Lメモ外伝「おっきいってことは便利だねっ」 投稿者:風見 ひなた
 (この作品はGガンのマスターアジア登場の回のパロディが多分に含まれます)

 気が付けばそこは…戦場であった。
「目標B−5ブロックに侵入!マジックゴーレム部隊を破壊しながらこっちにやってきま
す!」(オペレーターあかり)
「くそぉっ!セキュリティシステムが一つも作動しやしねぇ!」(警備部隊長榊)
「ここが墜ちるのも…時間の問題か…」(敗北したモビルファイターのパイロットるーん)
 風見はぼーっとしてそれらの光景を見送っていた。
 何故自分がここにいるのか…理解できない。
「ひなたさん!」と声を掛けられ、ぼーっと振り向く。
 パートナーの美加香がぱりっとした戦闘服に身を包みこっちに近付いてきていた。
「おや、美加香。どうしたんですかその服は?」
 美加香は、はぁっ?というような顔をして風見を見たが、気を取り直してその手を取っ
た。
「こんな所で何してるんですか!?あなたは中央作戦会議室待機でしょっ!」
 はて?
 風見はその単語を頭の中でもう一度繰り返してみる。
 が、最近でその単語を聞いた覚えは全くない。
「ちょ、ちょっと美加香?何の話をしてるんですか?」
 美加香は嘆息すると風見の顔を睨み付けた。
「あなたがこの図書館を守るんでしょ!オペレーティングルームでのんびりと油売ってて
どうするんです!」
 図書館を守る?
 何の話だか一向に要領を得ない。
 風見は美加香に引きずられてゆきながらも、ハテナマークを頭の上に大量に浮かべてい
た。
 美加香はずかずかと通路を奥に奥にと進んでゆく。
 やがて二人は「緊急対策本部」と張り紙のしてある部屋の前にたどり着いた。
「ひなたさん、早く入りましょう!」
「あ、ちょっと待った。その前に………」
 風見はまじまじと美加香を見て、訊いた。
「僕は何でこんな所にいるんでしたっけ?」
 美加香の額がひくついた。

「記憶喪失?」
 まさたが繰り返す。
「…………の割には、あんまり困ったような顔してないね」
「だから、自分の名前なんかは覚えてて、この一ヶ月の記憶がないんですってば」と美加
香がフォローした。
 ジンは風見の顔を見てはあっとため息をつき、久々野は黙って腕を組んだ。
 ゆきはといえば美味しそうに目の前のジュースを啜っている。
 そして…………。
「この馬鹿弟子がぁぁぁっ!」
 ごかすっ!
 風見は頬に力のこもりまくった熱い一撃を受け、もんどりうった。
 西山はそれを見下ろしながら、びしっ!と指を突きつける。
「戦闘時に我を見失いあまつさえ記憶をなくすとは言語道断っ!恥を知れいっ!」
「まあまあ、抑えて抑えて………」と困ったようにまさたがそれを制す。
 風見は自分が突然置かれてしまった境遇をもう一度思い返してみた。

 事件は一ヶ月前にさかのぼる。
 二時間目の授業中、突然学園の外から来襲した謎の敵により学園は未曾有の窮地に立た
された。
 連中は圧倒的な数で学園を包囲、そして占領を始めた。
 まず体育館が、講堂が、中等部が占領され、ついで初等科が敵の手に落ちた。
 そして今や高等科校舎までが占領され、残るはここ図書館のみ。
 月島は本校舎陥落の際に行方不明となり、生き残った生徒達はなんとかここまで落ち延
びて最終抵抗に入った。
 敵の戦闘能力はどれも大したことはないのだが、いかんせん多勢に無勢。
 そして何よりそのボス格は異常なまでの強さを誇るという。
 なにせ、あのVセリオさえもが敗れてしまったのだ。
 幸いにも風見、ジン、久々野、ゆき、まさたのエルクゥ同盟メンバーとかつてのリーダ
ー西山は全員無傷でここまで逃げてこれた。
 そして今、戦術顧問に西山を迎え最終作戦が開始されようとしている………。

