二日目・朝……… 爽やかな朝、違う種類の学生服を着た二人の男女が歩いていた。 男の名は「東西」、連れの女の子は「武上 佐久夜」、そして、その頭の上にいる『命』、 「お兄ちゃん………しっかり歩かないと、って、危ない!」 「んあ〜、ぐぁ!?」 ガン! 『朝から寝ぼけながら歩くから………』 「お兄ちゃん、大丈夫!?」 朝からなかなかに騒がしいようである……… Lメモ 「一期一会・後編」 「ぜぇ、ぜぇ………お、おはよう……御座います……皆さん」 神凪 遼刃が「方向音痴」の能力全開にしていたために、いつも通りの時間に登校してくる。 「おはよう、神凪さん、今日もセーフですね」 「おはよう、神凪お兄ちゃん」 『おはよう御座います、昨日はお世話になりました』 皆、それぞれに挨拶を済ませる。 「おや、東西さん、今日は調子良さそうですね」 「え、あ、はい、昨日は申し訳在りませんでした」 「いえいえ、『命』ちゃんが居たとは言え、佐久夜ちゃんと二人ッきりで帰れましたから」 こそこそと、東西にだけ聞こえるように、しかも、手で唇を読まれないように隠して話す。 端から見て怪しいことこの上ない。 「おはよう御座います、何のお話ししてるんですか?」 びくぅ 神凪が狼狽える。 声の主は、姫川琴音、東西、神凪共に想いを寄せる人である。 他にも、色々な人間に思われているため、なかなかに苦労人である。(笑) 「いえ!昨日、私がこの御二方を家に送っていったお礼を言われていたところです!」 ………なかなか……必死になってるな 「琴音さん、また今日も遊んで下さいね♪」 「うん、もちろん」 昨日一日で、意気投合できたようである。 「…………神凪さん、姫川さん、今日一日佐久夜ちゃんと『命』のことお願いできませんか?」 「?」 神凪と、琴音が顔を見合わせる。 「私はかまいませんが………」 「私も………」 「お願いします………」 東西が深々と頭を下げる。 「「ちょ!?東西さん!?」」 二人が慌てて声をかける。 「お兄ちゃん……私、何か悪い事した?」 『佐久夜さん……東西は……』 「!? 『命』!」 東西の叱責に『命』の身体が強張る。 『あ……すいません………』 「ふぅ、ごめん、佐久夜ちゃん、『命』………まぁ、隠してもしょうがないッか…… 実は、昨日芹香さんに頼まれたことが在るんだ………だから、忙しくなるから………」 「うん………わかった………でも、『命』ちゃんは、なんで知ってたの?」 「どうせ、昨日僕が寝てる間に、記憶をよんだんだろう」 『はい、私と東西は精神面でつながっているので、そう言うこともできますので……』 「…………なんか、羨ましいな」 「えっ?」 東西が、聞き返すと、佐久夜は、少し話に置いて行かれたようになった琴音に向き直り、今後の予定を話し出した。 「東西さん……」 神凪の呼びかけに東西が反応する。 「な、なにか?」 「……………」 神凪が少しの間の後、口を開こうとする。 き〜ん、こ〜〜ん、か〜〜〜ん、こ〜〜〜ん 「あ、神凪さん、チャイム鳴ったよ!」 「………後で、話があります」 神凪は、そう言うと、席に着いた。 東西も席に着く。 (これだけは……このことだけは………) ガラッ 本当の意味で授業を始める音が響く。 き〜ん、こ〜〜ん、か〜〜〜ん、こ〜〜〜ん 「ふぅ、さて、東西さ……」 授業終了の合図と共に神凪が東西の席を仰いだときには既に東西の姿はなかった。 「あれ?」 『東西なら、「ヴァニシング」使って、ついさっき出ていきましたよ』 東西の席の隣、佐久夜の頭の上で『命』が種明かしをする。 「………姿消してまで逃げますか?あの人は……」 神凪は、呆れ果てていた。 その頃、東西は……… 「あ〜、出てきたのは良いけど……何処いこう?」 いつものごとく考え無しであった。 「さて、東西さんも消えちゃいましたし、何しましょうか?」 