Lメモ未来編『望まれぬ生命 ――百鬼――』 投稿者:ジン・ジャザム
 それは嵐だった。
 激情の嵐だった。
 嵐は凶暴な牙を以て、全てのものに襲いかかった。
 身も心も引き裂くような風の刃に立ち向かいながら、セリスたちは嵐の中心を見た。
 嵐の中心にはジンがいた。
「ジン先輩っっっっ!!」
 ゆきが叫ぶ。
 だが、叫びはジンに届かなかった。
 ジンは、ただただ呆然と嵐の中に立っている。
 無垢な笑みすら浮かべて。
 ジンの瞳には千鶴が映っている。
 血塗れの千鶴が映っている。
 そして彼女をこうにまでした、敵もまた。
 敵の姿に、彼の瞳の焦点が合うと同時、その瞳が憎悪に濁った。
 それに気付いた瞬間、セリスは吼えた。
「ジンっっっっ!! やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 叫びはやはり届かなかった。

ざぐぅふっ

 ジンは自らの右腕を、自らの胸に突き刺した。
 深く、深く。
 腕を引き抜いたとき、その手には彼の心臓が握られていた。
 飛び散る血と、鉄と、肉。
 セリスもゆきも、そして瀕死の千鶴もその光景を呆然と見つめていた。
 そして、閉じられる右手。
 潰れる心臓。
 凄まじい勢いで、吹き出る血。 
 そう、凄まじい勢いで……まるで嵐を血で染め尽くすかのように、人の持つ血の総量を
遥かに越えて。
 空を、大地を、世界を、血が、紅く、紅く、染め、尽くす。
 そして、その世界を染める血から、何かが生まれ落ちた。
 それは少女。
 白い少女。
 血塗れの少女。
 彼女を染める血よりも、紅い瞳をした少女。
 少女が、まるで蛹から蝶が孵るかのように、紅の中から、生まれ落ちる。
 血濡れの翼を広げる。
 少女は天使。
 血塗れの天使。
 人を喰らい、凌辱する天使。
「遊輝……。」
 セリスが天使の名を恐れるように、否、畏れるように呟いた。
 見れば、遊輝は1人だけではなかった。
 血染めの嵐の中、至るところから遊輝が生まれ落ちていた。
 9人の遊輝が。
 9人の遊輝はジンの周りを飛び交いながら、笑う。
 くすくす、と。
 ……セリスたちがはっきりと覚えているのは、そこまでだ。
 あとは、ただ紅い光の爆砕。
 吹き飛ばされる――いや、その場所から吐き出されたのか?――自分たち。
 光の中、敵に襲いかかる9人の遊輝。
 そして、ボロボロに崩れていくジンの躰。
 それも紅き光に消えていく。
 嵐は収まり、血の雨が彼らに降り注ぐ。
 ジンの血に洗われながら、それでも彼らは動けなかった。
 ジンの消滅の意味に気付いたセリスの瞳から、最初の涙がこぼれ落ちるまで。


