SS探偵・風上日陰の事件簿3「闇に躍る怪盗、其は…」 投稿者:風見 ひなた


 風見のシリーズ物は三作目で大抵つまらなくなります(笑)

 登場人物紹介
 風上日陰  ……13歳の少年探偵。L学本編よりも悪どいという噂。
 ハイドラント……13歳マニアの助手。実は胸の大きさには拘りがない。
 西山英志  ……警部補。おかっぱでロリ気味で美乳の日本美人が好き。
 怪盗薔薇仮面……最近帝都を賑わす謎の怪盗。

「ちょっと待て」
 ハイドラントは登場人物表にびしっとツッコミを入れた。
「何だ、帝都ってのは?」
「帝都は帝都だよ。マスター、そんな事も知らないの?」
 日陰の説明になってない説明はさておいて、ハイドは人物表を見ながら言った。
「いや、そーじゃなくてだな。実はこの話って大正や昭和初期の話だったのか?」
「L学は帝政国家が舞台だからいーんだよ。一応この世界も緑帝歴73年なの」
「現代なのか……怪盗や少年探偵がうろついてる世界の癖に」
 どうでもいいけど緑帝って現在何歳なのだか。そろそろぽっくり逝きそうな感じなんだが。
 ちなみにこのコメントを作中人物が言うと不敬罪で即死刑。
「そういやジンさんは来年から落葉帝とか言ってたな」
「マスター、地の文と会話したり他の時空に付いてコメントしちゃ駄目だよ」
 言えた口じゃねえくせに、日陰は偉そうにそう言った。
 西山警部補はそんなわけのわからない事を話す探偵達に向かってこほんと咳払いした。
「えー、それでは今回の事件に付いて説明させてもらうがよろしいかね?」
『うん』
 二人は素直に西山警部補に向き直り、話を聞く体勢に入った。

 西山警部補が語るところによるとこうだ。
 一昨日の夜、博物館に最近巷間を騒がしている怪盗薔薇仮面より予告状……犯行声明文が
届けられた。簡潔に記されたその内容は、関係者全員の度肝をぬいた。
 中世ヨーロッパで作られた幻の美術工芸品とされ、この博物館が目玉として展示していた
品物を盗もうというのである。その品物とはクリスタルのタブレット、純金のスキャナー、
ダイヤのレーザープリンター。いずれも値の付けられないほど高価で、かつ歴史的にも非常
に意義深い物であって……

