Lファンタジア第一話「飛び起きれば勇者だった」 投稿者:風見 ひなた
 とりあえず、これまでのことを思い返してみようじゃないか。
 まず六校時までは平穏に過ぎた。
 昼休みにDセリオとジン・ジャザムの銃撃戦の巻き添えを喰って死にかけたが、それは
まあいい。この学園ではいつものことだ。
 その後放課後になってから千鶴さんに料理を食わされかけ、逃亡した。
 さらに琴音にすれ違いざまに不吉な予言をされて階段からまっさかさまに転落した。
 よく生きていたものだと思うが、日常茶飯事だ。
 さらにその後阿部教師がまっちょぽーずで抱きつこうとしてきたのでそこら辺を散歩し
ていた来栖川空を尊い犠牲(さくりふぁいす)に差し出してとっとと逃亡した。
 なんとか逃げ切れたと思った矢先にちびっ子軍団が例によって垣根を飛び越えて遊びに
来ていた。
 野球をしたいけれど人手が足りないと言う。
 断ったら泣き出しそうな雰囲気だったので仕方なく参加した。
 てっきり外野手やらされると思ったらバッターで、ピッチャーはルーティだった。
「必殺人間魔球」
 とかでその父親よろしくティーナを投げつけられ、避ける間もなくおでことおでこを打
ち合わせて今ここに至るというわけだ。
 …………畜生、あのクソガキぶっ殺す。

