試立Leaf学園の日常――熱きプールの戦い・学園で一番暑い日の壱の巻き―― 投稿者:佐藤 昌斗



 ――それは、とある平凡な日の出来事だった…。


 この日、いつもと変わらない平凡な日。
 だが、この日は明らかにいつもと違っていた。
 ここ試立Leaf学園では、環境整備の試験として、空度調節器が設置されており、
異常気象と言うような過激な気温の変動は絶対に起こらない筈…であった。
 しかし、やはり試作段階だからか、人の手による物だからなのかその装置はあっさり
と暴走を開始したのである。
 その被害のお蔭で学園は、学園始まって以来の記録的猛暑に覆われたのだった。





    試立Leaf学園の日常――熱きプールの戦い・学園で一番暑い日――




 暑い…。
 この日はただその一言に尽きた。
 ここ、学園のリズエル棟では現在、この猛暑の為に授業がままならず、更に生徒の大
半もこの暑さで参ってしまった為に、この状況をどう打開するかの緊急職員会議が開か
れていた。
「しかし…暑いですな〜…」
 扇子で仰ぎながら、だらしなくYシャツを着崩した教師長瀬源一郎は、皆が解り切っ
ているであろう事実を、改めて口に出した。
「そりゃ〜ねぇ…。40度以上有りますからね、今」
 と、こちらもだるそうに言う教師の山岡。
「やはり…エアコンは取り付けとくべきでしたか」
「君ぃ…今更言い出してもね」
 やはり、教師と言えども人である。
 当然と言うか、職員室は暑さの為にイライラしている教師たちの言い合いや、暑さに
参ってしまい、だらんとした教師の屍などが転がり、有る意味マスターアップ寸前のゲ
ーム開発室かはたまた、締め切りを守らない作家のせいで今日も泊まり込み決定な編集
部の様な…まあ、とにかくそう言う雰囲気に包まれていた。
「だからだね〜この事態はプラズマに…」
「うぉ〜ッまた、またバグがぁッ!!」
「先生ッ! あんた落ちたらウチは○●に販売部数負けちまうんだよッ!!」
「俺を、俺を見てくれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」
「「「「アニキィぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」」」」
 …正に地獄絵図である。と、その時不意に地獄の裁判長…もとい、教師たちを束ねる
立場である、一人の人物が今まで閉じていた口を開いた。
 そして…。
「エルクゥユウヤ☆ 素敵にビキニに無敵です♪」
・
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 ――暫らくお待ち下さい。

 …3。

 …2。

 …1。

「…今、なにか違う次元に紛れ込んだようなそんな気がしますが、まあ置いといて。そ
れ以上騒ぐなら…少しだけ、怒っちゃいますよ?」
 と、あくまでも笑顔な柏木千鶴教師の、正しく鶴の一声で阿鼻叫喚の地獄絵図だった
職員室は、秩序を取り戻したのであった。
「とにかく。このままでは、生徒たちも先生方も授業にはなら無いでしょう。修理は今
日一杯掛かるそうですし。ですからここは…」
 千鶴は、もったいぶる様にそこで一旦間を置いた。
「「「「ここは…?」」」」
 それに対して、教師陣は千鶴の言動を即す様に一斉に尋ねる。
「プール授業にでもしちゃいましょう」
 と、やや間を空けにっこりと笑顔で言う千鶴。この案に異を唱えるものは居なかった。
 …別に千鶴が校長だから〜とか、無敵の高校生様だから〜とか、怖いから〜とか、他
意は無い筈である。皆、この千鶴の提案には反対意見が無いだけなのであろう。…多分。 
 こうして、学園の本日の授業は全時間プール授業となったのである。そして、まさか
それが一部の生徒たちにとって、忘れ得ぬ出来事になろうとは…この時、誰も予想もし
ていなかったに違いない…。