「ひょっとしてそれは世間一般じゃ『Oパーツ』って言うんじゃないのか?」
 ハイドのツッコミに、西山はびくりと肩を震わせた。
「な、何を失礼な!! この純金のスキャナーはかの太陽王ルイ14世が作らせたもので…」
「そりゃ余計に問題だろがっ!!」
「レーザープリンターに至っては反射しまくって使い物にならない素晴らしさなのに!?」
「意味ねぇーーーーーーっ!!」
 歴史的価値に付いて考えるハイドを見て、日陰はフッと笑みを浮かべた。
 それからチッチッと指を振って言う。
「駄目だよ、マスター。実用的価値を美術品に求めるのは俗物のする事よ?」
「逆だろ。それはそれとして日陰、よく考えろ!! タブレットやスキャナーやプリンター
が中世ヨーロッパにある訳ねーだろがっ!!」
 ハイドが説得しようとすると、日陰はきょとんとした顔で言った。
「…何で?」
「何でってお前……そんな非現実的なモンがあるわけが…」
「甘いわ、マスター。そもそも純金とかダイヤで出来たパソコン機器が存在する事自体、既
に非現実的じゃない。それは中世にパソコン機器があるのと同じくらい非現実的だわ!!」
 日陰のもっともなセリフに、ハイドは思わず頷いた。
「あー、まあそりゃそうだな」
「でも純金やダイヤで出来たパソコン機器はここに存在するわ!! 存在する以上は何人も
その実存を否定できないのよ。故に、同じくらい非現実的な中世ヨーロッパのパソコン機器
は存在していたのよっ!!」
「どーゆー理屈かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 がびーん、のポーズのまま固まるハイドを見て、西山はうんうんと頷いた。
「さすが少年探偵日陰嬢。見事な詭弁だな」
「まだまだだわ……こんなネタに2Pも使ってしまった。修行の余地があると思うの」
 なお作者はこの原稿書いた当時ウイスキーボンボン食って酔ってたので、相当目茶な内容
になっておりますが敢えて無修正で書き起こしております。下戸に酒を呑ませてはいけない。
「さて……そろそろ奴が現れる時刻だが」
 西山は壁にかかった時計を見上げる。
 そんな彼に向かって日陰は念を押した。
「警部補、確認するけどあたし達は怪盗を捉える手伝いだけでいいのね?」
「うむ、捕獲は私とそこで物も言わず待機している警官隊で行おう」
 西山のセリフに、イーーッっと全身黒タイツな警官隊が謎の奇声を上げる。
 なんとなくバッタ男に一撃で殺されそうな奴等だ、とハイドは密かに思った。
「……頼もしそうな方々だな」
 しかも言ってる事は逆だし。
「まあな。そうそう、それから分かってるとは思うが……」
 西山はぎょろりと探偵組二人を睨み付け、怖い声で言った。
「美術品は絶対に捌きようがないからな。既に破片の一片に至るまで魔法でマーキングして
あるから、溶かしても切断してもムダだぞ。お前達二人は怪盗から身ぐるみ奪う極悪探偵と
して署内では評判になってるんだからな。猫ババは絶対させんぞ」
「もぉやだなぁ、西山さんたら。そんなコトするわけないじゃないの♪」
「ははは、信用してるさ。お前達をブローカーネットにマークさせる必要もなかったかな♪」
 二人はにこやかに笑い合ってから、さりげない口調で言った。
「で、信用してるならなんであたし達をわざわざマークさせるのかな?」
「そっちこそマークされて何か困る事があるのかね?」
『ふっふっふ☆』
 見えない殺気がオゾム電気パルスのように二人の間を漂い、火花を本当に散らせる。
 ハイドラントはそんな現実から目を背けるように、時計の方を振り返った。
「さ、さてあと15分で怪盗が現れるはずだなー」
 そう言いながらついでに美術品にも目をやる。
 ハイドが信じがたい光景を目にしたのはそのときだった。
「美術品が…消えてる!?」
「えっ!?」
「なんだと!?」
