Lメモ外伝「泣いていいか?」 投稿者:風見 ひなた
Lメモ外伝「泣いていいか?」
(R指定。十五歳未満、心臓の弱い方は閲覧をご遠慮下さい)


 みなさんこんにちわ、風見です。
 今僕たちは南の国へ来ています。ここは暑くて……ちょっと蚊が多くて困ります。
「言ってる側からジンさん、そっち行きました!」
「うおおおおおっ!?」
 ジンさんのマシンガンが火を噴き、たちまち蚊は蜂の巣にされました。
 火力って素晴らしい。
「風見ぃぃ!ここは一体何処なんだぁぁ!!」
「はっはっは、ただなんとなく漠然と南の国に決まってるじゃありませんか」
「体長1メートルの蚊が飛び回ってる場所がまともな場所かっ!」
 僕は陽気に笑いながら肩を竦めました。
「HAHAHAHAHAHA、メキシカン必要ないこと気にしないねアミーゴ」
「お前は何時からメキシコ人になった!?大体ここは熱帯雨林じゃねーか!?」
 ちっちっちっちっち。
「ジンさん」
 僕はちょっとだけ真剣な眼になって言いました。
「あなた……今この状況の非常識さとあの女の異常のどちらが好きですか?」
「うううっ……何で俺達あんな女に気に入られたんだろうな……」
 ジンさんは本気で滝涙を流しながらしみじみと呟きました。
 僕はそんな彼の肩をがしっと掴むと、拳を握りながら断言します。
「だけど安心して下さい!この雨林のどこかに生えているというマンドレイクを持ち帰っ
て芹香様に渡しさえすればっ!」
「おおっ!惚れ薬が出来て、それを四季に呑ませれば……晴れて俺達の共通悪夢、四季の
恐怖から脱出できる!」
『目指すは四季と浩之をくっつけることっ!!』
 僕たちは声を合わせて希望を捨てない者だけに見えるという南の空のチャレンジングス
ピリットの星に叫びました。
「てなわけでとっととマンドレイク捜しに行きましょうか」
「うむ」
 ジンさんと僕は素に戻って歩き出しました。
 それにしても暑いです。
 あと、そこら辺の河に蠢く3mもあってハイハイしてる素早さ720のヒルとか今にも
シャイニングフィソガー繰り出しそうなサメとかがいい味だしてます。
「本気でここ何処だ、おい」
「惑星ネオケニア」
「それ……なんかどこかで聞き覚えがあるような……」
「あー、暑いですねー」
 僕はジンさんが思い出さないうちにさっさと早歩きにしました。
 ありがとう箱船計画。
 ジンさんはとりあえず気にするのを止めたらしく、きょろきょろと辺りを見渡し始めま
した。
「それにしても……マンドレイクってのは何処に生えてるんだ?」
 ぶみっ。
「さあ…この図鑑にはここら辺に分布してるって載ってるんですけど……」
 ぶみっ。
『ちょっと、痛いじゃない!!』
「ん?」
「なんか聞こえましたね?」
 僕たちはきょろきょろと辺りを見渡しました。
 しかし、人っ子一人はおろか動物さえ見あたりません。
「おかしいな……誰もいないぞ」
 ぶみっ。
「確かに声が聞こえたと思ったんですけど……」
 ぶみっ。
『もうっ、痛いわよっ!足下よ、足下っ!』
 僕たちはぎょっとして足元を見ました。
 なるほど、ちょうちんみたいな花の下に人間の首に酷似した根っこを持つ植物を踏みつ
けています。確かにマンドレイクです。しかし、その顔はどこかで見覚えがある………
「…………………………」
「…………………………」
『うふふふ、私の美しさに驚いて声も出ないのねエルクゥユウヤ☆(首ぶんぶん)』
 僕たちは顔を見合わせて頷くと、それぞれの足に力を込めました。
「いやあああああああっ、何も見えないなぁぁぁ風見ぃぃぃ?」
 ぐりぐりっ。
「そうですねぇ、やっぱり空耳だったんでしょぉぉぉぉねぇぇぇ」
 ぶみぶみぶみっ。
『きゃーーっ、痛いの痛いのでもそれがやっぱりちょっぴりカ・イ・カ・ン。きゃっ☆』
(ぐらっっ)
 本気で世界が歪むのを実感したのは久しぶりでした。ええ。
 不意にジンさんは地面にしゃがみ込むと肩を振るわせて泣き出してしまいました。
「もうやだ……何で異星の、しかも密林まで来てこの人に振り回されなきゃいけねーんだ」「ジンさん、運命は変えられますっ!」
『いやーんもう、運命のデ・ア・イ☆(首ぶんぶん)』
 ジンさんの眼に凶悪な紅い瞳が宿り、がちりと腕の粒子砲を解除する音が聞こえました。
「すまん風見、頼むからこいつだけはこの俺の手で殺させてくれぇぇぇ!!」
「ジンさん落ち着いてくださいぃぃぃぃ!!」
『ダーリンの愛って過激……でもそれが嬉しかったりする複雑な乙女心エルクゥユウヤ☆』
「うきぃぃぃぃぃぃぃーーーーーっ!」

