防戦……。 そう、防戦だった。 レザムヘイム城は現在魔道士教会の構成員達によって包囲されている。 さすがは本拠地だけあって魔道士達の強さは並大抵の者ではなかった。 歴戦の戦士達が一人、又一人と倒れて行く。 だがそれでも彼らとて戦士のプライドがある。 魔道士達との戦いは一進一退であった。 だが、それを打ち破るきっかけが生まれる。 それは魔道士教会の秘密兵器の投入であった……。 「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらーーっ!!!!!!! 死にたいヤツからかかってきやがれぇぇぇぇっっっ!!!」 古代文明の遺産、機械化戦闘兵士ジン・ジャザム。 彼の繰り出す古代兵器の数々は次々にこちら側に破壊をもたらして行く。 レザムヘイム城は陥落の危機にさらされていた……。 「だめです!もうこれ以上は持ちません!」 兵士の報告に、カザミは腰を上げた。 「ええい!こうなれば僕がでるっ!!!」 「待て、カザミ君!ここは僕がいこう!」 弟弟子を制し、セリスは不敵に笑った。 そんな彼を、カザミは眩しそうに見る。 「セリスさん……!」 「ヤツには借りがあってね……待っててくれ。すぐに帰ってくる」 だだだだだだ……。 「あっ、てめえセリス!?」 「ジン!ここから先はすすませんぞ!」 ぼかぼかぼかぼか。 ちゅごーーん。 ふらふら……………。 「ごめん、やられた」 ばたっ。 ………………………………………………………………。 「役たたずーーーーっ!?」 カザミが絶叫をあげる。 そんな彼を嘲笑うかのように、ジンは宮内に姿を現した。 「ふっふっふ……年貢の納め時だな、カザミ」 「うぬぅぅ……」 うなり声をあげ、カザミは大剣に手を掛けた。 だが、そこに乱入する者が居た。 「お待ちなさい!」 「ん!?女子供は引っ込んでろ!」 ジンは目もくれず、そう言い放つ。 しかし沙耶香は不敵な笑みを浮かべると、手を頭上にかざした。 「来たれ!神の御使いよっ!」 そのとき……室内が輝いた。 ジンを始め、カザミ達はあんぐりと口を開けて突如舞い降りてくるそれを見る。 先ほど沙耶香に付き合わされてそれを一足お先に見てしまったアヤカは虚ろな笑い声を あげていた。 やがて、誰のモノとも知れぬ絶叫があがる。 「そ……そんな馬鹿なぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」 だが、いくらアホらしくても……。 しっかりジンはお星様になってしまったのだった。 「も……もしかして、俺の出番こんだけーーーーーーーーーーーっ!?」 Lファンタジア第九話「魔界への扉」 俺は……教会最深部にいた。 ここまで一度も道には迷わなかった。 何故なら…俺はここを「知っている」。 そう、ここの事なら俺は何だって知っているのだ。 俺はゆっくりと大聖堂に入ろうとして……立ち止まった。 何者かが聖堂の前の扉にもたれかかっている。 見るまでもない…………。 よく知っている相手だ。 「どけ、貴姫」 凄みをきかせた声で、俺は彼女に言った。 貴姫はじっと俺を見つめている。 何を言うわけでもない……だが、視線は何よりも雄弁だ。 俺はもう一度、繰り返した。 「どけ、と言った」 「そんな義務は……ない!」 貴姫はそう強く断言した。 柔弱兼下という抽象の体現みたいな笑みを浮かべていたこれまでの彼女からはおよそ考 えられない。 だが……この感情的な顔こそが彼女の本質なのかも知れない。 本当にそうだろうか? 俺はそんな疑念を振り払うように頭を振ると、彼女をしっかりと見据えた。 何を言ったところで…彼女は敵でしかない。 「俺はお前を攻撃したくねーんだ。道を譲ってくれ」 貴姫は首を横に振ると、上着のポケットから鈍く光る輝きを取り出した。 俺は内心それに驚く。 彼女が取り出したのは魔法の武器でも何でもなく……拳銃。 