私的Lメモ「どこかでこんなバレンタイン ぱーとつぅ」 投稿者:霜月祐依

「ホットカチワリいかがっスカァ〜」
 軍畑が毎度のお約束(というか生活の為)でカチワリを売り歩く。
「……やっぱ、不況の荒波はカチワリすらも打ち砕くんッスかね」
 商売人たる者、時代の流れを掴みユーザーの求めるものを提供する事が必要に
なってくる。その点、冬だからとホットメニューを用意した軍畑の考えは評価出来よう。

 最も、彼の最大の敗因は『カチワリ』から離れてない事に尽きるのだが。

「カチワリ売り精が出ますね」
「こんちわっス、たくたくさん」
 と、カチワリ売りを続ける軍畑の前をたくたくが通りがかる。軍畑はたくたくの
顔を見て、ある事を思い出した。
「そうそう、さっき購買部に寄って来たんですけど入荷し――」
「マジですか!?
 こうしちゃいられません! ありがとうございます!!」
 最後まで言いかけた軍畑の言葉を遮り、猛烈な勢いでたくたくは駆け出していく。
 たくたくが廊下の角を猛烈な勢いで曲がっていったのを見届けた軍畑は一言。
「……でも、いーんスかねー?」

(ウォォォォッッ! 待ってましたよ〜!!)
 心の中で万歳三唱をしながら第2購買部へと急ぐたくたく。
 彼には最近目覚めた趣味がある。

『吉井さぁ〜ん、僕をもっと非道バリアとして使ってくたさぁ〜ぃ』
 ってな、某秋山や某美加香に通じ…
「通じません! っていうか、同類扱いしないで下さい!!」(美加香)
「同類って何ですか! 勝手に趣味にしないで!!」(たくたく)
「そーかそーか、この快感に目覚めてくれたか!!」(秋山)

 ・・・・・・
 もとい、たくたくは最近あるコレクションをするようになった――
「チョコ卵、チョコ卵、これの第3弾がついにキターーーーーーー!!」
 ――との事である。
 卵型のチョコレートの中にはおまけとして精巧なフィギュアが入っているのだが、
これの出来が非常に良くコレクターの心を鷲づかみにした。たくたくの場合、たまたま
買ったチョコ卵に入っていたのがレアフィギュアであった為、すっかり虜になってしまっ
た。
 よーするにビギナーズラックでパチンコや競馬にのめり込むのと一緒じゃんと言われ
たら身も蓋もないのだが。

「この日の為に小遣いを貯めてきましたからね、急がねば!」
 ちなみにここでいう小遣いとは、生徒指導部が巻き上げている上納金を会計操作で
着服した成果によるものだったり。出所がそもそも問題ある資金を横領しているのだ
から…まぁ、どっちもどっちか。

(見えた!)
 第2購買部の入り口が見えてきた。
 そして入り口のマットに足を掛ける。
 ウィーンと静かな音を立てて自動ドアが開き、「くっださぁ〜いな」と喉まで
出掛かった歓喜の雄叫びは――

「ちょうど今バレンタインセールの真っ最中って、言おうとしたっスのにねぇ…」

 ――数十もの視線によって奥底に封印された。

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       私的Lメモ「どこかでこんなバレンタイン ぱーとつぅ」
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(え? え?? えぇっ!?)
 第2購買部に一歩足を踏み入れた体制で固まるたくたく。
 時間帯さえ選べば落ち着いた雰囲気で買い物が出来るハズなのに、普段なら店主の
beakerがあくびをしながらスポーツ新聞に目を通している時間なのに――

「あ、これなんていーんじゃない? かわいくて」
「おやぁ〜、それは明らかに本命だよねぇ。誰にあげるつもりなのかな〜♪」
「材料はこれとこれでいいのかな? …あ、アレも買わなきゃ」