 とりあえずジンさんを落ち着かせてから、僕は対策を練ることにしました。
「さて、問題はどうやってこいつを引っこ抜くかですね……」
「確か引っこ抜くときに凄まじい叫びを上げて、引っこ抜いた奴に死の呪いを掛けるんだ
よな?」
 ジンさんの言葉に僕は我ながら複雑な表情で頷きました。
「ええ。犬に代わりに引かせるって言うから持ってきたんですけど」
 道具袋から取り出したパトラッシュ(仮名)は既に首に巻き付けられた銀製ワイヤーに
よってぶくぶくと口から涎と泡を吹きだしたまま動かなくなっていました。
 これではもう使いものになりません。
「……よく捕まえてきたな、そんな奴」
「楓様を囮にして師匠に轢かせたんです」
 ああ、今でも思い出すと頭に浮かぶ(「楓ええええええええええ!!!」)の叫び。
 何故かジンさんのわずかに恐怖を浮かべた眼が気になったものの、僕は何事もなかった
かのように犬の死骸を放り捨てると乗ってきた馬にもたれかかりました。
「あーあ、動物捜してこなくちゃ……尻尾があれば何でも良いんですがね」
「うーん……尻尾のある動物か」
「困りましたねぇヒンヒン」
『…………………………………』

「てなわけで!」
「さあいっちょ行ってみようかぁぁぁぁ!!」
 僕とジンさんが全力で祝福してあげているというのに、馬は怒濤の涙を溢れさせながら
抵抗しました。
「いやああああああああああああ!?」
 既にジンさんはお経など唱え始めています。
 僕は笑いながらぱたぱたとハンカチを振りました。
「骨は拾って上げるから心配するな!葬式も出してやる!ちなみに戒名は『エド』だ!」
「そんなアメリカホームドラマの登場馬物のような戒名はいらーーん!!」
 JJは未だに何か喚いていますが、聞こえないったらナッシング。
『あん……私初めてなの、優しくしてねエルクゥユウヤ☆(首ぶんぶん)』
「なんか言ってる!なんか言ってますよこの草ぁぁぁぁぁぁ!?」
「幻聴だ!さあこっちに向かって走ってこぉぉぉぉぉい!男優さんカモーーン!」
 ジンさんの呼びかけにJJさんはぶんぶんと首を振りました。
「死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤぁぁぁ!!」
「大丈夫だ!輪廻転生を信じろすなわちエンドレスマルチ!」
「何がっ!?」
 ちっ、このままでは埒があかないっ!
「こら女優!なんとかしろっ!」
『ダーリンが動かないなら私がシてア・ゲ・ル☆ きゃっ』
 言うなり、ユウヤ草(芸名)の葉がしゅるると音を立てて伸び、JJの足に絡みつきま
した。
『もうダーリンってばおっきいんだから。馬並☆』
「そりゃ馬だからな」
 ジンさんは冷静にツッコミを入れています。
 と、JJの顔に変化が起きました。
「死ぬのはイヤ……でも犯られるのはもっとイヤァァァァァァ!!!」
 そんないななきを残して、全力でこっちに向かって走ってきます。
 ユウヤ草は眼を細めてうっとりと呟きました。
『あっ……気持ちイイ……あっ、あっ……』
 何故か吐き気がしてきました。
 いや、マジで。
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
 JJは泣きながら最後の一踏ん張りを入れました。
 すっぽーん。
『ああっ、イク!イっちゃう!あああっ、イックゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
 吐き気が、吐き気がぁぁぁぁ!?
 おえええっ。

 僕は震える手でなんとかうっとりした顔をしているユウヤ草を回収しました。
 JJは白目をむいて既に息絶えています。
 僕は追悼の念を表してから、ジンさんの方を振り向きました。
「やりました……さあ、地球に帰りましょう!」
 ジンさんも死んでいました。



