Lファンタジア・ジン外伝 第一話『夢をユニゾン!』Bパート 投稿者:ジン・ジャザム



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 というワケで俺は今、水野やら良太やら笛音やらてぃーやら靜やらと一緒に
算数の時間だったりするのだが。
「……んなコトしてる場合じゃねぇんだけどなぁ」
 教壇で授業をしている森川先生をぼへーと眺めながら、俺は物思いに耽って
いる。考えたところで答えが出ないのはもう分かりきっているけど。
 何て言うか不幸だ。
 アレだな。一度女になって、しかも魔法少女なんぞをやってしまったとき。
 あん時から俺の何かが狂い始めた気がするぜ。

 魔法少女。

 ……何故かドン底に嫌な気がしたので、出来るだけ意識しないようにしよう
と思った。一歩間違えれば底なし沼か蟻地獄かって気分だ。何となく。
「はあ〜。どうなっちまうんだろーな、俺」
 俺にしては珍しく弱音を吐いてしまう。
 世の中の全てが戦って解決するなら、そんなに楽なことは無ぇのになぁ……
と俺は何気に窓の外に視線を向ける。
 一枚の花弁が風に舞っていた。
 薄紅色の花弁が……

 刹那。

「なっ!!!?」
 無数の花弁が俺の視界を埋め尽くした。
 世界を埋め尽くす薄紅色の嵐。
 ……俺はこの光景を知っている!?

『何故だ?』

 声が語りかけてきた。
 正面。
 花弁の嵐に隠れるようにソレは立っていた。

『この世界に取り込まれず、しかも上位世界の認識を保持しているだと?
 何故だ?』

 何だか良く分からなぇことをヌカしているが、どーやらコイツが黒幕っぽい。
 俺はソレと対峙した。
「てめぇか、こんなコトしやがったのは! 何が目的だっ!」

『かの世界でのお前は、ただの魔導兵器に過ぎん。それが何故? ……分から
んな』

 しかし、ソレはこっちの話など聞いてはいなかい。
 自分勝手に話を進めている。

『女王最後の足掻きというワケか? フッ……ならば、せいぜい踊ってもらう
としよう。楽しませろよ、ジン・ジャザム……』

 花弁の嵐がより激しさを増す。
 薄紅の中に溶けるように、ソレの姿が薄れていく。
「待て、てめぇっ! くっ……!」
 吹き荒れる花弁が、俺の視界を埋め尽くす。
 薄紅色の闇に飲まれて、俺の意識も沈んでいく……いや、覚醒していく。
 この夢の最後に俺は、ソレとの別の言葉を聞いたのだ。

「……三柱の女神との契約を……魔法騎士よ……」

 そして、閃光。

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 Leaf学園高等科、リズエル棟屋上。
 其処から発せられた閃光は、光の柱となって上空を貫いた。
 空に漆黒の穴が穿つ。
 昼休みも近いはずの真昼の空は、瞬く間に夜の色に染まり、その空よりも深
い穴の闇からは紫電が迸る。
 邪悪な光景だった。
 そしてその光の下、一つの影がある。
 ギラギラと飢えた、獣の瞳を持つ魔性の影が。
 魔性は吠える。邪悪なる空に向かって。
 その表情は熱病にうなされる病人のように紅潮している。
 もしくは愛する者に抱かれる女のように……