神凪が、佐久夜に伺いをたてるが、 当の本人の、佐久夜はと言うと、意気消沈してしまっていた。 『東西なら、次の授業になれば帰ってきますよ』 『命』の言葉に、コクンと頷く、 (……東西さん、兄として慕われてるんでしょうかねぇ……それとも……どっちにしろ、この年頃の女の子は複雑です) 「トランプしようか?佐久夜ちゃん」 神凪が考え込んでいる間も琴音は、佐久夜の機嫌を直そうと奮闘していた。 二限目開始:東西・誰にも気付かれず着席 二限目終了:東西・のそのそと移動しようとしたところを神凪により捕獲 「やっと捕まえましたよ!さあ、観念し………」 ………ダミーであることが判明 「そんな!?『命』ちゃん、何時の間に!?」 『私は関与していません……東西が直接「土の精霊」で、動いていた時だけ操作していたようです』 捕獲失敗 「…………」 「か、神凪お兄ちゃん、元気出して!」 『東西は、アレで結構狡猾ですから………』 ……すごい言われ様だな……… 「………彼のもう一つの人格がアレですからね」 神凪が少し持ち直して対応する。 「もう一つの人格?」 「ええ、かなり自己中で、凶悪きわまりなく、人に罠をよく仕掛けます」 『自分に害をなす者に対しても容赦ありませんから』 「ふ〜ん」 ……………ホントのことだが………ひでぇ 「眼鏡がついてる限り安全ですよ、逆についてないときは気を付けていなくては……それくらいしか目印無いですしね」 『眼鏡を外した理由がなんであれ、切り替わりますから』 「は〜い」 佐久夜が笑いながらその注意を聞いている。 三限目開始:東西・遅刻して教室に帰ってくる (今度こそ………今度こそ!) 神凪は新たに闘志を燃やす。 授業終了 「東西さん!覚悟!」 かなり良いスタートを切った神凪、しかし……… 東西の身が、開けっ放しだった窓から外に躍り出る、 「風の精霊」によって、己が身を吹っ飛ばしたようだ。 「…………」 教室の皆が呆れるほどの単純な手段であった。 またもや、捕獲失敗 「東西さん、何を必死に隠してるんですかね?」 「……さあ」 佐久夜は、仮にとはいえ、兄として接している者に避けられている様な気がして、落ち込んでいるようだ。 (…………東西、はっきり言った方が良いときもあるんですよ……) 『命』は、東西が内緒にしている幾つかのことに、正直不満を持っていた。 落ち込んでいる佐久夜を見ればその考えは募って行くばかりである。 「語るべき時が来れば………語ってくれるんでしょうけどね………」 四限目開始:東西・今度は姿を現さない (東西さん、勝負を逃げましたか!?) ある意味割り切った神凪は雪辱戦に燃えていた。 授業中、東西の席を観察していると、佐久夜に、何処からか、風にながされて手紙が届いたことに気がつく。 佐久夜がそれ以降、浮き浮きと授業を受けている様がよくわかる。 (? まさか、東西さんからの手紙か?) 四限目終了:佐久夜が神凪と、琴音と集めて仮眠館に向かう。 仮眠館内……… 「だぁ〜〜〜〜!手紙を見て、もしやと思ってきてみたら案の定か!?」 奥、キッチンの方から幻八の怒鳴り声が聞こえる。 「幻八さん、お邪魔します」 神凪らが一応断りを入れて中に入る。 キッチンには、幻八と、東西が居た………キッチンは……えらく汚れていた。 「お兄ちゃん♪」 佐久夜が東西に飛びつく。 「こら!包丁もってるんだから危ないでしょうが!」 東西が困ったような声を出す。 しかし、その表情は満更でもなさそうだ。(というか、嬉しそう) 「と、東西さん、授業さぼって何を?」 捕獲に闘志を燃やしていた神凪は現状が、ちと気に入らない……というか、想像できていなかった。 「………この馬鹿、料理の練習をしてたらしい……」 幻八は、目に手を当てて「参ったね」って、感じのポーズを決めている。 