超爆機動武闘伝ルーティ212 第二話「まだ交じり合わぬ火線」 投稿者: 風見 ひなた
「世界には幾多の分岐が存在する。
 それは人間の決定であるかも知れないし、世界の成り立ちに関わるものかも知れない。
 この世界は明らかに後者として成り立っている……だが。
 忘れてはならない、今いる自分の世界こそが正統な世界であるという事を」

 つまり、わかりやすくいっちまえば…「半Lメモ世界」なんだよ(笑)


 近未来、HM達に人権が認められつつある世界。
 わずかな時間の内の急激なる進歩によってハイテクノロジーが奇形に人類社会に浸透す
る世界。
 そんな世界に、三人の少女達がいる。
 HM−212型マルティーナ…マール、ルーティ、ティーナ。
 これはその内の一人、ルーティが経験する一夏の過酷な冒険の物語である。

「超爆機動武闘伝ルーティ212!」


 奇形文明社会……すなわち、HM達が人間の間に混じってしばらく経った頃。
 彼女達に人権が認められるようになって行くのにはまだしも時期尚早ではあったが、そ
れでも人格を持ったHM達は普及されつつあった。
 街でHMを見かけるのは最早珍しいことではない……だが。
 それでもやはり彼女たちは異分子であった。
 そしてそれを象徴するようなインターナショナルなアトラクションが存在する。
「SS(ソウルフル・サイバーズ)ファイト」
 ……機械乙女の格闘技。
 格闘戦仕様の人格を持つ「HM」と魔道科学の産物「ライダブルズ」によって繰り広げ
られる一対一の格闘技戦。
 元々SCファイトと呼ばれていたそれは闇社会の賭けとして始まった。
 だが、近年になって世界的にメジャーなスポーツとなり、表社会では数々のチャンピォ
ンが誕生するに至った。名称もより呼びやすく「SSファイト」が正式名称となり、それ
につれてHMの地位は向上した。
 もはやチャンピォン達はかつての剣闘士ではないのだ。彼女たちは人々に夢と希望を与
える民衆のヒーロー達なのである。
 そんな彼女たちの同族であるHM達もまた人格を認められるようになっていったのは全
くこのスポーツのおかげなのだ。