 その後、救助された千鶴は九死に一生を得た。
 だが、ジンは帰ってこなかった。
 帰ってくるはずがなかった。
 それなのに……

・
・
・

「何故……何故、死んだはずなのに……ジン君……。」
 今、千鶴の前にはジンがいる。
 5年という月日を越えて。
 5年前と変わらないジンが。

 ――悲劇は再び、動き出す。


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                『望まれぬ生命』



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                 ――百鬼――


「ジン君……。」
 千鶴はゆっくりと歩き出す。
 5年前、自分が死なせてしまった少年の元へと。
 忍はそんな千鶴を、しばし黙って見つめていた。
 だが、
「……! 危ない!」
 ジンが唇の端をつり上げたまま、右手を前に突き出した。
 それを見た忍が千鶴に飛びつき、ジンの側から引き離す。
 紙一重、先程まで千鶴が立っていた場所をアームランチャーが襲った。
 地面が爆発する。
「……ジン君?」
 千鶴が、信じられないといった風にジンを見つめる。
 ジンの表情に変化はない。
 あの特有の、この状況では残忍さすら感じさせる、笑みを浮かべるだけだ。
 忍が叫んだ。
「じ、ジンさん! どういうつもりですか!?」
 その忍の叫びにも耳を貸さず、ジンは真っ直ぐと突っ込んでくる。
「ちぃぃぃ!」
 忍が手刀を向かってきたジンに振り下ろす。
 灼熱の高温を纏う彼の手刀は、陽炎によって僅かにぼやけて見えた。
 その手刀を、ジンの鋼鉄の腕が受け止める。
 韻っ! と甲高い音が響いた。
 手刀と鋼鉄とを交差させたまま、忍が再びジンに叫んだ。
「ジンさん! 何があったんです!? 何故、こんなことをするのです!? 答えて下さ
いっっっっ!」
 だが、やはりジンは答えない。
 ジンは忍から飛び退くと、そのまま右腕からバルカン砲を出現させる。
 避けられない。
 避けたら、千鶴に当たる。
 ならばと、忍は一気にジンとの間合いを詰める。
 ジンのバルカンが忍目がけて火を吹く……その直前。
「はああああああ!」
 忍の手刀から生まれた『炎の剣』が、ジンのバルカンを切り裂く。
 そのまま間髪入れず、ジンの頭上に炎の剣を振り下ろした。
 慌てて左の腕で防ごうとするジン。
 だが、その一撃はジンの左腕を易々と切り落とし、そのままジンの肩を裂いた。
 スパークするジンの躰。
 この機を逃す忍ではない。
 忍はジンの喉に手を伸ばす。
 喉輪を決めた状態からトドメに爆発を起こす、忍の必殺技『禊(みそぎ)』。
 並みの人間が食らえば、頭を吹き飛ばされて絶命するであろうほどの威力を秘めた技で
ある。これが決まれば、ジンとてただでは済むまい。
 忍が勝利を確信した、そのとき。
「危ない! 忍君!」
 千鶴の絶叫が耳に届いた。
 だが、その意味を理解する前に、忍の脇腹に灼熱の激痛が走る。
 そして爆発。
「ぐああああああっっっ!!」
 爆風に吹き飛ばされて、忍は近くの樹に叩きつけられた。
 そのまま崩れ落ちる。
 それでもなお、朦朧とした意識の中で忍は現状を把握しようとした。
 あの爆発でジンも吹き飛ばされたらしい。
 向こうの地面に転がっているが、さほどのダメージはないらしく、ゆっくりと起き上が
った。
 そして、攻撃が飛んできた方。
 そこにもう一つの人影があった。
(ちっ……新手か!? 油断した……。)
 忍は人影の正体を見極めようと、じっとその人物を見据える。
 そして、その正体に気付いたとき、忍はさらなる衝撃に襲われた。
 千鶴も同様である。
 その瞳は、先程よりも大きな驚愕に見開かれ、躰は立つこともやっとなくらいにガタガタ
と震えている。
 まるで何か悪い夢を見ているようだった。
 こんなことがあり得るはずがない。
 しかし、それは間違いなく現実であった。
 千鶴は新手の方を見ながら、それでも何とか声を絞り出した。
「じ……ジン君が2人……!?」
 そう。
 新手もまた、ジン・ジャザムだった。
「もう……何が何だか……」
 忍がボロボロの躰に鞭打って立ち上がる。
 何が何だかさっぱり分からない。
 頭が混乱している。
 だが、今はそれよりも、この状況を打破することが大切なのだ。
 千鶴を連れて、この場所から離れないと……
 忍が逃げ出すための最良の手段を模索していた、そのとき。

「いや……2人だけではないのだよ。」

 何処からともなく、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 その声と同時に、辺りに無数の気配が現れて……

