Lメモ私的外伝「我が娘に捧げる子守歌」序ノ章 投稿者:きたみちもどる
  夢を見る。あの頃の夢を。人斬りだった頃の夢を・・・。
久しぶりに見る。最近は見ることは全くなかったのに、何故・・・?
今でも罪を背負わなければならないのだろうか?
未だ罪は晴れぬのだろうか?
このまま一生苛まされて生きるしかないのか?
どうすればこの罪を償えるのだろうか?
どうすれば・・・


Lメモ私的外伝「我が娘に捧げる子守歌」序ノ章


  今は授業中。そしてここは、音楽室。
まあ、文字通り音楽の勉強をするところである。(『別な用途』で使われることは
めったにないけどね・・・・・)
で、今は新人音楽教師の、緒方理奈が出欠を取っているところである。
順々に、出欠を取っていく理奈。
だが、それは途端に途切れることとなる。
ある一人の生徒の名を口にした時に・・・。
「きたみちもどる君」
「・・・・・・・・」
いつものように返事がない。
「あれ?また彼『お休み』なの?」
「ええ、さっきの時間まで、授業を受けていましたから・・・」
ある生徒が、理奈の質問に答える。
「そう・・・なの。わかったわ。じゃあ、彼に『そろそろ危ないから出席しなさい』と
伝えておいてね」
少し、寂しげな口調で理奈はそう言った。


  又、いつもの夢だ。『あの頃』の夢。何故、今更・・・。
夢の中で、『オレ』は人を斬っていた。傍らに幼子を連れた男を。
幾合か斬り結んだ後、手に不快な感触が伝わる。
『オレ』の刀は、確実に男の心臓を貫いた。
そして、引き抜く。男は、大地に真っ赤な血の華を咲かして地に伏した。
それを見て、『オレ』はその場を去ろうとした。
が、突然、腹部によく焼けた火箸を押し付けられたような痛みと熱さを感じた。
振り向けば、そこには例の幼子がいた。その瞳には憎しみの炎を、
その顔に怒気を浮かべて・・・。
だが、何より『オレ』を驚愕させたのは、その幼子が『オレ』の見知った子であることだ。
そう、見間違えるはずが無い。何故ならば、その子は『オレ』が愛する愛し子
『靜』なのだから・・・・・。


  はっ、となり勢いよく跳び起きる。
「はぁ、はぁ、はぁ、ゆ、夢だったか・・・」
額の汗をぬぐいながら、きたみちはひとりごちた。
涼しい風が、彼の火照った体を癒す。
ここは、校舎にある時計台の上。ここで、昼寝を決め込むのが、彼の日課と
なりつつある。
「それにしても・・・」
妙にリアルな夢だった。未だに手には、人を斬った時の、刺し貫いた時の
感触が残っている。
「しかも、靜にとどめをさされるなんて・・・」
はははと、乾いた笑いをあげる。
「けど・・・、実際にはそうなるかも。なにせ、彼女の『父親』を殺したのは
僕だから・・・」
その顔には、悲痛な趣が浮かぶ。
「その時は、甘んじて受け入れよう。それで罪が晴れるわけではないけど、
そうでもしなければ、彼女に・・・靜に申し訳がたたない・・・」
何気無しに、空を見やる。風に流される雲を見つつ、そのまま流されていきたい
と思った。だが、そうはできやしないのだ。もはや、『逃げる』ことは・・・。
そのまま、飽く事無く空を見ていると、
「きたみっちゃん」
と、下から声をかけられた。
空から校舎の屋上の方へ目をやると、
「こんな所で、優雅にお昼寝かしら?」
と、意地悪っぽい笑みを浮かべた理奈が立っていた。
「これはこれは、『緒方先生』。わざわざご足労様です」
と、きわめて事務的に、きたみちは答える。
「もう、そんな言い方はないでしょう?今は休み時間だし、周りに誰も居ないから
昔のように呼んでもいいのよ?」
「それじゃあ・・・、『理奈姉』」
少し、口調が砕けた感じになる。
「しかし、高所恐怖症の気があるあなたが、なんでまたこんな所に?恐くないの?」
理奈が尋ねてくる。
「そりゃあ・・・恐いよ」
しれっと答えるきたみち。
「えっ、じゃあ・・・どうして・・・」
少し困惑気味の理奈。
「こうするとね、肝が冷えてね、その冷え具合が涼むにはちょうどいい塩梅なんだよ」
と、淡々と話すきたみち。
一瞬、びっくりした表情を見せる理奈。そしてすぐに、呆れの表情に変わる。
「相変わらず酔狂なのか、捻くれているのか解らない生き方をしているのね」
その理奈の答えには、苦笑で返す他はなかった。