「まま、細かいことはおいといて………昼食会と行きましょう」 東西は、皆を昨日の客間へと案内する。 「人ン家で仕切るな!」 幻八もぶつぶつ言いながら、客間へと向かう。 「へぇ〜」 客間へとついたみんなの第一声は驚嘆だった。 「これ、東西さんが?」 琴音が聞いてくる。 「ええ、昨日、幻八さんにはともかく、神凪さんに負けたのが悔しくて」 東西が頭をかきながら答える。 「俺に負けてもしょうがないとは………情けない」 「……何百年生きてるかもわからない、化け物じみた人に負けたとて悔しく思うはずがないでしょう?」 「……それもそうか」 皆、東西の料理に口を付ける。 昨日とは比較にならないくらい美味しい。 「お兄ちゃん、今日のこれ、ホントに美味しいよ♪」 「ほう、では、昨日のは嘘だったと」 「う!」 あっはっはっは……… 昨日と、同じように、団欒がそこにあった。 午後の授業終了・放課後 オカルト研究会部室にて、 「さて、今は、佐久夜ちゃんはおろか……『命』ちゃんも居ません」 いま、部室内には、神凪と、東西しか居ない。 「そろそろ……教えてもらえませんか? 何を隠しているのか……」 東西は、ただ沈黙を守るばかり…… 「……料理の練習、芹香さんからの用事というのは無しにして下さいよ? その程度の嘘はわかりますから」 しばし沈黙…… 「ふぅ、話した方が……良いんでしょうね」 「わかりました、僕の隠し事は、佐久夜ちゃんのことです。 芹香さんによれば、彼女の、この世に対する最初の執着が無くなってきているそうです。」 「それは……つまり……」 神凪が言葉にするのをためらう、 「ええ、成仏……と言うのでしょうか、仕掛けているんです」 「……………」 神凪が完全に言葉に詰まる。 神凪は、佐久夜に、琴音に向けている想いと同じモノを向けていた、 そして、琴音にはない、懐かしいモノを与えてくれる者としても佐久夜は大切に思っていた。 それが、消える、居なくなる……しかし……… 「おめでたい事じゃないですか………何も隠すことでもないでしょうに……」 神凪は無理に笑顔を作った、彼女の幸せのことを考えればそれが一番良いことだと信じたから、 「ええ、そうですね……何も隠す事じゃなかったけど…… 佐久夜との接し方が変わるとちょっと僕的にも寂しく感じてしまうかも、ッと思って」 東西が照れ臭そうに笑う。 「では、東西お兄さん……」 「そうですね、神凪お兄さん……」 「「妹の所に遊びに行きますか?」」 二人とも大笑いしながら歩き出した。 それからの数日は何事もなく過ぎていった、 ただ、やけに明るく振る舞う神凪と、 それとは逆に、 皆といる時間を増やしながらも、佐久夜とは距離をとろうとしている感のある東西を除いて 深夜、東西の家・屋根の上 「ねぇ、『命』ちゃん……東西さん、何を隠してるの?」 東西の家の者が寝静まった頃、佐久夜は、幽体となって、『命』と対面していた。 『別に何も………』 「うそ!」 大声である、しかし、幽体である以上、能力がない者には何も聞こえない。 しかし、聞こえた者にはわかるだろう……その声に悲哀が滲んでいることを…… 「私……東西さんにだけは……嘘…ついて欲しくない! ううん、神凪さんにも、琴音さんにも!……みんな……みんな好きなんだもん……」 『…………………』 『命』は迷っていた、目の前の、死により、時の流れからはじき出されてしまった少女は、 いま、やっと、安らぎをえることが出来た……それがたとえ「かりそめ」とはいえ、安らぎには変わりない…… 『わかりました…… しかし、これから話すことは既に東西にとっても同じ重さの問題……軽はずみな行動はとらないで下さい』 こくん……涙があふれている佐久夜にとっての今出来る返事だった。 『………西!東…………! ………て……ださい!』 