俺の元居た世界にあった、最強の武器。 「動かないで下さい。私がこの引き金を引いただけであなたは心臓を射抜かれ死にます」 「知ってる」 俺は短く答えた。 ごくり…と唾を飲む音。 それは少なくとも俺のものではない。 貴姫はふわさっとその髪の毛を揺らした。 「あなたが……悪いんです」 それを皮切りに…彼女の髪は小刻みに揺れ始める。 だが、銃口は少しもぶれていないのは…さすがだ。 「俺のせいか?」 「……はい」 何が俺のせいなのか……俺は知らない。 少なくとも、俺をメイプルキングダムに導いたのは貴姫自身だし、それは彼女に下され た使命そのものであったはずだ。 だが、なんとなく彼女が言いたいことは分かった。 俺の罪は「そこにいたということ」。 存在……全て。無論、俺が糾弾されるいわれはない……。 だが何故か彼女の言い分を理解することが出来た。 「で……お前はどうする気だ?このまま永遠に俺を脅し続けているか?」 貴姫はびくっと震える。 いつもなら「それもいいかも知れませんね」などとにこにこと笑いながら言うところだ が……。貴姫はかなり余裕をなくしているようだ。 その分だけ危険は高い。……暴走しなければいいが。 貴姫はきっ、と俺を睨んで宣告した。 「あなたを殺します。……それが私の『使命』です」 俺はそんな彼女を見つめて、呟いた。 「一つ聞かせて貰おう。 自由とは何だ?」 ぴくっと貴姫の耳が動いた。 俺は卑怯だと思いつつも、彼女に訊く。 「教会の使命で縛られるのが……お前の自由か」 「う……うるさいっ!」 だんっ、と銃口が火を噴く。 だが、その弾はろくに狙いも付けていなかったために、大きく逸れて俺の遥か頭上の壁 に穴を空けた。 俺はちちちっと舌打ちすると、自分の心臓を指さした。 貴姫は顔を青くしてるのか赤くしてるのか分からない状態で、俺に叫ぶ。 「わざと外したんですよっ!私の信仰を愚弄するような発言は……許しません!」 俺は、内心冷や汗を掻きながらも彼女に囁いて行く。 うーん……危険だなぁ、この駆け引き。 「どうせ死ぬのに許すも許さないもないだろう。初めからここを狙えよ」 そう言って自分の心臓を指さしてから……俺は叩きつけるように言った。 「ただし、俺の命は安くないぞ!その引き金に俺の命と……………………………………… 俺達との思い出、信頼、その全てをかけやがれ!!」 はっきりと貴姫の顔がひきつるのが見えた。 多くは語ってはならない。 多弁は威圧感をなくす。 不意にお師様の言葉が脳裏に浮かんだ。 (はったりは滅多に使うな。それが、最後の武器になる。そしてそのやり方にもよーく気 を付けるんだな……まぁ、お前の性格じゃ使うこともないだろうが) (ズキン……!) くっ……またあの頭痛かよ。この大事なときに……。 それにしても……こんなときにお師様の顔を思い出すなんてな……。 ホームシックだろうか…馬鹿みたいだが。 俺は頭の中で頭を振ると、硬直する貴姫に声を張り上げた。 「さあ、撃て!俺達の信頼、それを撃ち抜くも撃ち抜かないも…お前の『自由』だ!!」 そう言いながら、俺は一歩を踏み出した。 「ひっ…!」 明らかに脅えた声で、貴姫は叫びを上げた。 貴姫は『自由』というキーワードに弱い。それを見越した上でのブラフだった。 そして、貴姫にとっては……俺達との思い出はおよそ初めての、貴重な体験のはずだ。 いわば、俺は俺の命とをすり替えることで俺達の信頼を逆に人質に取った。 さらにこの場合、当たらずとも引き金を引いた時点で貴姫は俺達の信頼を捨てる。 あとは彼女が、どちらを取るかが全てを決する!! 俺は命がけのブラフで一歩、また一歩と彼女に向かって歩み寄る……。 「こ……来ないで!」 彼女は涙を浮かべながら俺に向かって拳銃を突きつける。 だが、その引き金を引くことは出来ない……。 一歩、また……一歩! 