  「それにしても・・・」
理奈が突然話を切り出してくる。
「何故、私の授業に参加しないのかしら?」
「・・・・・・・・」
「何故なの、こたえなさい!」
きびきびとした態度で理奈は迫る。
「理奈姉を見ていると、『あの頃』を思い出すから・・・。あの楽しかった日々を・・・」
「・・・・・まだ、『あの時』のことを気にしているの?」
「!」
いきなり、理奈は核心をつく発言をする。
「『あの事』は『事故』なのよ。きたみっちゃんが気に病むことはないのよ」
「・・・・・」
「もう!あなたは何時でもそう!そうやって何でも自分のせいにしてそれで何時でも悩み苦しんでいる。
いいかげんに、そういう考え方はやめなさい!」
理奈は、初めて『弟』に怒った。『弟』といっても、本当の姉弟ではない。
ただ、家が近所で仲良しな、それでいて、互いに『姉』と慕い、『弟』として
可愛がっていた、ただ単に、そういう仲なのである。
「けど、もう、今更性格は変えられないよ・・・。それに、『あの事』は僕が、
一生背負わなければいけない罪なんだ。罪人(とがびと)なんだよ、僕は・・・」
少し、自虐が入った口調で、きたみちは言った。
「でも・・・」
なお、理奈は収まりが付かない様子である。
「心配しないで理奈姉。だからといってそのまま潰れたりはしないよ。今、僕には、
『護るべき者』があるから・・・」
きたみちは、すこし笑みを浮かべて、時計台から、校舎の屋上へ飛び移る。
そしてそのまま、理奈の横を通り抜ける。
通り過ぎるさいに、理奈はきたみちに、
「『あの頃』のように笑わなくなったね」
少し悲しげな表情で理奈。
「『あの頃』の僕はもう死んだんだ。『今』は、違うんだよ」
きたみちは、口の端に苦笑を浮かべ、いささか自虐的な口調でそう言い放ち、
そのまま、階段を駆け降りる。
一人屋上に取り残された理奈は、きたみちが完全に消え去った後、一言、
「・・・馬鹿・・・」
とつぶやいた。


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どもども、きたみちもどるです。
まえからの予告通り、我が娘の紹介SSつーか、主役にしたSSです。
まあ、いささか話はダークですけど、終わりは必ずやハッピーエンドにしたい
と思っています。
話がダークなのは、某明治剣客浪漫な漫画の追憶編が元ネタであるため(苦笑)
少し、長いですけど、お付き合いいたたければ、これ幸いです。
それでわ、また。

>感想こーなー
T−star−reverseさん「夢をまとわす粗忽者」
  なかなかに、興味深い過去です(笑)。まあ、仙人の修行はきつかった・・・
といったとこですね(笑)。
  しかし、あの三人の突っ込みを受けて尚立ち上がるなんて・・・、やっぱ
仙人はすごかった、ということですね(爆)。

beakerさん「クラップラーLメモ ギリギリのプライド」
  やっぱ、熱いね(笑)!格闘モンはこうでなくちゃ。
一度、拳を交えた相手と友情が芽生える。
んで、弟子が敗れたら師匠が「敵を取る」という台詞をはくのは実に、
いいです。


それでわ、次回をおたのしみ