「…とまあこういった経緯があってSSファイトが世界的スポーツとなったわけだ…」
 そう言いながら彼は生徒達を見渡した。
 可愛いもので、小学校の生徒達は―特に一年生達は、はしゃぎながらも結構授業を聴い
ている。むしろ高校生あたりの方が集中力が不足しているのではないだろうか‥とさえ思
える。
 無論そんなわけはないのだが、とにかく生徒達は彼の話を良く聞いていた。
 ひょっとしたら彼が恐いだけなのかも知れないが。
「だけどな」と彼はにかっと笑いながら言った。
 童顔で、まるでやんちゃな中学生あたりが喋っているようにも思えるが、これでも彼は
立派な社会人である。もっともまだ成り立ての一年生だが。
「僕に言わせれば今のSSファイトなんてものは大したものじゃない」
 この意見は彼の生徒達を驚かせた。
 よくファイトの次の日なんかは絶対に昨日の試合の話をしたりするので、てっきりSS
ファイトの猛烈な支持者とばかり思っていたのだ。
「あれはHMに対する侮辱だな。彼女たちは本当に戦うことを望んでいるのだろうか?
ただ人間に命令されたから戦っているだけじゃないのか?………そんな疑問を覚えたのは
僕が高校に入学した年だった」
 生徒達はじっと先生を見つめている。
 彼はその視線に促され、続けた。
「それ以来ファイトのファンだった僕は、熱が冷めてしまった。確かに中には戦うことに
誇りと歓びを感じる奴だっているだろう。だけど、それ以上に裏の事情ってもんがあるん
じゃないか?そう考えると、もう無邪気に見ていられなくなってしまった…」
 生徒達はじっと彼を見つめた。
 彼はそんな児童達をじっと見返す。
 そしてにっこりと笑って、言った。
「お前達、大事なことは『相手のことを考えてやる』ってことだ。物事の裏の裏までよー
く見て、それから相手に話しかけるようにするんだぞ」
「せんせー!」と児童の一人が手を挙げた。
「おぅ、何かなティーナちゃん」
 緑の髪をした長髪の女の子はにこにこと笑いながら先生に言い放す。
「裏の裏は表じゃないんですかーーーー?」
 同時に窓際に座っていた赤い髪の少女がごんと頭を机にぶつける。
 廊下側の茶色の髪の少女も頭を抑えて薄く笑っている。
 他の児童達はそーだそーだとティーナに同調して騒ぎ始めた。
 そこにすくっと一人の少女が立ち上がる。
 紫色の長い髪、おとなしめのくせにどことなく芯の通った印象。
「ティーナちゃん違うよ、裏の裏ってのは『物事の深いところまで』ってことだよ」
「え?笛音ちゃん、そうなの?」とびっくりしてティーナが聞き返す。
 笛音はえっへんと腰に手を当てた。
「そーなんだよ。お父さんが言ってたもん!ねえ、そうでしょ先生?」
 彼は少女達の妙なやりとりに苦笑しながら、「まあ大まかには合ってるな」と答えた。
 笛音はティーナに向かってさらに胸を反らす。
 姫川 笛音。内向的な性格だが、ティーナに対してのみなるべく対等に振る舞おうとす
る。結果的に天真爛漫なティーナに引きずられて高飛車な態度をとってしまう。
 彼は頭の中の記憶帳を引っぱり出すとそんな内容を確認した。
 四月に出会ってから三ヶ月程度しか過ぎておらず、まだまだ内容は薄い。
「すっごーい、笛音ちゃーん!!」とティーナは大げさに感心して見せた。
「へへぇ。ティーナちゃんには負けないから!」と誇らしげな態度。
 ここまでライバル意識を持ちながら、親友であるというのはなかなか凄いことだ。
 笛音はティーナにのみ心を開いており、その姉のマールとルーティはおろか他の生徒に
はあまり協調性がない。
 確か笛音の父親は来栖川重工で警備員をやっていたはずだが、それで縁が出来たという
わけでもないようだ。かたやロボット、かたや人間。友情に種族の差はないのか……。
 そんなことを考えて、彼は軽く頭を振った。
 いけないいけない、自分はHM三姉妹を人間として扱うと決めたのではないか。自分が
変なこだわりを持っていては、生徒達に伝染してしまう………。
 彼は内心の呟きを抑え、二人に「いいから早く座りなさい」と声をかけた。
 はっとして赤くなる笛音。相変わらずにこにこと笑っているティーナ。
 そろそろ時間だ………。
「よーし、これにて今日の道徳の授業はおしまい!明日は日曜日、気を付けて帰ること!」
 その言葉と同時にチャイムがスピーカーから流れてくる。
 級長が「きりーつ!」と声を張り上げた。
「れーい!」
『先生、さよーなら!みんな、さよーなら!』
「おぅ、いい週末を!」
 途端に生徒達は鞄をひっつかむと教室から撤退していった。
 彼はそんな子供達の姿に胸を満たすものを感じつつ、天職だと心から思う。
 ここまで短い一生にいろいろあったが、やはりこの道を選んで良かった……。
 彼は教壇から降りると、首を振って教室から出ようとした。
「先生」と声をかけられる。
 振り向くと、赤く短い髪、子供なのにおっとりした印象、お嬢ちゃんといった名詞がふ
さわしい感じの少女が立っていた。
 耳にはパッドが付いている。HMであることを示す何よりの証拠だ。
「やあマールちゃん。妹たちと一緒じゃなくていいのかい?」
 マールはじっと彼を見つめていたが、やがてゆっくりと声を絞り出した。
「あの…先生」
 その気分をおもんばかって、彼は表情で促す。にっこりと笑った。
 マールは真っ赤になりながらも下を見て呟いた。
「その…先生のお話、とってもためになりましたっ!ありがとうございます!」
「なーんだ、いいよいいよ。授業料もらってるし」
 そんな心にもない台詞を言ってみる。
 わざと悪人ぶろうとするのは、高校時代からの癖だ。HM達の感情について考え始めた
ときの。
 マールはそれについて何も答えなかった。
 ただ、
「先生がHMの気持ちはどうだろうって言ってくれたとき……私、すごく嬉しかったです」
 それだけ言って、マールは逃げるように走り去っていった。
 ………なんだありゃ。
 彼はそう思ってから、不意に理解して照れ笑いを浮かべる。
『ぴんぽんぱんぽん。風見先生、風見先生。今すぐ職員室にお戻り下さい』
「おっと、呼ばれた」
 放送を聞いて、彼はそう呟くとまだにやにやと笑いながら廊下を歩いていった。