 とゆーわけでたった今から風見はメイプルガンダムに乗って謎のロボット軍団と戦わね
ばならないのである。
「で、そのロボット軍団ってのはどんな奴等なんです?」
 その質問に、一同は沈黙した。
 みんな非常に言いにくそうである。
「………………………謎のロボット兵団としか言いようがないな」と重々しい沈黙を破り
ジンが呟いた。
 黙って以下五名が頷く。
 風見は何となく理解した。
(形容できないような容姿をしてるのか……………)
 と、そこにサイレンが鳴り響いた。
「ムッ!?」と西山が呻く。「いかん!攻めてきたぞ!」
 ぱっと巨大なモニターに外の様子が大写しになる。
 そして画面を埋めるようにぎっしりと詰まったのは……………。
 風見はあんぐりと口を開けた。
「こ、これは…………………………………」
「謎のロボット軍団………ってことにしておきなさい、精神衛生のために」とまさたが呟
く。

 きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅき
ゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅき
ゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅき
ゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅ…………………きゅぴ〜〜〜〜☆

 そこら中を超ペンギソが闊歩していた。
 風見は自分の体がよろめくのを感じた。
 慌てて手をさしのべる美加香にキャッチされ、何とか持ち直した。
(げ、現実が…………………………僕の現実が破壊されてゆく………………………)
 まさたはぱたぱたと下敷きで自分の顔をあおぎながら、
「いやあ……………なんでこんなのが大量発生したんだろ…………………夏だからかなあ」 と呟いた。
 風見はがばっと立ち上がり、まさたの胸ぐらを掴んだ。
「今度は一体何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「いや、別に何も………………………………………………………」
「んじゃなんで図書館生息のアレがわらわらわらわら湧いて出てるんだっ!?それとも何
か、ニャントロ星人かブラックシルバーの陰謀か!?」風見が半泣きになってまさたの胸
ぐらを揺さぶった。
「決めつけるなぁぁぁ!」ずごぐしゃぁぁぁぁぁぁぁ!と西山の拳が再び風見にめり込む!
 風見は軽々と吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
 久々野はうんうんと頷いた。
「奴等がどこから来たのかは全く不明だ。誰かのせいにして弾劾するのは早計だな」
 ゆきは何も分かってないのか或いはこの状況全てを無視することに決めたのかにこにこ
と笑っている。
 ジンだけが同情するような眼で風見を見ていた。
「連中、団体でこっちに迫ってきます!」
 じっとスクリーンを見つめていた美加香が警告した。
 それを聞いた西山が突然くるくると高速回転し始める!

 ぎゅるるるるるるるる………………………………………びしぃっ!

「落ち着け美加香!第一防衛ラインで絶対に食い止める!」
 腕組みして自信満々言い放つ西山。
 それを見て風見はなんだかもうどうでも良くなってきてしまった。


「爆裂っ!メイプルフィンガー!」ずがーん!
「いまだ、イデオンソード!」ずごしゃっ!!
「うりゃ、サイコミュ状態電波型・散  !」びびびびびびっ!
「とりゃっ!ビームモップ巨大バージョン!」ずかべきっ!
「えい!とっても卑怯な攻撃!」ちゅごーーーーん!


