Lメモダーク未来編 『闇に吠える』 投稿者:きたみちもどる
その話し合いは、いったいいつから続けられているのだろうか。
もう随分と長い間、こうしてお互いに向き合っているかのように思える。
事実、当事者の片方であるきたみちもどるなんかは

(この話し合いは、今日で三回目。
  その三回目にしたって、もうかれこれ三時間は話し合ってますからねぇ……)
なんて、思ってたりする。
遠くのほうから、獅子落しが、カコーンと鳴っている。
そんな獅子落しが鳴る場所は、茶道室か、純和風作りな校内巡回班の屯所と相場が決まっている。
で、きたみちもどるがいるから、当然ここは校内巡回班屯所である。


もどるは、目の前にあった湯飲みを手に取り、もう冷め切ったお茶を一気に喉に流し込む。
そして、ふぅ〜っと一息ついて、湯飲みを置く。
にこやかに、さわやかに笑いながら目の前の人たちに言う。
「で、もう一度お尋ねしますが、貴方方、『生徒指導部』は我々『校内巡回班』にその傘下に入れと?」
この話し合いがセッテングされてから幾度もなく言った台詞。
ちなみに今日だけでも、十回は言ったと思われる。
だからだろうか?
相手側の生徒指導部の面々は、額に幾つもの青筋を立ててもどるを睨み付ける。
「だから、この前からいってるだろっ!!とっとと我ら『生徒指導部』の下につけっ……と!!」
ダンッ!!と苛立ちをそのままぶつけるかの如く、拳を振り下ろす。
「畳が傷みますから、なにとぞお手柔らかに……永井君」
もどるが苦笑しながらそういうと、永井と言われた若者は怒りで赤くした顔を益々赤くして
「で、返答はいかにっ!!」
ともどるに詰め寄る。
もどるは相変わらずの笑みを浮かべたまま、ん〜と唸ってみせる。
そして、数分後。
「やっぱりお断りします」
出てきた言葉はそれだった。
これもこの数日間の話し合いでどれだけ言った言葉であるかは、永井たちの表情をみれば物語っている。
その顔色は怒りの赤を通り越して、どす黒く変色している。
「なななな……」
怒りのあまり言葉にもならないみたいだ。
「だって、僕たち『真選組』とあなた方『指導部』とはそもそもの理念が違いますよ。
  理念が違うもの同士、相容れれる訳、無いじゃないですか」
相変わらずの笑みを浮かべたまま、もどるはそういった。
「理念が違うだと?どういうことだそれは!?」
どす黒く変色した顔にさらに青筋を立てて、怒鳴りつけるように永井がもどるに詰め寄る。
そのまま胸倉を掴みかねない勢いで。
だが、もどるは泰然自若とした感じで
「だって、我々の仕事は、あくまでも『一般生徒の保護もしくは守護』ですよ。
  あなた方のような『弾圧あるいは支配』ではないのですよ」
と言い放つ。
顔には相変わらずの笑みを浮かべたままで。
それとは対照的に永井の顔は、もう限界まで来てるかのような色にまで変化している。
今すぐにでも爆発しそうな、そのいかつい形相をもどるに向けたまま蛇のように睨み付ける。
その顔をみれば、普通の人ならいっぱつで恐れおののき、恐怖するだろう。
だが、もどるはそのすべてをさらりと受け流す。
永劫とも思える時が流れる。
やがて、業を煮やしたかのように永井が立ち上がり、ねめつける様にもどるを睨み
「失礼する」
と一言だけ言って、部下を引き連れて退席する。
「どうも、ご苦労様です」
少しおどけたように、もどるは言う。
その言葉を背に受けて、永井は振り返り、残虐な笑みを恍惚と浮かべて
「娘さんの身の回りに、十分注意なされる事ですな」
といって、立ち去ろうとした。
しかし。


ぞくっ!!