・
・
・

 セリスは電子の光に照らされた薄闇の中にいた。
 彼の目の前には『棺』がある。
 機械で造られたその棺の蓋は透明で、その中に眠る少女の姿を確認することが出来る。
 棺の中で眠るのは、彼が最も愛した少女。
 そして、人々から最も愛されていたメイドロボ。
 HMX−12、通称『マルチ』。
 だが、みんなが愛したその笑顔は今はない。
 彼女は眠り続けるだけ。
 そして、セリスは待ち続けるだけ。
 2度と目覚めぬかも知れない、彼女のことを。
 ……5年前の戦いは、彼から2つの大きなものを奪った。
 1つは友。
 ジン・ジャザム。
 親友であり、戦友であり、好敵手であった男。
 2人の性格は似ても似つかず、むしろ正反対だった。
 そしてそれ故に、掛け替えのない友だった。
 本気で対立し、戦ったこともある。
 背中を合わせ、共に戦ったこともある。
 どんなときも対等だった。
 だが5年前、彼は己の最も禁ずるべき力を行使し消滅した。
 血の雨を降らして。
 彼らしい壮絶な最期だったと、セリスは思っている。
 そして彼が奪われた、もう1つのもの。
 それが、今、目の前で眠っているマルチだ。
 彼女は自らの3人の娘、マール、ルーティ、ティーナを守るため、その『魂』を使った。
 そう……このメイドロボには魂が宿っていたのだ。
 だからこそ、マルティーナに魂を分け与え、滅ぼされたはずの彼女たちを復活させるこ
とに成功した。
 彼女たちを復活させるには、女神に匹敵する魂が必要だというのに。
 だが、その結果、マルチはこの来栖川本社ビルの地下で眠り続けることになった。
 故障しているわけではないのだから、開発スタッフに直す術はない。
 芹香の魔法や、マルティーナを開発した美加香の力を以てしても、マルチを目覚めさせ
ることは出来なかった。
 だから、待ち続けるしかない。
 見えない明日を、ただ信じて。
「……マルチ……いい加減に起きろよ……なあ……?」
 弱々しく呟く。
 棺の中の少女は答えない。
 目頭が熱くなる。
 瞳から涙が流れそうになるのを、必死に抑える。
 泣いてなんかいられるか。
 ぼくには泣いている暇なんてない。
「……また来るよ、マルチ……。」
 それだけ告げると、セリスは出口に歩き出す。

ピピピピピピピピピッ

 そのとき、セリスの小型通信機がコール音を上げた。
 セリスは通信機を取り出し、会話機能をONにする。
「はい、こちらセリス。」
「セリス君! 緊急事態だ!」
 通信機から聞こえてきた慌ただしい声は、かつて『ジャッジ』で仲間だった、岩下信の
ものだった。
 今、彼らは共に、現在の世界を支えている来栖川に仕えていた。
「どうしたんですか、岩下さん?」
 岩下のただならぬ気配を感じ、セリスも緊張した面もちで尋ねる。
「……へーのき君が守っていた『プラント』が攻撃された。『トエレブ』を奪われたらし
い。」
「!!!?」
 セリスの表情が青ざめる。
 『プラント』。
 世界に満ちた廠気を浄化し、大地に再び自然の恩恵を取り戻す施設。
 その鍵となるのが、セリスたちですらその正体を知らない謎の機関『トエレブ』である。
 『トエレブ』とは、ただ単に『12』のこと。
 つまり番号である。
 番号で呼ばれているということは、無論、他にも『プラント』が存在していることを意
味するのだが……それはともかく、『プラント』を失うということは、つまりその『プラ
ント』が支える地域一帯を死滅されることになる。
 ただでさえ狭い人類の生活圏がさらに縮まるのだ。
「馬鹿な! いったい、何処のどいつがそんな真似を……!? しかも来栖川の最新鋭防
御システムを突破するなんて!」
 セリスの問いに、岩下が一瞬、言い淀むような気配があった。
 だが、岩下は続けた。
「それが……へーのき君が送ってきた映像に映っていた敵は……ジン君なんだ。」
「………………えっ?」
 一瞬セリスは、岩下が何を言っているのか理解できなかった。
 わざわざ岩下の台詞を、頭の中で組み替え、整理し直す。
 そしてようやくその意味が理解できたとき、セリスは叫んでいた。
「馬鹿な!! あいつは、5年前に死んだんだぞ! ぼくの目の前で!!!!」
「分かっている! だが、あれはジン君だ。見間違いじゃない。それに……」
「まだ何かあるのか!!?」
 少しの間の後、岩下は低い声で告げた。

「ジン君は1人じゃないんだ。」

・
・
・

 そう。
 今、千鶴たちの前には十数人のジン・ジャザムがいた。
 十数人のジンが、2人を取り囲んでいる。
「何なんだよ! いったい何が起こっているんだ!!」
 忍が半ば狂乱しながら叫んだ。
 それに対して、千鶴は……逆に、驚くほど静かだった。
「……千鶴さん?」
 千鶴の様子に気付いた忍が、彼女の名前を呼ぶ。
 だが、彼女は答えなかった。
 かわりに

「……断罪者……」

 千鶴が呟いた。
「えっ……?」
 思わず聞き返す忍。
 しかし、千鶴は忍に構わず続けた。
「ジン君……私を……裁きに来たの? 私に罪を償わせるために……?」
 千鶴は何かにとり憑かれたかのような表情で、ゆっくりとジンたちの方に歩き出した。
 忍はそれを慌てて止める。
「千鶴さん! どうしたんです!? 千鶴さん!!」
 千鶴はまだ進もうとする。
 それを必死に止める忍。
 そんな彼の耳に、先程の聞き覚えのある声が聞こえた。