 まあそんな復讐心をみなぎらせて目を開いて見れば。
 勇者になっていたというわけだ。


 Lファンタジア第一話「飛び起きれば勇者だった」


 あー、そういや「朝起きたら毒虫になっていた」ってゆー小説の題名は「変身」だった
な。いいよな、変身。最後みんなから嫌われて死ぬけど。
 国語の時間に習った知識を思い返し、はははっと力無く笑う。
「とゆうわけで早速ゴーですぞ勇者殿!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
 俺は頭を抱えて絶叫した。
 やだやだやだやだやだーーっ!俺は絶対におうち帰るーーー!
「これは夢だこれは夢だこれは夢だぁぁぁっ!!」
「勇者殿ぉぉぉぉっ!」
 ずいっっ!!!!
 そう言ってジジイが俺の顔を覗き込む。
 あまりの気色悪さにずずっと俺は三歩ほど引いた。
「夢ではございませぬ!あなた様こそ伝説の予言書によって定められた勇者ぁぁぁ!」
 セバスチャンがくわと目を見開き俺に詰め寄った。
 ただしその服装は何が嬉しくてこんな格好、というズタボロのきったねー衣だ。
 右手にクソ固い樫の杖なんて握ってやがる。
 きっとこれがあの有名な「村の長老」て職業の基本装備だな。
 あっと、それより勇者云々だったよな。
 俺はぶんぶんと首を振って目からだくだくと涙を流し絶叫した。
「俺勇者ちゃいますぅぅぅ!」
「いいや、予言は絶対!」
「予言なんて嘘に決まってんだろがっ!差し障りのないことてきとーにどーとでもとれる
よーにつらつらと四行詩にして書き連ねりゃ後世の人間が勝手につごーよく解釈して大騒
ぎしてくれんだよ分かったか1999年に人類滅ぶとか騒ぎ立ててる愚民ども!」
「あなた様の世界の一般大衆どもにケンカ売ってる場合ではありませんぞ!」
 くわっっ!!!
「この予言書にはほれこのとーり『あと411年したら姫さんさらわれて困ったことにな
っちゃうけど勇者さん現れて助けてくれるから心配ナッシング☆』と書かれておりマス!」
「予言されとるんやったら用心せんかーーーい!」
 俺は(多分)血の涙を流しながら絶叫した。
 大体なんだそのふざけた予言の書き方はっ!?
 大方王族に献上したもんなんだろうが、それならそれでもっと真面目に書きやがれ!
 まぁとっくにくたばっちまった奴に文句言っても仕方ねーけどな。
「姫を助け出す勇者様は異界から召喚することになっております。その求めに応じてやっ
てこられたあなた様はまさしく勇者!」
 頼むから汗みどろで迫ってくるなジジイ。
「だったらやりなおしてもっとやる気のある人召喚してお願いっ!」
 だがセバスのジジイは沈痛そうに首を振った。
 ざーとらしく目の端に涙なぞ浮かべながらううっとほざく。
「できんのです。実はこの儀式にはおよそ30万アクアほどかかっておりましてな」
 アクアってのは多分この世界の流通硬貨かなんからしいな。
「我々小国の予算では勇者召喚のための資金などこれ一回が限度なのです。つまり――」
 セバスの目にこれまでと違った鋭い眼光が宿った。
 ぎらりとした目。
 元いた世界―リーフ学園だが―でもこの目は見たことがある。
 狩人の目だ。
 びちびちと俺の頬に仕込み杖の刃なんかをびちびちと当てながら、すごんでみせる。
「金がねえっつってんだよ。わかんだろ、ああ?」
「いやーん、変なところでリアリティ〜」
 俺はだぅーっと目から涙を流しながら呟いた。
「ううぅ、引き受けます。引き受けますからその刀ひっこめてぇ〜〜」
「実に賢明なご判断でございます。私も血を見ずに済みました」
 俺はけほけほと咳き込みながら、何事もなかったようににこにこと穏やかに笑うセバス。
 このジジイ、いつか殺してやる。
「あ、あんた本当に単なる長老か?」
 俺の問いにセバスはきょとんとして答えた。
「は?誰がです?」
「あんた長老かなんかだろ?」
 セバスは自分の服を摘んで、こう答えた。
「ああ、これでございますか。ははは、これは参った。私めは城の大臣でございます」
 俺はあまりの衝撃にくらっときたね。
 ああっ、世界には飢えた人たちっていっぱい居るんだ☆
「……ごめんよ、それほど貧乏とは知らなかったんだ」
 思わず目を潤ませる俺に、セバスはひくひくと震えながら言った。
「何を勘違いなさっておられるのか大体予想範囲内ですが、これは予言によって定められ
た『勇者を迎える服』にございます」
「あ、そなの」
 俺はぴたっと涙を止めた。
 ぎょっとしてセバスがじりっと下がる。
「器用でございますな」
「これくらいリーフ学園の連中みんなするぞ」
「……………さすがは勇者殿の世界、みな常人離れしておられる…………」
 ほっとけや。
 気を取り直したように、セバスはずずいと俺に迫った。
「さて納得していただいたところで勇者様を冒険の旅にごあんなーい!」
 あー。かったりー。
 とことんまでやる気ゼロモードの俺を見て、セバスがずずっと顔を近づける。
「…………滅茶苦茶嫌そうですな」
「骨の髄までやる気無しだ」
 俺は即答した。
「大体俺に何かメリットあるわけ?こう、向こうの世界にまで持って帰れるような」
「むぅ、若者の即物的かつ自己中心的な価値観は現代社会の生み出した害悪の一つですな」
