試立Leaf学園の私闘−佐藤昌斗編−後編 投稿者:佐藤 昌斗
 男は余裕だった。はっきり言ってターゲットである、佐藤昌斗という人物の戦闘力は、
自分より明らかに下回っている。だから、男は佐藤がまた逃げたと思った。
 そう信じて疑わなかった。だからこそ、佐藤を追跡することになんの疑問も抱かなか
った。
 そして、その勘違いが自分の機能停止に繋がることになろうとは、まったく考えつか
なかった。
 そう・・・敗北するなどとは、思っていなかったのである。

 
 「佐藤先輩。何処ですか?隠れるなんて卑怯ですよ」
 と、きょろきょろと辺りを見回しながら男は辺りに響くほどの声で言った。男は無論、
佐藤が返事をするとは思っていない。
 ただ、佐藤をからかうだけのために言っただけだ。佐藤の平常心をなくす為というの
もあるが、今では男は、ただ楽しむためだけにプログラムされた口調で喋っていた。
 果たして、丁度、男の真上にある木の上の方から、ガサッと言う音が聞こえた。
 男は相変わらずの、ニヤリとした笑みを口元に浮かべ、ワザと気付かないふりをして、
 「先輩。いないんですか?」
 と、佐藤を挑発してやるつもりで言う。その後、男の真上から何かが、ザザッという
音とともに落ちてきた。男は悠然と振り返りざまに腕の刃を振るった!
 何かを切ったような確かな手応えを感じ、男は佐藤の死を、己の勝ちを確信した。
 しかし!
 「えっ?これは・・・?!しまっ−」
 それが男が発した最後の言葉だった。男が切ったのは、ロ−プで吊された丸太だった。
停止する思考の中で、男はこの場所が佐藤の稽古場であったことをデータの中から見つ
けだした。すでに手遅れだったが、それが男が思考した、最後の事であった。
 佐藤は運命(さだめ)を鞘に収めると、もう動かない男に対して呟くように言った。
 「・・・窮鼠猫を噛む・・・ってね。確かにお前は俺よりも腕は上だった・・・でも、
慢心したのが運のつきさ。お前は自分に負けたのさ・・・」
 (ふっ、決まったな・・・)
 と、佐藤が浸っていると、運命が佐藤に釘を刺すように言った。
 <主(あるじ)・・・浸ってないで、さっさと学園に戻った方が良いのではないです
か?確か、私(わたくし)の記憶によれば・・・柳川様の授業があったと思いますが?>
 運命の言葉に、佐藤は慌てて腕時計で時間を確認する。すると・・・。
 「ぎゃーーーーーーっ!!もう授業、ほとんど終わりだーーーーーーっ!!」
 佐藤は全速力でこの場を後にすると、怒りが頂点に達し、文字通りに爪を研いで待つ、
柳川教師が授業を行っている、自分の教室へと向かった。無論この後、佐藤が半殺しの
目にあったのは、言うまでもない・・・。合掌。


 薄暗い、モニターの光だけが唯一の光源である研究室で、佐藤と男の戦いの一部始終
を、観察していた数人の男女は男の回収を、すぐさま通信機で部下たちに命令すると、
それぞれの意見をを言い合っていた。
 「う〜む・・・やっと、というところか・・・。この程度の人形相手に手こずるよう
では、使いものにならんな・・・。だが、思ったよりは頭が切れるようだ。知能レベル
の評価を1レベル上昇するとしよう」
 白衣のいかにも研究者といった感じの男性は、早速、データを打ち込む。
 「そうですわね。・・・しかし、まだまだ鬼の武器は解明不能な部分がありますわ。
あの佐藤昌斗という生徒に・・・もう少し頑張ってもらいませんと。でないと・・・ア
レを送った意味がありませんわ」
 と、男性の言葉に、同じような格好の女性が答える。すると、それに続くように、先
程の男性よりも幾分か若い、やはり研究者といった格好の男性が、
 「しかし、転移装置に取り付けていた測定器によると、彼が一番の適任者であるとい
う、結果が出ましたからね・・・。まっ、しばらくは静観としませんか?」
 と、モニターに写る佐藤の姿を見ながら男性はこの場にいる皆に提案する。全員が頷
くのを確認すると、最初に発言した男性が、
 「それが良いかも知れんな・・・。しかし、他の生徒を介入させないためと、実力を
フルに発揮させるために誘い込んだのが仇になったな。・・・それと、今後は醜悪なデ
ザインは却下するぞ」
 と、独り言のように言う。男性の言葉を聞いていた二人は、その案は無条件で賛成し
た。やはり、皆も気持ちが悪かったようである。・・・だったら造るなよ、あんなモノ。


 「ふうっ・・・やっと帰れた・・・」
 佐藤はまさに、やっとと言った状態で自分の家に帰り着いた。よく生きて帰ることが
できたものだと、自分を誉めてやりたい気分で玄関のドアを開けて家に入ると、そこに
は、玄関で仁王立ちする、従妹兼同居人の、隆雨(たかさめ)ひづきの姿があった。
 「・・・ひづき?どうしたんだ玄関なんかに突っ立って・・・。もしかして、俺の出
迎え・・・なワケないか。ハハハ・・・」
 と、押し黙って立っているひづきの、言い様のない雰囲気に押されるように、佐藤は
愛想笑いを浮かべつつ言う。すると・・・。
 「・・・お腹空いた・・・。ご飯は?」
 ひづきは呟くようにして佐藤に言った。佐藤は心の中で、
 (・・・しまった!あまりの出来事に忘れてた!?・・・どうする?空腹のひづきは
手が付けられないぞ?!・・・ここは何とかごまかして・・・はっ?!)
 何とかこの場を逃れようと考えたが、どうやら手遅れのようだ。佐藤が気付くと、今
まさに、ひづきのすらりとしたジーパンを履いた右足が佐藤目掛けて振り下ろされると
ころだったのである。
 「ちょっと待て!ひづ−」
 佐藤が言い終わるよりも早く、ひづきの踵落としが、佐藤の脳天に炸裂した。佐藤は、
薄れていく意識の中で、今日が本当についていなかったことを、文字通りに痛感した。
 

 後日、佐藤は、あの時葵が用事で学園を早退していたことを、Runeより聞くのであっ
た・・・。   



                                  「「完」」