアホッ!」
 kosekiがディルクセンを羽交い締めにして、ぶんっとジンから引き離した。
173センチが150センチに振りまわされるという絵には威厳もへったくれ
もない。
「笑うなよシャ●、兵が見ているっ!!?」
 ごごごごごごごごごご…………
「ガ●マ大佐はもっと髪の毛がふさふさですよ〜〜」
「…………kosekiっ、絶対貴様は殺すっ!!」
 ごごごごごごごごごご…………
「……大体なんだっ、さっきからごごごってうるさい……」
 ほとんどやつあたり全開で怒鳴り散らすディルクセン。苛立ち紛れに先ほど
から周囲に不快な騒音を撒き散らす『なにか』をへこましてやろうと頭上を見
上げて、
「なっ、ななななっ!!?」
 絶句した。
 そりゃ、エンジン部に深深と矢を突きたてた戦闘機が、すでに回避不能なま
でに接近していれば自失状態になりもするだろう。
「その割には音が大きくなってくるようには見えなかったのに!?」
 掲示板じゃタグが使えないから、って言うか音はそもそも見えるもんじゃな
い。
「あー……こりゃ回避できねぇな」
「部長、すごく冷静ですね〜……」
「ジンっ、貴様なんでそんなに平気でいられる!?」
「いや、だってよ……」
 錐もみ状態の戦闘機(すぐにYF−19と知れた)が目前に迫る中、ジンは
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて見せる。 
「俺はこれくらい屁でもねぇし」
「あーーっ、汚いぞこのロボ介ッ!!」
「カミカゼだぁぁぁぁぁっ!!」
 刹那。



「…………生徒指導部にっ、栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




 閃光。





 爆音。






 特攻機が突っ込んできた直後の空母サラトガ飛行甲板のような騒ぎに包まれ
ている校門前から少し離れた場所、時計台。
「……これは、あとでまた追いまわされますねぇ」
「それより、修理費がいくらかかるかが心配だな、私は」
 大騒ぎになっている校門前を高所から見下ろして、つい先ほどまで機中の人
だった二人―――シッポとシャロン―――は深く苦しいため息をついた。
 うざったい検問をあっさり通りぬける事ができる妙手とYF−19で空から
登校を図った彼らだったが、敵もさるものひっかくもの。校舎の屋上に対空部
隊(要するにレミィ)を配置していたのがシッポの誤算だった。
 レミィが満を持して放った那須与一も顔負けの一矢は、見事YF−19のエ
ンジンを破壊。続く一矢が右主翼をももぎ取り、当然のごとく平衡を失った機
体はパイロットの制御を離れ…………
 かくして二人は今ここにいる。
「しかも、パラシュートが尖塔に引っかかって降りるに降りれないとは……」
 首尾良く地面に降りる事ができたシャロンに対し、シッポは時計塔に宙吊り
状態だった。
「……人、呼んで来ましょうか?」
「……なんとか自分ではいあがりたいけど、さすがに自力じゃむりかぁ」
 しかたない、悪いけど誰か呼んできてくれ、と口にしかけたシッポ。だが幸
いな事に、その『誰か』は彼とシャロンが求めずともあちらからやってきた。
「ワタシが手伝って上げるヨ」
「お。ありがとな、レミィ」
 シッポの頭上、即ち屋根のほうから聞こえた声に、シッポは天佑を得た思い
がした。
 だが女手一つでは彼の体を引き上げるのは無理かもしれない。いやまぁミヤ
ウチ星人だし大丈夫とは思うけど。
 そんな事をふと思ったとき、さらなる救いの手があらわれた。
「レミィが手伝うんなら俺も手伝ってやるよ」
「あんまりありがたくないいいざまだけど、とりあえずありがとな真藤」
 ……礼を述べてから、壮絶な違和感。
「なぁ、シャロン……私は今、誰に礼を言った?」
 返事は、ない。
 おそるおそる上を見上げると、
「Hi,シッポ! 御用デス♪」
「ここに引っかかりさえしなきゃ、逃げられたのになー。残念だったな、シッ
ポ君」
 屋根の上でパラシュートの綱を掴んでいるレミィ&真藤誠二。時計台の窓と
いう窓から、銃だのネットだのを構えた風紀委員の群れwith縄で縛られた
シャロン。
 すでにピンチを超越して拘束済みっぽい情景だった。
「なぁ……私、このままここにぶら下がってるほうが心地良いから、そのまま
お引取り願えないか?」
「さっき助けを求めてたのは誰だっけ?」
 真藤の笑い交じりの質問に、
「それはほら、なかったことに」
 シッポは目を背けながら返答。
 当然、真藤の回答は。
「ダメ。助けてやるから、大人しく捕まれっ!!」
「お断りだぁぁぁぁぁぁっ!!」
 捕まれば何をされるか分かったものではない。特捜部、かなり恨まれてるし。
 いちかばちか、パラシュートの綱を切って地上へ落下、そのまま逃げ出そう
として、
「あ、ちなみに綱を切って逃げたりしたら……」
「……Hunting★」
「やめとこう(即答)」
 ★マークまでつけるかレミィ、と言う言葉は喉の奥で飲み込んで、シッポは
はふぅと深いため息をついた。