 校門を出たマールを待っていたのは彼女のすぐ下の妹、ルーティだった。
 短く切りそろえた濃茶の髪が似合う季節にはまだちょっとだけ早い。
 それでも半袖半ズボンのボーイッシュな服装は夏娘の本領を存分に表している。
 まあ所詮七歳ではボーイッシュもへったくれもあったもんではないが…。
「姉さん、遅いよ」と少し膨れて文句を付ける。
「ルーティちゃんたら、待ってなくたってよかったのに」と呆れたように言ってから、ち
ょっと笑って「ありがとね」と付け加えた。
 この辺りの配慮の良さをして大人達はマールを『いい子』と呼ぶ。
「だって姉さんが心配だったんだもん。変な奴に捕まってたらどうしようとか…」
 そんなわけはない。
 と、マールは思っているがルーティは自分たちの存在の特異性に何となく気が付いてい
る。今年の春先に姉妹を守る誓いを立てて以来、結構これでも気を使っている。
 幸いというか何というか、未だにルーティの危惧するような事件は起こっていないが。
「ルーティちゃんって変なところで心配性なのね…」と呟いてから、マールは直感的に気
付いた。ルーティの活動係数が上がっているような気がする。
 センサーを少し走らせてみて、ピンと脳裏に閃くものがあった。
 ……この子、見てたんでしょうね。
「ルーティちゃん、先生のこと好き?」となにげにマールは訊いた。
 ぽんっとルーティの顔が赤くなる。
 血が通ってないのに何でそうなるのかはあまりよく知られてはいないが…。
 やっぱり、やめた。この話はHM解析ssではないので削除である。
 とにかく人間そっくりに作られてるって事でいいじゃないか。(開き直り)
「何でそんなこと…」絞り出すように答えるルーティ。
 まあ、いいでしょう。マールはにこっと笑いかけると、ルーティの手を取って初夏の日
差しの中を歩き出していった。


 眼下に広がる大海原。
 綿菓子のような白い雲。
 典型的なお天気空が周囲を取り巻く中で、旅客機が空をゆく。
 全く変化のない退屈な風景を少女はふぁぁぁぁっと欠伸して見ていた。
 年の頃は十八、九位。この暑苦しい気候の中、腰まで伸ばした黒髪がとても不釣り合い
だ。ぱっちりとした眼が印象的である。
 眠気をこらえて少女は隣の席に座っている女の子を見た。
「あなた、さっきから熱心に見てるけど…飽きない?」
 びくっと女の子は飛び上がると、少女を見てふるふると首を振った。
 飽きてない、と言いたいらしい。
「辛抱強いのね……あたしなんかもう飽きちゃったわよ」
 女の子はまたふるふると首を振った。
 長く伸ばした橙色の髪がぱさぱさ左右に揺れる。
 同じく橙色の眼で何事かを訴えているようだ。
 やはり七歳程度のくせに、瞳には叡知の光が宿っている。
「辛抱強くない、って言いたいの?」
 こくこくこくこく。
 少女は嘆息すると長すぎる髪を掻き上げた。
「来栖川の社長じゃないんだから、もっと喋りなさいよ」
 ぴたっと女の子の動きが止まる。
 そして、目に涙をじわっと浮かべると、ふるるっと肩を振るわせ始めた。
「えぐっ…えぐっ…ご、ごめんなさっ…ごめんなさいぃ…えぐっ」
 突然泣き出した女の子に、少女は慌てて体裁を取り繕おうとした。
「わたたたたっ!ちょっと、虐めてるわけじゃないんだから泣かないでよ!」
 びくっと女の子が震え、一層強く全身を振るわせる。
「ひっ…ごめんなさい…っ!」
「あーあーあーあーあーあーあー…もう」
 少女はだきっと女の子の頭を抱きしめた。
 三度目の震えを起こす。
 だが、今度は泣き出さずに少女の腕の中でおとなしくなった。
「ここにはあなたを虐める人はもう誰もいないのよ。だから、怖がらなくていいんだから
ね」
 少女は囁くように言い聞かせた。
 女の子の頭がこくこくと縦に揺れる。
「泣かない?」
 こくこく。
 少女はふっと息を吐くと、女の子を腕から起きあがらせた。
 その眼がきらきらと輝いている。
 女の子は顔をうつむけると、ぼそぼそっと何事か呟いた。
「え?なに?」と当然少女は聞き返す。
 再び女の子はびくっとした。
「ごめ…」
「おっと」少女は人差し指で女の子の唇を押さえた。
「いいことを教えてあげるわ。あたしが大嫌いなのは謝ることを知らない奴。…でも、自
分の意見をはっきり言えない奴と何でも自分が悪いと思い込む子も好きじゃないな」
 女の子はじっと涙に濡れた眼で少女を見上げた。
「私のこと、嫌いですか?」
「嫌いじゃないけど、好きじゃない」
 少女は女の子の頭をよしよしと撫でた。
「だから、好きになるように頑張って欲しいな」
「…はい」女の子はこくっと頷きながら言った。
「で」少女はにっこりと笑いながら、訊いた。「さっき何を言いかけたのかな?」
 女の子は、顔を再び伏せたが…それでも答えた。
「あの、私飛行機の窓からお外を見たことなかったから…」
「えっ?」
「いつも、暗いところで眠ってましたから…」
 …貨物室。これまでこの子はずっと「空輸」されてきたのだ。
 モノ扱いされて。
 少女はぎゅっと女の子を抱きしめた。
 きゃっ、と女の子が声を上げる。
 構わずに少女は呟いた。
「これから、色々見ればいいよ…もうあなたはモノじゃないんだから…」
 その瞳の端には輝く滴が流れている。