 何が現代社会だ文化レベル中世並の劣等文化世界が。
 …………差別的だな、この発言。
 取り消す、ちょっと立ち後れた発展途上社会☆
 よし、これでどこからも文句は来まいざまーみろけけけけけけ。
「勇者殿、失礼ながら先ほどからの心の中の言動、とても反社会的かつ品性下劣な…」
「人の考えを読むなジジイ」
 俺の文句にジジイはあっさりとひっこんだ。
 しかしまぁいいのかねこの作者も。
 俺なんかの第一人称で書いちゃってしんないよ?
「それは言ってはいけないことかと………」
 汗を垂らして突っ込むジジイに、俺は噛み付いた。
 いや、噛み付くように言った。
「うっせージジイ!人の考え読むなっちゅーとろーが!大体何で俺が主人公なのに一人称
なんだよっ、俺だってss使いなんだから俺に書かせやがれ!」
「ああああああああっ、そんなことをおっしゃってはこのコーナー自体の存在価値がっ」
「知ったことかっ!大体だなぁ、俺はもっとこー本来エレガントな奴なんだよ!それがな
んなんだよこの作者人の設定ばんばかばんばか破壊しやがって!いっぺん殺すぞあの」
 セバスがさっと俺の口を右手で塞いだ。
 真剣な目でしーーーっと俺に訴えかける。
「それ以上言うとここの読者全員にケンカ売りますぞ?」
「ちっ」
「黙っていて下さったら、良いことをお教えしましょう」
 ふむ、いいことか。
「何だ?言ってみな」
「はい。実は我々の世界では予言は神の啓示という考え方がありまして……」
「……?今の予言には411年後とかあったが、お前達の宗教って411年前に出来たの
か?」
 セバスはちちちっと指を振った。
「いえ、神への信仰は我々の祖が地に降り立って以来揺らいではおりませぬ。三女神様は
の忠実なる使徒の内選ばれた一人が信託によって100年ごとに予言書を書くのです」
「ふんふん」
「そして、その予言に従って世界の国々は運営していくのでございます」
 ふーん、どうやらこの世界の宗教……俺達の世界以上に強烈な一神教……いや、三女神
っつーから多神教に近い一神教か。それ一色で染められてるようだ。
 あー。教皇庁の連中とかってこっちと同じくお宝がっぽりの(以下非常にやばい発言の
ため削除)なんだろーなー。ちっ、羨ましいぜ。
「それがどうした?」
「分かりませぬか?予言は絶対……予言には誰であろうと絶対に逆らえんのです」
 ………それってつまり。
 セバスはにたーーっと悪人笑いを浮かべた。
「『英雄色を好む』……勇者とは絶大な力を持ち、可愛い女の子にモテモテになるように
定められておるのです」
 俺は生唾をごくりと飲み込んだ。
 目で先を促す。
 セバスは揉み手をしながら俺に囁いた。
「つまり、誰と何しようが世間様には悪評立てられず、それどころか勇者様のらぶろまん
すとして御用吟遊詩人に唄われ、無知な一般民衆どもに甘い夢として語られるのです」
 お………おいしいっ!?
 それって美味しすぎるぞっ!
 つまりはやりたいほーだいしほーだいってことかっっ!
 まるでHゲーの主人公みたいな待遇だっ!
「まぁ危険と引き替えの報酬というわけですな。いかがです?」
 い……いいぞそれは。
 俺は思わず頷こうとして……ちょっとためらった。
 待てよ?しかしそれだと女の子に釣られる馬鹿みたいだな。
 もっと他に利益っつーかこう………。
「盗賊の上前跳ね放題民家に侵入して人のプライバシー除いてもモノ徴収してもお咎め無
しモンスター惨殺して英雄扱いやりたい放題英雄様」
 ニヤリと悪党の笑いを浮かべつつセバスは言った。
 ううっ………………いい!
 いーけどもっと何かこう違うものをっ!
「も……もう一声!」
「もう私どもにはこれ以上はないのです!お願いです、姫を悪の魔道士から連れ戻して下
さいませっ!」そこでセバスは俺の目をじっと見つめて呟いた。
「………麗しき王女セリカ姫を!」
「よっしゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
 俺はぐわしっとセバスがびびるほどの迫力でその手を取った。
「訊くけど姫もラブラブ対象だよな!?ってゆーかメインヒロインだよな!?」
「………モチのロンでございます」
 ニタリ。
 俺はガッツポーズを取った。
 ふっふっふ…………ついに俺の時代が来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 パラレルワールドでも何でもいい、芹香様は俺のもんじゃあ!
「やる気になっていただけましたか勇者様!」
「おうよっ、悪の魔術士だろーが魔王だろーがかかってきやがれ!」
「さ……流石は勇者様!その意気です!それでこそ『浮気勇者』智波さまっ!」
 ぴた。
 ………………………………………………………おい。
「今なんつったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 俺はぎりぎりとセバスの首を絞めながら訊いた。
「で、ですから『浮気勇者』様と………………」
「なんじゃその『うわき』っつー薄弱な三文字言葉はっ!?」
 いっとくが俺は芹香様一筋だからな!
 誤解されるよーなこと言うんじゃねえっっ!!

