「………えっと、この辺なんだよな?」 『あ、あれでは?』 パシーン、パシーン 目の前にある建物の中からよく響く音が聞こえてくる。 「う〜ん、懐かしい音だ」 『浸ってないで早く行きましょう』 「了解」 Lメモ 「懐剣誘道」 「すいませ〜ん」 「ん?東西じゃない、どうしたの?」 東西が、控えめに声をかけた相手は、ティリア=フレイ、仮眠館の居候にして、剣道部の顧問教師。 「あ、柳川先生に頼まれて、えっと…………」 『九条和馬と言うお方に薬を届けに参りました』 東西の続きを『命』が続ける。 「ああ、ご苦労様、でも、東西………相変わらず惚けてるわね?」 ティリアが苦笑する。 「はは、僕ですから」 笑いながらティリアに応える、東西。 その時、道場内がにわかに騒がしくなる。 「どうしたんですか?」 道場内を見渡すと、一ヶ所に人が集まりつつある。 「…………………またやったのね……丁度良いわ、東西、薬貸して、で、貴方は水汲んできてくれない?」 「水くらいならすぐに出せますが………」 そう言うと、懐から紙コップを出し、「水の精霊」を召還後、水を満たしていく。 「……貴方、いつも紙コップなんて持ってるの?」 ティリアが呆れる。 『それよりも急を要するのでは?』 『命』が聞く。 「ま、大丈夫でしょ?いつものことだし…………」 『「?」』 ティリアが、人混みをどかせて、中央へと向かう。 東西もそれに付いていく。 かくしてその中心には……………… 「ははは、またやっちゃった」 青い顔しながら、いやに、明るい口調……… 人混みの中心を血に染めていた張本人、九条和馬が、東西の隣で座り込んで話している。 「薬届けてくれてありがとう、でも、柳川先生はどうしたの?いつも直接届けてくれるのに」 まだ、口元に残る血の後を、濡れた手拭いで拭きながら東西に問う。 東西がその応答を口に仕掛け、頭をかく。 『ジンさんと、新しい研究に没頭してしまったために今日に限り代理で来させていただきました』 『命』が、丁寧に説明する。 「と言うわけです」 「ふ〜ん、ご苦労様」 その様子を九条が、可笑しそうに見る。 東西が、興味深そうに……と言うか、むずむずしている様子なのに九条は気が付いた。 「どうしたの?」 「え、あ〜懐かしいな…と思いまして」 その間も、東西は練習から目を離さない。 「経験者?なら、やってみる?」 「良いんじゃないの?もうちょっとしたら、いつもの試合が始まるから、やってみる?」 いつの間にか、近くに来ていたティリアが誘う。 「試合?」 「練習の最後にやる締めだよ、時々だけど部内での大会なんかもするよ」 九条が補足する。 「お邪魔にならないんなら……お願いします」 「なら決まりね」 ティリアが満足そうに頷く。 「って、YOSSYFLAMEさん……ですか?」 「おう」 YOSSYFLAMEが、にこにこしながら返事をする。 「みんな取り敢えず嫌がるんだよ、実力わからんSS使いは、困ったもんだ」 笑いながら説明する。 「退屈はさせないから安心しろ、SS使い相手と言うことでこっちも全力が出せる」 さっきから手足をぷらぷらさせている、 ついさっきまで付けていた枷「速度制御器」を外したことによる開放感からそうしているのだろう。 「さっきまでの速さを参考にしてると痛い目見るぞぉ」 きっちりと脅しを、楽しそうな顔でかけてくる。 (ひ〜〜〜〜ん) 東西は、背中に流れる嫌な汗すら止めることが出来ない。 「では、はじめましょうか」 「「はい」」 『………明らかに、役不足ですね……』 観客となっている『命』が呟く。 「よっしーさんが……ですか?」 その呟きを耳にした、八塚 崇乃が『命』に聞く。 『まさか、YOSSYFLAMEさんにとって、東西がですよ』 『命』が、YOSSYFLAME、東西から目を離さず、応える。 いま、二人の試合が始まった。 「さて、打ち込んでみなよ」 始まって早々、YOSSYFLAMEが東西の攻撃を促す。 「なんか……過剰に期待されてるような……」 呟きながら、間合いを詰め、面を狙いに行く。 