「来たわね、ルーティ」と美加香は白衣のポケットに手を突っ込んだまま言った。
 たった一人で部屋の真ん中に立っているルーティはこぼれそうな不安を胸に抱えている
ようだ。
 美加香は徹底的に無表情な顔を作り、重々しく語りかける。
「ルーティ、あなたにはこれから辛い思いをしてもらわねばならないわ」
「え?どういうこと?」
 かつんと靴音がする。
 美加香の後ろに、彼女の家族達が現れた。
「お父さん!あかりお母さん!」
 二人は辛そうな眼をして、ルーティを見やった。
「俺達は今からお前に辛い使命を課そうとしている…」
「全てのHMのため、平和のため、人間のため、そして何よりマールちゃんのために必要
なこと…でも、とても心が痛む事よ」
 ルーティは二人の親の言っている事の意味が飲み込めず、きょとんとした顔をしている。
「なんの話?あたしに、何をしろって言うの?」
 浩之は目を上げると、しっかとルーティを見やっていった。
「お前はマールを救いたいか!?自分を犠牲にしてみんなを助けたいか!?」
「そんなの当たり前じゃないか!」ルーティは即答した。
 あかりが悲痛な表情を浮かべる。
「ルーティちゃん、一度決めたらもう引き返せないわ。もしかしたらあなたが出るまでも
なく、事態は終わるかも知れない…あなたの行動は無駄になるかも知れないわ。他にも候
補者はいるから…」
 美加香が進み出て、ルーティの目を見た。
 そしてあかりの言動の補足をする。
「裏SSファイト…裏社会で始まった『真の』SSファイト。あなたはこれに出なくては
ならない」
「裏…SSファイト?」
 こくりと美加香が頷く。
「そう。次の裏SSファイトはこれまでとは違うわ。次のSSファイトにおいて優勝した
機体がこれから展開されるロボット兵士産業のプロトタイプになるのよ!」
「え?え?は、話が見えないんだけど…」
 美加香は戸惑うルーティに構わず説明を続けてゆく。

 これから来るべき戦争に向けて、ロボット兵士産業が始まろうとしている。そして、そ
のプロトタイプが必要となった。だが、どのロボット企業も自社のロボットを推挙してや
まない。そこで各企業のリーダー達はこれを「賭」で決めることにした。裏SSファイト
を開き、優勝した機体をベースにロボット兵士を作ることにしたのである。
 そして、この優勝にはもう一つ重大な意義が隠されていた。