「さあ! 今こそ我が愛に応えよ、世界よ! 女神の力を我が元に!」

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 勿論、それは俺の教室でも騒ぎになった。
 みんながみんな、窓から高等科の空を見上げて、悲鳴や歓声を上げている。
「あうあうコワイです〜……ってジンちゃん、どこに行くんですかぁ〜」
 閃光で目が覚めた俺は、その光景を見てすぐに教室を飛び出した。
 教室から先生の呼び止める声が聞こえるが構っていられない。
 何が……何が起こっている!?
 俺の夢と関係があるのか!
 高等科までの距離は、小学生の脚では相当に遠い。
 それでも俺は走って走って走りまくった。
 そしてようやく高等科の敷地内に入ったそのとき。
「ぐっ……!?」
 俺の戦士としての直感が危険を察した。
 剥き出しの殺意と言うか……異様な妖気。
 その場に立ち止まり、身構える。
 高等科を囲む木々の影、其処からソイツらは現れた。
 ウサギと蛇のあいの子みたいのやら、髪の長い動く人形やら、全身タイツに
腹巻きしてて、頭にトゲが生えたっていう何が何だか分からないヤツまでいる。
「妖魔か何かの類みてぇだな……」
 そー言えば、元の世界のセリスに聞いた話じゃ、ジャッジの連中も妖魔狩り
なんてモンをやっているらしいが……あんときは「んな滅多に出てこねぇレア
物、わざわざ引っぱり出してまで殺戮せんでも良いだろうに(少なくても俺に
はそういう感じにしか見えなかった)。それよか仕事しやがれ仕事」と突っ込
んだけどな。まさか俺自身がお目に掛かるとは思わなかったぜ。
 とにかくその化け物どもは、涎垂らしながらこっち睨み付けたりで、どうや
ら殺(ヤ)る気満々のご様子だ。
 面白れぇ、単式戦闘型SS使い専用引き立て役の分際が。
「しぎゃあああああああ!」
 ウサギが躰を伸び縮みさせながら、俺に跳びかかる。
 俺はソイツの牙を紙一重で避けた。すぐさま反撃に転じる。
「身の程ってモンを教えてやるぜっ! 鉄拳! ロケットパァァァンチッ!」










              生身でした。










「一気に大ピィィィィィィンチ俺ぇぇぇぇぇぇ!」
 思いっきり自分の身体のことを忘れていたよ、オイっ!
 こんな化け物相手にロリロリ小学生の身体で、どうやって立ち向かえと言う
のだ! 死ぬのか!? ここで死ぬのか、俺!?
 いや殺されるならまだしも、化け物の触手が無理矢(検閲)……最悪のシナ
リオだっ! 児童ポルノ法に引っかかるぜっ!
「うきゅぅぅぅぅぅ!!」
 俺がパニクったその一瞬、気付けば目の前に人形の鋭い爪が迫っていた。
 しまった……殺られる!
 俺は思わず目を閉じた。
 だが

「魔法拳! エーテルロケットパンチっ!」

 何処からともなく飛んできた光弾が人形を撃ち抜く!
 更には前触れもなく発生した小さな竜巻が、残る二匹をズタズタに引き裂い
た。俺は呆然とその光景を見つめていた。
「ふう……間に合ったみたいだな」
 声は俺の後ろから聞こえてきた。聞き覚えのある声……つーか石○博也。
 後ろを振り向く。
 そこには身長二十センチ程度の生き物(?)がいた。
「完全に存在自体忘れていた、マジ○ガーZ!?」
「助けてもらって何だ、その言い草は」
 紛れもない、マジン○ーだ。(俺的外伝2参照)
 ただ、ちょっと雰囲気が違う。超合金の躰では無くもっと有機的だ。しかも
至る所、鋭角化している。マ○ンガーとデビ○マンを足して二で割った後でデ
フォルメ化した感じだ。
「それに俺はマ○ンガーじゃねぇ! 俺の名前は『魔神豪(マジン・ゴウ)』。
キュートでラヴリーな魔法動物さ!」
 そうか?
「それよりも捜していたぜ、魔法騎士! 世界の未来はお前の双肩にかかって
いるんだ!」
 突如としてそんなコトをヌカしやがる。
 ワケ分からねぇって感じだ。
「おい……事情を知っているなら、ちゃんと説明して……」
「説明なら私がしましょう」
 俺の台詞を遮るように、その声は答えた。
 いつの間にいたのだろう、マジン○ーの後ろに女性が立っていた。
 その女性は……
「千鶴さ……母さん?」