――これでもかと黄色い歓声に包まれていた。
 さすがにbeakerは慣れた感じで接客を行っているのだが、たくたくはこんなに女性
だらけの環境にいた事などない。
 おさげがふらふら〜と女生徒の方にたなびくのを握りこんで抑えながら、動揺した
自分を必死で落ち着かせる。
(私は客。そうです。正当な代価を支払って買い物に来たのです。落ち着いて、
落ち着いて。ノートを買いにきたつもりで、さりげなく商品を取って会計を済ませれ
ばいーんです)
 自分に言い聞かせた後、たくたくは肝心のチョコ卵が陳列されている場所を探す。
バレンタインセール中の為、レイアウトが大きく変更されておりいつもの場所に見当
たらない。
(チョコ卵、チョコ卵…って、あ、ありましたけど…)
 たくたくはチョコ卵を見つけた…が、そこはバレンタイン商品特設コーナーの
ど真ん中。店内にいる女生徒の目が全てそこに集中しているのだ。

(くぅーーーーーーーっ、嫌がらせですかbeakerさん!?)

 たくたくは心の中で思いっきり涙を流す。
 しかもご丁寧なことに『この冬注目商品!』とか『可愛いフィギュアをあの人と
半分こ☆』なんてリキの入ったPopで飾られている。目立つこと必死。

(しかも今は…)

 たくたくは視線をレジへと走らせる。
 レジ待ちの行列が長いのだ。購買部員がフル稼働でレジ打ちに精を出すが追い
つかない。

「あ、これかわいくない〜?」
「ほんとだ〜、1個買ってみようよ。つまんなかったら義理にしちゃえばいーんだし」

 そこにはM.KとEDGEがきゃいのきゃいの言いながらチョコ卵を買おうとしている。

「え〜ぃ、物の価値も解らぬ愚民どもが! 近寄るでないわ!!!」

 と、思考に出しても口に出した末路がどうなるかぐらい理解しているたくたくであった。
ちなみに、思考が誰の影響かは言わずもがな。

「あの〜、すみません」
 たくたくがその声に視線を走らせると、レジ待ち行列の脇で東雲忍が立っていた。
「あ、ご注文の品ですね。ちゃんと取り置きしてますよ」
 beakerは店の奥からダンボール箱を持ってくる。
「売り切れてたらどうしようかと思っちゃいましたよ」
「お料理研究会はお得意様ですからね。いいチョコ作ってくださいよ」
 どうやら、お料理研究会が部活で使うチョコレートを引き取りに来た模様である。
東雲はM.K達と二言・三言会話を交わすとダンボール箱を抱えて去っていった。

(その手がありましたか!!)

 たくたくは両手をポンとたたく仕草をすると、一旦第2購買部を後にする。
店外で出るなり携帯電話を取り出してダイヤルする。


 プルルルルルッ、プルルルッ
「毎度ありがとうございます。第2購買部です――」


 再び店内へと戻るたくたく。客の出入りは激しく、先ほどよりも若干増えたであろうか。
先ほどはあれだけ遠くに思えたチョコ卵の特設コーナーに一瞥をくれるとカウンターにいた
beakerに声をかける。
「beakerさん、先ほど電話でお願いした品物を受け取りに来たんですが」
「ああ、今日入荷した『アレ』ですね。みんな欲しがっているのに箱買いするなんて強気
ですね〜」
「いやいや、誰よりも価値はわかっていますから」
「YOSSYさんとか、霜月さんとかに見つかったら大変ですよ〜」
(ん?)
 たくたくは一瞬考えた。この二人がチョコ卵を集めているとは初耳だ。
「それって――」
 違和感を確認しようとするよりも前にbeakerはでかいダンボール箱をカウンターの上に置き、

「『セガランクチップス』箱買いありがとうございまぁ〜す♪」

 満面の営業用スマイルとよく通る声で商品名を告げた。
「せ、セガランクチップスってなんですか!?」
「嫌だなぁ、今日入荷したアレっていったらコレじゃないですか?」
 胸倉を掴もうかという勢いで詰め寄るたくたくに、なにを心外なという表情で答えるbeaker。
後方では女子生徒の怪訝そうな視線とヒソヒソ話が飛び込んでくる。
「ですから僕がお願いしたのは――」
「ちょっとbeakerこっち手伝ってー!」
「はぁーい、好恵さんいま行きます〜。とにかく、注文した品物はちゃんと持って帰ってくださいね。
代金は後で生徒指導部に請求書出しますから!!」
 beakerはたくたくにセガランクチップスが入ったダンボール箱を押し付けると、忙しそうにその場を
離れてしまった。なんとか返品したかったたくたくなのだが、