彼女の拳銃は大きく縦に震えている。 俺は彼女に手が届く範囲に来ると、その瞳をじっと見つめた。 拳銃を手に取ると、それを大きく後方に投げ捨てる。 「あっ……」 俺はそんな彼女の声全てを塞ぐように……長い長い口づけをした。 ………呼吸が………!!!!!!!! 俺は心の中でじたばたと暴れ、なんとか実際に唇を離すのに成功した。 恐るべき事に目をきらきらと光らせている貴姫は全く苦しそうじゃない。 ……さ、さすが隠密だ……。 危うくこっちがキスされ殺されるところだったぞ……!? まぁこんな失態を見せたら折角のシリアスシーンが無駄になるから、そんな素振りは見 せないけどな。 貴姫は俺を見ると、拗ねたように呟いた。 「卑怯ですね、智波さんは……」 「ああ、天下無敵の卑怯者と呼んでくれ」 俺は本気で堂々とそう言うと、貴姫を抱きしめた。 一瞬抵抗しようとするが、すぐにその力を失う。 「よし……お前は教会よりも俺を取ったな」 「え……!?あ、あの、それはみんなの信頼が……」 「と・っ・た・ん・だ・な!?」 俺が強い調子で言うと、貴姫は諦めたように俯いた。 「……はい」 よーし。これでこいつも堕ちたな。お前も俺のもんだ、うけけけけけけ。 ……………なんか……………俺、だんだん単なるジゴロになってるような気がする……。 た、多分気のせいだ、そう言うことにしておこう。 ちょっと自分が怖いから。 「というわけで貴姫。俺は一人で決着を付ける……その間誰も入らないようにここで見張 ってろよ」 俺が命令すると、貴姫は仕方なさそーに頷いた。 ……んー。ちょっと効果が薄いか。 俺はすれ違いざまに、言った。 「貴姫……愛してるぞ」 ぴくっ、と背後で貴姫の動きが止まるのが分かった。 ……………俺、いつか天誅喰らうかもしれん。 大目に見てるんですよっ!(by愛の女神) あっ、なんか久しぶりのツッコミ。 なんか嬉しいよな。 ……って、こんなことやってる場合じゃない。 俺は大聖堂の扉を大きく開け放ち、叫んだ。 「我は放つあかりの白刃 我掲げるはセバスの拳 悪焼き尽くせソドムの炎!!!」 推定150MP消費。 ………前回今回とシリアスな展開で忘れてるかもしんねーけどな………。 俺は俺だっ!楽して勝てるなら正々堂々なんてクソ喰らえだっ!!! 「ああああっ!?ご無体な!?」 後ろで貴姫が絶叫しているのが聞こえた。 ふふん、何とでも喚きやがれ。 …………って、なんだ。 大して効いてるようにはみえねーな……。 大聖堂に佇む男はすっと手を掲げた。 途端に、ゆっくりと扉が閉まる。 やがて貴姫の居る廊下とは完全に隔てられ、俺はその人物と相対した。 巨大なステンドグラスから差し込む逆光が聖堂を照らしている。 壇上にあるのはどうやらこの世界を統べる三柱の女神の像のようだ。 そしてその前に立ってこちらを見ているのが…教皇、だろう。 もともとは白かっただろうそのローブは既に煤けてぼろぼろである。 ざまーみやがれ、うけけけけけ。 さーて、どんな顔してやがるんだ……。 と、俺が逆光に目を細めたとき、教皇は口を開いた。 「私はずっとあなたが来るのを待っていました……」 あれ?どこかで聞いたような声だな? 「あなたがこの世界に現れたときから、私はあなたをずっと待っていた。試練を与え、そ してそれを乗り切ってきた……」 教皇はとうとうと語り続ける。 「私はあなたを認め、そして魔界への扉を開こうと思い、あなたをここへ呼んだ…しかし」 ……嫌な予感が……する。 「廊下でラブシーン演じてくれたのはまぁ許しましょう。……だけどなぁ!!」 はっ……こ、この声はぁっ!? 俺はだらだらと冷や汗を流した。 教皇はぶるぶる震えて怒りを堪えているようだ。 そして彼がばっと聖衣をかなぐり捨てたとき、俺は思わず絶叫していた。 「てめえがいきなり先制攻撃してくれたせいでみーんなおじゃんだよ、智波ぃぃ!」 