「待たせたな、今助けてやる」 レミィは牢から出されると、眼をキラキラさせてルーンを見た。 なんだか狩猟者モードとあんまり変わらないように見えるから結構恐い。 「な、何だ?」 ルーンは一歩退きながら恐る恐る聞いた。 「やっと……会えた」 「へ?」 「ワタシ、ジャポンに来る前勉強してからずっと会いたかったネ!アナタ、闇に紛れて敵 を立つ、スーパーエージェントな公儀隠密……!」 レミィが何をいわんとしているのかを悟り、ルーンは頷いた。 「知っているとは話が早いな」 「ソウ!」レミィはルーンに構わず一気に叫んだ。 「どこからともなく現れて疾風のように去って行く……アナタ、『ゲッコウカメン』ネ!」 ルーンはすっころんで額を強く打った。 「ちがうわっっ!!!」 「エッ?違うノ?ああっ、これネ!蝙蝠だけが知っている……『オーゴンバット』!!」 「かなり違う更に違うもっと違う全然違うーーっ!」 ルーンの叫びにレミィはしばし何もない天井を見上げて考えて、やがて頷いた。 「なーんだ『クラマテング』だったのネ?」 「そいつぁ近いけどやっぱり違うぞっ!」 「それじゃあ『イナズマン』とか?」 「余計違うわっ!マイナーになってどーする!?」 「もしかして『ヨーカイニンゲン』!?」 「何でそんなモノに行き着く!?」 「それじゃ『ナイルノトトメス』!!」 「性別が違うだろ!?」 「『ユーゲンジッコーサンシマイ』!!」 「シュシュトリアンなぞマイナーすぎて誰一人として知らんわっ!」 「『カメンライダー』『ロボタン』『オバキュー』『ドラエモン』『オソマツクン』!!!」 「全部違うっ!お前一体故郷で何を勉強して来たっ!俺は忍者だ!」 ぴたっ。 「ニンジャ……?」 レミィはぶつぶつと呟いて、手を打った。 「ああっ!『ケンジューは最後ノ武器ダ』ってあれネ!?」 「それは確かに月光で忍者だが全く違うわっ!普通の忍者だっ!忍者!」 「昔光ゲンジの後釜で歌ってたけどすぐ消えた人達?」 「いきなり特撮から音楽に飛んでも誰も付いてこれんわっ!」 (↑いたんですよ、そういうのが。ちなみに妖怪人間は特撮ではないです) 絶叫しすぎて息を切らせるルーンに、レミィはぱたぱたと手を振って見せた。 「ジョーダンよ。見たことあるワ。『タートルズ』ネ?」 「そいつぁアメリカ産だろがぁぁぁぁぁ!!!」 …………………………。 「さてそれじゃあワタシがジャポンにやってきたワケなんだケド……」 「いきなり話を変えるかっ!?」 いそいそと身なりを整え始めるレミィに思わずルーンはツッコミを入れざるを得なかっ た。 だがレミィはふっと嗤ってルーンを見ると、冷たい瞳で質問した。 「じゃあやっぱりもっと特撮ボケをカマして欲しいのネ?」 「……やめてくださいお願いします……」 ルーンは泣きながら謝った。 すっかり小綺麗になったレミィは、白装束に身を包んでルーンを見つめた。 「そもそもワタシがジャポンに来る決意を固めたノは古くより伝わる伝説を書物の中で発 見したからだったネ……」 「ああ、獣王とか鋼鉄の鬼神とかが蘇って何とやらってヤツか?」 「ソウ。『獣の王』……『666の魔獣』、『ザ・ビースト』『悪魔の竜』『リバイアサ ン』……数々の異名で呼ばれる大魔獣……ヤツが蘇れば世界は終わるワ」 「なっ……何っ!?」 ルーンは恐怖した。 これではカルト伝奇ホラーの世界である。 (いかんっ!?このままではシリアスな話になってしまうっ!?) いや、だから何なんだ。 当然ルーンの思惑を全く無視して、レミィは話を続ける。 