「あ、たくたくセガランクチップス貰っといてくれたんだ。今日の寮の夕食に一人一品つけるから
結花さんが早く持って来いって行ってたぞ。俺暇だから、持っていってやるよ」
 突如現れたYOSSYFLAMEがひょいと抱えて持っていってしまった。
「あ、あ…」
 後日『セガランクチップス代』と明記された請求書が生徒指導部の元に届いてしまい、
一騒動起きるのだがそれはまた別の話。

 がっくり膝をつくたくたくの頬にふわりとおさげが触れる。
 たくたくはハッとした表情でおさげを見つめる。
<宿主どうした?>
「これですよ、これ!!」



「ふっふっふ、完璧ですよ完璧」
<宿主…、まぁ止めはしませんが……>
 Leaf学園の標準的な女子制服を身にまとい、すっかり女の子と化したたくたくの姿が
ここにある。いや、この場合『たく子』と呼称した方がよいのだろーか。でも、故障でも意味は
あながち間違っちゃいないよーな気がしないでもないが。
 いやホラ、kose子の例もあるし。
 確かにインパクト勝負では向こうの方がはるかに上だが。
「足のすね毛も剃りましたし、胸パッドも入れました。おさげに眼鏡をつけたこの姿は、どっから
どーみても勇気を出してチョコレートを買いに来た文学系美少女」
 そろそろ目的と過程が入れ替わっているような気がしないでもないのだが。そもそもが文学系
美少女だろうがなんだろうが、箱買いなんてマニア以外やんない。
「というわけで、おとなしくしているのですよ寄生生命体」
<突っ込みを入れる気力も無いからそうさせてもらう>
 おさげもさすがに哀れんだのか、大人しくしているようだ。

 店内に入って自分に視線を走らせる女生徒もいるのだが、先程とは違い全く気ににならない。
「ふっふっふ、完璧ですよ完璧!」
 ちょっと胸を反らして自分の変装っぷりを自慢したくなるたく子。

「…ねぇ、今入ってきた『アレ』」
「さっきから出たり入ったりしていたたくたくさんだよね」
「あ、チョコ売り場に向かってるね〜」

 岡田・吉井・松本の三人組に同情たっぷりの視線でしっかり気が付かれていたり。

「さぁ、後は商品を確保して会計を済ませるだけです」
 特設コーナーに向かって一歩進んだたくたくは軽いめまいを覚えて少しふらつく。

 ドンッ

 誰かの胸元にもたれかかるような体勢になった。
(とと、伊達メガネが見当たらなかったので適当に用意したのですが、度付きにしたのはやはり
失敗でしたかね……)
 と思いながらも、一応謝る。
「あ、すいませ――」
「そんなナリで、何を誤りたいんや?」
「へ?」
 たくたくが顔を上げると、そこには

「ウチのかっこマネして、何がしたいんや? ウチの評判でも落とそうってツモリなんかて?」

 保科智子が腕組みをしながら怒りの形相でこちらをにらみ付けていた。当然ながらハリセンも
持参している。
 たくたくは、委員長を落ち着かせようととりあえず

「おはろー」

「アホンダラーーーーー!!!」

 スパーーーーン!!