「そう……償いだよ……。」

「!?……この声は……!」
 声は一番先頭のジンが発したものだった。
 だが、その声はジンのものとは明らかに違う。
 その声を2回聞いたことで、ようやく忍はその声の主のことを思いだした。
「柳川先生……!」
「ふっ、久しぶりだな、東雲忍君。そして……柏木千鶴!」
 柳川は怒気の孕んだ声で、2人の名前を呼んだ。
 その声で、呆けていた千鶴が自分を取り戻した。
「!!……柳川先生……いえ、『聖徒界凶師』柳川祐也! やはり生きていたのですね?」
「死ねるわけがない……この世界に審判を下すまではな。」
 柳川の声で喋るジンが邪悪な笑みを浮かべた。
 忍がジンを……柳川を睨み付ける。
 そうか、柳川か。
 ということは、このジンたちも柳川が造ったコピー体?
「これは貴方の仕業ですね、柳川先生!? こんなことをして何になるんです!? 戦争
はもう5年前に終わっているんですよ!!」
 忍のその台詞に、ジン=柳川は気分を害したのか、殺気のこもった瞳で忍を睨み返す。
「……終わっていないのだよ……。」
「……えっ?」
「終わっていないのだよ……『最後の審判』は! 裁きの日はこれからなのだ!」
 叫ぶとジン=柳川は、千鶴を指差した。
 千鶴の表情が強ばる。
「特に柏木千鶴……貴様は決して許さぬ。ジンを愛さず、ジンを殺し、そして今もなお、
来栖川の連中と共に、ジンを凌辱し続ける貴様は特に……!」
 いったい、何を言っているんだ!?
 そう叫ぼうとして、忍は思わず言葉を飲み込んだ。
 弾劾された千鶴の顔が、苦渋に歪むのを見てしまったから。
「さあ、殺さない程度に痛めつけてからあの女を捕獲しろ。あの女には最凶の苦しみを与
えてやらねばならんからな。」
 柳川が指示すると、全てのジンが行動を開始する。
 忍は慌てて千鶴を背中で守り、身構える。
「先に言っておくが、ここにいるジンたちは、火力だけなら本物に匹敵する強さを持って
いる。さあ、東雲君。この人数相手にどこまで善戦できるかな? くははははははっ!」
 その台詞を最後に、柳川は沈黙した。
 忍の額に汗が流れ落ちる。
 ……まずい。
 今の話が本当なら、とてもじゃないが勝ち目はない。
 更に今、自分は負傷している。
 はっきり言って絶望的な状況だった。
 それでも……
「千鶴さんだけは……守り抜かなければいけない!」
 忍は決意して、炎を解放する。
 ジンの包囲網は徐々に狭まっていった……。

・
・
・

「つまり……ジンを模倣した機械人形というわけだな!」
 セリスがもの凄い形相で映像を睨み付けた。
 ここは来栖川の重役会議室。
 中央に巨大な映写装置が鎮座しており、今それはへーのきが送ってきた、ジンの立体映
像を映し出している。  
 会議室にはセリスの他にも、芹香、智波、岩下、dye、セリオ、セバスチャン、長瀬
源五郎等々……の面々が揃っている。
 セバスと源五郎を除けば、重役と呼ぶには若すぎる顔触れ。
 だが、彼らはLeaf学園で第2次SGY大戦を生き延び、その後の世界崩壊をも食い
止めた者たちである。
 ここまで荒廃した現代の世界では、実力のあるものしか評価されないのだ。
「はい。へーのきさんが送ってきた様々なデータを検証した結果、そういう結論に達しま
した。無論、ジンさん本人ではありません。説明するまでもないでしょうが……」
「ああ……」
 セリオの説明を聞きながら、dyeが別のスクリーンを見る。
 そこには『プラント』内を攻撃する無数のジンが映し出されていた。
「誰がこんな真似を……ジンの姿をした殺戮兵器なんか使って、いったい誰が……!」
 セリスの強く噛み合わせた奥歯がギリギリと音を立てる。
 セリスが激昂していることは、誰の目にも明らかだ。
 無理もない。
 この件はセリスにとっては、死んだ友への冒涜行為以外の何ものでもないのだろう。
「でも……本当に誰がこんな真似を?」
 智波が疑問を口にしたそのとき