「いえ、今は魔法神族の女王リズエルですよ……『ジン・ジャザム』」

 そう言う千鶴さんの表情は、母親のそれでは無かった。

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「我々のレザムヘイムは、貴方の本来住む世界の下位世界になります。レザム
ヘイムのことは貴方も知っているはずですね?」
 千鶴さん……いや、女王が語り始めた。
 俺は彼女の問いに頷く。
「ああ、そう言えばティーナがそんなこと話してくれたっけなぁ……関わり合
いたくなかったから、大方聞き流したけど」
 確か、魔法少女の故郷だ。
 何の因果か俺の中にも魔法少女の力があるらしい。
 それで俺はティーナにしつこく付きまとわれたりしたものだ。
「そのレザムヘイムが崩壊しました」
 表情を崩すことなく、女王はそんなことをさらりと言ってのけた。
 俺は呆気に取られる。
「崩壊したって……世界が滅びたってことですか?」
「はい」
「ちょ、ちょっと、それって……」
「正確には少し違います」
 焦る俺を制すように、女王は一言そう付け加えた。
 俺は更に尋ねる。
「どういうことです?」
「レザムヘイムは三柱の女神によって統治される世界です。女神が創ったシス
テムがレザムヘイムそのものなのですが……その女神のシステムに介入した者
がいるのです」
 先程見た薄紅色の夢を思い出す。
 奴がそうなのか?
「その者は女神のシステムを取り込み、レザムヘイムを我が物にしようとしま
した。その者と女神たちとの間に激しいせめぎ合いが生まれ、結果、全レザム
ヘイムのマナが上位世界に逆流したのです」
「そ、それで、どうなっちゃたんです?」
 詰め寄る俺に、女王はやはり冷静なまま答えた。
「マナは魔力の源にして、レザムヘイムを構成する分子。そのマナが大量に逆
流し、しかも女神たちのシステムが崩壊したことも重なって、二つの世界の因
果が複雑に絡み合ってしまったのです。つまり……」
 一呼吸だけおいて、女王は告げた。

「貴方の世界とレザムヘイムとが融合し、今のこの世界が構成されてしまった
のです」

 ……融合してしまっただと? 二つの世界が?
 で、こんなクソふざけた世界が出来ちゃったワケか?
 そのシステムに介入したという馬鹿のお陰で。
 …………………………。
「じやじゃじゃじゃ! どうすれば良いんですかぁっ!」
 冗談じゃない! 俺はこのままずっと、この姿でこの環境ってワケかいっ!
 それは嫌だぁぁぁぁぁぁっ!
「このままでは二つの世界とも崩壊してしまう……方法は一つ! この世界の
何処かに消えた女神を見つけ出し、システムを正常な形に戻すこと! そのた
めにジン君! 貴方の力が必要なのです!」
「俺の力が?」
 どういうことだ?
 今の貧弱な俺にいったい何が出来るって言うんだ?
「レザムヘイムでも特殊な存在だった貴方は、この世界の因果にまだ完全には
組み込まれていません。貴方のその自我が世界に飲み込まれる前に……」
 言って女王は、どうやって隠していたのか、巨大な物体を取り出した。
 それは……
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 脱兎の如く逃げようとする俺。
 そんな俺を素早く女王は捕まえる。
「逃げるんじゃありませんっ!」
「嫌だぁぁぁぁ! それだけは嫌だぁぁぁぁ!」
「我が儘言っている場合じゃないでしょ! さあ!」
「いっそひと思いに殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 ジタバタと必死の抵抗を続ける俺。
 くそぉ! さっきからずぅぅぅぅぅぅぅっと嫌な予感がしていたけど、想像
通りかいっ!
 女王が取り出したもの、それは……