永井は背中に『異様な気』を感じた。
それとがくがくと身体が震えている。
(こ、これは………『恐怖』?)
そう自答した永井は、自身が感じた『恐怖』の元を探るように、再び振り返った。
そして、見つけたのだ。
そう、それは、『恐怖』はそこにあったのだった。
初めからそこにあったのだった。
そう、いままで彼が話し合っていた人物こそが、『恐怖』だったのだった。
改めて部屋を見渡すと、さっきまで暖かみがあって、明るかった部屋が、今では冷たく暗い感じがする。
そして、先程と変わらぬ位置に、先程と同じような笑みを浮かべたままで『恐怖』はそこにあった。
そして、『それ』は永井をみるとやはり笑みを浮かべたままこう言い放った。
「もし、娘を……靜を、この政争に巻込めば、『私』がその時は、徹底的に指導部を『叩き潰す』」
そういった瞬間、永井は凍り付いた。
その眼光、そして、その身体から放たれる剣気、威圧感で、押し潰されるかのようだった。
(やはり、この男の『過去』は噂ではなかったのか……。それと……)
沸き上がってきた唾を飲み込み後を続ける。
(『鬼』の制御を完全に取り戻している……)
永井は、この依頼を受けた事に始めて後悔した。
同時に、こんな役を押し付けたトップを怨んだ。
なぜなら、生まれて始めて『恐怖』というのを心の髄まで味わったからだ。
エリートたる自分が生まれて初めて味わった『屈辱』。
その屈辱と恐怖を身体に付けたまま
「う、上には一応、言付けておきましょう」
と、一応の虚勢をかろうじてはり、逃げ去るかのように立ち去った。



指導部の面々が立ち去った後、もどるはため息をついた。
「ふぅ〜、これであの人たちが引き下がるとは思えないけどね……。」
誰とはなしに一人ごちる。
その時、すすっと襖が開かれる。
その開かれた空間にいたのは
「……靜?……」
彼の愛娘の靜であった。
「ちちうえ……」
彼女は、口には出さないものの、その円らな瞳に不安な気持ちを浮かべていた。
そんな彼女の気持ちを、一瞬でくみとったもどるは
「おいで、靜」
そういって、娘を自分の胸元に引き寄せる。
「きゃっ、ちちうえ……?」
あまりにも突然の行為に、その瞳を大きく見開かせる。
「大丈夫、君の……靜のことは、どんな事があっても護ってあげるから……」
目を閉じて、ゆっくりと言い聞かせるように靜の頭を撫でてあげながら彼はそういった。
靜はしばらくの間、その行為に甘んじるかのようにもどるの身体に身を預け、やがて
「…………うん…………」
と、いつもの、人に安らぎを与えるかのようなとびっきりの笑顔で頷いたのだった。



もどるは、その笑みを見るたびに幸せだった。
いつまでもその幸せが続くと思った。
いや、途切れることなどありえはしないと思った。
だが………………



「一体どういう事なんだっ!!」


喉が裂けんばかりの大声をあげるもどる。
彼の目には、怒りの炎が点っている。
そして、彼の腕の中には、彼の最愛の娘がいた。
ただし、あの天真爛漫な笑みを浮かべること無く、あの純真でつぶらやかな瞳を閉じたままで……。
頭から、真紅の人の証を流して………


「それが……どうも……」
隣にいる青年=八塚崇乃がずいぶんと言いにくそうにしている。
「どうも、どうもがなんなんだっ!!」
もどるはそういって、八塚の胸座を勢いよくつかむ。
八塚は、普段から考えられないもどるの行動に驚きを隠せないでいた。
「早く言えっ!!」
そういって、勢いよく揺さぶり始める。
「あっ、だからその……生徒指導部が……」
八塚がしどろもどろになりながらも話し始める。
「奴等が、どうかしたのか……?」
もどるが静かにそう聞く。
と、同時に八塚はの身体がぞくっと震える。
八塚は、いま、目の前にいる人を、自分の上司を始めて『恐い』と思った。
「どうしたんだ?早く言え……」
その言葉に促されるみたいに、八塚はとつとつと話し始める。



