Lメモ 「幼誓遂刻・前編」 投稿者:東西
  キィ……
 扉がなる……別に重いわけではないけれど……

 扉の向こう、部屋の中は光が溢れている、正面の机の奥、

 大きなガラス窓から惜しみなく日の光が射し込まれている。

 ………いつもながらこの部屋に入ると圧倒される。

 ここはお祖父様の書斎、経営関連の専門書が所狭しと並べられている。

 私の部屋にも、ジャンルは違えど多くの本が並んでいるが、ここには及ばない。

 ふと、机の上に本が一冊だけ置かれていることに気付く、お爺さまにしては珍しい……

 読み終えれば元ある場所に必ず戻す方なのに……

 机に近付き、本を手に取る……焦げ茶色の表紙に一つの単語が記されている。

 『DIARY』……日記? 綴り手は……お祖母様………

 途端に胸の奥から懐かしさがこみ上げてくる……

 私が幼いときにこの世を去られたお祖母様……

 そして、私は想い出に流されながら、この本に誘われたかのように扉を開いた……



(まったく、お祖父様もお祖父様よ! 来客のチェックぐらいしといてもらいたいわ!)

 私は、今扉の前にいる。

 お祖父様に御茶に誘われ、先に来ているはずの姉さんにお祖父様が遅れることを告げるために。

 お祖父様は、休日によく私達を御茶に誘う。

 まぁ、美しい孫娘達とのコミュニケーションが取りたくてしょうがない年齢なんでしょう。

 私達も、楽しいからいいけど……美しいレディーを待たせて良いと思ってるのかしら?

  コンコン

  キィ……

「姉さん? お祖父様、来客で少し遅れるそう………よ?」

 ……………

 ………

 …

「姉さん!」



   Lメモ 「幼誓遂刻・前編」



「みんな、よく集まってくれたわね」

 そう言う、綾香の横には雪智波が立っている。

 綾香とは対照的に何処かおちつかなげに見える、

 大抵のことに置いて、冷静に対処できる彼にしては珍しいことだ。

「………ヘリで埒られてきたんですけど……」

「私、兄様と朝食取ってたんですけど……」

「私は、魔術の実験で、徹夜してやっと眠れると思ったんですよ……」

「寝てました……」

「僕も寝てました……」

「………………」

 皆不平たらたらである。

 まぁ、それも無理からぬ事であろう。

 時刻は朝の七時、それも、日曜日にいきなり召集されたのだから。

「うるさいわね! 姉さんが消えたのよ!

 これでもまだ何か言うつもり!?」

「綾香さん、落ち着いて下さい」

 招集をかけた主、来栖川綾香がいらついた口調で告げるのを、智波が諫める。

 綾香の言葉を聞き、皆の顔に緊張が走る。

 綾香は、一つ深呼吸をし、言葉を続ける。

「昨日、姉さんが消えたのよ……私の目の前で……」

 下唇をかむ……

「……僕達が呼ばれたと言うことは、本当に『消えた』んですね?」

 召集されたメンバー、オカルト研究会のSS使い達、

 その中で、少女と見違うばかりの人物、神無月りーずが尋ねる。

「そうよ、昨日一晩、お祖父様が八方に手を尽くして探したけど見つからなかった」

 そこで肩を竦めてみせる。

「私が、いくら『消えた』んだと言っても聞く耳持たなかったわ」

「現場は?」

 ある意味、冷めた……事務的とさえ聞こえる声を出したのはT−star−reverse、

「もちろんそのままよ……ついでに言うと、原因も大体分かってるわ」

 そう言うと、綾香は、皆を押しのけて扉から廊下に出る。

「ついてきて、私じゃどうしようもないのよ……」

 そう言う綾香の表情は、オカ研のメンバーからは伺うことが出来なかった。



「ここよ……ここで姉さんは消えたの」

 皆が通された部屋は、先居た応接間と同じくらいの大きさの部屋。

 光を多く中に入れられるように作られた、書物を読むのに苦にならないよう設計されたであろう書斎。

 中に通された皆は、まずその部屋を丹念に眺め出した。

「別に怪しげな気配が漂ってるわけでもなさそうですが………

 ましてや、隠し通路があるわけでもなさそうですね」

 最初に口を開いたのは、貫頭衣の人物、神凪 遼刃……

 その言葉に皆、頷く。

「当たり前じゃない、部屋の中眺めてわかるような仕掛けがあるならとっくに見つけてるし、

 この部屋の主であるお祖父様が知らないはずがないでしょう?