「貴方だけが頼りなの! さあ、このマジックハンマーを使って、魔法少女マ
ジックナイト・ジンに変身よっ☆ミ」

「ずっとシリアスぶっていたのに、語尾の『☆ミ』は、俺が魔法少女を憎んで
憎んで憎み切っていると知っての狼藉かぁぁぁぁぁぁ!」
 ピンク色のハンマーを目の当たりに久々の血涙、俺。
「良いこと、ジン君! レザムヘイムを崩した敵もまた、女神を狙っているは
ず! 女神を敵より早く捜し出すにも、女神のシステムに介入できるような敵
に対抗するにも、魔法少女の力無くては不可能よっ!」
「だからってこんな……!」
 俺は、なおも往生際悪く足掻こうとした。
 そのとき。
「ホォォォォォォォォォォホッホッホッホッ!」
 そんな高笑いが、上空から聞こえてきた。
 空を見上げてみる。


「濃いの呪文が私をー私を変えるわー♪(間違った存在に) みんなのぷりち
ー☆えんぜる金なら1枚、銀なら5枚! エルクゥユウヤ☆登場でぇーす!」


「……………………」
「……………………」
「…………………………………………千鶴さん」
「………………何?」
「まさかレザムヘイムを崩した敵って言うのは……」
 ザッ!
 速攻で目を反らしやがった。

 ――死にてぇ。

「愛よ! これは私の愛っ! 女神の力を手に入れて、威を以て世界に美と秩
序をもたらすの! そして、しかるのちハーレム!!!!」
 空に浮いている妖怪さんがまだ吠えています。ビチグソが。
「ジン……諦めれって」
 横では人の肩をポンポン気安く叩きながら、似非マ○ンガーがやたら達観し
た表情で俺を説得してます。殺そうと思った。
「誰も運命を選べたりはしないのよ、ジン君……」
「そんな格好良い台詞は、こういうLメモでは言うなぁぁぁぁぁぁ!」
「じゃあ、魔法少女になってくれないとジン君おしおき☆」
「オレも血涙を流そう! おまえと同じ涙を! 見せてくれ、おまえのその哀
しみ!」
 見事な血涙であった!
 自分で断言してるが。
 忍耐不可能の苦痛の中にある俺、そこに更なる追い打ちがあった。
「ジンちゃん〜、どこにいったのですぅ〜……はわわわわ! 怖いウサギさん
が襲ってくるですぅ〜!」
 どうやら俺を追ってきたらしい水野が、新たに出現した妖魔の一匹に襲われ
ようとしていた。
「危ないっ! ……ジン君、早く!」
「ジン! お前は戦士だろう!」

 ――もう、どうとでもなれ。

「畜生ぉぉぉぉぉぉ! ハンマーを寄越せぇぇぇぇぇぇ!」
「い善し! 俺の出番だぜっ!」
 マジン○ー……もとい、俺のパートナーとなるのであろう魔法動物ゴウは、
女王の持つハンマーの傍らまで寄ってきた。
 瞳を閉じて、呪文を唱え出す。
「三柱の女神よ……御身と契約を求める者がいる……少女、その名をジン!」
 ハンマーは光り出し、女王の手を離れて中空に浮かぶ。
「今だ、ジン!」
「応よっ!」
 俺はハンマーをしっかりと握り締めた。
 刹那、魔力が俺の身体を包み込み……俺の身体は閃光となった!

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 ――説明しよう。マジックハンマーに込められた魔力は、ジンの中に眠る魔
法少女の因子に呼応し、彼を構成する情報を書き換える!
 結果、ジンの躰は魔法少女として力を振るうに相応しい肉体と魔力を兼ね揃
えた年齢にまで成長、更には彼女が使う魔法を、彼女にとって最もイメージし
やすいカタチに具現させるため……躰の一部を魔導兵器へと変化させるのだ!
 即ち、ジンの魔法少女化はそのまま、ジンの機械化を意味する! 
 そう、これこそが規格外強襲決戦型魔法神族――