 二人は驚いて美術品のケースに視線を送る。……本当だった。
 確かにケースの中身である美術品は忽然と消えており、がらんどうのケースだけが申し
訳なさそうにその開かれたままの姿で鎮座していた。
「そんな! 一体何時の間に!!」
「全くだ! 俺と日陰が睨み合っているのをハイドを初めその場の全員が注目している間
くらいしか隙はなかったというのに!?」
 ……………………。
「十分だーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 ハイドの悲鳴がだだっ広い展示場に響き渡った。
 西山は悔しそうに時計を見ながら叫ぶ。
「くそっ、まだ五分前じゃないか……怪盗め、いつも時間には正確なのにっ!! 時間を
破るなんて人間の風上にも置けない奴だ!! 泥棒の始まりだっ!!」
「……あんたもドロボウの言う事を真に受けんなよ」
 ハイドはげんなりした調子で呟いた。現場にはなんとも言えない脱力した空気が漂って
いく。何だかなあと一同は思った。
 その時だった。
『ははははははは、まんまと引っかかったな私の策略に!!』
 やおらよく響く声がホールに反響する。まるで人の愚昧さを嘲笑する神の声のように。
 警部補達はきょろきょろと声の出所を探った。
「どこだ? どこから聞こえる!?」
「…上!!」
 そう言ったのは西山だったか日陰だったか。それともハイドだったかも。いや多分そうだ。
 頭上の採光窓近くの廊下の上で、美術品を手にした男のシルエットが浮かんでいる。
 マントにシルクハット、タキシードに身を包んだ上、手にはステッキを持ち薔薇色の仮面
を着けている。
 間違えようはない。それは怪盗、薔薇仮面。
 仮面の怪盗は高笑いを上げ、眼下の虫ケラのような烏合の衆に向かって言った。
「フフ、西山警部補に巷で噂の少年探偵、その助手も一緒か……揃いも揃って愚かな事よ」
「くっ…この卑怯者め!! 時間より早く犯行に及ぶとは!!」
 西山警部補はそう言ったが、元より怪盗にそれを守らねばならない義務はない。
 しかし怪盗は、はははと笑いながら西山に向かって言った。
「何を勘違いしているのか? もうとっくに予告の時間は過ぎているぞ」
「馬鹿な!?」
 慌てて西山は自分の腕時計を見た。果たして怪盗の言う通り、時は十五分を超えていた。
 その時、柱時計が激しく鐘を打ち鳴らす。それはまさしく怪盗の予告した通りの時刻。
 腕時計と柱時計の間に15分の誤差が生まれている。
「まさか……」
 蒼白になった西山を、怪盗は嘲り笑った。
「くくく、博物館中の時計を15分進ませまだ時間あるなと思った警部補と探偵にケンカ
させ、その隙に美術品を戴くと言うパーフェクトな手段! 才能!! どうかね諸君っ、
この私の計略は!?」
「……みみっちい上にやっぱ卑怯者じゃねーか」
 そんなハイドの醒めた意見に、ぴたっと怪盗の動きが止まった。
「大体お前、警部補達が腕時計の方見てたらどーするつもりだったんだ?_」
 怪盗は制止したまましばし動かなかった。だがやがてすぐに美味い言い訳を考え付いた
らしく再び高笑いを上げる。
「はははは、しかしそのみみっちい計略にひっかかった諸君に言えた口かっ!!」
 返す言葉もなかった。くそう、こんなバカそうなのに言われるなんて。
 反撃の言葉を捜す間に、ゆっくりと怪盗の体が宙に浮く。一瞬ぎょっとしたがよく見ると
ヒモで上から吊ってるようだ。バラバラ、と音がして採光窓の上にヘリが滞空しているのが
見て取れた。
「それでは諸君!! さらばだっ!!」
「ま、待てっ!!」
 西山の言葉も空しく、怪盗は美術品を抱えたまま上へと運ばれて行く。
 悲痛な表情をする一同だったが、日陰は自信に満ちた顔つきで断言した。
「大丈夫!! 奴は逃げられないわ!!」
「む、何故そう言い切れるんだ?」
 西山警部補が質問するのを見下ろしながら、怪盗は笑い続けている。