「ヤツは決められた時代、決められた場所に予兆を表し、そこに人間の邪悪な想念があれ ばそれを元に実体化するノ……その儀式には生贄が必要なのだケレド……」 「その生贄って……お前じゃなかったっけ?」 ルーンの言葉にレミィは頷きを返した。 「ソウ……神聖な力を授かった姫なら誰でも良いらしいケド……」 「神聖な力?(おまえが?)」 後半の心の中のツッコミは当然聞こえず、レミィは重々しく頷いた。 「ワタシは人間の心にとりつく『邪』を祓う力を持っているノ……この力で魔獣を復活さ せようと企む連中を倒そうとはるばる海を越えてジャポンに来たのはイイケド、反対に捕 まってしまって……」 「……………………」 いきなりの重い話にルーンは思わず押し黙った。 (そうか…堀の裏の牢獄に幽閉されていたのは、そんな力を持っていたからだったのか…) ため息をついて、それからレミィに囁く。 「その……色々大変だったんだな、お前も……気を落とすなよ、こうして助かったんだし」 「………………………メ」 「え?」 レミィの呟きに、思わずルーンは聞き返した。 「あのファッキン邪教の使徒共メ……神の御名の祝福は薄汚い貴様等には与えられない… 貴様等に残されたのは罪を悔やんで泣くことだけネ…泣き叫び神のご慈悲を請うがいい… 死と血をもって神に許しを願い…その罪深き汚れた身体を八つ裂きにされるがいいネ……」 (なんか言ってるーーーーーーーーーーーーーーっ!?) ルーンは逃げ出したい衝動を必死に抑えながら、レミィに向かってぎこちなく微笑んだ。 「あの……レミィさん。それで……その、邪教の使徒ってのはどんな奴等なんです?」 「エ?」 ルーンの呼びかけにレミィは我に返り、質問に答えようとした。 だが、その途端にレミィはがたがたと震えだし自分の身体を抱きしめた。 「レミィ?」 「お……思い出すのも恐ろしい連中だったネ……身体の一部に信徒の証を施し、不死の身 体を手に入れたアンデッド共……ヤツラは最早人間じゃないヨ……!」 レミィの脅えようはただごとではなかった。 ルーンも思わず真剣な表情になってレミィに訊く。 「そ…そんなに恐ろしい連中だったのか!?」 「ウン……どのくらい恐ろしいかって言うと、メイクを落とした上しかも演歌調で『ダン ゴサンキョウダイ』を拳を握って熱唱するケンタロウお兄さんくらい恐かったヨ…!」 (……それ、恐いのか?) 思わず突っ込みを入れそうになったが、レミィのリアクションの方がよっぽど恐そうな 気がしたので敢えて黙っていた。 「そいつらの……名は?」 「……ヤツラは自分たちのことをこう名乗ったネ……。『亞腐呂団』と……」 「『亞腐呂団』…………!」 ルーンはごくりと唾を飲んで、半眼で呟いた。 「……何だ、その暴走族みたいな名前は!?」 「だって名乗ったんだモン」 ルーンの信頼度が99下がった。(ちなみに元値は1) レミィはルーンの眼を覗き込んで、不満そうな表情になった。 「その眼は信用してないネ!?」 「誰が信じるかっ!?そんな連中がいたらお目にかかりたいわっ!!」 そう言った瞬間、背後から眩い七色の光が二人に降り注いだ。 「何っ!?」 「こ、これは……!」 「フフフ……そこの迷える子羊メリーさん!信じないのならお目に掛けよう、我等亞腐呂 団の姿をっ!そして信じるのだ我等が亞腐呂大明神様の再来をっ!髪は神に通じるまごう 事なき称号であると同時にこれぞ神の祝福!ヘイ、ブラザーライトアアアーーーップ!!!」 訳の分からない男の叫びと共に、照明さんのスポットライトが彼を照らす! 彼は指を立てて踊っていた……それは神の舞踏だった。 