        「マジックナイト・ジン! 推参ッ!!」


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「!?」
 俺の変身にエルクゥユウヤと妖魔の動きが止まった。
 その隙を逃さず、俺は水野の目の前まで来ていた妖魔にロケットパンチを飛
ばす。魔力の込められた鉄拳は、命中後、妖魔の体内に大量の魔力を注ぎ、敵
の躰ごと爆裂四散する。
「ぴぎゃあああああっ!!」
「ひぃっ! …………………………パタッ」(気絶)
 その際、妖魔の血と臓物が水野に降りかかったが……まあ問題なかろ。
 俺は改めてエルクゥユウヤの方に向き返りつつ、自分の身体状態をチェック
する。
 ……何て言うか、相変わらず恥ずかしい格好だな、コレは。
 いわゆるビキニ鎧ってヤツだが、今じゃアニメでも出てこないぞ、こんな恥
ずかしいデザイン。
 肉体年齢は、どうやら元の世界の俺と大差ないらしいな。
 やはり子供の身体では無理が利かないので助かる……が、この胸は少々邪魔
だ。重い。贅沢言っている場合ではないが。
 代わりに『力』の方は良好っ!
 魔法とか魔力とか理屈は分からないが、躰の方が理解している。
 いつも通り、思いっきり暴れるまでだ。
 俺はエルクゥユウヤを指差し、叫ぶ。
「エルクゥユウヤ! 色々と好き勝手してくれたな! お前は俺が死なすっ!」
「全然、正義っぽくない台詞だな」
 すかさずツッコミを入れてくるゴウ。
 黙れや。
「キィィィィ! 現れたわね、マジックナイト! ユウヤ☆の道を阻む者は誰
であろうと散り逝く運命! 我が愛の下僕よ、殺っておしまいっ!」
 エルクゥユウヤの号令と共に、天に空いた穴から、ぞろぞろと妖魔が降下し
てくる。
「来るぞ、ジン!」
「分かっているっ!」
 俺はマジックハンマーを構え、俺は敵陣に突撃した。
 向かい来る敵にハンマーを振り下ろす!
「オラァァァァァァァァァァ!」
 ぐしゃっ! ぐじょっ! ぼぐらばっ!
 次々と屍の山を築いていく俺。
「……だから正義っぽくねぇよ。ついでに言うと魔法少女ですらねぇ」
「黙れ小動物! これが俺のスタイルだっ! 魔法力ビィィィィィィムッ!」
 俺の放ったビームは、十数匹の妖魔をまとめて燃やし尽くす。
 だが
「数が減らねぇ!」
「ジン! 屋上だっ! おそらく屋上に、召喚陣があるはずだっ!」
 ゴウに言われて校舎の屋上に目をやると、成る程、天を穿つような光は其処
から伸びていた。
「そうと分かればっ! マジックウィングっ!」
 俺の背中に赤いマントが出現し、それはそのまま蝙蝠の翼のような形に変わ
る。翼を羽ばたかせ、俺は飛ぶ!
「させるか! お出でませ、『タイコさん』っ!!」
 エルクゥユウヤが再び叫ぶと、一際大きな影が穴の中から這い出てくる。
 先頭がラッパを吹いたデカイ人間で、その後ろに全身タイツを着た連中が手
と足とで縦長に四人繋がっていて、最後尾の奴が何故か太鼓を叩いている……
よく分からない化け物だ。
 エルクゥユウヤはラッパ吹きの頭に乗ると、こっちを指差してくる。
「さあ、タイコさん! あの生意気な女をぐちゃんぐちゃんにしておやりっ!」
「うきゃ! うきゃ!」
 エルクゥユウヤの命令に従って、そのタイコさんとやらがこっちに突っ込ん
で来た。見かけによらず速いっ!
「ちっ……ぐぅ!」
 ギリギリのところで何とか躱したところに、背中へ衝撃が走った。
「ジン君!」
「ジン!」
 見れば、最後尾の奴が放った三つの気弾の一つに命中したらしい。
 ……しくじった!
「隙有り! 死んじゃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ☆ミ」
 怯んだ俺の正面から、タイコさんが突撃してくるのが見えた……!