          第1話 右斜め四十五度の奇跡。




「あっ…あち〜ッ…」
 ここエディフエル棟二年生のとある教室では、クラスの生徒が打ち上げられた魚の様
に、机に突っ伏して倒れていた。
 そして、彼――藤田浩之も、そんな生徒の一人だった。
「センセー…まだ教室待機かよ? …こ、このままだとマジで干上がるぜ…」
 机から顔を上げる気力もないのか、突っ伏したまま力のない声で浩之は言った。
「がっ、がまんしろ。もうすぐ職員室会議も終わる…はずだ」
 新任の数学教師である藤井冬弥はやはり同じ様に机に突っ伏しながら、浩之に力のな
い声で応える。
 …まあ、この暑さでは仕方ないだろう。現にこの教室で話す元気がまだある者は、も
はや数人と言ったところであったのだから。
「…ねぇ、浩之ちゃん。やっぱり、私が呪文を唱えるのはどうかな?」
 と、浩之の隣の席に座っていた神岸あかりが、申し訳無さそうに…否、犬チックに浩
之に提案した。
「…あん? あかり、なんだって?」
 あかりの言葉にいかにもだるそうと言った感じで、浩之はあかりの方を振り向きなが
ら応えた。
「えっとね、こんな風に…ほら、マヒャド〜ッ」
 ビュォォォーーー!
 と、あかりが呪文を唱えると、今の学園の気温では有り得ない筈の猛吹雪が一瞬だけ
教室内に吹き荒れた。
 そして、数秒後。この場所に一つの氷のオブジェが誕生した。
「…………なあ、あかり」
「なに? 浩之ちゃん」
「確かに少しは涼しくなったけどさ。これは…不味いだろ」
「…うん。そうかも…」
 浩之とあかりが送る視線の先には、つい先程誕生した氷のオブジェが――あかりの呪
文で氷漬けとなった冬弥の姿があった。
「…………」
「…ほっ、ほら。藤井冬弥先生なだけに、こおっ”とうや〜”! な〜んちゃって」
「…………」
「…………」
「…もしかして、あかりちゃんギャグか?」
「うん。あかりちゃんギャグ」
「…………」
「…………」
「…てい」
「あうっ」
 浩之は、なんちゃってポーズのあかりに、取り敢えずチョップをかましといた。
 と、そんな時。
 ピン・ポン・パン・ポ〜ン♪
『学園の生徒の皆さん、おはようございます。柏木千鶴です。たった今、職員会議が終
了しました。そこで、会議結果のお知らせを致します』
「おっ、今日は休講扱いか? なんでも良いから早くこっから出たいぜ」
 スピーカーから聞こえてくる千鶴の声に、浩之はやや明るくなった表情でスピーカー
の方に視線を送りながら誰ともなしに言う。
「浩之ちゃん、なんか…休講とは違うみたいだよ?」
 やはりと言うか、浩之の言葉を聞いていた(浩之にして見れば独り言)あかりが、な
んとなく気配を察してか、浩之に言った。
「…あん?」
『さて、本日の授業ですが…本日は、全授業をプール授業とします』
「「…プール??」」
『でも、生徒の皆さんは急に言われても水着は持ってきていないでしょう』
 それはそうであろう。大体、今の季節ならプールなどとは無縁の季節である。
『そこで…』
 と、千鶴が話を続けようとしたその時。
『チャララチャラッチッチャ〜ッ♪』
「…この音楽って、浩之ちゃん」
「…だな」
 突然、この学園ではかなり頻繁に聴いた事の有るバックミュージックと共に、
『学園の皆さん。いつもお世話になってます、第二購買部のbeakerです』
「…やっぱり、beakerか」
 この学園の守銭奴で浮気者でナンパ野郎でクソゲーハンターで馬鹿映画大好きと、も
っぱらの評判の「爪楊枝から核弾頭まで」と言うキャッチフレーズで有名――かどうか
は知らないが――な、第二購買部の主人であるbeakerの声が、千鶴の変わりに聞
こえて来たのだった。
『さて、水着の件ですが既に我々第二購買部。第二購買部で既に更衣室にサイズは様々
にご用意致しております。ですから水着の心配はご心配なく。では、第二購買部のbe
akerがお知らせ致しました。あっと、もちろんバスタオルなどの用意も、爪楊枝か
ら核弾頭まで、のキャッチフレーズでお馴染みの第二購買部がご用意させていただきま
したのでご心配なく』
 beakerの台詞が終わると共に、また例のチャララチャラッチッチャ〜ッ♪と言
うバックミュージックが流れやや間が合ってから、また千鶴の声がスピーカーから流れ
出した。
『…と、言う事らしいので、皆さんは速やかに更衣室に移動してくださいね。以上柏木
千鶴でした』
 千鶴の言葉が終わると、お決まりのピン・ポン・パン・ポ〜ン♪ と言う音が聞こえ、
それっきりスピーカーは沈黙した。
「おっしゃ! 更衣室行くぞ、あかり」
「う、うん。浩之ちゃん」
 放送が終わるや否や、急に学園は息を吹き返した様に喧騒に包まれ、生徒達は更衣室
へと向かって動き始めたのであった。…氷漬けの冬弥一人を残して。
「俺は…どうなるんだ?」
 ああっ、無常。