「あっさりと勝ってしまった………………」と風見は嘆息した。
 どうも量産型臭かった超ペンギソ団はあっと言う間にエルクゥ同盟によってしばき倒さ
れてしまった。
 が、この勝利に酔いしれるわけにはいかない。
 量産型ということは、何者かがこれを指揮しているという事だ。
 図書館に帰還した五人は、美加香と共に待っていた西山の険しい顔に迎えられた。
「敵のボスを倒さねばやはりどうにもこうにも行かないようだ……………」
 わかっとるわい、そんなもん。
「そこで、俺は一つの作戦を考えついた…………………美加香!」
 西山は指を鳴らした。
 はい、と美加香がマップを表示する。
 そこに現れたのは図書館周辺の地形だった。
 ちかちかと赤いランプがちょっと離れたところで大量にうろうろしていた。
「この赤いのが『謎のロボット兵団』だ」
 あくまでその呼称にこだわる気かい。
「いいか、連中の中にボスがいることは間違いない!そこで連中をおびき出してそこに向
かってマップ兵器を叩き込む!これぞいわゆる……………ハーメルンの笛吹き!」
 へなへなへな〜〜〜〜〜〜と一同から力が抜けていった。
 かろうじて耐えたまさたがはい、と手を挙げた。
「でもどうやって連中をおびき寄せるんです?」
 西山は含み笑いをすると、画面の方に顎をしゃくった。
「すでに手は打ってある………………………」
 画面に『その』光景が大写しに表示される。
 ひくっと風見の体が震える。
 ゆきが顔を背け、久々野が眉をしかめる。
 美加香がうっぷ、と口に手をやった。
 まさたがその光景をみやり、呆然と呟いた。
「ポチを…………喰ってる……………」
 超ペンギソがダイナミックに量産型ポチを食していた。
 きゅーーーーーーーーーーーーーと雄叫び(?)を上げる。
「これが、超ペンギソの本当の姿……………………」とジンが呻いた。
『うまそうじゃの…妾も賞味して良いか?』という声がジンから聞こえてきたのはご愛敬
だ…………。
 西山が腰に手を当てて胸を張った。
「このポチ料理を連中のたまり場からここへ配置して置いた!もうじきここに来るだろう
っ!」
『ってゆーか気持ち悪い真似するなーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!』
 全員のキックが西山に決まった。
「な、何をする!せっかく人が考えたというのに!」西山が頬に手を当てて抗議の声を上
げた。
「見てて胸が悪くなるようなブラックネタを使わないで下さい!」と風見が突っ込んだ。
「だが有効な作戦とは思うぞ」と西山が自己正当化しようとする。
「だからってやっていいギャグと悪いギャグが…」
 その声は久々野の声によって打ち破られた。
「おい…なんか、超高速でこっちに迫ってきてるんだが………」
 光点が大量にわさわさとこっちに突撃してきていた。
 モニターを見ると、涎をだらだらと流した食いっぱぐれた超ペンギソ達が餌を求めてこ
っちに迫ってきている。
「ひっ…」その声は誰が発した物だったろうか?
 まあ、ともかくそれはそれとして……………。