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「秋山っ! やっぱり危険だよっ!」
「カッカッカッ! 問題ない! セリスだって、何が起きているのか知りたい
だろうが?」
 リズエル棟の屋上へと続く階段を、秋山とセリスは昇っていた。
 先程、教室の窓から見た光柱の正体を確かめるためである。
 棟内に職員の姿は何故か見当たらなかった。(儀式を邪魔されるのを嫌った
エルクゥユウヤが全員ノしてしまったのである)
「そりゃ気になるけど……何か外から爆音みたいのも聞こえるぞ!?」
「尚のこと面白そうじゃあないか! 何だかんだ言っているうちに、もう屋上
に着いてしまったしな。良し、開けるぞっ!」
「お、おい! 待てって!」
 そして秋山は屋上の扉を開き、その一歩を踏み出す……。

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「うきゃ〜〜〜〜っ!!」
「なっ!?」
 タイコさんの悲鳴が轟く。
 エルクゥユウヤが驚愕に目を見開いているのが分かった。
 俺は『回転を止めて』、不敵に笑ってやる。
「秘技マジックウィング超旋回! あまり俺を嘗めねぇことだなっ!」
 マジックウィングは羽根自体が鋭い刃である。
 その場で回転することで、マジックウィングは刃の竜巻となる。
 先頭のラッパ吹きはマジックウィングに切り刻まれて、血塗れになった。
 だがっ! まだまだ、こんなもんじゃ済ませないぜっ!
 俺はタイコさんの最後尾に素早く回り込み、太鼓を叩いている奴を捕まえる。
「今度は……貴様が回る番だっ!」
 そしてそのまま力任せに振り回してやる。
 ジャイアントスゥイングの要領だ。もっとメチャクチャだが。
 一直線に繋がっているタイコさんは、遠心力によって、もの凄いスピードで
回転を早めていく。
「うきゅきゅきゅきゅ〜〜〜〜!」
「うぎゃあああああああああああああああ!」
 タイコさんとエルクゥユウヤの悲鳴が聞こえる。
 無論、相手にしない。
 俺はタイコさんを回し続けながら、リズエル棟の屋上に狙いを定めた。
 そこには光の柱を放つ魔法陣も見える。
「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 振り回したタイコさんをそのまま屋上に叩きつけるっ!

 そのとき。

「さあ! 世界の不思議カモンっ! ……ぬおおおおおおおおおおおお!?」
 何故かちょうど秋山が屋上に出てきた。
 でも、こっちの勢いは勿論止まるわけもなく……

 ――惨劇。

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 戦い終わって。
 後には屋上部分が妙にへこんだリズエル棟と、その上に横たわるタイコさん
の骸が残された。
 無論、召喚陣も破壊され、空はまた澄んだ青空に戻っている。
 エルクゥユウヤはいつの間にか何処かへ消えてしまった。
 嵐が過ぎ去ったような光景を、ゴウと女王リズエルは、呆然と眺めているし
か出来なかった。
「ジンの奴、無茶しやがって……」
「ジン君らしいけどね……って、そう言えばジン君の姿も見当たらないけど?」
「ああ、ジンならさっき、女王様が呆然としている時に全力で逃げてったぜ」
「……何故?」
「それは……」

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「惚れた」
 タイコさんの死体の下から、セリスによって助け出された秋山の一声がソレ
だった。
「何だ秋山? いっぺん脳味噌砕けて何処かおかしくでもなったか」
 秋山の身体を引きずり出しながら、セリスは突っ込んだ。
 ちなみに「脳味噌砕けて」の部分は比喩ではない。
「さっきの女性……」
「ああ、この化け物振り回していてた女か? 妙な格好していて、お前の姿を
見たら全力疾走で飛んで逃げていったけど」
 秋山はこくんと頷き、顔を赤く染めた。
「可憐だ……」
「まあ、お前の趣味だからな。とやかく言うつもりはないけど、ぼくを巻き込
むなよ」
 この友人の性癖を知っているセリスは、また厄介なことになりそうだな、と
思いながら密かに溜め息を吐いた。