髪を特徴ある形に膨らませ、華麗に踊る彼の姿……ノリノリの八ビートが地下牢獄に満 ちていた。多少でも舞踏に心ある者が見れば、涙を流して平伏したに違いない。 しかし残念ながら踊ってるのがタマダンスだったためルーンは口を15センチほど塞が らなくしただけで済んだ。 「……だっさー(汗)」 「何イッ!?」 beakerはショックを受けた表情でルーンを見返した。 「貴様、私が14年間かけて会得したこの神の領域に達したタマダンスを愚弄するのか!?」 「……14年間無駄にしてるぞ、はっきり言って」 半眼で言い放たれたルーンの台詞に、beakerは思わず祈るようなポーズを取った。 「大いなる神よ、お許し下さい……彼等は何も分かっては居ないのです。バカだから」 「なんだとコラ!?てめえっ、誰がバカだ!バカにバカ扱いされるほどムカツくことはな いって知ってるかこの真性バカがっ!」 そんなやりとりは無視して、レミィは青い顔で息を呑んだ。 「アナタ……副教主、beaker!!」 レミィに言われ、beakerは白いパンタロンスーツをふわりとなびかせて一礼した。 「これはこれは。困りますな、異国の姫。我等が神の復活まで大人しくしていて戴かなく ては……」 「黙るネ、邪教徒!魔獣も鬼神も蘇らせるワケにはいかないネ!」 「くっくっく……鬼神、ですか。心外ですね……偉大なる亞腐呂大明神様をそのように呼 ばれるとは……」 beakerは端正な顔に手をやり、苦笑した。 でもカッコがダサいからいまいち決まってなかった。 「お前達が……亞腐呂団……」 ルーンは冷や汗を垂らして呟いた。 beakerがアフロを揺らして一礼する。 「ふふ……」 ルーンは荒い呼吸をついて汗を拭った。 「信じられねえ……こんなバカが実在していいのかっ!?」 「バカ違ぁぁぁぁう!この髪型は偉大なる神の領域に近付くための聖刻なのだーーっ!」 本人も気にしているのか、beakerはやけに『聖刻』という単語を強調した。 それではパンタロンスーツは神の領域に近付くための『聖衣』なのだろうか。 ちょっと知りたかったけど恐かったので止めておくルーンであった。 beakerはルーンの思惑も知らず、にやりと嗤って見せた。 「それにしてもここまで来るとはね……まあ、飛んで火にいる夏の虫、と言ったところか、 鷹丸?」 「……へっ」 ルーンはにやりと不敵な笑みを浮かべた。 そのとき、ひょこっと天井裏から照明係の沙留斗が顔を出した。 「……あの、何スか『鷹丸』って?」 「なにっ!?」 beakerは一瞬信じられない者を見たショックで固まってしまったが、やがてぶるぶると 震え出すと怒りの籠もった眼で沙留斗を睨み付けた。 「い、い、い……今の若い者は『謎の村雨城』も知らんのかーーーっ!!」 beakerの怒りのクソゲーマー魂が沙留斗を地上まで吹っ飛ばした。 薄れゆく意識の中で、沙留斗は思った……。 (ああ……でも、これで出番があったからもしかして四天王から足洗えるかも……) 直後、残りの三人が沙留斗を回収して何処へともなく連れ去っていったのは言うまでも ない。 合掌。 沙留斗が吹っ飛んでいった穴を見て、ルーンは眼を丸くした。 「な……なんだ、その破壊力は……」 「気を付けるネ!これがヤツラの真の力ヨ!」 レミィの言葉にbeakerは大きく胸を反らせた。 「ふはははははは!これぞ亞腐呂大明神様のお力よぉ!!」 「我は放つあかりの白刃!」 beakerの言葉が終わるか終わらないかの内にルーンの魔術がbeakerを吹っ飛ばしていた。 