「こちらも懐かしい顔触れだな……久しぶりだね、諸君。」

「!!!!!?」
 立体映像に割り込んで、1人の男の姿が映し出された。
 金色の双眸を眼鏡の奥で光らせる、白衣姿の優男。年頃は30代前半といったところか。
 忘れもしない、その男……。
「柳川祐也!!!!!!」
「どうだったかね、私の趣向は? 君たちにとっても懐かしいだろう、彼のことは……」
 その台詞の意味を悟ったセリスが、今にも飛びかからん勢いで立体映像の前に出た。
「お前か! こんな……こんな、ジンを冒涜するような真似をしたのはお前か!!」
 修羅の形相で柳川を睨むセリス。
 常人ならショック死するほどの殺気だ。
 だが、映像の柳川は怯まない。いや、それどころかセリスに負けないほどの形相で、彼
を睨み返す。
「……冒涜? 何のことを言っているんだ、貴様?」
「しらを切る気か!? 柳川! ジンの死を冒涜するような真似をしやがって、ただで済
むとは思うなよ!!」
 セリスのその怒声に、柳川がキレた。
「貴様……冒涜の意味を知っているのか? ふざけるなよ、偽善者が! 冒涜しているの
はどっちだ!? 今、自分たちが誰のお陰で生き延びていられるのか、その意味を知らな
い低脳が偉そうに吠えるなっっっっ!!!!!!」
「何だと!?」
「俺はな……貴様らに思い出させてやっているのだ。貴様らの腐りきった未来を支えてい
るのが誰なのかをな。そうでなくては、ジンが浮かばれん……。」
 一瞬、沈黙が会議室を支配する。
 その沈黙を破ったのは、岩下だった。
「忘れるものか……5年前の戦い。自分たちは彼の犠牲のお陰で勝利することが出来たん
だ。ジン君だけじゃない。あのときの多くの犠牲の上に今の自分たちがいるんだ……」

「誰がそんな話をしていると言ったぁぁぁッ!! ふざけるもの大概にしないと狩り殺す
ぞ貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 柳川の絶叫が岩下を黙らせる。
 その場にいる全員が、柳川のほうを見ていた。
 ――全員が気付いた。

「くっくっくっくっ……」

 柳川は

「やはり、そうなのか……そうなんだな、貴様ら……」

 柳川の瞳は

「貴様ら……なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんにも、分かっちゃいないんだな……。」

 狂っていた。

「な……何のことを言っているんです?」
 柳川の気配に気圧されながらも、智波は何とか言葉を絞り出した。
 柳川の狂った瞳が、侮蔑するように智波を舐め回す。
「そちらの芹香お嬢様なら知っているだろう? お前たちが如何に外道なやり方で、生き
延びているかということを。」
 智波が横目で自らの主人を見る。
 だが、芹香の表情には変化はない……『他人に分かるような』変化は。
 智波には分かった。
 芹香の表情に浮かぶ苦悩が。
「まあ、いいさ。どのみち、すぐに分からせてやる。俺が全ての『プラント』からアレを
取り戻し、『最後の審判』を完遂させることでな!」
「それはどういう意味です? おい、柳川先生!」
 問い詰める岩下を無視して、柳川の映像は消えた。
 重い沈黙が、この場にいる全員にのしかかる。
 そんな中、セバスが芹香に近付いて告げた。
「ついに来ましたな、芹香お嬢様。2年前『マザー』を奴に奪われたときから、分かって
いたことですが……。」
「………………。」
「これから我々が手にするのは、明日という名の希望なのか、はたまた破滅という名の絶
望なのか……それは、神のみぞ知る……ですかな。」
 そのとき、さっきからずっと端末の操作をしていた源五郎の手が止まった。
「逆探知、成功しましたが……これはあえて、我々に居場所を教えていたんでしょうなぁ
〜。」
「柳川先生の居場所が分かったんですか、長瀬主任?」
 dyeが源五郎の方を振り返る。
 源五郎は困ったように、頭を掻きながら答える。
「一応ね……。でも、これは何と言えばいいのか……。」
「勿体ぶらないで、教えて下さい!」
 セリスが源五郎に詰め寄った。
 源五郎は少し悩んだ素振りを見せるが、しばらくして頷いた。
「はい。では……敵は元Leaf学園物理教諭にして『聖徒界凶師』柳川祐也。そして彼
の居場所……」
 そこで一旦言葉を区切り、源五郎ははっきりとした声で告げた。