 芹香様にユウヤ草を手渡すと、芹香様はこくこくと頷かれました。
「これを挽き潰して加工すればほれ薬になるんですか?」
「……………(こくこく)」
「明日取りに来れば良いんですね?」
「……………(こくこく)」
 芹香様は奥から瓶に入った完成品を取り出されました。
 その形状はなんだか薬というよりは食用植物の根っこ……つまり、ニンジンとかそう言
った感じの物体に見えました。
「……………」
「なるほど、これを相手に食べさせれば良いんですか」
「……………(こくこく)」
「ありがとうございます、芹香様!これで尊い二つの命が救われました!!」
「……………(ふるふる)」
 芹香様は……少し笑われたようだった。

「ジンさん、やりましたよ!明日になれば悪夢の終焉です!」
「永かった……あまりにも永かったなぁ、この夜は……」
「本当に……」
 僕たちは思わず二人で手を握りあって涙しました。
「あっ。ひーなちゃん&じーん君♪」
 ひきっ、と僕たちは思わず固まってしまいました。
 ぎりぎりぎりと首を廻せば、いま一番見たくない者がにこにことこっちを向いて微笑ん
でいました。
「し……四季……さん」
「てめぇ……何しに来やがった……」
 すると四季はいかにも心外だ、といった感じで首を傾げました。
「美味しいシチュー作ったの。食べて食べて♪」
 そう言ってずずいと鍋を取り出します。
 宇宙帰りの鼻に美味しそうな芳香が届き、ついつい腹の虫が鳴ってしまいました。
 ポークシチューらしく、こってりした色のスープの中によく煮えた豚と色とりどりの野
菜が入っていていかにも美味しそうです。
 僕たちは顔を見合わせると腹を抱えながら相談しました。
「ま…まあいいですよね」
「ああ…明日で終わりだしな」
「何が終わりなの?」
 びくっとしてジンさんと僕はふるふると大きく首を振りました。
「何でもない何でもない!」
「さあ、喰うぞーーっ!」
「二人とも変なの……さ、どーぞ!」
 四季はてきぱきと皿にシチューを盛りつけます。
 僕は暴れる腹の虫を宥めながら、スプーンを口に運びました。
 その直後、叩きつけられるような衝撃が僕を襲います。
「う……旨いッ!?」
「ああっ!こいつぁ美味えっ!!」
 僕たちはがつがつとそれを食欲の命ずるまま腹の中に押し込んでいきました。
 四季はにこっと笑いながら僕たちに訊きます。
「どう、美味しい?」
「凄く旨い!こんな旨いシチュー食べたの生まれて初めてだっ!」
「特にこの野菜が絶品っ!」
「それは良かったわ」
 四季はうんうんと頷きながら、僕たちに言いました。
「ダーリンにも好評だったの」
 ぴたっ。
 僕はその表現に言いしれぬ悪意を感じ、二皿目から掬おうとしたスプーンを止めました。
 そういえば、この赤い野菜……どこかで見覚えが……。
「あの……つかぬことを尋ねますが……この野菜、何処から?」
 僕が尋ねると、四季はにっこりと底の知れぬ笑みを浮かべながら言いました。
「宇宙の果てから」
『エルクゥユウヤ☆』
 僕は皿を置くと、ジンさんの方を向きました。
 ジンさんも気付いたらしく、僕の方を見つめています。
「なぁ」ジンさんは沈痛な口調で言いました。
「はい」僕も神妙な顔で頷きました。
「泣いていいか?」
「どうぞ泣いて下さい。僕も泣きます」
 四季はにこにこと笑顔を絶やさずに、もう一度訊きました。
「美味しい?」
『ああ、死ぬほど』

              ギャフン!!

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 えーと、一昨日のチャットで四季が妙に可愛く思えたのでこんなの書いてみました。
 早い話が四季さんへのファンレターです。

 SS使い通信

 JJさん、不幸はいつも突然やってきます。くじけないでください。そして馬車馬のよ
      うに働いて下さい。(風見に感想なんて書くから………・苦笑)
 XY−MENさん、いつもいつも汚れ役ありがとうございます。
 ジンさん、巻き込んでごめんなさい。
 ハイドさん、最近自分ギャグ書くときだけ狂ってると感じます(笑)
 春夏さん、四天王脱出は諦めた方が世のため人のためです(笑)

 そしてこれを読んで不覚にも四季を可愛いと思ってしまった貴方。
 もう抜けられません(笑)      

(オチ解説)
 芹香様ってば、もう(笑)