闇の中に沈む意識を無理矢理引きだそうとする声が聞こえる。 眠い……まだ、闇が支配する時間……まだ、人が活動する時間じゃない…… 『佐久夜さんが…………!』 佐久夜……佐久夜!? 意識が急に明確になる、気持ち悪い……しかし、それすらも押しのけなくては、と言う意識が存在した。 次の瞬間、東西の意識は無意識の中から目覚めた。 「なん…で話し…たんだ!?」 深夜、いつもの制服(寝る前にきちんと畳んでおいたので一番着替えやすかった)に着替えた東西が疾走していた。 『すみません……まさか、最後まで聞かずに去るなど……』 『命』は既に泣いていた。自分が引き起こしたことがどんなに大変なことか…… 東西の記憶の中の芹香の知識から知っていたから…… 「はぁ、はぁ……何処ま…で話したんだ?」 芹香から聞いた話を東西は思い出す…… (『俗に幽霊とよばれる者は、この世の摂理に背いて存在する者、そのもの達は存在するだけでカルマが蓄積されていく』 『正しい知識を持った、この部屋にいる先輩方は別物ですが、あの「佐久夜」さんも例外ではありません』 『そして、そのもの達が、とりついた者にも同様にカルマが蓄積されていきます』 『生きている者は、死ぬまでに善行を積めば何とかなりますが……幽霊などはどうにもなりません』 『幽霊がそのままの状態で、ただ執着が無くなった場合………向かうところは天国ではなく………』 『たった一つ…………地獄です』 来栖川先輩はそう言っていた、 そして、それに対する対策が僕の「精霊術」に在ることを教えてくれて、そのための本を貸してくれた) 『私、カルマの説明を先にしてしまって……… そのカルマが東西にも宿ると言ったところで………』 (一番ヤバイところで!) 東西は、「風の精霊」の詞に耳を傾ける……… 既に、風の精霊達のネットワークに佐久夜は引っかかっている。 「こっちだ!」 東西が曲がり角を右に曲がる……途端に闇が広がり…… ドン! (!?) 何かにぶつかった…… 「いたたた………」 「! 神凪さん!?」「と、東西さん!?」 「「どうしたんですか!?こんなところで!」」 二人同時に声を上げる。 「私は、何か嫌な予感がしたモノで………取り敢えず歩き回っていたんです」 この道は、佐久夜のいる場所に向かう近道…… 神凪は知らずに佐久夜の居る場へと足を向けていたようである。 「神凪さん!理由は走りながら話すからついてきて!」 「え?」「いいから!」 東西が走り出した、遅れて神凪も走り出す。 走っている最中に東西は簡単に説明をした、説明を聞いていくうちに、神凪の顔が険しくなっていく。 「何故……そ…れを……あの時に説明してくれなかったんですか!?」 神凪は、走りながらで息切れを起こしながらも叫んだ。 「貴方の……貴方の術……で…何とか…なったんですか?」 「僕も……「闇の精霊」を使えば、幽霊の……類を滅ぼすことは出来ます……」 「でも……僕だって……あの子を失いたく……」 東西も息切れを気にせずに話しながら走る。 『東西!あそこです!』 『命』が指さす先……初めて、佐久夜と逢った場所……そこに佐久夜は居た。 はぁ、はぁ、はぁ…… 東西と、神凪が、息を整えながら佐久夜に近付いていく、既に佐久夜はこちらの方を向いている。 「……何で来たんですか?」 (全く……ドラマのワンシーンじゃなかろうに……) 東西は、心中でそんなことを一人ごちていた。 「はぁ……場所を移そう……ここは人目に付きすぎる……」 こくん、と頷く佐久夜、その顔からは、何事かの決心が伺えた。 「ここならゆっくり話が出来る……」 東西が移動した場所……近くにある、山の中……木々が鬱蒼と茂っている東西のお気に入りの場所…… 今、そこに、東西、神凪、『命』と、それらとは数歩離れたところ、東西の真っ正面に佐久夜は居た。 「佐久夜さん、貴方は勘違いをしているんです!」 