重要機密書類(TOP SECRET)*抜粋 アルファベットナンバー型 強化人間 D型 開発目的:敵地潜入を容易にするため、赤子および幼児形態で行動できること。 しかる後、敵司令部を破壊できる力を使える形態へ自己進化できる 力を有すること。 任務成功・失敗にかかわらず、一切の証拠を残さぬこと。 真の目的:急激な成長が、精神と体に与える負担を調べるため。 各種、それぞれの「力」の実験。 実験場所:極秘 実験日時:極秘 実験結果: Dー1時葉(トキハ):幼児形態から成人形態へ移行中、 精神異常をきたし、死亡。 Dー2魔迫(マサコ):同上 Dー3斗燃(トモエ):このタイプより段階的成長へ切り替え。 全ての要項を満たす数値を出すも、 精神支配を受け付けず、暴走。 捕獲後、直ちに、凍結。 D−4死塚(シヅカ):D−3と同タイプ。同時期に開発。 D−3暴走時に、損失(ロスト)。 以後、消息不明。 追記:なお、このD型は、「非人道的理由」及び、柏木賢司教師の介入により、 実験自体なかったこととされる。 夕闇迫る第二購買部。そこには、三つの人影があった。 一つは、beaker。一つは、沙留斗。そして、もう一つの小さな影は、靜だった。 「ちちうえ・・・おそいね・・・」ぽつり呟く靜。 「う〜ん、あと、もう少ししたら戻ってくると思うよ」 にっこり微笑みながら、沙留斗がいう。 「でも、毎日毎日大変な『仕事』をしてくれています」 しみじみ呟きながらbeaker。 (そりゃ、『あの』倉庫整理じゃ・・・) 心の中でつぶやく、沙留斗。 (それに・・・) さすがにこれ以上言うのは、憚られた。何故なら、自分にとって大恩ある師を 責めるような気がしてならないからだ。 「それに、祖父さまの昔話にも付き合ってくれてますしね」 言いにくかったことを、あっさりと言いのけるbeaker。 (やっぱり、血が繋がっているというか、何というか・・・) ちょっぴり、困惑してしまう沙留斗だった。 「・・・というわけなんじゃ・・・うほん・・・というわけなんだよ」 と、見た目二十代前半の青年が、慌てて言葉を言い繕いながらも、 いも焼酎をコップに並々と注ぎながら、傍らにいる少年=きたみちにそう言った。 「どうだ、なかなか為になる話ぢゃ・・・だろ?」 口に出たジジィ言葉を言い直しながら、きたみちに話し掛ける青年。 「ええ、本当に為になる話でしたよ。僕もこういう話は好きですから」 縁側に(「ここは、倉庫の中じゃなかったっけ?」というツッコミはやめてね) 腰掛け、湯飲みの中のほうじ茶をすすりつつ、青年に答える、きたみち。 そして、まじまじとこの青年を見る。 (しかし・・・、誰が信じれるだろうか?この御仁が、beaker君の祖父 だなんて・・・) そうなのである。この、見た目どう見ても二十代なこの青年が、beakerの祖父 「初代beaker」なのである。 初めて見た時は、にわかには信じられなかった。だが、話を聞いているうちに 理解できるようになり、今ではその理由も知るにいたったが・・・。 (けど、今でも・・・信じられない時があるからなぁ・・・) そう心の中で呟いた瞬間。 ボーン!ボーン!ボーン!ボーン!ボーン!ボーン! 部屋の中にあった、置き時計がきっちり鐘を六つ鳴らして、時を知らす。 「あっ、もうこんな時間・・・」 時計を見ながら、きたみちが言う。 「そろそろおいとましなければ・・・。晩御飯の用意をしなくちゃいけないから・・・」 「なんだ、もう行くのか」少し残念そうに初代beaker。 「ははは、又明日来ますよ、必ず・・・」 「そうか、期待して待っているからな」 にこやかに、笑みを浮かべて初代beakerがいう。 「それじゃあ、また明日・・・」 一礼をして去ろうとするきたみち。 「しかし、大変だな君も」 その背中にはなしかける、初代beaker。 「何がです?」 きたみちは少々、怪訝そうな顔を初代beakerに向ける。 「いや、その歳であんな幼子を育てながら生活をしておるからな・・・」 「そう・・・ですね。そうかもしれません・・・」 顔に、苦いものを浮かべてきたみちは言う。 「しかし、いい子に育っておるな。あんなに素直で可愛く、見ているこっちまで もが、心が和みそうだ」 顔をほころばせて、初代beakerがいう。 それにつられて、苦い顔を少し崩し、 「ええ、そうですね。おかげでこっちも救われます。あの子には苦労をかけまいと 頑張ってますけど、あの笑顔を見れば苦労のしがいがあるというものです。」 と、きたみちはいう。 「そうか・・・。もし、何か困ったことがあれば遠慮無く言えばいいぞ。 少しなら力になってやるからな」 「はい、ありがとうございます。けど、今の所はありませんから・・・」 「・・・本当にそうか?」 少し厳しい口調で初代beaker。 「本当にないんだな?」 「ええ、本当に・・・」 戸惑いながらもそうこたえる、きたみち。 「そうか、引き止めて悪かった。もうあがってもいいぞ」 以外とあっさり手を引く初代beaker。 「それでは・・・」 軽く会釈して、この場を去ろうとする、きたみち。 その背中に、投げかけるように 「私の気持ちは常に君ら親子の味方だ。私だけではなく、孫や、沙留斗・沙耶香 それに、第二購買部の面々。さらには、この学園の者、皆、そして・・・ 恐らくは君の昔の『想い人』も、君や靜ちゃんの無事を願っているはず。 この事をくれぐれも忘れるな」 と、まじめな顔と口調で諭す初代beaker。 それに対し、きたみちは軽く笑みを浮かべて 「かたじけない・・・」 と一言残してさっていった。 その背中が消えるのを見て、初代beakerはため息交じりに呟いた。 「ふぅ、この私に隠し事ができると思っているのか?本当に不器用な若者だな」