「それで、あたしに優勝しろって言うの?」ルーティは不機嫌な声で言った。
「あたしに優勝して、あたしの能力を持った戦争の道具を作り出そうって言うの!?絶対
に嫌!!あたし、そんなものに出るものかっ!!!」
 ルーティが激昂するのは当然のことであった。
 その構想は、意志のないルーティのコピーを大量に作り出し、殺し合わせるというもの。
 人間の代理としてつまらない殺し合いをさせられるなどまっぴらごめんである。
 美加香はそんなルーティに、よく通る声で言った。
「優勝したロボットを所有するオーナーが、ロボット兵士製造の宗主権を握るのよ」
 ルーティは、はっとする。
「そうか…芹香お姉さんの考えは…!」
「本当にルーティちゃんは賢いわね。そう、会長の考えは『戦争の否定』。ルーティちゃ
んが優勝すれば会長が製造における全ての権利を一時的とはいえ独占する。そこで、ロボ
ット兵士の永久不作成を宣言すればロボットは戦争に使われなくなる…」
 美加香はそう続けた。
「でも、何であたしが戦うの?もっと強いHMは他にいるんじゃ…」
 これにはその場にいた三人の技術者全員が首を振った。
「それは違う、お前こそが一番だ。ただ、そのボディを使いこなせていないだけ…何故な
ら、お前は…」
「浩之ちゃん!」あかりの制止の声があがる。
 だが、ルーティ自身が首を振ってあかりを止めた。
 視線で続きを促す。
 浩之は頷くと、言い放った。
「お前はロボット兵士の雛形として開発されたからだ、ルーティ!」
 強い衝撃がルーティの心を襲った。
 薄々感づいてはいたものの、やはり実際に親自身に言われるとショックだった。
 冷たい空気が心を満たしてゆく。
 喘ぐ息を必死に押さえ、ルーティは姉妹についても訊いた。
「ティーナは普通のHMだが…マールは戦略用マザーコンピュータベースだ」
 ああ、そうなのか。
 大好きな姉も単なるHMではなかったのか。
 それはそうだろう…普通のHMに高すぎるまでの知力は必要ない。
「もちろんお前達を戦争の道具として育ててきた覚えはない。お前達は俺達の大事な娘だ。
それ以外の何者でもない」浩之はそう付け加えた。
 そしてそれに一片の嘘偽りもないのに、ルーティはわずかだが救われたような気分にな
った。
 浩之は真剣な眼でルーティを凝視し続ける。
「だが、ロボット兵士の成り手はお前以外にもたくさん候補がいるが、マザーベースの候
補はマールしかいない。つまり…」
 来栖川芹香が宗主権を握らない限り、ルーティが優勝しない限りマールは確実に戦争の
道具とされてしまう。マールはルーティの前から永遠に姿を消してしまう!
 あかりが再び心配そうにルーティを見た。
「会長の他にも賛同してくれるオーナーさんはいるわ。あなたがやらなくても他のオーナ
ーさんのHMが勝てば…」
「それ以上言わないで!」ルーティの短くびしりとしたセリフがあかりを遮った。
「あたしは戦う!マールお姉ちゃんはあたしが守る…誰にもこの仕事は渡さないっ!」
 小さなHMの瞳には、赤く燃えたぎる決意の炎が宿っていた。
 今、この年端も行かない幼女がかけがえのない者のためにその身を専科に投じようとし
ている!
 美加香はそれまで保っていたシリアスな表情を崩すと、キラキラ光る眼でルーティを見
た。
「そうと決まれば特訓よっ!」
「へっ?」ルーティは呆気にとられた表情をした。
 美加香は白衣を勢い良く脱ぎ捨てる。
 中からはすらりとした体の線に合った、真っ赤なレオタードが現れる。
「まさか何の訓練もない素人がSSファイトで戦えると思ってたわけないでしょ?たった
今から私があなたにとびっきりの戦闘訓練を伝授します!」
 よく見るとレオタードなどではない。
 材質に細かい特殊繊維が編み込まれた防刃服である。
 しかも裏地には通気性の良い絶縁体を仕込んであった。
「み、美加香さん!?その服は一体…」
「美加香さんじゃない!これからは私のことを『師匠』と呼ぶのよっ!」
「し、師匠ぉぉ!?」
 慌ててルーティは父母を振り返った。
「うんうん、ルーティってばいつの間にか立派な精神の持ち主になって…」
「本人が決めたことだから…私達、応援してるからね」
 なんか、納得してるみたい。
「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「さぁ!我が魔道闘技『赤炎光輝流』の道は長く険しいわよ!」
「何その『まどーとーぎ』って!?」
「読んで字の如く魔力を応用した武術に決まってるでしょうが!」
「そ、そんな怪しいモノ極めたくなーーーーーーーい!」


 かくしてルーティの修行の日々が今始まる。
 果たして彼女は見事優勝を修められるのか!?
 風見先生は本当に「ヤツ」なのか!?
 そしてあの謎の泣き虫少女の正体や、如何に!
 果たして流派SS不敗流は登場するのであろうか!
 「馬の人」「中の人」の立場や如何に!(笑)
 そして、あの男「全身凶器エルクゥ戦士」は登場するのであろうかっ!(爆)
 次回があるのか判らぬまま、いけいけルーティ格闘HM!
 もう、Lメモで「出番なし」なんて呼ばせない!!!!

                 つづくっ!(多分)