「ははは、愚かなり西山警部補!! マヌケなり風上日陰!! 所詮君達は私の敵では――」
「だって…」
 日陰は確信に満ちた口調で言った。
「だってあんな細い紐が人間と水晶と純金とダイヤの塊支えきれるわけないもん」
 ぶちっ。日陰の言葉を裏付けるように紐は途中でブチ切れた。
「はっはははははははははぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!?」
 怪盗薔薇仮面はまっさかさまに転落して行く。
 ひゅ〜〜〜べち、どかべきぐしゃ。
 天井近くから落下した怪盗は地面に叩き付けられた挙げ句、クリスタルのタブレットと
純金のスキャナーとダイヤモンドのレーザープリンターに潰された。
 幾らなんでもさすがに死んだはず。
「…そりゃまあ、外面プラスチックでもあんんだけ重いのに、クリスタルと純金とダイヤ
だもんなあ……」
 ハイドラントはあまりにも哀れな死に様にちょっと同情した。
「ドロボウは割に合わんなあ」
「えー、もう死んじゃったの? もうちょっと粘ってくれたら良かったのにー」
 死んだと思って好き放題言ってやがる。
 ヘリまで薄情に慌ててどっかに逃げちゃったし。
「う……」
 そんな彼等の思惑を裏切って、ぴくぴくと怪盗の身体が震えた。初めは目の錯覚か、と
思ったが確かに動いている。死後硬直には早すぎるだろう。
「こんなんで死ねるかーーーーーーーーーーっ!!」
「生きてるーーーーーーっ!?」
 ハイドはその目茶加減に絶叫した。
 日陰はびっしと怪盗に指を突きつけ、不敵な笑いを浮かべる。
「ふっ、やはり生きていたのね!! 死ぬわけないと思ってたわ!!」
「思ってたのかーーーーーっ!?」
 ハイドはその自信加減に絶叫した。どっちかというとこっちの方が怖い。
 怪盗はぷちぷちと丁寧に仮面の破片を抜きながら、その端正な顔を歪める。
 まるで美少女かと見紛わんばかりの美形である。顔面流血で見る影もないけど。
「ふっふっ……さすがは少年探偵風上日陰。私の逃走を阻むとはなかなかのものだな」
「そっちこそ見事に無茶苦茶なトリックだったわ。紐を切らなくちゃどうなっていた事か」
 SS探偵の世界では無茶加減で勝敗が決まるらしい。何だかなあ。
 日陰は怪盗薔薇仮面を見つめ、乾いた笑いを交えながら言った。
「それで? 仮面割れてるけど、一体どんな名前で呼べばいいの?」
「いいだろう。私をここまでてこずらせた貴方には、私の真の名を教えてあげようか」
 そう言うと、怪盗は突然くるくると回りはじめた。顔面からの流血を周囲に撒き散らし、
やがて高速回転へと至るその姿はまさにカミカゼ。悲鳴を上げて返り血を浴びるのを避け
ようとする一同の叫びをバックコーラスに、今怪盗は背後に薔薇すら飛ばして自らの名を
高らかに叫ぶ。
「神風怪盗、ジャンヌ萩島ーーーーーーっ!!」
「そいつぁマズいーーーーーーーーっ!?」
 ほぼ重なるようにして二つの声が重なる。
 ジャンヌ萩島こと以下萩島は驚いたようにハイドに叫んだ。
「何故だ、こんなにオリジナリティに溢れる名前を!!」
「どこがオリジナリティだっ、殆どそのまんまじゃねーかっ!!」
 ハイドのセリフに萩島はチッと舌打ちすると、くるりと彼に背を向けた。
 ふさり、と括られた長髪が音を立てる。
 怪訝な顔をするハイドに向かって、萩島は叫んだ。
「今ならこの神に祝福されしポニーテール、通称『聖なるしっぽ』も付けようっ!!」
「余計悪いわーーーーーーーっ!! それは違う作品だろ、混ぜるな危険っ!!」
「シスターの祈りで変身だぞ? 素晴らしくないか?」
「だからやめろっつってんだろがそのネタはっ!!」
「フ、やはり巫女さんの祈りで変身がいいのか。私もそっちがいいぞ」
 言いながら、萩島はごそごそと懐から変形した黒い眼帯を取り出した。
「それじゃこのハート眼帯を付けて十兵衛ち……」