話の内容は、こうだった。
風紀を逸脱した『違反者』を『生徒指導部』が発見。
追跡して、『違反者』を捕らえるためにやもえなく『携帯武器』使用。
そして、『違反者』を捕らえることが出来たが、武器使用の際に『たまたま』通りかかったきたみち靜にも『命中』。



明らかな、『報復』だった。
いくら『違反者』を捕らえる為とはいえ、武器を使用するなどとは。
それに、この『場所』は初等部の敷地である。
そのような危険が生じるような場所で、武器を使用するなどとは狂気の沙汰としか思えない。
そう、これは実際の『報復』なのだ。
もどる率いる『真選組』が『生徒指導部』の傘下に加わることを拒んだことの………。
それに、すぐに駆けつけてきた八塚の話からもそれは推測できる。
その場に居合わせた指導部の話によると
「正義の実行に多少の犠牲もある」
「こんな所を歩いてる奴が悪い」
「武器を使用するのが分かっているのに、逃げようとしなかった」
などなど話していたらしい。
それに、周りの話からも推測できる。
いわく
「生徒指導部の面々は『違反者』を『わざと』初等部方面に逃げるように仕向けた」
「靜ちゃんを見かけると、皆一斉に武器を使用しだした」
「その際に警告など一切なかった」
という言葉が異口同音にきかれたのである。



それらの話を聞いたもどるは、怒りを顕わにし、その怒りを叩き付けるべく幾度と無く地面に拳を叩き付けた。
「畜生!畜生畜生畜生!!」
「もどる先輩っ!!」
もどるの手がぼろぼろになっていくのを見て、すかさず八塚が止めに入る。
「それよりも、はやく靜ちゃんをっ!!」
八塚がそういうともどるは、ゆっくりと靜の顔を見る。
じっと、その顔を見つめる。
「……先輩……?」
最初にその『異変』を感じ取ったのは八塚であった。
見ると、もどるの肩が震えている。
泣いているのかとはじめは思った。
だが、違う。
泣いているのではない。
『笑って』いるのだ。
自身の最愛の娘が、大変な状態なのになぜ笑えるのか?
いや、それ以前に本当に笑っているのだろうか?
八塚は気になって、そっともどるの顔を覗き込んでみる。
すると、やはり『笑って』いたのだ。
いや、ただの笑いではない。
目が、目が違うのだ。
そう、この目はまるで………
まるで………
「そうか、そうだよね?やっぱり靜も仇を取って欲しいか。
  まっててね、今すぐにとってあげるからね………」
『扉』を開いたものの目だった…………。





ずしゅうぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜
まるで、水道の栓が壊れたかのような音が響く。
それと同時に、真っ赤な液体が人の首から、それこそ噴水のように飛び出る。
そして、しばらくして
ころん
と、その真っ赤な液体の栓=人の首がころがる。
それがかって『草』の経理部隊であり『風』の隊長でもある鈴木と呼ばれた者のなれの果てだった。
そして、真っ赤な液体を浴びた『異形の者』が更なる『獲物』を求めて前進する。
「うてぇ〜っ!!奴をこの部屋の中に入れるなっ!!」
ずらっと銃器を構えた生徒指導部員の後ろから永井が号令をかける。
「いくら、地上最強の生物とはいえ、銃には勝てまい」
いささか、サディスティックな笑みを浮かべる。
「やれっ!!」
腕を振り下ろすと同時に、部員達が構えた銃器が一斉に火を噴く。
銃声と硝煙の漂う中、永井は前方を目を凝らしつつ見詰める。
「殺ったか?」
だが、硝煙が消えた先にあったのは、鈴木だった死体が転がっているだけだった。
あの『異形の者』がいないだけで、さっきと変わらない。
奴は?
奴はどこだっ!?
永井がそう知覚した瞬間、『それ』はいた。
そう、『奴』は目の前にいたのだ。
いや、ほんの目の前に現れたのだ。
そして、今、無防備な背中をさらしている。
殺ろうと思えば殺れたはずだ。
だが、身体が竦んで動けない。
そう、『あの時』と同じ『恐怖』が身体を支配してるのだった。
永井が必死に『恐怖』と闘ってるうちに、『異形』は彼の部下に腕を振るっていた。

轟っ!!