「お、お、お、お、お、お師様ぁぁぁっ!?」 そう!教皇の正体は……なんとルーンこと俺の師匠だった! みんな、分からなかっただろ! 安心しろ、直弟子の俺ですら丁寧語のせいでわかんなかった! ……って、それって大ピンチなんですけどぉぉぉぉ!? 「お、お師様落ちついてぇぇぇ!?」 「これがおちつけっか馬鹿野郎!てめえ絶対にぶっ殺すからなぁぁ!!!」 「ひーーっ!?」 教会前では、未だに榊が陣取っていた。 「ふわはははははっっ!!!この俺が居る限り中には一歩も入れさせんっ!」 そこに、一人のちんまりした少女が現れる。 その後ろにはおそるおそる、といった調子で背の高い女も付いていた。 「ん?なんだお前らっ!怪我しない内に帰………」 べきょぉっ!! 少女のパンチ一撃で結界は木っ端微塵に打ち砕かれた。 あんまりといえばあんまりのあっさりさに、榊は硬直する。 そんな彼に、背の高い娘が声を上げた。 「に、逃げなさい!あんた殺されるわよっ!?」 遅かった………。 次の瞬間には榊は少女の鉄拳をくらい、遥か彼方に吹っ飛ばされていった。 彼は死にこそしなかったが、全身骨折で全治数ヶ月の重傷を負った。 だが、そのときに入った生命保険のおかげで見事木風ちゃんと結婚式を挙げることが出 来たらしい。よかったよかった。 いや、あんまりよくはないかもしれないが。 アヤカははぁーーっと息を吐くと、何事もなかったかのように前進を続ける無敵少女の 後に従っていった。 「おらぁぁぁ!死にやがれ智波ぃぃぃっ!!!」 「ひぃぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーっ!?」 お師様の放った魔術により、俺は壁に叩きつけられた。 あまりの恐怖に防御もできない俺は、モロに攻撃を受けてしまう。 既にお師様への恐怖は本能となってしまっているのだった……しくしく。 って、このままだと本気で死ぬぞ、俺! と、とりあえず攻撃をそらさなければっ! 「お、お師様!ちょっと待った!もうこっちは何がなんだか……!」 「何がなんだかわかんなくさせたのはてめえだろがっ!」 あ、ごもっともです。 ……納得してどーする、俺よ。 「だーーっ、タンマタンマ!どうしてこんなところに女神像があるんですか!?魔道士教 会は魔力こそ真理として、女神と勇者を完全否定するんじゃ!?」 俺が叫ぶと、お師様は多少冷静になったようだった。 忘れてしまったのか………。 そんな小さな呟きが聞こえた。 ……忘れる?何を? (ズキン) くっ………また、頭痛………? 「……か。我々こそは女神の命を受ける組織なのだ」 あっ……いつの間にか、お師様の話が始まってしまっている。 俺はそれを理解しようとして……ぎょっとした。 「女神の……命!?それはつまり……」 「そうだ。魔道士教会は女神を否定するように見えて、そうではない。むしろ女神直々の お言葉を受ける……我々こそが正式な女神信仰を受け継いでいるのだ!」 お師様の言葉が妙にはっきり聞こえた。 やっぱり、そうだったのか。 女神信仰には中核が居たんだ。くそぉ……アヤカめ、嘘つきやがったな。 いや、あいつも本当のことを知らなかったのか? 「じゃ……じゃあ、何で表向き女神を否定してるんです!?」 俺の問いに、師匠は目を光らせた。 「世界の統一は崩壊へのエントロピーを早めてしまう……我々の存在意義とは、世界を統 合させないことにある。そして、そのためには主義主張が他と重ならない事が望ましい。 女神信仰は全ての国家に共通する、故に我々はそれと敵対する必要があった!」 ああああっ、なんかお師様がこんなこと言ってると凄く違和感がある!? お師様はカツサンドばっか喰ってる貧乏人じゃなかったのかぁ!? そんな戸惑う俺に、お師様はびしっ!と指を突きつけた。 「そして我々は真の勇者のみを認める!