「あ、かわされた……」 「と言うか、珍しく本当に剣道なんだな……」 『お二人とも一体なんだと思ってたんですか?』 『命』が引きつった顔で聞く。 「あ〜、怪しげな剣術」 「SS使いで、剣道って珍しいもんな」 『はぁ』 (普通の剣道が珍しい?) 「真っ正直な剣だなぁ………」 「YOSSYFLAMEさん、速い………」 「それが売りだからな」 YOSSYFLAMEが面の奥で笑う。 東西は、七回攻めている。しかし、そのどれもが切り結ぶことすらなくかわされる。 「踏み込みは悪くない、剣速も……まぁまぁ、が、フェイントがないからかわしやすい」 YOSSYFLAMEが東西に聞こえるように言う。 (つまり昔から進歩してないって事か?) YOSSYFLAMEの忠告に、苦笑する。 「じゃ、次はこっちからだな」 YOSSYFLAMEが間合いを詰める。 「!」 『!』 「お、今度はよっしーが動いた」 「端から見てても捉え辛いんだ、受ける側は本当に消えたように見える」 九条が面白そうに眺めている。 「面か、胴か………はたまた小手か、勘だけですね」 (消え………上!?) 東西からは本当に消えたように見えた。 ただ、上から嫌な気配がする、それだけで竹刀を上段の防御に回す。 パーン! 竹刀同士がぶつかる音。 即、距離をとる二人。 「あ、止めた」 『勘だけで止めましたね、いつものように』 「でも、距離をとったのは得策じゃない、と言うか失策だ」 YOSSYFLAMEが、先程よりもさらに速い動きで間合いを詰めて、 パァーン! 「面あり!一本!」 ティリアの声が響く。 「お疲れ、二人とも」 八塚が、二人に声をかける。 「ぷはぁ、YOSSYFLAMEさん、速過ぎ……消えたようにしか見えなかった」 面を外し、東西が唇をとがらす。 「何いってんだ、最初の一撃止めたくせに」 YOSSYFLAMEが苦笑する。 「勘に従っただけです、二本目は間に合いませんでしたよ」 「と言っても、二本目も一応動いてたじゃないか、身体が言うこと聞いてないんじゃないの?」 九条が、からかい口調で言う。 『まったく、運動不足です、東西は』 「しょうがないだろ、人を相手にするなんて久しぶりだったんだから!」 『命』にくってかかる。 『中途半端に素振りはやっていたようですが?』 くすくすと笑って、返す。 「学生で運動不足は頂けないわね」 審判をやっていたはずのティリアが東西の後ろに立っていた。 「先生、審判は?」 東西が問うと、試合をやっている方をちょいちょいと指さす。 先には、剣道部の部長が審判をやっている姿を認めることが出来た。 「彼に任せて来ちゃった」 はぁ〜〜〜〜 剣道部の三人が溜息をつく、 「ちょ、何よその反応は!」 「………先生、最後まできっちりやりましょうよ」 「ですよ、審判ぐらい」 「いい加減なんだから」 皆が肩を竦める。 「で、運動不足解消に入部しない?」 (無視かい!!) 三人が胸中で突っ込む。 「え〜と、いいんですか?兼部になりますけど?」 「いいわよ、今日も来てないけど、ティーも兼部してるもの」 (T−star−reverseさん、ここにも入ってたのか………) 『損はないと思いますよ?』 「ん、だな、じゃ、入部お願いします」 東西が一礼をする。 「ようこそ、剣道部へ」 笑顔で応えてくれる皆。 (彼、魔術使えるんですよね?) (精霊術とか言うの使えるらしいぞ) (なら、彼女を止めやすくなりますかね?) 東西に聞こえないように、ぼそぼそと呟く剣道部員が居たらしい。 ============================================ 東西 :と言うわけで、剣道部入部です。 『命』:どたばたの案は? 東西 :却下しました。 『命』:なんで? 東西 :剣道部、まともだから 『命』:(汗) 東西 :と言うわけで、剣道部の皆さん、よろしくお願いします。 えっと、普通の方々と良い勝負、SS使いの方々には大抵負けます。 『命』:弱いわね? 東西 :魔術使うとあらゆる意味で楽だし 『命』:FFの「赤魔導士」?使えないですね…… 東西&『命』:と言うわけで、またお会いしましょう。 99/02/25