 人類最後の砦はあっさりと踏みつぶされた。

 西山は腕を組んで荒野に立っていた。
「むう、大自然の驚異か………。人でない物を御するとは難しいことよの…………………」
「あんたが悪いんだろーがっ!」と風見の蹴りが西山の後頭部に命中した。
 頭から地面に埋まった西山がひくひくと足を震わせ………がばっ!と立ち上がる。
「風見ぃ!師匠を足蹴にするとは何事かぁぁぁぁぁっ!」
「どやかましいわっ!あなたが余計なことしなけりゃまだ持ちこたえたのに…図書館が壊
れたのはあなたのせいでしょっ!」
 風見は勢い任せにその叫びを叩きつける。
 が、西山はニヤリと笑った。
「……………………それが狙いだった、言われればどうする?」
 風見は虚を突かれた。
 師は何を言っているのだ?
 まるで、この言い種では…………………。
「師匠?」と風見は呼びかける。
 だが西山はその笑いを隠そうともしなかった。
「俺が初めから図書館を潰すつもりだった…そして、お前をおびき寄せるつもりだった。
そう言われれば、お前はどうする?」
 まさか。風見の脳裏をあり得ない疑惑がよぎる。
 そんなはずはない。師匠がまさかそんなことを考えるはずはない。
 だが、否定すればするほど大きくなるこの疑惑は…………………。
「そんな…………師匠……………………」
「これで学園内の全ての勢力は潰えた。月島政権、塔出身者、図書館、購買部、ジャッジ、
エルクゥ同盟、ダーク十三使徒、薔薇部、来栖川警備保障……………もはや俺の野望の妨
げになる物はなにもない………………理想郷はすぐそこにあるのだ、風見よ」
 師匠の…戯れであって欲しい言葉。だが、これが真とすれば………。
「貴方は…貴方という人は、そのために影から超ペンギソを操って……………」
 西山は愉快そうな笑いを顔に張り付けたまま、頷いた。
「風見、ついに我らの理想郷が完成する。学園に流したDK細胞の侵食を止める者はもう
ない。今こそ、楓様を頂点とする世界が来るのだっ!さあ、行くぞ風見!世界を我らの手
に!」
 風見は師を睨み付けて呟いた。
「嫌だ」
 西山は弟子を見やる。何か大事な間違いをしでかした時、是正をうながすように。
 だが風見は誤りを正さなかった。
「僕は貴方と共には行かない。楓だけが全ての世界など、間違っている!」
 西山の顔が険しくなる。
「腑抜けたか風見…しばらく見ぬ間に楓様を愛する心を見失ったのか?」
 その声が心なしかひび割れている。
 西山は静かな怒りを心に満たしてゆく…。
「僕は楓ちゃんが好きだ。だけどそれは彼女の幸福を願ってのもの…楓ちゃんを盲愛する
ものなんかじゃない!僕は貴方に賛同できないっ!」
 西山の顔が歪んでゆく。
 彼は顔をほころばせ、やがてそれは哄笑となっていった。
「なるほど。おまえは俺の思想に付いていけないと言うわけか。いや、立派だ、よくぞ自
分でここまで考えるようになった…………だがな」その瞳が冷徹な光を帯びる。「お前に
は拒否権などないのだ我が弟子よっ!」
 西山が指を鳴らす…たちまち風見の体から無数の触手が吹き出し、自身に巻き付いてゆ
く!
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」風見が叫びを上げる。
 全身の肉という肉が触手へと変わってゆき、自身を封じて軋みを上げる!
 風見の体に埋め込まれたDK細胞が今、真のマスターの手により呼び覚まされ侵食を始
めてゆく。
「風見、二度とは言わぬ!俺に付いてくるのだっ!今ならお前の脳は支配しないでやろう!」 西山の表情はあらゆる感情を感じさせない。
 それが弟子を思っているのか、そうでないのかなど見ることは出来ない…。
 風見はそんな師の顔を眺めると、激痛の中でさえ鼻で笑った。
「絶対にごめんこうむりますね!」
 西山の顔に落胆と失望の陰りが見えた。そして、次の瞬間激怒のみが吹き出す。
「ならば死ね!」
 風見の顔に茜色の金属片が浮かぶ。
 髪が硬質化し、表皮が金属に覆われてゆく。
 自らの消滅する絶望の中で風見は覚悟を決めた。
 そのとき緑光が空を駆け、金属化してゆく風見の胸に突き立った。
 何かの砕ける音。
 茜と銀の金属片が舞う中で、風見はDK細胞から解放され地面に降り立った。
 西山が驚愕に目を見開く。
 振り返ればそこには覆面を被った青年が立っていた!
「よくぞ言った風見!お前の心、しかと受け取ったぞ!」
 ………………………………………………………………………………………………………。
 絶妙に怪しい青年に、風見は硬直した。よくよく自分の周りには変態しか現れないらし
い。
「あ、あの〜、貴方は………?」それでも何とか声を絞り出す。
 青年はふっと笑うと、遠い眼をした。
「名前など戦士には必要もない物。SS不敗流を捨てたときに全ては必要なくなった…」
 嘘吐け、あれだけ毎日明け方の談話室で暴れておいて。
 風見の内心のツッコミは全く届かなかったらしい。
 青年はびしと西山を指す。
「久しぶりだな西山…敢えて師匠とは呼ばないが」
「むう、怪しい仮面男など弟子にとった覚えはないが大体中の人はあれだなーと見当は付
くぞ」
「中の人って言うなー!」セリスが突っ込んだ。岸和田だなあ。「まあそれはそれとして
風見!やってしまえっ!」
 見ず知らずの人にそこまで偉そうにされる言われも覚えもないが、この際深いことは考
えないことにした。
 ざっ、という足音。
 振り返ればエルクゥ同盟のメンバー達が西山を見据えていた。
 西山はたんっと飛びずさると、大声で絶叫した。
「ふーうんさいきーーーーーっ!」
 ぱからっぱからっぱからっぱからっ…………。