「油断するからだ、バカが」 ルーンは呟いたが、レミィは緊張した面もちで叫んだ。 「あれじゃダメネ!ヤツラはいくらでも復活するヨ!」 「何っ?」 ルーンが聞き返した矢先……。 「そぉのとぉりィィィィィィィ!!!!」 beakerはタマダンスを踊りながら復活した。 (何故タマダンス!?) レミィは懐からごそごそと弓矢を取り出した。 よく見ると、破魔矢である。 「ヤツラを封じるには神聖な武器じゃないとダメネ……」 「そうか、その破魔矢でヤツを射るんだな!?」 しかしレミィは残念そうに頭を振ると、弓矢を床に放り捨てた。 「残念だケドこれは前にやって失敗したネ……だからこれを使うネ」 レミィが取り出したのは……M−13フルオート使用だった。 ぎょっとしてルーンが突っ込もうとするが、既にレミィは変貌していた。 「死ぬネ!みんな死ぬネ!死んでDadにおすがりするネ!そして喚くネ神の国に行けな いことを悔やむネ!お前達は神の許したもうた滅ぼされるべき悪魔の民ネーーーーッ!」 「ひ、ひええええええええっ!?」 無数の銀の銃弾がbeakerに迫り、そしてその身体に数限りない銃痕を穿った。 「じ……」 beakerは叫んでいた。 「時代考証が間違ってるーーーーーーーーっ!?」 それが……最後の言葉だった。 (怖い……亞腐呂団もカルトホラーも怖くないが、このジンガイ女は滅茶苦茶怖い!) ルーンはがたがたと震えながらレミィを遠巻きに眺めていた。 狂信徒はどんな宗教でも怖いものである。なんせ自分が正義だからね。 レミィは全弾撃ち終わると銃を肩から下ろして上気した顔で呟いた。 「カ・イ・カ・ン……」 (薬子丸ーーーーっ!?) はいはい、そんな映画もありましたね。 レミィは素早く聖女モードに切り替わると、真剣な顔でルーンに告げた。 「さあ、早く脱出するネ!鬼神が蘇るときもう一度ここに来て教主を倒せば世界は救われるネ!」 「あ、ああ!」 逆らったら殺されると本能的に判断し、ルーンは素直に頷いた。 「と、その前に……だ」 ルーンは懐から筒に入った何かを取り出すと、天井に接着を始めた。 レミィはそれを見上げて首を傾げる。 「What?一体何をしてるノ?」 「ん……まあ、ちょっとした余興だ」 ルーンは小半時ほど細工して、天井から降りてきた。 「さあ、行くぞ!」 「ウン!」 ルーンはレミィの手を取って駆けだしていった。 「よし……月明かりが見えてきたぞ……!」 ルーンはやってくる途中で発見した別の出口に向かって走っていた。 「あとは外に出て月島城に逃げ込めば何とでも……」 「残念だけどそうはいかないね」 「何っ!?」 出口を塞ぐようにして一人の少年がこちらを見ていた。 端正な顔立ち、影のある表情。さぞかし女の子にもてるのだろう。 その頭に燦然と輝くアフロさえなければ。 おまけに着ているものは飼育服だったりする。 「僕の名は玖逗夜……葛田玖逗夜。ここは通すわけには行かないよ」 「ちっ……どうする、レミィ! ……レミィ?」 返事がない。怪訝に思ったルーンはレミィの方を振り返った。 レミィは震えていた。そして、信じられないものを見たといった風に葛田を指さした。 「ア……アナタは……!」 よく見ると、レミィは脅えているのではない。それどころか歓喜の色に染まっている。 レミィは感に堪えない、といった風に叫んだ。 「『破裏拳ポエマー』ーーーッ!?」 葛田はしゃきーーん!とポーズを取ると叫んだ。 「ポ・エ・マーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」 そこには確かに心が通じ合った者通しのみが分かち合う連帯があった。 