 お前今さっき生唾飲み込んで喜んでたじゃねーか…………。

 しゃーーーーらっぷ!そこの読者A、いらんツッコミはよしてもらおう!
「そ、そういう称号と定められておるのですぅぅぅ」
 くそぉぉっ、この予言書書かせたの神自身ってことは、これ神の言葉か。
 おのれクソ女神、もし会ったらどつきまわしちゃるっ!
 この世界予言が全てで動いてるらしーからなー、くそー。
 この称号破棄するって事は勇者辞退するって事で、そーすると芹香様とラブラブであわ
よくば国王の座を狙うっってゆー我ながらスイートな考えが瓦解してしまう……。
 ちぃぃぃっ、この際称号くらい見逃してやるっ!
「涙を呑んで旅だってやるから感謝しろよジジイィィィィィィィ!」
 俺はちょっとしょっぱい涙を本当に呑みつつ言った。
「さ、さすが心がお広い……私めならば絶対嫌がります」
「いわんでいいっ!」
 畜生このジジイ今この場で殺したろか!
 俺は半ば本気でウイットに富んだジョークを考えつつ、側にあった剣を拾い上げた。
「これが旅立ちの餞別か?」
「鍛冶屋に特注で作らせた名剣です」
 うー、こういういい剣ってのは最初のイベントでなくなっちゃうんだよなー。
 でもこれはゲームじゃないし(ssです)平気か。
 ……誰だ、今突っ込んだの。
「んじゃ後は金だな。ほれ」
「はいはい」
 セバスは麻袋をひょいと俺の手の上に放り投げた。
 ずしいいいいいっ!!!!
「お、重いぞこれぇぇぇぇ!!?」
 俺は両手で必死に抱え込みつつ怒鳴った。
 セバスは重々しく頷く。
「当たり前です。硬貨1000枚ですぞ、一千枚。一枚10グラムとしても10キロです」
「く、くそー。ゲームなら65535枚あってもひょいひょいなのになー」
「ではこれで1000アクアですからな」
 ………………………………おいおい。
「普通30万掛けて召喚した国の所有物とでも言うべき存在に1000と剣持たせてあっ
さりと追い出すか?」
「一個師団をお供につけろとでも?そんな金はありませんぞ☆」
 くそー、貧乏国家め。
 こんな国強国に滅ぼされて……って、そんなことしたら王家乗っ取り計画がパーだな。
 変更。無能な上層部だけ死ね。
「んじゃ行ってくる……」
「お待ちなさい」
 まだなんかありやがんのかこのジジイ。
 思いっきり不機嫌な顔で振り返ると、ジジイはにやにやと不気味に笑っていやがった。
「一人だけではスライムに喰われて死にますぞ」
「はぁっ?たかだかスライムごときに喰われて死ぬような馬鹿がどこに………」
 そう言うと、セバスはまじまじと俺の瞳を覗き込んだ。
「スライムを甘く見ておられますな?奴は恐ろしいですぞ、木の上から落下してきてじわ
じわと接触した場所を同化して行き、最終的に完全に自分と一体にします。剣を腐食させ、
倒せるのは炎のみ。時々鎧甲が入った奴がおりまして、まれに消化し切れてない人骨が」
「わかったわかったもうやめろ!」
 くそー、ビデオゲーム系かと思ったらTRPGか。
 セバスはにまーーっと笑ってすっと後ろに手を差し出しやがった。
「それでは心強い旅の仲間どーぞぉ!」
「そんな大声ださなくっても聞こえるわよ……」
 んな事を言って姿を現したのは………。
「あ……!?」
「ん、初めまして勇者君」
 彼女はそう言って手を差し伸べてきた。
 だが、俺はその手を取ることも出来ずにぼーぜんとしていた。
 だって、そうだろう?
 いつも自分と馬鹿話してる気楽な友達が旅の仲間ってんだから。
「綾香………!?」
「あら、なんでいきなりあたしの名前しってんの?セバス、言った?」
「全然記憶にありませんな。もしかしたら勇者様の世界にも似た方がいらっしゃるのでは?」
 間の抜けた顔で硬直する俺を後目に、セバスと綾香は話していた。
「まぁ、女神様もどっかの世界に似せてこの世界を創造したってゆーしね」
「もしかしたら勇者殿もその世界から来られたのかも知れませぬな」
 ああぁぁぁぁ、確かに強いけどさ、なんでこいつなんだよぉぉ。
 せめて葵ちゃんとかもうちょっと人当たりが優しい奴だったらなー。
 まぁなっちまったもんはしょーがないか?
「よ……よろしく、俺は智波だ」
「あたしはアヤカね……って言うまでもないんだっけ?」
「……まあな」
 俺は自分の顔がひきつってるのを感じながら応対した。
 くそぉぉ、こいつとこれから長い旅をするのかよぉ。
 ……………って待てよ。
 俺はセバスの耳に口を近づけ、囁いた。
「おい、もしかしたらこいつもラブラブ候補か?」
「いえ彼女はNGです。巫女は処女性が命ですからな」
 なんかほっとしたような残念なような妙な気分だな。
「何話してんの?」
 にゅっと綾香……いや、アヤカが顔を突っ込んだ。
「あっ……その………お前、巫女だったんだな」
「まぁね。でもそれ以上に得意なのは……」
『格闘技』
 俺とアヤカは同時に言った。
 にやっとアヤカが笑う。
「鋭いじゃないの。分かった?」
「いや………知ってるから」
 俺は彼女とは反対に力無く笑った。
 くそー、洒落にならんぞ。
 このままだったら他の奴がこの世界にも居る確率は極めて高いじゃねえか。
「それではお二人様、行ってらっしゃいませ!」
 セバスの声に送られて……不本意ながら俺達は旅立つことになったのだった……。