 それに、智波にも調べて貰ったわ」

 その言葉に智波が頷く。

「じゃあ、原因は何だって言うんですか!?」

 先程から、誰よりも、焦りを見せていたトリプルGが、綾香にくってかかる。

 綾香が、窓の前にある、唯一の机から一冊の本を持ってくる。

「これよ……」

 りーずが、受け取る。

「日記……ですか?」

 皆がりーずの手にある「日記」に注目する。

「そ、私が最後に姉さんを見たとき、

 姉さんは、これに手を置きながら徐々に透けていったのよ」

「中、見ていいですか?」

「お祖母様の日記だから、あんまり人に見せたくないんだけどね……」

「ま、勘弁して貰いましょう……」

 そういうと、りーずは、手早くページを捲っていった。

「普通の日記です……ね」

 りーずの後ろから、覗いていた沙耶香が言う。

「ですね……」

「別に怪しげな事が書いてあるわけじゃないのはわかってる、私も読んだもの」

 溜息と共にりーずが本を閉じると、横合いから手が伸びてきた。

「ちょっと、貸してもらえます?」

 短髪の、特に目立ったところのない少年がりーずから本を取る。

「気になることでも? 東西君」

「いえ、わからないことは聞いてみようと思いまして……」

 そう言うと、東西は、日記の表紙をノックする。

「ちょっと、出てきてもらえるかな?」

 東西の呼びかけに答え、本の表紙から小人が現れる。

「えっと、目がトロンとした、ちょっと、惚けてそうな女の人知らない?」

  ぷっ……

 誰かが東西の言葉に吹き出す。

 続いて、

  ゴン!

 硬い物で殴られたような音が東西の耳に届き、東西は、背中に冷たい汗が流れるのを感じる。

 東西の言葉に反応したのは、吹き出した人物だけではなかった。

 小人もまた、小さな反応を示していた。

「知っているなら教えてくれないかな?

 僕たちその人を捜しているんだ……」

『君たちは、その人の何?』

 初めて小人が口を開く。

「友達だよ、僕はね」

 微笑みながら告げる。

『………………』

 小人がしばし考え込んでから、人差し指で、チョイチョイと、何らかのサインを送ってくる。

「? なに?」

『内緒話、だから耳貸して……』

 東西が、みんなの方を少しだけ見て、距離を開ける。

 部屋の隅まで移動したところで、小人に耳を近付ける。

 ………

 ……

 …

「成る程………わかったよ」

 しばしの内緒話の末、そう返事を返す。

 小人はにっこりと笑うと、表紙にとけるように消える。

「さて…………」

(どうしよう………)

 ふと、東西が、皆に視線を向けるとピリピリと緊迫した空気と、

 鋭い視線に晒されていることに気付く。

(来栖川先輩より僕の身が危なかったりして……)

 とてつもなくイヤな予感に襲われる東西だった。


             前編・了

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 東西:皆さん、ご無沙汰してます。(ぺこり)
『命』:お久しぶりです。(ぺこり)
 東西:何か本当に久しぶりで、忘れられているような今日この頃……
『命』:理由は?
 東西:………年の初めって……
『命』:隣の市まで自転車で遊び行くぐらい暇ですね?(にっこり)
 東西:………ノートが……
『命』:壊れましたね、春休みが終わる直前に、
    一週間くらいだったでしょうか?(にっこり)
 東西:………ごめんなさい、怠惰です(涙)
『命』:しかも私の出番がない………(ぼそり)
 東西:本音はそれかぁぁぁぁぁ!!!!???(涙)
『命』:あんまり怒ると体に毒ですよ、笑いましょう(にこにこ)
 東西:……えっと、続き物でもない、僕の作品を読んでくれている方、
    有り難う御座います(ぺこり)
『命』:続きは早くに出せると思いますのでもう暫しお持ち下さい。
東西&『命』:では、後編で………