その一方でルーンは真っ白になって佇んでいた。 それが常人の反応と言うべきものであった。 「……って」 葛田はぷるぷると震えながら叫んだ。 「誰がポエマーだぁぁぁぁ!!悪かったなポエムLメモしか書いてなくてよぉぉぉぉぉ!」 「ノるお前もお前だっっっ!!」 ルーンはノリツッコミをかましながらレミィの方を振り返った。 「おい!サブマシンガンはどうした!?」 「ソレが……」 レミィは空っぽになった弾装を指さして見せた。 「なくなっチャッタ………」 「フルオートに改造するからだ馬鹿野郎ーーーーっ!もったいないだろーーっ!!」 葛田はニヤリと笑ってルーンに笑いかけた。 「……それじゃあ……僕の勝ちって事かな……?」 「くそっ……こうなりゃやけだぁぁぁーーーっ!!」 「……え?」 葛田の呟きが終わらない内に、爆発的な威力を秘めた掌打が葛田を吹っ飛ばしていた。 軽々と葛田は吹っ飛び、数メートル離れた出口の外に転がった。 「……そ、そんなぁぁぁ……」 「…ありゃ?」 驚いたのはルーンも同じだった。 無敵と聞かされていたにも関わらず、あっさりと気絶してしまったからだ。 「こりゃどうなってんだ、レミィ?」 「見るネ」 レミィの指さす方には、葛田が倒れている。 よく見れば、アフロの生え際がうっすらとずれかけていた。 「……ヅラか、おい」 「ヤツラはこうやってアフロヅラを被せることで一般人をコントロールしているノ」 「…許せねえな」 ルーンの呟きを聞いて、レミィは顔を上げた。 「ホント?ホントにソウ思ウ?」 「ああ。何て奴等だ……!」 (そんな上手い方法があるんなら今すぐにでも50人くらいに被せて遊んで暮らすのにっ!) もしレミィが読心術を使えたなら間違いなく銃殺されている感想だった。 「さて……一体何処に出たんだ?城内じゃないみたいだが」 ルーンは体裁を取り繕うように辺りを見回した。 出口は柏木城が見える小高い丘の頂きに通じていたようだった。 城からはそんなに離れていない。 距離を考えれば妥当なところだろう。 「……眺めがいいところだな」 ルーンはしみじみと呟いた。 「そうだろう?そしてここがてめえの墓場になるのさ」 「またかっ!?」 ルーンは叫んで四方を見渡した。 だが、敵は何処にも見えない。 「一体何処に……」 「危ないッ!上ヨッ!」 「えっ!?」 レミィの叫びに頭上を見た瞬間には既に遅く、強力な蹴りがルーンの後頭部を見舞って いた。 声もなく、ルーンは地面に崩れ落ちる。 ぐらぐらと揺れる意識に、男の声が聞こえてきた。 「いつもいつも自分が罠に掛けると思ってるから失敗するのさ」 「ぐっ……」 痛む頭をこらえて微かに見上げると、長髪で目つきの悪い男が立っていた。 それだけで充分印象に残る容姿だったが、何よりも彼を特徴付けていたのは例によって 例の『ちーちゃん好き好きハッピ(命名:柏木千鶴。定価7,500円税別)』だった。 「冥土のみやげに名乗っておこうか。俺の名は刃……刃 蛇寒……。柏木家に仕える最強 のシノビだ。そしていつも獲物はここで殺すことにしている……つまり、ここで俺に出会 った以上貴様には……明日の陽は拝めねえってことさぁっ!」 ルーンは刃のちょっとかっこいい台詞を聞きながら思った。 (何でこいつらって台詞や効果に気を配るのに格好には気を配らないんだろうか……) などと呑気に考えている場合ではなかった。 刃はルーンに手首のない左腕を突きつけると、がちんと音を鳴らした。 