Lメモ「ある”なでなで”な一日」 投稿者:水野 響
  新城沙織はなんとなく楽しかった。
  ほのぼのとした雰囲気が心地よいからだ。
「へへ〜〜(にこにこ)」
  そして、その原因がここにいる。

  朝一番に沙織は教室に行ったが、祐介がいなかったので少し落ち込んでいた。
「まったく・・・祐くん、どこいったんだろ?  もう来てるはずなのに・・・」
「あの・・・お手洗いに行ってるだけかもしれませんし・・・」
  沙織のフォローをしている瑞穂は困った顔をしている。
  さっきからこの調子だからだ。
  祐介は瑞穂のいうとおり、トイレに行っていただけだ。
  単なるすれ違いだが、沙織の機嫌は悪くなっていた。
  すると目の前から小学生くらいの女の子が歩いてきた。
  響だ。
「あら?  こんなところにどうして女の子が?」
  瑞穂が不思議そうに呟くと、沙織は駆け出していった。
  なんとなく、小猫を見つけた時のような気持ちなのだろう。
「あ・・・まってください」
  瑞穂も後を追った。

「お嬢ちゃん、どうしたの?  迷子?」
  瑞穂が追いついたときには、すでに沙織が話し掛けているところだった。
  学校で迷子というのも変な話だなと、瑞穂は思っている。
  しかし、沙織はただ喋ってみたかっただけだった。
「あぅぅ・・・迷子じゃないです〜。ついでにお嬢ちゃんでもないです〜」
  女の子扱い、迷子扱いされるのにはなれてしまったらしく、否定の仕方が簡単になったようだ。
  しかし、この答えではお嬢ちゃんという答えを否定していないことに気づいていない。
「ん?  じゃあ、誰か捜してるの?  お兄ちゃん?  お姉ちゃん?」
  瑞穂が後ろから優しい口調で聞く。
  二人ともすっかり響を女の子だと思い込んでいるようだ。
「あぅ〜〜私も高等部の生徒です〜」
  多少は馴れていても、否定するそばから二人に間違われたので泣きそうだ。
「あ、ごめんねごめんね。泣かないで!」
  沙織が頭をなでる。
  なでなで。
「あっ・・・・・・へへ〜〜(にこにこ)」
  なでなでによって、響の機嫌はなおった。
「あ、私、新城沙織、よろしくね」
「私は、藍原瑞穂です」
「わたしは水野 響です〜〜(にこにこ)」
  響はすっかりなでなでにはまっている。
  この程度で機嫌が直るとは・・・精神年齢も小学生か・・・
  
  なでなで・・・
「へへ〜〜(にこにこ)」
  なでなでなでなで・・・
「へへ〜〜(にこにこにこにこ)」
  おお!  なんか楽しいぞ!
  沙織はなでなでにすっかりはまっている。
  気持ちいいです〜〜。
  響もすっかりはまっている。
  わたしもやってみたいな・・・
  瑞穂はうらやましそうだ。
  周りの生徒もぼんやりとその光景を見ていた。
  響と沙織の周りだけほのぼの空間になっている。
  生徒達も実はなでなでをしてみたいのだ。
「いいこだね〜〜」
「へへ〜〜(にこにこ)」
  すでに会話は意味のない領域に到達していた。
  まわりの生徒は二人が去るのをいまかいまかと待っている。

  キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン〜

  ほのぼのとした雰囲気を打ち砕くようにチャイムが鳴った。
  周りからため息がもれ、みんな教室にもどっていく。
「あ・・・チャイム鳴っちゃった」
  沙織が残念そうに言う。
「鳴っちゃいましたね・・・」
  瑞穂は一度もなでなで出来なかったので、さらに残念そうだ。
「はいです〜〜では、またです(ぺこ)」
  響は十分なでてもらったので満足らしい。
  とてとてと自分の教室に向かって歩き出した。
「あの子・・・持って帰りたかったな」
  ぼそっと呟いた後、はぁ〜〜、とため息をつき、沙織も教室に戻って行った。
  密かに瑞穂もそう思ったのは秘密である。