 同時刻。ところ変わって浩之達の隣の教室では、他の教室と同じく生徒達が更衣室へ
と移動する用意をしているところであった。
 そして、彼――佐藤昌斗も、同じく教室から移動しようとするところだった。
「良かったァ〜。干上がるかと、本気で考えちゃったよ」
<主(あるじ)…あの程度で干上がるまで行く筈無いでしょう>
 と、昌斗は独り言と軽い気持ちで呟いた筈の声に、反応する声があった。その声は、
女性の声で、声の感じは明らかに、やれやれこれだから近頃の若いもんは堪え性が無い
と言うんじゃよまったく。米さん、ところで晩御飯はまだかいのぉ? 嫌ですよおじい
ちゃん。さっき食べたばかりじゃないですか。おおぉ、そうじゃったかいのぉ〜…と言
うニュアンスを含んでいた。
<誰がボケ老人ですか!!!! 失礼な…私(わたくし)は、まだ…>
 と、ぶつぶつと文句をたれているのは、昌斗が所持する日本刀の運命(さだめ)であ
る。昌斗の持つ刀は、何故か意志を持っており、しかもおばさん臭い性格をした女性人
格を有しているのであった。
<だから、おばさんは余計です!!!!>
 運命は、もしここにちゃぶ台が有れば、遠慮なく某野球馬鹿な親父の様にひっくり返
してやるのに…と考えたとか考えなかったとか…は、まあ置いといて続きに行くが、運
命の言葉に昌斗は、
「あのなぁ…それぐらい解ってる、てば。まあ、良いか。それより、さっさと更衣室に
行こ」
 と、反論しかけたが止め、席を立ち更衣室へと向かおうとしたのだが…。
<嫌です>
 運命に嫌がられてしまったのだった。
「…なんで行きたく無いんだ?」
<主…。私は何ですか?>
「へっ? 何って…はっ?!」
 昌斗は運命の質問に、日本刀だろ? と答え様とした所を慌てて踏み止まった。
(落ちつけ。冷静に考えるんだ昌斗! この問いは簡単に答えて良いのか? 否、答え
は否だ! よぉ〜く考えろ。単純に見えるものにこそ、難問は隠されているのものだと、
三丁目の小粋な老人、小池さん(78歳現役)も言ってたしな。考えろ、考えるんだ昌
斗ォ!!!!)
 …どうやら、脳味噌が熱暴走したらしい。運命は昌斗の様子に何時もの如く溜息を吐
きながら、
<…主。私は確かに刀ですが、女ですよ? どうして、殿方が大勢着替えをされる所に
行かなければならないのですか?? …そんなだから、未だに葵様にも何も言えないま
まなのです>
 と、説教臭く言う。…この辺りが実におばさん臭いところなのだが…まあ、それは言
わないでおく。
<…しっかりと言ってますわよ>
「解った! 鉱物だ!! って…あら? そう言う答えなの…?」
<…主…> 
 漸く口を開いたかと思えば、あまりの答えに運命は情けなくて涙が流れた…気がした。
そして同時に、何故この様な者が自分の所有者なのかと真剣に悩んだりもしちゃったり
した。
「…ついにいかれたか?? 大丈夫かよ、昌斗」
 と、その時。いつまでも一人でぶつくさぶつくさ呟いている昌斗――運命の声は、昌
斗にしか聞こえない様になっている――に危機感を覚えたらしく、YOSSYFLAM
Eはこのまま放っておくのも寝覚めが悪いだろうと考え、仕方なくと言う感じに声を掛
けた。
「そう、鉱物! 謎の物体だろうがそうに変わりは…へぶっ?!」
 …熱暴走した時の対処法その1。鉄は熱い内に打て…などと、思い付いた辺り実はY
OSSYも熱さにやられていたのかもしれないが…まあとにかく、YOSSYは愛用の
木刀喧嘩刀で昌斗の脳天を打ち据える事で自体の解決を図ったのであった。
 果たしてその結果は…。
「…痛ぇ〜…いきなり何しやがる!」
 …どうやら成功したらしい。これを巷では、右斜め四十五度の奇跡と言う…かどうか
は知らない。
 さて、やっと正気に戻った昌斗は、いきなり殴りつけられた相手――YOSSYを殴
られた頭をさすりながら、睨みつけた。
「やっと正気に戻ったみたいだな。ほれ、戻ったんならさっさと更衣室に行くぞ」
 がしかし、昌斗の恨みがましい視線も何処吹く風とYOSSYは昌斗の腕を取り、さ
っさと更衣室に向かい歩き出す。
「おい! いきなり殴りつけといてそれか! って、ちょっと待て、運命をどうにかし
ないと」
「ロッカーに入れとけば良いだろうが。ほれ、野郎の腕持つ趣味は無いんだから、さっ
さと自分で歩け」
「お前が引っ張ってるんだろうが! ったく」
 こうして、昌斗とYOSSYは更衣室へと向かって行ったのであった。そして、物語
は…次回へと続く。
 
 
 

 
 ――次回予告。
                     
「ふっふっふ…。おい、昌斗! それから、ティー! 男ならば、やらねばならんこと
がある!! それが…何か解るか?」

 と、更衣室で熱弁するYOSSYFLAME。彼の言う”男ならば、やらねばならん
こと”とは?

「どうしようかな…やっぱ、バレルのは不味いだろうし…」

 そして、お気楽なノリの中一人苦悩する謎の人物。

「ふっふっふっ…いざ行かん! 俺たちの桃源郷(パラダイス)へ!!」

 そして、物語はついに動き出す。

 次回、試立Leaf学園の日常――熱きプールの戦い・学園で一番暑い日――「北北
西に進路を取れ」

 に、エルクゥユウヤ☆