 綺麗なスイングと共に振り出されたハリセンの一撃は、たく子を横きりもみ回転させながら宙に
舞わせた。
「ふんっ!」
 委員長はピクピクと動くたくたくを一瞥すると、第2購買部を出て行った。
<こうなるだろうと予想はしとったがのー>
「だ、だったら、何故言わないのです」
<大人しくしておれといったのは宿主の方じゃろうに>
「そ、そうでした……」

 なんとか立ち上がろうとした、たくたくの前を女生徒が横切る。一度たくたくのところで立ち
止まった後、おもむろに特設コーナーに赴きチョコ卵の店頭在庫を全て抱えてレジへと向かった。
「あ、あ…」
 先ほどの騒ぎもあり、レジ待ちの列がなくなった所で手早く会計を済ませる。
「ちょ、ちょっと…ま、待って…」
 たくたくの願いもむなしく、beakerは大きな紙袋に商品を入れて女生徒に渡す。
「ひーふー…ちょうどですね。ありがとうございます」
 絶望のどん底へと叩き落すbeakerの一言。女生徒は紙袋を両手に持つと、たくたくの前にまで
やってきて再び立ち止まる。
 そしてもおもむろに片手を口元に持ってきて一言


                      「ぷ」


 隼魔樹だった。

「ま、魔樹さん…ものは相談なんですが…」

                     「ぷぷっ」

 勝利の笑みを見せながら優雅に去っていく魔樹。
「ううっ、『渡る世間は鬼ばかり』とはこの事ですか…」
 たくたくは泣いた、さめざめと。
 beakerとしては営業妨害にしかなってないので追い出そうとしたが、あまりにも哀れでやめることに
した。

「ひどいっス、魔樹さんひどいっス…」
 いちおー寮では同室の二人なのだが、ことコレクションに関してはお互いでトレードすることは
少ない。というか、出たばかりの新作チョコ卵に釣り合うだけの代価を提供できないし、なにより
何が入っているかのお楽しみを味わえない。
 このまま部屋に戻っても自慢たっぷりに魔樹に自慢される『だけ』なので、それはプライドが
許されない。

 コンコン
「たくたくさんいるの?」
「あ、吉井さん…」
 気だるそうに振り向いたたくたくであったが、その相手が吉井ユカリであったことに少しだけ
元気を取り戻す。
「これ渡そうと思って…」
 吉井がカバンから取り出したのはシンプルだが、可愛くラッピングされた小箱であった。
「え、私にてすか? ありがとうございます」
「良かった、喜んで貰えて」
 早速、ラッピングを剥がしてチョコを取り出す。シンプルな星型のチョコではあったが、
それが手作りであることは容易に想像できる。
「有り難うございます、頂きます!」
 さっそく、チョコをかぶりつくたくたく。
(あれ? この味ってどっかで…。いや、折角吉井さんが手作りで作ってくれたんです味わあなくて
どうするんですか!?)
「たくたくさん、そんなにしてまでチョコ欲しかったのね」
「へ?」
 たくたくの動きがピタリと止まる。
「チョコ売り場を何度も挙動不審に行ったり来たりしたり、挙句は女装までしてチョコが欲しいほど
切羽詰っていたなんて気が付かなくてゴメンね」
「いや、あれは…」
 冷や汗だらだらのたくたく。
「魔樹さんがチョコの材料提供してくれたの、心配してたよ」
「魔樹さんが…」
 たくたくはそこまで言われて、ふとラッピングの紙の裏にメモが紛れていることに気がついた。

 『たくたくへ
  
  君の大好きな≪カラ≫で作った愛情たっぷりチョコの味はどうかな?
  中身は僕が責任を持って処分するから。

                                隼 魔樹

  p.s.あ、レアフィギュアげっと〜♪』


「がぁっでむぅーーーーーー!!」
「涙流して喜んでくれるなんて、良かった☆」

                              多分続かない>保証ナシ(笑)

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てなわけで、即興で思いついてしまったどこかでこんなシリーズです(笑)
実はOLHさんの夏休みネタで書いていた奴が投げ出し気味になっているにも関わらずなんですが。
ちなみにチョコ卵はまんまじゃアレだしな〜との苦肉の策だったり。
チョコスーパーボールやらチョコミートボールなんて候補もありましたが。

え〜たくたくさん、色々と無許可ですがごめんなさい。
いやぁ、一番なんだかシックリくるんですよね〜(^^;

報復Lは大歓迎です。
主にどよこん辺りで受け付けます(笑)