勇者の名をかたる不届き者は始末する、その徹底 によって我々は勇者を否定する、ということになっている!」 「し……真の勇者!?勇者って……何なんです?」 俺が聞くと、お師様は静かに言った。 「それは……」 「くっ…………!」 琴音はぎゅっと刀紐を噛みしめると、最後の気力を振り絞って攻撃を繰り出した。 「必殺、夢想楓!」 茜色の魔力の刃が飛び、5人ばかり魔獣を切り捌く。 しかし、それが限界だった。 数多く押し寄せるキメラの前に、ついに琴音はごくりと膝を突く。 「もう……駄目……。智波さんっ……!」 最初隣り合っていたOLHともいつの間にかキメラの群に分断されている。 助けもない中、ついに琴音は力つきようとしていた。 (女神様の罰が当たったんだ……智波さんを裏切ったから……) 絶望する琴音に、キメラの爪が振り下ろされた。 どげしっ!!!! キメラはものの見事に壁に埋まった。 さすがに琴音もあんぐりと口を開ける。 向こうではキメラを操っている魔道士も呆然としているようだ。 突然現れた少女はずかずかとそいつに近付いて行くと、思い切り蹴りかました。 魔道士はとんでもないスピードで壁に叩きつけられ、悶絶する。 「な……な……!?」 混乱する琴音に、アヤカは諦めたような目で合図を送った。 「ちゃお」 お師様は少し口ごもってから、俺に言った。 「勇者とは……この世界にミスが生じたとき、それを修正する者だ」 「ミス?」 お師様は頷いた。 「そう……この世界は女神によって決められた因果律によって動いている。だが、何かの 偶然でそれから逸脱した者が生まれるときがある……そのとき、そいつは女神のあらゆる 支配から解放され、世界を混沌に叩き込む!それを倒すのが勇者なんだよ!」 運命論……。 以前アヤカに教えて貰った教えが……事実? だが、世界を混沌に叩き込んだヤツって誰だ? 魔王……?ひなたん……?それとも………。 決まってる。セリカ様をさらった悪の魔道士だ。 俺は覚悟を決めると、お師様に訊いた。 「お師様……俺は……真の勇者ですか?」 しばらくの間。 耐えきれないくらい長い、そして実際には短い、間。 お師様はふっと顔を綻ばせた。 「ああ。お前は真の勇者だ」 お師様………! 「……った」 あう。 そ………それって……過去形? お師様は世にも嬉しそーな笑みを顔全体に浮かべると、ふっふっふと含み笑いをした。 「智波ぃぃぃっ!てめえが俺に攻撃した瞬間からてめえは死ぬって決まってんだっ!!」 「ひいいいい、またこれかぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!?」 「美加香さん………すみません」 「私も……生きてひなたさんに会いたいだけですよ」 貴姫と美加香は必死に闘っていた。 敵は聖騎士団の残ったメンバー達……YOSSYFLAMEやあかり、浩之などである。 だが、かなりきつい。 特に頑丈な美加香は別として、貴姫の体力は既に尽きつつあった。 「くっ……!」 貴姫が立ちくらみを起こし、よろける。 「貴姫さん!?」 慌てて振り返った美加香が、正面から敵の集中攻撃を喰らい倒れ伏した。 さすがに気絶してしまったらしい。 「も……もう、駄目なの……!?」 貴姫が呻いたとき、突然敵陣が割れ……。 あっと言う間に一人の少女が全員ブチのめしてしまった。 「へ……?」 さすがに唖然として貴姫も言葉が出ない。 そんな彼女を素通りして、少女は扉に近寄る。 『やっほー』 アヤカと琴音が疲れ切ったように呟いた。 俺はお師様の本気の一撃を前にして、立ちすくんだ。 「智波、安心しろ!ヤツは俺が代わりに倒してやるっっ!!」 「うわぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?」 そのとき、がぁぁん!と聖堂の封印されたはずのドアが開かれた。 いや、開かれた、というような生やさしいもんじゃない。 