(くっ、何なんだ、一体?何で俺があんなのと戦わないといけないんだ??) と、佐藤昌斗は大木を背にして、心の中で毒づいていた。木を背にしている理由は3 つある。 1つは、今現在戦闘中の相手から姿を隠すため。 2つ目はこの、およそ樹齢500年くらいの大木を盾とするため。 そして3っつ目は・・・。 <警告します!!敵が、まっすぐこちらに向かってきます。どうやら、こちらに気付 いているようです> と、右手に持った、日本刀の女性人格である運命(さだめ)が、佐藤に敵の接近を、 精神感応と言う形−もっともそれしか方法がないのだが−で告げる。 「えっ?もう気かれたのか?!くそっ、休憩ぐらいさせてくれよな・・・」 と、今度は口にして毒づく。そう、理由の最後は消耗した体力の回復である。もちろ ん、佐藤も長くは休めるとは考えていなかった。しかし、こうも早く敵に見つかるとも 思っていなかったのである。 <主(あるじ)!前方から敵が来ます!!> 運命の言葉に、佐藤がはっとして振り向くと、今まさに敵が右腕に装着されている鋭 い刃物を、自分めがけて振り下ろすところだった! 「くっ!」 次の瞬間、金属の打ち合う澄んだ音が一つ響き、続いて、金属のこすれ合う音が辺り に響く。 佐藤は、何とか敵の斬撃を防ぎながら、何故、自分が今の状況に陥ったのかを思い返 した・・・。 今日の佐藤は朝からついていなかった。目覚まし時計の故障から、従妹の隆雨(たか さめ)ひづきも寝過ごしてしまい(もちろんひづきは佐藤に八つ当たりした)遅刻しか けて反省房に入れられそうになった事に始め、授業中に始まった騒動にもろに巻き込ま れる等々、散々だった。 しかし、今日一番の不幸は弁当を持参しなかったことであろう。佐藤がもしもいつも 通りに弁当を持参していれば今の事態は少しは良い方に進んだかもしれないからだ。 そう、事の起こりは昼休みの争奪戦からだったのである・・・。 「行くぞ!あかり!!」 と、最近影の薄くなったと評判の藤田浩之(浩之談:「うるせーッ!!」)は、幼な じみの神岸あかりを連れて、昼ご飯の確保をするべく、廊下を走っていた。 腹が空いている状態では、「廊下は静かに、歩きましょう」という事(こんな普通の 決め事あるんでしょうか?)は、もちろん無視だ。 ところが、授業が終了したと同時に教室を出たにもかかわらず、すでにそこは戦場だ った。 「くそッ、もうこんなに混んでやがる。あかり、回復は任せたぞ!!」 僅かに遅れてあかりが到着するのを確認すると、浩之はそれだけ言って眼前に広がる 猛者どもの群(むれ)へと飛び込んで行った。 「あっ、浩之ちゃん!・・・行っちゃった・・・。私の回復ってお弁当なんだけどな ・・・。やっぱり・・・パンが食べたいのかな?」 と、自分が手にするお弁当を見つめつつあかりは思うのだった・・・って、単に忘れ てるだけでは? 「くらえ!見よう見まねのか○はめ波ーーっ!!」 と、その技は誰も使ってないのに良いのか?!と、言うツッコミが聞こえる中、当の 本人は一向に気にした風もなく、ただ己の食欲の命ずるままにかめ○め波でできた僅か なほころびの中、ゴール目指して突っ込んで行く。 「くっ、おもしれぇ!かめは○波だと?・・・良い度胸だ!喰らえ!アイアンカッタ ーッ(アイアンカッターの部分だけ、代弁マジンガー○。もちろん声は石○博也氏)!」 と、最近は女性化、しかもマジックナイトになるという、離れ技を開眼したジン・ジ ャザムが、そのメカチックな肩に、パートナーの超合金マジンガー○を乗せ、早速お返 しとばかりに浩之目掛けて技を放つ!・・・が、何故か技を喰らったのは、浩之薔薇化 計画計画長(自称)の、佐藤雅史であった。 「浩之・・・愛が痛いっ・・・ガクッ」 と、意味がいまいち不明な言葉を残し、雅史は眠りについた。 「何?まさか・・・それは?!」 驚愕の表情(かお)のジンを見て、ふっ、と不適に浩之は笑いながらジンに言った。 「・・・見よう見まね・・・非道バリアー・・・。雅史、安らかに眠れ」 と、浩之が一人でひたっていると、いつの間にかあかりが浩之のそばに立っており、 それに気付いた浩之がぎょっとしたのと同時に、あかりが口を開いた。 「あのね、浩之ちゃん。私思ったんだけど・・・浩之ちゃんの「???」ってひょっ として「パクリ」ってことなのかな?・・・もしそうなら、自分で個性がない、って言 ってるようなものだと思うんだけど・・・あっ、浩之ちゃん!何処行くの待って〜っ!」 この言葉は浩之にはあまりにも辛すぎた・・・。浩之は持っていた雅史を放り捨て、 泣きながら何処までも何処までも走って行くのだった。その後をあかりは慌てて、追いか けて行った。・・・しかし、立ち直れるのか浩之? 「何だったんだ・・・?」 走り去る浩之を見送りながら、ジンは誰に言うでもなく呟いた。と、そこに、 「ふふふふ・・・外道メテオ!!」 という叫びと共に暗器の雨が降り注ぐ! 「ぐはっ!しまった・・・直撃か?!」 浩之に気を取られた一瞬の隙をつかれ、ジンは鉄アレイを頭に直撃され轟沈した。 「行きますよ、美加香!」 と、ジンを仕留めたのを横目で確認した風見ひなたは、パートナーである赤十字美加 香に第二撃の宣告をする。美加香はもう諦め悟った表情で、 「解りました・・・」 と、答えた頃にはもう投げられていたが・・・。 「鬼畜ストライク!!」 もの凄い勢いでひなたは美加香を群めがけ投げ飛ばす。美加香の飛んでいく先に丁度 先程の外道メテオのダメージから立ち直った佐藤がいた。佐藤ははっと気付いたが、時 すでに遅く、見事に命中した。 「ぐはっ!!・・・やっぱり今日はついてないのね・・・」 吹っ飛びながら佐藤は納得したが、やりきれなさも感じていた。佐藤がどこかに吹っ 飛んだ、丁度この時、松原葵にパン一個で佐藤に用事を伝えるのを引き受けたRuneが、 佐藤の姿を探しに来ていた。 が、もちろん吹っ飛ばされていた佐藤に気付くわけもなく、 「え〜っと・・・先輩はっと・・・。いねーみたいだな。まっ、いないんじゃ仕方ね ーかっ。ふあああっ・・・昼寝でもするか・・・」 頭を掻きつつ盛大に欠伸をするとRuneは、この場を後にした。もしもこの時、佐藤が 葵の伝言を聞くことができたなら、今の状況はなかったのかも知れない。 そう、いつも通りに弁当を持ってきていたら、パンを買うのにいつもの倍の時間をか けなくてもよかったし、Runeに会うこともできていたかも知れないからだ。 そして、この後に佐藤は今戦闘中の相手と出会うことになったのである・・・。 「「中編に続く」」