「怪盗じゃねえーーーーーーっ!!」
 日陰は漢達の熱い漫才を横目で見ながら西山に聞いた。
「……警部補、さっぱり意味がわかんないんだけどあれは一体何のネタ?」
「何というか漢の熱いエナジーを呼び覚ます力の源っぽいネタだ」
「ふーん。何だか女子供と常人は近寄るなって感じね」
 ちなみに作者は三つとも一度も見ませんでした。聞きかじりで書いてたり。ひでえな。
 さてハイドラントはぜいぜいと荒い息を付きながら、萩島を睨んだ。
「こ…こんなネタで6P半も続きやがって……もう魔法少女は飽和してっから要らねえ!!」
「フッ…これを見れば、そんな口も利けなくなるさ!! 秘技『ローゼススマイル』!!」
 萩島はステッキを構えると、タップダンスを踏むかのように高速なリズムで華麗に舞った。
 ステッキから生み出される薔薇の花片はその間に混じる恒久と相まって、モニターの前の
視聴者の脳に視覚情報から特殊な信号を送り出す。某電気ネズミとは比較にならないほどの
マインドハックはたちまち脳をかき乱してスパーク状態だ。
 そして視聴者の自我が喪失した頃を見計らって、萩島はポニーテールをなびかせて可愛ら
しい参上ポーズを取った。笑顔でアピールも忘れずに、ハイ!!
「神風怪盗、ジャンヌ萩島金品奪取に参上よ、エヘ☆」
 地球規模的殺人電波が吹き荒れた。
 ハイドはごくりと喉を鳴らして声を震わせる。
「…お前、いい加減に血を止めろよ」
「はうっ!?」
 本来なら見る者全てを死に追いやる萩島の殺人電波は、顔面からの大量出血のため無効と
なっていた。もう何が何やら。
 萩島はがくりと膝を突くと、悔しそうに呟いた。
「くっ……おそるべし風上日陰、まさか助手までもがここまで強力とは……」
「思い切り自爆じゃねーか」
 ハイドの呆れ声が冷たい。
 西山はそんな二人を見ながら、ごりごりと頭を掻いた。
「いいのか…まだ正式参加もしてない人をこんな形で、しかもとんでもない役で使って……」
「あー、まあこの作品L学のパロディみたいなもんだし…。お兄ちゃん設定キラーだから
遅かれ早かれやってたよ、このネタ」
「誰か再教育しろよ、あの馬鹿弟子〜〜!」
 師匠が再教育して下さい。いや、是非お願いします。
「く…くくくくく…」
 萩島は打ちひしがれた体勢のまま笑い声をあげた。やがてそれは高く、大きく、哄笑と
なってホールを満たす。萩島は引きつった笑いを上げたまま、憎悪に燃える目で日陰を睨み
つけたのだった。
「よくも……よくもやってくれたな、風上日陰!! 私の計画を台無しにしてくれたな!!」
 ハイドはちょっと疲れた感じの目で、そんな萩島を見ている。呆れてるのかも。
「お前の計画って一体何だったんだよ?」
「フン…決まっているだろう!?」
 萩島は懐から一冊文の同人原稿を取り出した。しかもやをい系のようだ。
「あの三つのパソコン器具でこの同人原稿を編集する以外に何がある!!」
「決まってねぇぇーーーーーーっ!?」
 ハイドは絶叫した。
「な、何だってお前そんな実用性のないパソコン器具を……?」
「分からないのか!? 私が高級品志向という事をっ!!」
「分かるかぁぁぁーーーーーーっ!?」
 日陰はフッと笑って、肩を竦めた。
「やれやれ……美術品に実用価値を求めるなんて俗物ね」
「だから逆だっての」
「うむ、やはり良い物を作るには良い器具に越した事はないな」
 なんか警部補は納得してるし。でも良い器具と高い器具は違うよね。
「ま、取りあえず」
 日陰は萩島に向かって手を突き出すと、静かに呟いた。
「そろそろページきついんでここらでシメさせてもらうね♪」
 その言葉に秘められた意味がゆっくりと萩島に浸透する。
 萩島は泣きそうな顔で、じりじりと後退しながら言った。
「こ、今回は私の負けだ。だが忘れるな、これはまだ私と貴方の戦いの序曲に過ぎないと
いう事を。いつの日か必ず私は貴方の目の前に現れ……」