 シッポ、シャロン両名、反省房に二日間収容さる。










 戦い終わらず日が暮れる。
 いや、まだ朝だが。
 結局のところ。
「……全然ダメね、非効率的だわ」
 広瀬の言葉が状況を見事に言い表していた。
 時計は既に八時二十分を指している。しかし、ここまでで持ち物・頭髪検査
が終了している生徒は全体の四割まで。あとは未だに校門の外で長蛇の列を作
っている。
「非効率的というよりむしろ、非生産的ですね」
「……てめぇらの意見に同意するのは癪だけど、まぁ認めるしかねぇな」
 とーるが冷静に評論し、永井がしぶしぶと言った様子で首肯する。
 要するにお手上げだった。
 ちなみにディルクセンとkosekiは全身大火傷で、陽平は全身打撲で、XY−
MENはあのあと西山英志と一戦やらかして現在まだ戦闘続行中、永井もFo
olのギャグのダメージで今も体のあちこちに氷を着けていたりする。
「けどな。今更校則を撤回する気はねぇぞ。校門での検査は止めるがな、毎日
HRに、いくつかのクラスを無作為に選んでガサ入れするってやり方に変える。
やり方を変えるだけだ。撤回はしねぇ。絶対にな」
 肩を怒らせて言う永井。
 だがその姿にどこかしら不自然な物を感じ取り、とーるは自分の推論が正し
かった事を再確認した。
「……指導部にはこれも予定通り、という事ですね」
「……なんのことだかな」
 永井は不機嫌そうにとぼけて見せる。
 彼も忍びだから、そうした咄嗟の演技は下手では無い。だが、それでもディ
ルクセンや広瀬に比べればいささか見劣りがした。この二人の狸ぶりを目にし
て来たとーるから見れば、永井の一連の言動はいかにも芝居がかって見えた。
「まぁ、そっちがなにを考えてるのかはこの際どうでも良いけどね。私はどう
せ指導部の決定には逆らえないんだし」
 今はまだ、ね。と広瀬は内心付け加え、次なる言葉をつなぐ。
「もう少しお手並み拝見させてもらうわ。本格的に動き出した指導部が、日頃
叩いてる大口に、どれだけ見合った功績打ちたててくれるか……楽しみね」
 挑発的な、広瀬の言葉。
 そんな広瀬の言葉に対し、永井もまた嫌らしい笑みを顔面に貼りつけ、たっ
ぷりと毒気を含んだ言葉を吐き棄てる。
「なに、お前が気にかけるような事はなにもねぇよ。これからは俺達生徒指導
部が楽させてやるからよ、てめぇはせいぜい自分の演技力でも磨いるんだな」
 瞬間、広瀬と永井の間に殺意もあらわな緊張が走った。
 一瞬の間だけ。
 何故なら、次の瞬間には、


「うおおおおぉぉぉぉぉっ!! 西山っ、行くぜぇっ!!
 ビィィィィストッ・キャノンっ!!」
「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁえぇぇぇぇぇぇぇぇぇでぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 ちゅどーんっ、どかーん。




「…………広瀬さん、永井君、大丈夫ですかー?」
 さっさと待避していたとーるの呼び声に、
「…………ふふ、うふふふふ、XY−MENくん罰金刑確定☆」
「踏んづけてった…………?」
 焦土の真ん中で、力なく広瀬と永井が応える。
「きゃぁぁぁぁぁっ、わたしの御館様がっ!?」
「…………私の?」
 ようやく校舎から戻ってきた貞本が、半ば地中にめり込んだ広瀬を見てニナ
のごとき叫び声をあげたり。