「敵は……Leaf学園にあり!」

・
・
・

「こ、ここまでか……。」
 5人目のジンを『炎の剣』で貫いた後、忍は別のジンのアームランチャーで吹き飛ばさ
れた。
 なんとか『炎の翼』で防いだものの、ダメージが完全に消えたわけではない。
 もはや、限界だった。
「ここで……死ぬわけにはいかないのに……!」
 そこにビームサーベルの一撃が迫る。
 直撃は免れたものの、サーベルは忍の胸を切り裂く。
 吹き出る鮮血。
「忍君!!」
「ぐあああああああ!」
 思わず倒れる忍。
 起き上がる気力もない。
 ジンたちはそんな忍には目もくれず、ゆっくりと千鶴の方に近付いていった。
「や……やめろ……!」 
 必死に手を伸ばす忍。
 無論、届くはずがない。
 一方、千鶴はその場から動かなかった。否、動けなかった。
 ただ迫り来るジンの手を見つめることしか出来ない。
 そしてついにジンの手が、千鶴に触れようとした、その瞬間。

ふぎぃおおおぉぉぉぉんっっっっっ!!

 突然、天から降ってきた紅い閃光に包まれ、千鶴の前のジンが跡形もなく消滅した。
「!!!?」
 閃光が降りてきた先、天を見上げる忍と千鶴。
 そこには、小さな白の一点があった。
 その一点は次第に大きくなり、そして次の瞬間には

ぶごおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉん!

 轟音を立て、この戦場の真ん中に着陸した。
「な……」
 本当に突然のことに、忍も千鶴も唖然となる。
 ジンたちも、その突然の乱入者の方に振り返っていた。
 天から降りてきたもの……それは白いロボットだった。
 分厚い装甲を持った、無骨なロボット。
 とりわけ巨大なショルダーアーマーは、見ようによっては翼に見えないこともない。
 そして頭部から伸びる2本の角のような突起。
 まるで翼を持った鬼だ。
 白いロボットは低い稼働音を立て、紅い眼差しでジンたちを見回す。
 ジンたちはこのロボットを敵と判断したようだ、一斉に構え出す。
 そんな光景を目の当たりにしながら、忍が呟く。
「白い……ロボット? いったい何なん……」
 その呟きが聞こえたのか、ロボットはジンたちから視線を逸らさず喋った。

「俺の名は『哭嘴』……この戦いの結末を求めるもの。」

                                    つづく

…………………………………………………………………………………………………………

 と、いうわけで突然、現れた謎のロボット『哭嘴』!
 その正体は一体……!?
 ………………もしかしてバレバレ?(笑)
 皆様、ぼんじゅーる。
 ジン・ジャザムです。
 ちなみに哭嘴の外見は、劇場版ナデシコのブラックサレナ(アキトの新メカ)を白く染
めた感じ(笑) ノイエ・ジールでも可(笑)
 ……それにしても、やると思ったでしょ。
 量産型ジン軍団(笑)
 台詞も真・ゲッターのパロディあるし……何か久々だ、こーゆーお遊び(笑)
 しかし、今回の世界設定は着いていけない人多そうですな(汗)
 色々と新しい単語も多いですし。
 それら全ての謎は最終回までに明らかになる……ことはありません(核爆)
 明らかになりません、きっと。
 いや! 書き切れないじゃないんです!
 ワザと書きません(超核爆)
 よーするにSGY2ifのネタばれに抵触するんですね。
 つまり真実は、SGY2ifの後で……になります。
 だから○○○○が○○○だったり、○○が○○に○○されても慌てないで下さい(爆)
 ついでに言うと、これらも特殊設定ですので、ハイ(<当たり前だ。) 


…………………………………………………………………………………………………………
 次回予告

 突然、千鶴たちの前に出現した、謎のロボット『哭嘴』。
 彼は圧倒的強さで量産型ジンを殲滅させる。
 だが、柳川は止まらない。
 鶴来屋へ、別の『プラント』へ、そして来栖川本社へと量産型ジンの魔の手が迫る。
 このまま世界は柳川に屈するのか?
 否。

「ふん、遅い……俺の方が17倍速いな。」

 柳川を止めるため、戦士たちは集う。
 この荒廃した世界。
 しかし、その先にあるはずの未来を信じて。
「あんな悲劇はもうたくさんだ。」
「俺たちは掛け替えのない明日のために、この命を賭ける。」
 だが……
 その未来の本当の意味を
 堕ちた柳川の血涙の意味を
 知る者は、あまりに少ない。


 次回『望まれぬ生命 ――白鬼――』


「もし、ハイドが生きていたら……この世界を見て、何て言うかしらね?」