 城門を出たところでアヤカが俺に笑いかけてきた。
「あんたも大変ねー。もとの世界に帰りたいでしょ?」
「ああ……まあな」
 内心で俺は舌を出していた。
 へへーん、誰があんな場所に帰りたいもんかよ!
 こっちの方が芹香様ゲットしやすいしモテモテだしでたまんねーな!
 しかも勇者様ときたもんだ!お師様に喰われそうになる世界よか100万倍マシだぜ!
 でも外見上は哀しげな目をしてみせるのだった。
「早く姫様を助け出さないとな……ところで」
「何?」
 俺の台詞に好感を覚えたらしく、アヤカが訊いてくる。
 ちょっと俺はそわそわしつつ、アヤカに訊いてみた。
「あの……ラブラブになるかも知れない女の子ってのは……いや、参考までに!」
 あー、じれってぇぇぇ!
 アヤカはじーーと俺の目を見つめ返す。
 うっ、読まれてるか?
 さすがにちょっと聞き方が露骨すぎたかも……!
 そう思ってると、アヤカは不審そうな目で言った。
「は?」
 ……いやあの「は?」ってこっちの台詞なんスけど奥さん。
「何それ?」
 その上何それってきたもんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
「せ……セバスが勇者になればモテモテだって……」
「ああ、それ」
 アヤカははーーーっとため息をついた。
 だるそうに手をひらひらと振ってみる。
「確かにラブラブな詩になったりするけどね……まさか手当たり次第オッケーとか思って
なかったわよね?」
 ぎくっ。違うの?
「あのね、この世界には予言をくだす物語の三柱の女神ってのがいるのよ。それぞれ愛、
勇気、希望を司る姉妹神なの。で、そのそれぞれが予言を下すわけなんだけど……」
「ふむふむ?」
「愛の女神様は『純愛』取り仕切ってるから、勇者様の恋は純愛だけよ」
 えっ?
 あのー、それは………………?
「真実の愛が………そこら中にぽいぽい転がってるわけないでしょ?」
「そ……そ………」
 そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 約束が違うじゃんかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぅっっっっ!!!!!
 俺はがびーーーんと地面に崩れ落ちた。
 アヤカは軽蔑したように俺を見下している。
「………まさか、本気で信じてたとは……………」
「あ、あ、あ、あ、あんのジジイーーーーーーーーーーーーーっっ!!」
  俺は血の涙を垂れ流しながら叫んだ。
「殺すっ!殺してやるっ!!絶対に殺すーーーっっ!!!」
「はいはい、いい子だから大人しく旅に出ようねーーーーーーー」
「放せぇぇぇぇえ、殺してやるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 こうして俺は………旅に出たわけだ…………………。
 ちくしょーー、こうなったら芹香様助け出して必ずこの世界支配してやるからなぁぁ!
 覚えてやがれセバスのジジイィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!