『異形の者』が腕を横に凪ぐと同時に、風が唸る。
そして、またいくつもの栓と液体が飛び散る。

「う…よくも……」
かろうじて、ようやくそれだけを言うと、永井は『異形の者』を睨み付ける。
「……よくも……なんだ?」
怒りに満ち溢れた声で『異形の者』が言う。
「よくも…なんだっていうんだっ!!」
唸りを上げて、拳が永井の顔にヒットする。
「ぐふっ!!」
そううめき声をあげて永井が壁に叩き付けられる。
一撃で、一瞬だが脳震盪を起こしかけた。
だが、気力で持ち直し体制を整えようとした。
しかし、それよりも先に無数の拳が飛んできた。


そうして、永井と呼ばれた者は、壁のオブジェと化したのであった。


『異形の者』は、重々しい赤く染まったその扉を開く。
重々しく開いたその扉の中に身を躍らせる。
そして、その中の執務机にいる男に話し掛ける。
「ようやく会えたな、ディルクセン……」
そういうと、ニタリと笑った。
「よもや、ここまで来るとは驚きですよ、きたみちもどる………。
  いや、そうだったものというべきかな?」
ディルクセンは『異形の者』にそう話し掛ける。
「どっちだっていい……。『私』はただ、お前に復讐を成すだけだから……」
「では、なぜ、外の人を?」
「それは、私・・・『鬼』の血が騒いだ為とでも言おうか……」
「やっぱり、あなたは『きたみちもどる』じゃないな」
ディルクセンはそういって笑うと、指を鳴らした。
そして、二発の銃声が執務室に響き渡った。



「はは、や・・・殺ったぞ。ようやくやっつけれた」
ははは、と力なく笑う松原陽平。
「本当に殺ったのかしら……?」
あまりにものあっけなさに松原美也が疑問を投げかける。
だが、陽平は気にすることなくつかつかと『もどる』荷近寄る。
「ちょっと、危ないわよ陽平」
美也が注意するが
「どうって事ないよ、姉さん。こいつ、ぜんぜんぴくりともしてないよ」
陽平はおどけたように言って、そして、その頭を踏みつけ身体に、心臓部分に照準を合わせる。
「我々に逆らった罪を思い知って、そして逝け」
そういって、トリガーを弾く。

ぱんっ!!

乾いた音が響く。

床に穴が空いた。

だが、そこには、『もどる』の姿はない。

(いないだとっ!?)

陽平があわててあたりを見回す。

どこだ!?

どこにいる!?

「ここだ……」

まるで夜の闇の底から聞こえるような冷たくそれでいて優しい声。

「貴様が……貴様が直接に靜を……」

無慈悲な声がすると同時に、両手を組んだ腕を振り下ろされる。  

ぐしゃっ

熟した柿が落ちるような、そんな不快の音が響く。

真っ赤な噴水をその身に浴びた『もどる』がそこにいた。

その冷たく暗く輝く瞳を、残りの二人に向ける。

「よ、よくも陽平をっ!!」
美也が再び銃を構え、一気にぶっ放す。

だが、それよりも速く『もどる』が動く。

飛んでくる弾丸の下を滑るように走り込み、美也の両腕を引っつかむ。

「よくもだと……。それは……こっちの台詞だっ!!」

怒りの形相を浮かべ、そのまま木の枝を折るかのように美也の腕をへし折る。

ボキボキボキボキボキボキっ!!

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

美也の絶叫が響き渡る。

「貴様らに……貴様らに……、家族の絆の痛みを分かってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『もどる』が絶叫し、腕を薙ぐ。

斬っ!!