 どうやら、学園は今日も平和のようであった。






<予断に満ちた余談>

「ほらっ、入れ!」
「あだだっ、乱暴にすんなや!」
 両脇を固める生徒指導部員に無造作に突き飛ばされ、夢幻来夢は反省房の冷
たいコンクリートの床に転がった。来夢の抗議に生徒指導部員が答える事無く、
背後で無情に鋼鉄の鍵がかけられる音が響く。
 来夢は俊敏に床から飛び起きると、すぐさま鉄格子にしがみついて遠ざかる
生徒指導部員にむかって叫んだ。
「おいっ、さっさと出せや! オレがなにしたっちゅうねん!」
 その叫びに反応し、来夢を護送してきた三人の生徒指導部員が能面のように
冷たく、無表情な顔を彼へと向けた。
「校門を避けてフェンス攀じ登り、密入校しようとした」
 右の指導部員が言う。
「そこを側面警戒の風紀委員に見つかって追い回されたとき、追跡の風紀委員
6人をぶっ飛ばして振りきろうとした」
 次に左の指導部員。
「逃亡中に、炭化して校門前に転がっていたディルクセンさんを踏みつけた」
 真ん中の風紀委員が締める。ちなみにこれが一番重い罪であるらしい。さす
がは個人崇拝の独裁組織、スターリンも真っ青だ。
『以上、なにか反論は?』×3
 ちなみにこの三人もあちこちよれよれ。無論来夢にやられたクチである。
「…………あらへん」
 これ以上抗議してもやぶ蛇と悟り、来夢はふてくされて先ほど起きあがった
ばかりの床に仰向けに寝転んだ。それに忌々しげな視線を送り、舌打ちして立
ち去ろうとした指導部員達だったが、ふと思い出したようににやりと陰険な笑
みを浮かべる。
「ああそうだ。夢幻、美也さんのはからいに感謝しろよ。部室にお前の席も用
意してくれているそうだからな」
「は? なんのことや?」
 話が呑みこめない来夢の問いには答えず、生徒指導部員達は今度こそその場
を立ち去ってしまう。
「おいっ、思わせぶりな事言い残してかんと、全部ゆうてかんかい! なんや
ねん、部室にお前の席って! 生徒指導部に入れとでも言うんかい!! おい、
帰ってこいや!」
「うるさいのぅ……おちおち寝取れんわい」
「げっ…………その声、もしかして……」
 最近新たに加わった、来夢最大の敵の一人。
 いや、間違い無く最大の敵だろう。如何に女性的な(というより女性そのも
のの)容姿をした来夢であっても、十六年の人生の中で『男性である事を認識
したうえで』襲われる(もちろん違う意味で)というのは体験した事が無かっ
 た。
 …………つい最近までは。
「…………おお、そこにおるんは来夢ちゃんかっ!」
 それまで気づかなかったこの牢獄の奥に、熊のような影がある事に来夢はよ
うやく気づいた。何故もう少し早く気づかなかったのかと、激しい後悔が彼を
襲うがここまで来てはもうどうしようもない。
「…………そう言えば、美也とかゆうんは薔薇部のマネージャーかなんかやっ
たな……」
 と言う事は、席が用意された部室というのは紛れもなく薔薇部。
 そして、彼がこの目前の男と相部屋にされたのは、疑い無く国家的陰謀。
「ぐっふっふぅ…………暗い、黴臭い牢獄の中。何故かワシの手には鞭だの蝋
燭だの三角木馬だのがあるしの」
 そう言って彼、平坂蛮次は薄暗い灯りを遮るようにしてゆらりと立ちあがっ
た。恐怖に満ちた表情でずりずりと背後に下がる来夢を見つめ、彼はゆっくり
と間合いをつめる。
 やがて来夢の背が、カタンと鉄の軋む音を立てて、鉄格子にぶつかった。
「ぐっふふふぅ、あきらめんしゃい来夢ちゃん。逃げ場は無いぞぅ……」
 そして平坂はにぃっと笑みを浮かべる。顔にかかった影がやたらと怖かった。
 ちょっと遺作入ってたし。
「しかし、このシチュエーション…………萌えじゃな。最高じゃぁ☆」
「むさくるしい男が☆使うなやぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 想像するだに恐ろしい光景、それを目前にした来夢の恐怖(むしろおぞまし
さ、と言った方が当たっている気もしないでもない)や如何ほどのものか推し
て知るべし。
「そうじゃな、前置きはほどほどに……来夢ちゃん、ワシと愛に充ちた時間を
すごすんじゃあっ!!」
「来んなやボケぇぇぇぇぇぇっ!!?」
 薔薇の香りあふるるバトル、開幕。
 ちなみに、襲われる側の来夢の表情が、かすかに悦びを孕んだものであった
事は語られる事の無い真実である。
「嘘つくなやどアホぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 終劇。ちなみに嘘では無く余談である(強弁)
「待てやコラぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 終劇なんだったら。




                          < 終 劇 >

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 ども、でぃるくせんです。何ヶ月ぶりかで動乱L再開。
 えー…………58.9kb?
 なんかとりとめもなく……(汗)
 むぅ、本来頭の岩下さんとディルのやりとり以外にシリアス部分入れるつも
りはなかったのになぁ……
 それだと話が全然進まないと言う事実に気づきあっさりと方針転換、結果こ
のようなよくわからない代物に。しかも話が結局ほとんど進んで無いし(爆)

 で…………各方面にごめんなさい悪気は無いんです一部に報復が含まれてた
りしますがそれはきっと気のせいかもしれないですから忘れてくださいきっと
就職活動で疲れてるんです国家的陰謀の臭いもします敵は国家だ(断言)

 『動乱』に関しては、近いうちに全体連絡用掲示板に書きこみしますです。
 そろそろはっきりさせないと行けない事もありますし……
 ふにふに、がんばろー(気抜けした気合)