 さて、浮気勇者ちなみんが旅だった頃………。
「魔王様、ついに勇者が現れましたっっ!」
「えー?この前みたいな自称勇者じゃないでしょーね?」
 部下の報告に魔王はこりこりと頭を掻いた。
 この前現れた勇者とやらは弱すぎてお話にならなかったのだ。
「今度は予言書にもある、姫を救出に異世界から来た勇者とのこと!」
 それを聞いて、魔王は金色に輝く瞳を輝かせた。
 ぽん、と手を打ち立ち上がる。
「よぉーーし!早速そいつをここまで誘導しなさいっ!!!」
 それを聞いて、ぎくっと部下のページを捲る腕が硬直する。
「は?あの、しかし勇者はあくまで姫を救出に……」
 ぎんっ!と空気が凍り付いた。
 魔王は冷酷に輝く目で部下を見下ろしている。
「あたしはね……暇なのよ。早く連れてきなさいっ!」
「は、ははははははいいい!!!!」
 部下は慌てて跳びだして行く。
 魔王はニヤリと笑うと、側に控えていた紫色の髪の少女を立たせた。
「ねえ、ムラサキちゃんも勇者を見たいよねー☆」
 ムラサキと呼ばれた少女はにっこりと無邪気に微笑むと、こくっと頷いた。
「もちろん見たいなぁ。それに出来れば………」
 あどけなく笑うその瞳に、凍てつくような何かが輝く。
「………殺してあげたい」
 くっくっと魔王は笑うと、ムラサキの頬に舌を伸ばした。
 あん、と声を上げてムラサキの頬が真っ赤に染まった。
「そうね、早く会いたいわね……勇者に」
 魔王はそれだけ言うと、ムラサキを抱きしめたまま玉座に倒れ込んだ。


「勇者あらわる………か」
 彼は号外新聞を拾い上げると、それに素早く目を通した。
「気になるかね、ゆー………」
 背後から男が声を掛ける。
 ざくりと男の横の煉瓦の壁に斬撃が走った。
 立ちすくむ男に剣士は真剣な目で威圧を掛ける。
「私をその名で呼ぶな。私の名はハルカ・ハジメだ」
「わ、わかったハルカ……」
 男はごくりと唾を呑み、ハルカに応えた。
 満足そうにハルカは頷き……その眼がかっと見開く。
「何ぃ!?同行者はアヤカ・クルスガワだとおっ!?」
 びくっとあまりの剣幕に男は立ちすくむ。
 そんな彼にハルカはわなわなと震える手で訊いた。
「答えろ……これは『あの』アヤカのことか!?」
「何で俺に訊くのかしらんが多分そのアヤカだろっ!?」
 男のその返事を聞いて、ハルカはぐしゃっと新聞を握り潰した。
「確か……勇者を倒した冒険者は新しい勇者になって……パートナーを継承するんだよな?」
「そんなルールもあったな………ひっ!?」
 答えてから、男は今度こそ悲鳴を上げた。
 ハルカの背中に文字通り炎が立ち上っていたからだ。
 鬼。
 そう思えた。
「待っていろ勇者智波……貴様は確実に殺す!」
 そう言うと大陸屈指の剣士は高らかに笑った。
 町中で。ちょっと恥ずかしいね。