美也は喉に暑い痛みを感じた。

そして、目を見開いてみる。

自分の瞳に映し出された光景。

それは、逆さに立っている自分の身体であった。

ぽんっとボールが弾んだような音がする。

そんな光景をわき目にも入れずに、『もどる』がディルクセンに詰め寄る。

ディルクセンが、怖じ気ついたかのように後ずさる。

「これが……これが…… 、貴様らの言う『正義』だぁっ!!」

拳が、ディルクセンに迫る。

轟っ!!





この惨劇の場所に『ジャッジ』や『エルクゥ同盟』や『来栖川警備保障』などの『法』のメンバーが到着したのは
しばらく経ってからであった。
その時、『もどる』は、血の海の中で、ただただ泣いていたと言う。





数週間後。
学校内で開かれた、秘密法廷。
そこで、一介の生徒の裁判が行われようとしていた。


罪状:大量虐殺罪


「以上のことに異議はないか?」
最上段に座る男から言葉が投げかけられる。
「異議あり」
両手を頑丈に縛られた少年が、男を見上げながら言う。
「『私』は、『正義』の名のもとに行動したまでのこと。こんなことをされるいわれはない!!」
堂々とした態度で少年は言う。
「だが、君はやりすぎたのだよ」
「左様、あそこまでやれば、さすがに『正義』ではないよ」
周りから、次々と非難の声が上がる。
「では、あのまま、奴等の暴挙を手を拱いて見ていろと言うのか?
  あのまま奴等を放置しておけば、ますます罪もない力もない人たちが犠牲になっていたであろう!
  そのことを知って言っているのかっ!?」
吠えるように、またそのまま噛み付くかのように少年は吠える。
「知っているともさ。だが、『力無き正義は無力』なのだよ」
「君の行動には理解を示すが、そういうことだよ」
「まぁ、あきらめたまえ」
口々に挙げられる言葉の数々。
それらの言葉を背に、突然少年が狂ったように笑い出す。
「ふふふ、ふははははは、はぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
その突然の行為に、周りが騒ぎ出す。
だが、その周りの騒ぎをよそに、少年は独白する。
「そうか、そういうことか。そんなちっぽけな物のために、『私』は闘っていたのか……」
その言葉により、益々周りの騒ぎは混乱の度合いを強めていく。
「ならば、『私』は、『私』はっ!!」
喉から、血が出るほどの力強い独白。
そして、その言葉の後を予測し得たものが途切らそうと、口々に叫ぶ。
「きたみっちゃんだめっ!!」
それは、緒方理奈。
「先輩、いけないっ!!」
それは桂木美和子。
「もどる先輩っ!!」
それは八塚崇乃。
「もどるさんっ!!」
それは猫町櫂。
だが、それらの声を無視して少年は続ける。
「『光』を捨てて『闇』に生きる……。
  この世全てを、破壊してやるっ!!」
厳かにそれは告げられた。





しばらく後。
少年は、逃げつづけた。
だが、追手は次々とやってくる。
逃げ切れるのか?
いや、逃げ切れなうだろう。
彼らは優秀だ。
すでに、『もどる』はかなりの手傷を負っている。
もう、だめだろう。
『もどる』は死を覚悟した。
だが
「私が手を貸してやろうか?」
黒衣の少年が目の前に現れる。
「お前は……」
『もどる』が半眼で睨む。
だが、黒衣の男は気にした様子もなく
「力を貸してやろうか?ただし、それなりの条件があるが……」
と、『もどる』に言う。
「いいだろ……。さぁ、条件を言え」
先を促すように言う。
「我ら『ダーク13使徒』に協力しろ」
黒衣の青年が『もどる』の耳元に囁く。
「いいのか?『私』の目的は、この世全ての破壊。
  貴様が掲げる『理想世界の創造』など興味は無いのだぞ?」
『もどる』がいぶかしげに聞く。
「いや、かまわんよ……」
黒衣の青年=ハイドラント は、優しく微笑む。
(それが、『魔王』と『私』の願いなのだから……)
そう、心の中で付け加えながら……。