「神凪さんは黙っていて下さい! これは、東西さんと私の問題です!」 すでに、佐久夜は東西と、神凪に兄さんとはつけていない。 そして、神凪は、部外者と言われれば、その通りであることに気付き唇を噛む。 「………何か話すことはありませんか? 東西さん」 東西に話すことは沢山あった……しかし、先ほどからの佐久夜の口調は何か……引っかかるモノを感じる。 「神凪さんの言ったとおりだ……君は勘違いをしている……」 「カルマの話なら『命』ちゃんから聞きました……私は地獄に堕ちるんですね?」 「ちが……」 「貴方も一緒にいると地獄に堕ちるんですよ!? 『命』ちゃんだって心配してました! ………それとも………」 そこで佐久夜が、一度言葉を切る…… 「それとも、今すぐ、私と堕ちてくれますか? 地獄に………」 …………… 神凪は何か悔しい想いに苛まれてはいたが…… 冷静な部分が黙っていることを指示していた、自分は所詮部外者なのだから、っと…… ざざぁ……風が吹く……沈黙を嫌うかのように……そして、東西は言葉を紡ぎだした……… 「以前の僕なら………その言葉に、今と同じ喜びを感じて、身を任せていたかもしれない……けど……」 「琴音さん……ですね?」 東西はただ……静かに頷く、 「神凪さんも……みんなで昼食を食べたときに何となくわかりました」 佐久夜が静かに続ける、 「生きていたいのなら、私を消して下さい……」 「「『!?』」」 皆の心に動揺が走る、 「残念ながら、僕の術の中には幽霊を屠る術はない」 「嘘です、『命』ちゃんから聞いてます……以前、東西さんが使う能力について興味を持ったときに」 佐久夜はにこりと笑って、そう告げる…… (自信で存在を否定するなら……誰かに再び奪われるくらいなら………私が………!) 神凪が、そのようなことを考え始めたとき…… 「だから……」 いきなり佐久夜が動く、誰も動かない、佐久夜に何が出来るわけではないから、 しかし……東西は、異常なまでの接近に驚いていた。 佐久夜の顔が目の前、唇は触れている……その事にしどろもどろになっていると、 かちゃ 金属の接触音が響く…… 「こちらの貴方なら………私を滅ぼしてくれる………」 (…………しまった、あれは、私が言った!?) 神凪もまた、短い休み時間、東西のあずかり知らぬ間に、東西のことを話していた…… これは科学部の話をしてあげたときに出た話題の結果であった。 「成る程………確かに僕なら……だな……」 東西が薄く笑っている、 (こうなったら………) 神凪が術に集中しようとするのと、『命』が東西の目の前に移動して抗議を始めたのは同時だった。 しかし、そのどれもが意味をなさない。彼の心はもう既に決まっているのだから……… 「はぁ、ここまで来て、僕の……と言うか、あいつの努力を無駄にしないでくれるか、佐久夜ちゃん?」 (!?) その場にいる、全員が唖然としている、まさか、「こいつ」がこんな事を言うとは思ってみなかったから…… 東西は、佐久夜から眼鏡を取り上げる。 「……今の僕も、違う僕も、結局は一緒なんだよ………好きな人間も、嫌いな人間も、 そして、「あいつ」も君を好いている、妹という意味でも、女性という意味でも……… だから、君がキスしてきたとき、本人嬉しがってたんだよ………」 佐久夜の顔が赤くなる、さっきの行為を思い出したのだろう。 東西は東西で、神凪の方に顔を向け、舌を出している。 (………後でお仕置きです……東西さん) 報復を心に決めた。 「あと、姫川さんの件だが……確かに恋愛感情もあるのかもしれないが……君とそうは違わない…… 今は、とにかく彼女の影を払って上げたいだけなんだよ、「あいつ」は……」 そういって、東西は、手の中で弄んでいる眼鏡を眺める…… 「喋りすぎましたね……変わります………多分この状態で逢うのは最初で最後なので、いっときます。」 