まさに、ぶち破られたのであった。 ついに貴姫が突破されたか!? だが、侵入者は俺の顔を見るとぱあっと顔を輝かせた。 「ダーリン、みーーっけ!」 「さ………沙耶香?」 俺はぎょっとして彼女を見る。 なんか……感じ変わったような……。 お師様は突然の乱入者に目を白黒させている。 「な、なんだお前っ!?」 そんなお師様を見て、沙耶香はぷくーーっと膨れた。 「ああーーーっ!ダーリンを虐めてるっ!もう怒っちゃったんだからーーっ!」 そして、次に俺の前に示された光景はおよそ常軌を逸していた。 沙耶香は手を組むと、天に祈った。 「天の使者よ……我に力を!」 ただそれだけを見るのならば、敬虔な女神信仰者に見えただろう。 ちょうど大聖堂の中であることだし……。 だが、空から降りてきた者はとんでもないモノだった。 犬のキグルミを来た少年である。 ………………………………………………………。 はあっ!? キグルミ男はそのままわんわんと吠えながら、どっかでみたよーなステッキをくわえて 天から降臨した。 ま……まさか………こいつが天の使者!? 「沙耶香ワン、これを使って変身するんだワン!」 語尾に「わん」つけて喋ってるーーーーーーーーーーっ!? だが沙耶香は何の疑問も抱いていないらしく、それを受け取るとぱちっとウインクして 見せた。 「ダーリン、見ててねっ!魔法神族ピクシーサヤ、突然いきなり七変化ーーっ!」 あああっ!? こ、これは……妙に色っぽいぞ!アダルトバージョンだ! あれよあれよと使い回しのCGが表示され、あっと言う間にどろろんぱ! ああっ、これはこれで可愛いっ!? つやつやな髪、すらりとしたプロポーション、そして可愛くハート型の尻尾……。 「………尻尾ぉぉぉーーーーーーー!?」 「やーん、ダーリンったら何処見てるのよぉ☆」 怖い………なんか明らかに異質なモノだぞっ!? そしてステッキを手渡すと、キグルミ男は再び天に昇っていった! 「こぉれで使命は果たしたワーーーン!」 ああっ、常識がぁぁ!!! 俺の常識が破壊されてゆくぅぅぅぅぅ!? はっ、お師様は!? 俺が慌ててお師様の方を見ると、お師様はぐぐっと拳を握りしめていた。 「あ、あれはもしや伝説の神犬様!?ああっ、ありがたやありがたやーーーーっ!!!」 はうわァッ! この方も常識外だったかぁぁぁ!!!!! み、みんなは……!? 「うふふふ……あははははは」 「いやぁぁぁ、犬が……犬が車に跳ねられました、わたしのせいですぅぅぅ!」 「これは夢……これは夢……蜘蛛の作り出した悪夢なのよ……」 ああ、よかった! みんなは俺と同じ感性だ! ……なんかちょっとはみ出しかけてるけど。 「そこの白い人!もうサヤはぷんぷんなんだからーーっ!」 「でえええっ!?ちょ、ちょっとお待ちをーーっ!」 問・答・無・用! 「サヤちゃんぐるぐるぱーーーんち!」 「げぶおおおっ!?」 お師様は沙耶香……いや、ピクシーサヤの一撃でステンドグラスをぶち割り吹っ飛んで しまった。 ………生きてるだろーか………? って……ああっ、サヤがこっち見てるっ!? 「ダーーーーリーーーーン!心配したんだからーーーっ!」 「ちょ、ちょっと待てぇぇ!俺は今ぼろぼろで………!」 俺は叫びながら、逃げようとした。 このとき……間の悪いことに、サヤ、俺、貴姫達、魔界への扉は一直線上にあった。 そしてサヤはまっしぐらに俺に飛びつき……。 どっかぁぁぁぁーーーーーん。 「好き好きダーリン!」 「どひぇーーっ!?」 「きゃぁぁぁっっ!?」 そのまま……俺達は魔界への扉をぶち抜き、闇の中へと転落していった……。 ついに魔界へと進む勇者智波! もう伏線もクソも全てモロバレでなんだか作者もヤケだ! こうなったら早く芹香様を救い出せ智波! 次回で、本当に完結するのか、このシリーズ! 数々の謎を孕みつつ……次回に続く!!