風が痛い。 もう数時間、外気に晒され続けている耳と指先が、悲鳴を上げていた。 (……冬は、嫌いだ) 乾いた風は人の体を痛めつけ、心を沈ませる。 良い事など、何もない。 ただ、嫌でしかない。 (こんなものは、いらない……そうだ、いらない……) 灰色の空の下。 風を受け、顔を俯かせつつ歩みを進め、思う。 (いらないものばかりだ、この世界は) 何故、この世界は、かくも不完全なのだろう。 冬になると寒い。 夏になると暑い。 どうして、何時でも何処でも、春ではないのだ? 「無能者め……」 生まれてから何千回目かの、神に対する悪態を呟く。 「貴様が無能だから……俺は」 じゃりん。 ガラスを踏みつけた耳障りな音が、俺に目的地への到着を教えた。 顔を上げ、その光景を見る。 「こうしなければ、ならなかった」 一面の廃虚。 コンクリートの塊、ガラスの破片、曲がった鉄骨、割れた木板……そんなも のが、無秩序に転がっている。 かつて『エディフェル』と呼ばれていた建造物の、成れの果て。 「不完全なんだよ」 鉄パイプと板切れが組み合わさった、奇妙なオブジェ――ただの壊れた机だ ――を眺めつつ、俺は告げた。 「完全なものなど、何一つ無い……この世界には。何もかもが不完全だ。 そう、思うだろう?」 「……それが、理由なの?」 俺の言葉に。 彼女は、掠れた声で応えた。 「そんな理由で、あなたは……」 瓦礫の上に立つ、すらりとした容姿の女。 来栖川綾香。 ……と、果たして呼んでいいものか。今の彼女を。 「学園を、世界を、滅ぼそうって言うの? 魔王の力を使って!」 次第に声が大きくなり、最後は叫んできた彼女に。 「……違うさ」 俺は、小さく呟く。 「最大の理由は――お前が、お前でなくなってしまったことだ。俺にとって。 あの時、俺は決意したんだ。日陰を覚醒させる事を」 日陰――魔王、風上日陰。 世界を無に帰す、ロウの執行者。 俺は、彼女の『マスター』だ。 と言っても、俺が日陰を完全に支配している訳ではない。 『マスター』とは、日陰がこの世界で十全の力を発揮する為に必要な存在。 言わば、日陰という名の世界破壊機械の中の、部品の一つに過ぎないのだ。 だが部品とは言え、俺には意志がある。 俺が『マスター』としての役目を放棄すれば、日陰は世界の破壊という使命 を果たす事は出来なかったかも知れない。 しかし、俺は使命に従う道を選んだ。 「私が……私でなくなった?」 綾香の瞳に、戸惑いの色が浮かぶ。 「私は……いつだって私よ? 何も変わってなんか……」 「……」 俺は、彼女をじっと見詰めた。 ……じっと。 彼女の姿を見るたび、心に重くのしかかる、深い悲しみを込めて。 それが、伝わったのか―― 綾香の双眸が、はっと見開かれる。 「まさか…」 ……そうさ。 「まさか……!」 ……そうだよ…… 「私がアフロになったからっ!!??」 「決まってんだろぉがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 全ては、あの日から始まった。 緒方理奈教師が己の髪をアフロ神に捧げた、あの日から。 だがその時は、まだ笑っていられた。 彼女のファンの一部がアフロの徒になった頃も、テレビが映し出すその様子 を見て爆笑していられた。 が、通りすがる人間の五人に一人の頭には輝くアフロの姿が見られるように なると、少し笑いがひきつってきた。 二人に一人になると、笑いがひきつり過ぎて頬が筋肉痛になった。 ”爆髪頭を叩いてみれば〜 文明開化の音がする〜” とかいう歌が流行り出すと、なんか段々泣きたくなってきた。 「アフロにあらずんば人にあらず」が流行語になると、人間を辞めたくなった。 そして「日本アフロ党」が参衆議院の過半数の席を占め……遂に彼女の頭が アフロに侵された時、俺はあっちの世界の扉に手を掛けた。 「もーこんな世界は一切合切消し飛ばしてくれる! 俺が済世者だぁっ!!!」 「なによ! アフロのどこがいけないって言うの!? ほら、ゆーさくだって」 「はっはっは、最初は抵抗があったけど、結構いいもんだぞ。ハイドラント」 「うるせえ黙れアフロカツラを持って近づくなぁぁぁぁ!!!」 「全く、アフロの良さが分からんとは不幸な男だ。 ほれ、綾香の為に作ったアフロ弁当だが、あんたにも分けてやろう」 「てめーもかガンマル!! なんだそのブロッコリーとカリフラワーだらけの 弁当箱はっ!?」 「さあハイド、一緒にアフロを称えましょ」 「ア〜フロや、ア〜フロや♪」 「アフロや、アフロや、アフ〜ロや〜♪」 ぷっちん。 「焔羅、爆龍、滅覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 緑葉帝73年12月24日。 暗殺者ハイドラント、かつて愛した女(+お邪魔虫二匹)を道連れに自爆。 享年17歳。 そして世界は、混沌の海へ還された。 風上日陰の手で。 世界を始まりに戻したこの魔王は―― 金色の瞳と、 純白の翼と、 そして頭には黄金に輝くアフロを持っていたそーである。 Leaf Memorial 完 ・ ・ ・ ・ ・ 「どうでスカ? コォの完璧な計画! 理奈先生をアフロにすれバ、貴方の望む世界の破滅が訪れるのデス! トユー訳で、賛成してくれますネ?」 「却下。」 とっぴんぱらりのぷぅ。 *********************************** と言う訳で、「VSアフロ」破滅エンド。 タイトルに入れるとフェイクが利かないので入れませんでした(笑) アフロ綾香。 なぜこんな犯罪行為をしてしまったのか!? それは。 「殺られる前に殺れ」(笑) いずれ誰かにやられるなら、せめて俺の手で(涙) とまれ、反対に一票ってことでよろしく〜(笑) 追記。 Tさん宛て私信。 いんたーみっしょん5で、葵萌えの中に入れるの忘れてました(汗) 申し訳ない。