東西は深呼吸をすると、 「さようなら、貴方は幸せになりなさい」 顔を真っ赤にすると、慌てて眼鏡をかけた。 佐久夜は彼に何も言うことが出来なかった、ただ、元に戻った東西が、くずおれて呟くのが聞こえた。 「美味しいところ、あいつに全部もってかれた………」 …………と、 「では、始めましょうか………」 佐久夜は、すでに、いつでも、この世から離れられる状態にあった、 眼鏡無しの東西の、あの言葉に、心にあったしこりのようなモノがとれたようだ。 東西が、「月の精霊」を召喚する。 次の瞬間、天に見える月から、階段が佐久夜の元に延びてくる。 「黄泉の階(よみのきざはし)です」 黄泉の階、芹香から借りた本に載っていた術、 太陽を、生の象徴とするならば、月は死の象徴、そして死者の行き着く先の道標、 この術は、死者のカルマの分だけの段をもった階段が現れる、 そして、その一つ一つを踏みしめることによりカルマを浄化する術、 「けっこう……長いですね………」 神凪が呟く、月から延びた階段は、四年間と言う時の長さを思わせるに十分な長さをもっていた。 佐久夜が、振り向く、 「『命』ちゃん……最後のお願い聞いてくれる?」 『もちろん……』 『命』は、佐久夜の願いの内容も聞かずに、佐久夜の頭に乗り、実体を与える。 「ありがとう、『命』ちゃん……それから、お兄ちゃん達………琴音さんのこと、どっちもがんばってね! どっちかが振られて、死んでこっちに来たときは私が慰めて上げるから♪」 そう言うと、東西と、神凪の首に腕を巻き付け、抱きつく。 「東西さんも、神凪さんも……生きて、同い年で逢いたかったな……二人の間で、二人と腕を組んで……歩きたかった」 そして、二人の頬にキスをする。 「で、これは、私を好きになってくれたお礼♪」 そう言って、二人を解放する。 「じゃね………先に天国で待ってるから!」 「いつか……行くからね」 「また、逢いましょう……」 『さよう……なら………』 『命』が、佐久夜から離れ二人に続いて別れを口にする、 佐久夜が一段目に足をかける、二段目、三段目、徐々に階段と共に、佐久夜の姿が薄れていく、 四段目、五段目、六段目………遂に階段と佐久夜は消えてしまった。 彼女は、決して振り向きはしなかった……… 「彼女、天国に着きましたかね?」 「まだまだでしょう……案外長かったし……」 『でも、本当にいい子でしたね………』 木々の隙間から、月を見ながら三人とも寝転がっていた。 皆、話をしながらでないと、彼女の存在が夢だったような気がしてなかなか話を止めようとしなかった。 「神凪さん……彼女を見るとき、えらく懐かしそうな瞳をしてましたね………誰かを思いだしてたんですか?」 「…………妹です……妹のことを思いだしていました………」 「へぇ〜、美人ですか?」 「ええ、だいぶ長い間逢っていませんが……美人ですよ」 (お前も………そちらに行って私を待っていてくれてるのか?) 神凪は、胸に残っている面影に語りかけたが、答えは返っては来なかった…… その夜は、三人とも月を眺め続けていた……… 再会を約束した、想い出にするにはまだ早い少女のことを思いながら……… 「一期一会・了」 =============================================== 東西 :おわった〜〜〜〜〜 『命』:………精霊である私は、もう一度佐久夜さんに会えるんでしょうか? 佐久夜:………ああ、悲恋……私って可哀想…… 東西 :………みんななんかいいたそうだな? 『命』&佐久夜:べっつにぃ〜〜〜〜 東西 :さて、サンクスに移動しましょう! 『命』&佐久夜:(逃げたね) 神凪さん、前・後編共のご出演感謝! 幻八さん、前・後編共に壊れて下さって感謝! ALL:では、また〜