「勇者を捕獲した者に………120万アクア!?」
 べりっと手配書を壁から外して、青年は叫んだ。
 あまりの高額に目がくらくらする。
「ひゃ、ひゃ、ひゃくにじゅうまんあれば師匠の借金返してご飯たらふく食べて……そい
からそいから……」
 師匠はひょいと後ろからそれを覗き込み、ふーんと頷いた。
「大体1アクアあれば一日普通の宿で結構いいメシ食えるからな。こいつぁ破格だな」
「ですよねっ!?いくら勇者とはいえレベル1!こいつぁすげえっ!」
 青年はぐぐっと拳を握りしめた。
 師匠はそんな青年をちょっと冷たい目で見つめた。
「お前な……同行者はあのアヤカだぞ?そんな奴に……」
「だって、120万ですよ!?師匠の借金100万返しても残り20万……」
「……いっとくが俺のじゃないぞ。じいさんのだ。ったくあのジジイ孫に返済押しつけて
自分はのうのうと隠居しやがって……」
 ぶつぶつと呟く師匠を、がばっと青年が見つめる。
「……まさかお前、勇者にケンカ売ろうなんて考えてないよな?」
「考えてます」
 青年は言いきった。
 驚いたのはその師匠である。
「沙流斗……正気か?命いくつあっても足りんぞ!?」
「このままトレジャーハンターやってても借金なんて返せますか!」
 沙流斗はずびしっと断言した。
「俺は今日から副業のバウンティハンターを本業にします!」
 ………大人しくトレジャーハンターやって一山当てた方がいいと思うけどな。
 まぁ、自分の限界を知るってのも良いことかも知れないし。
 流れの商人beakerははあっとため息をつくと、ぱたぱたと手を振った。
「行って来い……ただし100万はちゃんともってこいよ」
 沙流斗の顔がぱあっと輝く。
「はいっ、行ってきます!」
 こうしてトレジャーハンター改めバウンティハンター沙流斗は旅に出た。


 頑張れ勇者智波、お前はギャグでも相手はマジだ!
 負けるな智波、すすめ浮気勇者智波っ!

「その称号はやめろぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」

             続く保証ゼロ☆

 智波 (勇者)
 LV1     武器:名剣「一葉」  防具:学生服(ブレザー)
 HP500
 MP500

 当然始めから強いぞ。だってL学園だもん

 アヤカ(武闘巫女)
 LV45    武器:マジックグローブ 防具:女神のローブ
 HP700
 MP600
 WP200

 やっぱりアヤカは強いやね。

 ハルカ・ハジメ(剣士)
 LV32     武器:野立二刀流 防具:ホワイトローブ
 HP650
 WP350

 白衣を着て戦う変人剣士だ(爆)

 沙流斗(バウンティハンター)
 LV1     武器:??? 防具:レザーメイル
 HP400
 MP100
 WP150

 良くわかんない人だね

 ムラサキ(魔王四天王)
 MLV200 武器:魔王の鎌 防具:魔鎧「宵闇」
 HP????
 MP?????
 WP???

 ムラサキ……鬼や………(汗)

 なお、LVは「冒険者レベル」なので当然いくら強くても冒険始めたばっかだったり転
職したりすると0になります。WPは技ポイントね。
 やられ役のモンスターはMLVだよ☆
 え……?これ見る限りでは殺られ役は人間?……ごもっとも(汗)
 ちなみにごおるどどらごんのMLVは150だ。