 一同の顔が驚愕に歪む。
 夕日をバックに…………悠 朔がモビルファイターを持って参上したっ!
「ひひーーーーーーーーーーーーん!(泣)」いななく。
 …………………………………………………………………………………………。
「見よ、これが我が愛馬ふーうんさいきよっ!」高らかに西山が笑う。
 …………………………………………………………………………………………………。
『ってゆーか馬の着ぐるみーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!』
 全員が一斉に突っ込んだ。
 風見が目尻を押さえる。
「ゆーさくったら…………SS不敗に入りたいばかりに馬になってまで………………」
「だーーーっ、ゆーさくって言うなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーっ!!」
「人間の尊厳を捨てとるな」とジンが半眼で呟く。お前には言われたくないと思うぞ。
「はっはっは、何はともあれモビルトレース!」西山がごまかしながら宣言した。
 西山のバックに落雷が走る。
 突然大地が揺らぎ、一同は大きくよろめいた。
(じ、地震かっ!?)
 だが、それは違った。
 さらにどこからかLeaf学園初等科コーラス団(構成:ティーナ、ルーティ、ティー
ナ、笛音、木風)の賛美歌が聞こえてくる。
 ジンははっとして立ちすくんだ。
「ま、まさかこれは……………………!?」
 何が起こっているのか、そして起ころうとしているのか分からず、ゆきが悲鳴を上げる。
 風見は大体次に何が起こるのか予測できたが、しかしやはりいくらなんでもそれは…と
思い否定した。
 だが大抵の場合あり得ない出来事ほど起こりやすい。
 特にここLeaf学園においては。
 ずもももももももも………………………と地面が盛り上がり、茜色の金属の海へと変化
してゆく。液体金属にくっきりと美少女の顔が浮かび上がる。
「デビルカエデ様、降臨っっっっ!」西山の哄笑が轟く!
 そしてLCLの海ならぬDK細胞の海から巨大化楓様が誕生した。
「あああああああああああああああああ、やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」とジンが泣きながら大地にしがみついた。
 巨大楓様は額に腕組みした西山を乗せたままどこまでも成長してゆく。
 風見はあまりのあほらしさと既視感に目眩がした。
 まさたがぐぐっと拳を握りしめる。
「な、なんてことだ………………巨大楓ちゃんを使っちゃったら馬の人の立場がないじゃ
ないかっ!」
「馬の人も言うなーーーーーーーーーーーーーっ!」とコスプレした悠 朔が絶叫する。
 ぽん、と風見の肩が軽く叩かれた。
 覆面ナイスガイ青年ことセリスが親指を立てて微笑み掛けていた。
「さあ、師匠を妄執から解放して上げるんだ!」
 ジンやゆきも寄ってくる。
「行け、風見。キング・オブ・エディフェルの真の力を見せろ!」
「これは君の仕事だ、誰にも代わってやることは出来ない…」
 風見はひくっと頬をひきつらせ、地獄の底から響いてくるような声で呟いた。
「………それって、僕一人に責任押しつけてるんじゃ…………」
 ぎくっと一同が怯み、半歩下がる。
『や、やだなあ。そんなわけないじゃないか、ははははは……………』
 全員で声がひきつっている。
 風見ははあっとため息をつくと、我が身の不運を呪った。
(何でエルクゥ同盟なんて馬鹿な仕事引き受けちゃったんだろ………)
「こぉぉぉぉい、ガンダムッ!」
 図書館の残骸の山の中からメイプルガンダムが現れる!
 半ば自暴自棄になりながらモビルトレースすると、今や巨大楓様は天高くそびえ立って
いた…。
 そしてさらに成長を続け続け続け………………………。
 ぴくっと止まると、高速でしゅるるるるるる………と風船の空気が抜けるようにしぼん
できた。
 西山がぜいぜい言ってせき込んでいた。
「し、しまった………調子に乗って成層圏まで行ってしまった………あー、死ぬかと思っ
た」
 今がチャーーーンス!
 風見は必殺技を撃とうとして………いやに窮屈なのに気付いた。
「おい美加香。何故こんな所にいる?」
「ひなたさんが私を巻き込んだんじゃないですか!」
 雑音に気付き下を向くと、一同がにやにや笑いながらこっちを見ていた。
(催促してるな連中…………)苦々しくひきつった笑いを浮かべる。
 このまま踏みつぶしたろかいとも思ったが、後が恐いので止めておくことにした。
「美加香、もう何をすればいいか分かってますね?」
「とっても不本意ながら」そう言いつつも結構楽しそうだ。
 なんだかとってもむかついたが、この際全てに目をつぶることにした。
 恥ずかしさに耐えるように集中してから、きっと美加香を正視する。
(……………………スーツに着替えるとますます胸がないのが分かるな……………………)
 雑念が頭を駆けめぐる。
 それをなんとか振り払って、美加香に語りかけた。
「美加香、僕はお前が欲しい!」
「ひなたさん……………………」
 そして意識を同調させ、精神の糸で心を直結する。
『二人の心が真っ赤に燃える…』                          
 ようやく西山は呼吸を取り戻した。
 風見の方を向いて、舌打ちする。
『愛よ響けと轟き叫ぶ…………』
 かっと二人の目が開かれた。
『SS不敗マスターカエデ!あんたは間違っている!』
「ほざけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