それが銃器の制御器を外す音だと言うことはルーンも知っていた。 「それじゃあ自己紹介も終わったところで……」 刃の眼が赤く灯り、その牙は月影を受け銀色に輝いた。 「……死にな!」 「ヤメテ!!」 澄んだ声が夜の沈黙を切り裂いた。 レミィは何も手に持たず、丸腰であることを強調しながら刃を睨んでいた。 「ワタシは抵抗シナイネ!だから、その人を助けるネ!」 しかし刃は低く嗤うと首を振った。 「その取引は聞けねえなぁ。あんたは遅かれ早かれ俺が連れて帰る。……それに」 ぎらりと牙が剥き出しにされる。 それは彼女に自分の行動への同意を求めるかのように妖しく、そして美しく輝いていた。 「お前だって分かるだろうが……狩猟者には狩ることこそが至高の喜びだって事くらいは」 「………アナタは………」 「分かったなら黙って見てなっ!俺はこいつを殺させて貰うぜっ!」 刃の右腕の動きに、レミィは叫び声を上げた。 「ヤメテェェェ!!!」 「よせ……」 「ん?」 レミィを制止したのは、他ならぬルーン自身だった。 「だって!アナタ、殺されるのヨ!?」 「へっ……馬鹿言うな。こいつにそんなコト出来るわけねえぜ」 ルーンの言葉に刃は眉を潜めた。 「お前何言ってんだ?俺はどうあってもお前を殺すつもりで……」 「5!」 刃を無視してルーンは叫んだ。 「4!」 突然の叫びにレミィも刃も面食らっている。 「3!」 あまりのことに呆気にとられていた刃は、我に返ってルーンに詰め寄った。 「お前一体何を……」 「2!」 そしてルーンは刃を見上げると、不敵な笑みを浮かべて見せた。 「一気に1!でもって0!発火ぁぁぁぁ!!」 ちゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん。 柏木城が、爆発した。 「あ……」 刃は間の抜けた表情で呟いた。 次第にそれは歪んでいき、何が起こったかを理解したところで絶叫に変わった。 「あ…あ…あああああああああああああああああーーーーーーーーっ!?」 ルーンは底意地の悪い笑みを向けながら刃を見上げる。 「ほらほら、お前の大切な主君を助けに行かなくていいのかな?」 「ち、千鶴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 刃は火炎を吹き上げ、宙に浮くと空高く舞い上がった。 「畜生!貴様、この借りは必ず返してやるからなぁぁぁぁぁ!!!!」 悔しそうにルーンの方を見て、吐き捨てるように呟く。 しかし、ルーンが楽しそうに柏木城の方を見て笑っているのを見て刃はやむなく城の方 へ向かって飛んでいった。 「いやーっ、さすが古い木造建築は良く燃えるな」 ルーンはひとしきり笑ってから、レミィの方を振り返って言った。 「どうだ?面白い余興だった…………ろ?」 レミィは笑っていた。 この上なく楽しそうに笑っていた。 狩猟者の眼になっていた。 「う…うふふふふふ。燃えるネ!みんな燃えるネ!邪教を崇拝する悪魔の子はみんな燃え てしまうがいいネーーーーーーッ!!うふふふ……アーハハハハハハハハハハハハ!」 「……やっぱり……俺、こいつに馴れること一生できないだろーな……」 ルーンはげそっとしてレミィが楽しそうに哄笑を上げるのを見て、力無く呟いた。 「燃えるネ……みんな燃えるのネーーーーーーーーーーーーッ!」 やがて火が収まってきた頃、レミィはルーンの方を振り返って笑った。 「助けてくれてサンクス。アナタ、名前はなんてユーの?」 「ん……そう言えば言ってなかったな。俺はルーン。そう呼ばれてる」 「ワタシはレミィ。