「純白の衝撃に潰えよ」

 日陰の手から放たれた魔王魔術の白い衝撃波は萩島を捉え、そのまま壁を貫いて遥か彼方
まで彼を押し出して行く。
「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉっ、憶えてろよぉぉぉぉぉぉぉ……」
 遠く消えて行く萩島の叫びを聞きながら、ハイドは呟いた。
「…ま、死にゃしないか。せいぜい建物の外へ放り出されるだけだろ」
「え?」
 西山はきょとんとした顔で言った。
「外って、この博物館は高さ数十メートルの断崖絶壁の上に建ってるんだが」
「…へ? ってことは……」
 ハイドの顔がみるみる蒼くなる。
 どぱぁん、という水音とうぐえっ、という断末魔の声が聞こえたのは丁度その時であった。
 さらば神風怪盗ジャンヌ萩島、永遠に眠れ。
「……ま、災いの元はとりあえず根本から絶てってことで」
 日陰はそう言ってぽりぽりと冷汗の伝う頬を掻いた。

「はーっー、結局怪盗を捕まえられなかったからなー。タダ働きかー」
 ハイドはぐったりとソファーにもたれかかった。コロコロと腹の虫が鳴いている。
 もう二日も何も口にしていないのだ。日陰とむらさきはしっかり食ってるのに。
 糖の二人は、今日は珍しくおやつを食べないで何やら作業していた。
 切ったり貼ったりと忙しそうだ。
「お前達、一体何やってんだ?」
「んー、編集作業ー」
 日陰はぺたぺたと写植を貼りながら顔も上げず答えた。むらさきはその横で無心に作画
修正を行っている。
 ハイドが立ちあがって見てみると、それは萩島の持っていた同人誌の原稿だった。
「お前、これ…」
「カリスマと呼ばれながら突如消息を絶った伝説の同人ゴロ、萩島千尋の幻の作品だよ。
限定十部でオークション……当面凌いで行くには充分かもね?」
 顔を上げ、インクの付いた顔で日陰はぺろっと舌を出して笑った。
「……知ってたのか、あいつの正体」
「まさか、知るわけないじゃない。わざわざ調べたんだよ。本当、拾っといて良かったね♪」
「油断も隙もねえなあ。でも、お前達編集作業なんか出来たか?」
 ハイドが聞くと、日陰はひょいと肩を竦めた。
「一から勉強してるの。結構楽しいよね、むらさき♪」
「うん、楽しいー♪」
 そう言って二人はにこにことインクの付いた顔を見あわせる。
 お前等、素質あるわ。そう思いながらハイドラントは原稿を手に取る。
「ほらほら、ここんとこ写植ズレてっぞ。ここにはトーンのカスが残ってる。それから……」
「すっごーい、マスター手慣れてるー♪」

 帝都は今日も平和である。

                    完

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ね、眠い……コメントは差し控えさせて下さい。
分かった事は、やはり風見にはこんな作風が似合うようですね(笑)
ではおまけGO!!
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おまけ1「今日の日陰ちゃん」

ハイド「…ところで日陰。お前、ヤヲイな本とか駄目だったよな?」
日陰「うん、そうみたい。何だかすっごい鼻血が出るの」
ハイド「お前、この原稿男の俺でも引くようなどぎついシーンが大量に……(汗)」
日陰「え?(じっ……ぽぽぽぽぽぽっ、ぶしゅうううううううううううううっ)」
むらさき「わーーっ!? 原稿が、原稿が鼻血の海にーーーっ!?」
日陰「もーっ、マスターが意識させるからーーっ!!(だくだく)」
ハイド「すまんっ、俺が悪かったあああぁぁぁ!!」
むらさき「ホワイトは、ホワイトはどこーーーっ!?」
日陰「ああああっ、この原稿は使い物にならないっ!?(だくだく)」
ハイド「はうっ、当面の生活費がぁーーっ!?」

……後日、会場にて

大志「む? 何故この本はこのページだけ別人の作品なのだ?(汗)」

                 落札価格は不明。

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おまけ2「撮影後の萩島さん」

萩島「ゲホ、ゲホッ。やれやれ、撮影とはいえ女装の上に池ポチャかよ(汗)」
冬弥「どうもお疲れ様でしたー! はい、毛布とコーヒーです」
萩島「こりゃどうも。ふー、なんとも生き返るね。そーいや前回はこのくらいのタイミング
   で水野君が追い討ちを掛けてきたが……」
冬弥「萩島さん、お手紙が届いてますよ」
萩島「……来たか」

『萩島さん、今日の女装とてもステキでした。まるで本物の美少女みたいだったです。
 あんまりきれいだったから盗み撮りした写真を校内にばらまきですぅ〜〜うきゅ☆』


萩島「……(ぐしゃっ)」
冬弥「は、萩島さんどうしたんです、いきなり化粧初めて!?」
萩島「あのガキに今からそっち行って頬擦りしてやるから楽しみにしてろと言っとけ」
冬弥「落ち着いて下さい! そんな姿で外に出ちゃダメです!!」
萩島「くっくっく、あのガキィィィィィ!! 思い知らせてくれるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
冬弥「は、萩島さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?」

                水野君さすがに逃亡