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「何でだ何でだ何でだ何でだ何でだっ! 何で元の世界と同じような結果にな
るっ!?」
 俺はマッハのスピードで飛びながら毒突いていた。
 ついでに言うと、もの凄く泣きたい気分だった。
「何であそこに秋山が出て来るんだよっ! あのタイミングで! 俺がこの姿
の時に! 何でだ何でだ何でだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 俺の絶叫は空に木霊する。
 木霊するだけで答えてくれるものは何もない。
 朝の起床から始まった、俺の受難。
 どうやらコレから、更にその激しさを増すようである。

 ――ホント死にてぇ。

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・
・

 彼女自身が理解しているとおり、マジックナイト・ジンの受難はこんなモノ
では済まない。
 Leaf学園裏山。
 さっきタイコさんごと振り回されて、ここまで吹っ飛ばされたエルクゥユウ
ヤは、土に埋まった自分の頭をようやくのことで引っこ抜いた。
 泥まみれの顔で、それでもエルクゥユウヤは不敵な笑みを浮かべる。

「ふふふふ……流石にやってくれやがるわね、マジックナイト・ジン!
 私も本気を出させてもらうわよ。そう! 『ユウヤ☆死天王』を使ってね。
女神の力を手に入れるのはこの! エルクゥユウヤ☆よっ!!」

 小学生化。
 レザムヘイムの崩壊、マナの暴走。
 狂いだした世界の秩序。
 魔法少女。
 秋山登。
 エルクゥユウヤにその死天王。
 そして三柱の女神……
 マジックナイト・ジンの先に待つ困難は、どうやら想像を絶するものになり
そうである。
 実は先程のジンの疑問に答えるのは、至極簡単である。
 理不尽な、思い通りにならない、自分ではどうすることも出来ない総ての事
象。それらは一般的に

 『運命』

 と呼ばれるものである。
 合掌。

                               つづく
……………………………………………………………………………………………

 ジン・ジャザムです。
 知る人ぞ知る魔法少女L俺版、ようやくに始動でございます。
 今回も連載モノ。死ぬ気か俺。
 まあ、こっちの連載は『望まれぬ生命』の合間に、気分転換的に書きますの
で『望まれぬ生命』以上に気長に待って下さい。ええ、悠久に広がる心で。
 しかし気楽に書くつもりだったコレ、蓋を開けると30k以上。
 30k未満のSSを書けませんか俺。
 何か難儀な体質に成りつつあるようです。

 さて、俺の通信簿を読んでいる人なら分かるでしょうが、俺の魔法少女増産
状態に対する嫌悪感はかなりなモノです。
 その俺が、何故、このLを書いたのか?
 まっ、一種の答えみたいなモンです。
「貴様は愚痴ばかりで、自分では何もしねぇのか」
 と言われるのが気に入らないだけであります。
 まあ、挑戦状みたいなモノと言えばそうかも知れませんが。

 ただ俺は作品で何かを訴えたりとか、そういうことが嫌いな人間であります。
 SSなんてものは、ただ面白ければいい。
 だから、実はそんな深い意味を持って書いているワケではありません。
 よって皆様も、気楽に読んで下さい。深く考える必要は皆無です。

 では今回はこの辺で。
 またです。

……………………………………………………………………………………………
 『ゴウちゃんにおまかせっ!』

ゴウ「ほにゃにゃちわー! みんな良い子にしているか?
   このコーナーでは、俺がジンのコスチュームについて解説するぜっ!
   栄光の第一回は、ジンが通う試立Leaf学園初等科の制服だ!」





 ――映像も無しに言葉だけで説明するのは無理があると思った。





ゴウ「ほな、またな〜」(二回目は無いと見た)