『美加香っ!ラブラブ…天驚拳!!!』
「楓っっ!ラブラブ……っ!!天驚拳っっっ!!!!」

 気合いの乗りまくった技が互いを襲った…………。

「終わったな」
「ああ、もう終わりだ………」
 かくして見事に相討ちになった弟子と師。
 巨大楓様はDK細胞に戻り、メイプルガンダムは見事に大破した。
 西山はぱったりと倒れて動かないが、もうしばらくは楓の世界など夢見ることはあるま
い。
 全ては終わったのだ。
 明日もいつもと変わらぬ世界が待っている。
 はずだった。
 ずしーん、ずしーん…………。
 一同は互いに顔を見合わせた。
 ずしーん、ずしーん…………。
 おそるおそる振り向く。
 そして、今度こそ一同は脳死を味わった。
 そういえば超ペンギソ団のボスってまだ倒してなかったっけ…………。
『故意も悪意もユウヤにお任せ☆魔法少女エルクゥユウヤ、素敵に巨大に登場です☆』
 ミニス○ポリスの制服で現れた今回のエルクゥユウヤは…………。

 何故か無闇にでかかった。

「脳が膿むうううううううううううううううううううううっ〜!」ジンが眼から血涙を流
しながら地面をのたうち回った。
 そして。そしてしかも。
「ぱ…………ぱんちら………………」
 そんなまさたの呟きに、エルクゥユウヤは可愛く科を作って見せた。
『いやーん、えっちぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜☆』

