ヨロシクね」 「ああ」 ルーンもぎこちなく、だが優しい笑顔を返した。 その笑顔を見て、レミィははっとした表情で言った。 「ああっ!今思い出したネ!……忍者!」 その大声にちょっと退いたルーンも、レミィの表情に気付いて不敵な笑みを返す。 「フン、やっと分かったか」 「とびかげっ!!」 レミィはびしっとルーンを指さして叫んだ。 「忍者とびかげネーーーーーーッ!」 「せ……せめて『赤影』ぇぇぇぇぇぇえぇーーーーーーーーーーっ!!」 ルーンの虚しい咆吼が月影の降り注ぐ丘に響きわたった。 第四話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 次回予告!! ついに悠が真の力を見せる! そのときハイドラントは、たけるは、ジンは、岩下は何を見たか! 魔王達の宴は如何なる結末を迎えるのか!? ってゆうか元々の原因はお金のトラブルってホントですか!? 謎が謎を呼ぶ大スペクタクル、次回を乞うご期待! 次回!『Lメモ魔王貸銭 硝子の現実 のフリしてやっぱり夢 第七十五幕』!! 嘘です!悠さんごめん!! 恋も部活も根性根性☆ 私隆雨ひづき15歳のスーパー美少女ヒロインよ! ちょっと大食いが玉に瑕だけど恋するハートは誰にも負けない! でも私見ちゃったの……耕一さんが女子トイレから出てくるところを! 私、一体どうすればいいの……教えて昌兄!! 次回!『L学園の転校生―ひづきガンマル!― ステップ3「耕一さんが そんな人だったなんて!」』 嘘です!佐藤さんガンマルさんごめん! 謎の坊主の正体がついに明かされる! ってゆうか初めの一言見たときてっきりTaSさんかと思いましたよ僕は! さあ、行け秋山!パンデモニウムに突撃し柳川の妄執を止めるのだ! 哭嘴を救ってやれるのは君しかいない! パワー全開マッチョでゴオ!!筋肉は地球を救う!! 次回!『Lメモ未来編『望まれぬ生命 ― 兄貴 ―』 嘘です!ジンさんごめん! 若人達の血が飛び散る真剣勝負……。 武闘大会の裏ではもう一つの闘いが繰り広げられていた。 脱げ!泣け!かっぱげ!大儲けだ! 賭博士達の腕が輝く! 参加者の皆さん、コメントをどうぞ! 「真面目に戦ってる俺達ダシにしてトトカルチョってんじゃねーーーっ!!!」 怒りの拳が賭博士達を裁く! アンタ背中が煤けてるぜ! 次回!『アングラップラーLメモ 第九百四十七話「ってゆーかこれって まずくない?」』 嘘です!beakerさんごめん! 喰われちゃった四天王に新たな仲間が沢山出現!! ふはははみんなオリキャラばっかり作るからだよ……って僕もですか!? えっ、何じゃあひょっとしてオリキャラ作っちゃったSS使い全員なの!? あああっ、他のLメモ全部オリキャラとLキャラばっかりじゃないかぁぁ! ちょっと誰かなんとかしてくれよぉぉぉぉぉ!!! 次回!『オサルページLメモ5「ってゆーか喰われちゃった水滸伝!?」』 嘘です!やーみぃごめん! ついに全てを知った岩下の逆襲が始まった! 囚われの瑞穂を救い出すため、戦え岩下! 落書きだ!イタ電だ!スカートめくりだ!ストーキングだ! 絶好調だ岩下、この調子だ! だけど本当にこれで瑞穂助けれるのかおいっ!? 次回!『糖鳩サブレSS 第七話「今更誰も覚えてないって(涙)」』 嘘です!いいから続き書けよ僕! 本当は!! ………………予告すること何もねーじゃん(汗) 次回!「Lメモ時代劇 第四話『古き伝説甦る時』 あんまり期待しなくても良いぞっ! ってゆーか何ページ書いてるんだ、僕(汗) A.19P(涙)