 「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!?」久々野は脳が腐ってゆくのを感じた。
 ゆきはすでに即身成仏してしまっている。
 まさたは真っ白に燃え尽きている。
 ジンは口から血反吐を吐きながらひくひくと震えている。
 セリスはマルチの名を叫びつつお花畑をさまよっている。
 西山は幸いにも既に死んでいる。
 多行の沈黙の後で目を覚ました風見と美加香はひくっとすくみ上がる。
「もう、みんな照れ屋さん☆」ステッキぶんぶんぶんぶん〜〜〜〜〜♪
 …………………ぷちっ。
(え?)風見はぎょっとして横を見た。
 いつもと違う表情で肩を震わせている美加香がいた。
「ふふふっふふふっふっふふふふうふふふふふふふ……………………」
(目がいっちゃってる……………!?)
「てめえは殺すっ!もう絶対確実に地獄を見せてやる〜〜〜〜〜〜!!!!!」
 そう言い捨てると美加香は何かのスイッチを取り出すと、スイッチを入れた!
「だ、誰かたすけてくれぇ!?」
「か、身体が勝手に〜〜〜!?」
「いやああああ、あんなのの近くに行きたくないのに〜〜〜〜〜!?」
 どこに隠れていたのか、一般生徒たちがわらわらと集まってくる。
 そして身体のコントロールを奪われたままエルクゥユウヤに突撃してゆくっ!
「神風特攻〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 ちゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん。

 エルクゥユウヤは倒れた。
「ふふふ、こんなこともあろうかと一般生徒の皆さんに極秘に取り付けて置いたリモート
コントローラーとリモートボム…………まさかこんな形で役に立とうとは……………」
「あ、あの〜美加香さん?」風見はおそるおそる声を掛けた。
 だがいっちゃった眼をした美加香には聞こえていない。
「あはははははは!そうよ、この路線よっ!今回から私はまっどさいえんてぃすととして
のキャラクターを手に入れるのよっ!!!」
 風見はもう泣きたくなってきた。

 ずどーん、ずどーん。

 ああ、また足音が聞こえる。
 風見はもう何も頓着しない気分でそっちを向いた。
「これでどうだぁぁぁぁぁぁ!もう影が薄いとは呼ばせんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 セーラー服を着た巨大浩之…大方ノーベルガンダムとか何とかの模倣だろう。
「むっ!?私に逆らうとは愚かなっ!後悔を教えて上げるわっっ!」
 だが、それは風見に…………。
「はーはっはっは、主役復活の生贄第一号にしてくれよう!」
 狂気の扉を開かせるには…………。
「Leaf学園の!科学力は!世界一ぃぃぃぃぃ!」
 充分な物であった。

「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!消すっ!てめえらみんな消
しちゃるぅぅぅぅぅ!」
 そして、魔王が降臨した。


 気が付けば風見は家のベッドの中にいた。
 体中汗びっしょりで気持ち悪い……………………。
 が、悪夢の世界から逃れることが出来てほっとした気分だ。
 しかし変な夢を見た。
 師匠は切れるし、ペンギソは大発生するし、ポチは喰われるし、巨大楓様が出てくるし、
挙げ句の果てに美加香が発狂して浩之がノーベルガンダムで………何か忘れてるような気
がする。思い出したくもないが。
「しかしなんだよエルクゥ同盟って………そんなもんに入ってたまりますか、まったく…」
 そう一人ごちながら風見は伸びをした。
 夢オチ。なんて素晴らしい終わりかたなんだ………。
「今日もいい天気だな…………」そう言いながら風見はカーテンを開けた。

 きゅきゅきゅきゅきゅきゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 超ペンギソが街を闊歩していた。
 風見は何も言わずさっとカーテンを閉めると、再びベッドに潜り込んだ。
「まだ夢。これはまだ夢なんだぁぁぁぁぁぁ!」
 自分に言い聞かせるように頭から布団を被る風見だった。


 なお、この朝の超ペンギソ脱走事件は夢でも何でもなく…この事件を解決してしまった
ことが元で風見はキング・オブ・エディフェルの称号を伝承してしまうことになる。
 が、それは取り合えず風見が布団から出て破壊され尽くした街を眺めるまでのお預けで
ある…。
                   完