		Lメモ「ある”なでなで”な一日」




  <昼休み>

  今日も響は楽しそうに学校生活を送っていた。
  実はなにも考えていないだけかもしれない。
「るる〜〜るらら〜〜♪」
  廊下を歩いていると楽しそうな鼻歌が聞こえてきた。
「あぅ?」
 鼻歌が聞こえてきたほうを向くと、マルチがモップを持ってこちらへ向かってくる。
 見慣れた光景だ・・・と思ったら途中で見事に転んだ。
「う〜〜」
 マルチが泣きそうな表情で顔を上げる。
「ああ!  大丈夫ですか〜(あせあせ)」
  慌てて響は助けようと近づく。
「まるち〜〜!  だいじょうぶか〜〜〜!!!」
  数メートルの距離にいたはずの響がたどり着く前に、セリスがマルチを抱えあげた。
  さっきまでは姿も見えなかっただけに、響はびっくりしている。
  心霊現象か?
「ああ!  まるち!!!  ころんだのか!?  だいじょうぶか!?」
  セリスは思い切り錯乱している。漢字変換も出来ていない。
  マルチは抱えたままなので、喋ることはできないようだ。
「まるち〜〜〜〜!!!!!」
  そのまま視界から消えていくセリスとマルチ。
「あぅあぅ・・・」
  響は口を開け、呆然としたまま立ち尽くしていた。
「・・・セリス様は相変わらずですね」
「あぅ!(びっくり)」
  突然の声にびっくりした響が振り向くとそこには黒髪の女性が立っていた。
  天神の女性版、貴姫である。
「おや? 驚かせてしまったようですね。申し訳ありません」
  年上のお姉さんに、丁寧に謝られてしまい、余計におたおたする響。
「あぅあぅ、そんなこと、そんなことはないで、です」
  混乱モード発動。
「そんなにおたおたしないで・・・くすくす」
  優しくなでなでをする貴姫。
  響はぽや〜としたあと、にこにこしだした。
「へへ〜〜(にこにこ)」
  響、混乱モード解除。にこにこモード発動。
  貴姫はそのままなでなでを続ける。
「私、水野 響といいますです〜〜(にこにこ)」
「私は貴姫と申します」
  にこにこしたまま、自己紹介をする響。ふたたび、ほのぼの空間が展開される。
「驚かせたお詫びに、お茶でもどうですか?」
  貴姫は柔らかい口調でたずねる。
「あぅ〜〜いきます〜〜」
  なでなでしてくれる人に悪い人はいない、そんな理論に基づいた響の思考回路はしごく単純だ。
「へへ〜〜(にこにこ)」
  ほのぼのした空気を辺りにばらまきながら、貴姫の袖を掴んでついていく響。
  お茶とお茶菓子をごちそうになった響は、貴姫も貴姫のお茶も、とても好きになったらしい。
  う〜ん・・・お菓子をあげたら何処にでもついていきそうだな・・・



 「おいしかったです〜〜(にこにこ)」
  お腹一杯になった響は幸せ一杯だ。
  周りの空気にまで幸せほのぼの空間を展開している。
  S・Hフィールド(幸せ・ほのぼのフィールド)といったところだ。
 「あぅ!?」
  と思っていたら、突然転んだ。ほのぼの空間も消滅だ。
  その姿は、さきほどのマルチのようだった。
 「あぅ〜〜(泣きべそ)」
  廊下で倒れたまま泣き出しそうになっている。  
  顔から打ったのか、鼻を押さえてとても痛そうだ。 
 「・・・ん? どした? お嬢ちゃん」
 「あぅ?(涙)」  
  声をかけられて顔を上げると、そこには黒い髪を後ろで束ねた男の人が立っていた。 
 「・・・おい。誰もいないのかよ・・・保護者はどこ行ったんだ・・・ったく。んーと・・・、
  とりあえず、立って見ようか?」 
  男の人は、少し何かぶつぶつ呟くと、倒れ込んでいる響にそっと手を差し出した。
 「あぅ〜〜」
 「ほらほら、泣いてちゃ何も変わらないぞ」 
 「あぅあぅ・・・」  
  ハンカチを貸してもらい、顔を拭く響。多少は落ち着いてきたようだ。 
 「ぐす・・・ありがとうです〜〜」
 「ん・・・礼はいい。私は泣く子も黙る『情報特捜部のシッポ』だ。
  っつーても、本当に泣いた子が泣き止んだのは初めてだな。流石に。お嬢ちゃんは?」 
  男は自分を指しながら自己紹介すると、微笑を浮かべながら響へ聞き返した。
 「シッポさんですか〜〜わたしは一年の水野響っていいます〜〜」
 「響か、よしよし、もう泣くな」 
 「あぅ〜〜おにいちゃんみたいです〜〜」  
  大体、立ち直ったようだ。  しっぽを見て少しにこにこしている。
 「よしよし。おにいちゃんが面倒見てやるからな」  
  しっぽもなんだかおにいちゃんという言われ方が気に入ったようだ。  
  きっと保護欲がそそられたのだろう。
  響の手を取って歩き出す。 
 「えへへ〜〜おにいちゃんです〜〜(にこにこ)」  
  響もなんだかうれしそうだ。 
 「う〜む・・・よしよし」 
 「へへ〜〜〜(にこにこ)」
  なんだか学校内で妙にのどかな光景が展開されていた。



  <5時限目>

「由綺先生・・・水野君が寝てるんですけど・・・」
  生徒の一人がくすくす笑いながら言う。
「あ〜〜ぅ〜〜・・・・」
  どうやら、お腹一杯で睡眠中らしい。
  とても幸せそうな寝顔だ。
「う〜〜ん・・・どうしよう」
  その幸せそうな寝顔に、由綺先生はとても困っているようだ。
  起こしたら泣いちゃうかも・・・
  そんな葛藤があって起こせないようだ。
  でも・・・でも、私は先生だし・・・でも、泣いたらかわいそうだし・・・
  どうやら思考が無限ループに入ってしまったようだ。
  いい人だが、いい先生・・・と言っていいのだろうか?

  結局、悩んでいる間に授業は終わってしまった。

「くすん・・・私、いい先生じゃないのかな?」
  由綺先生に教師としての疑問だけを残して。



  <放課後>

 「あぅ・・・」
  響は困っていた。
  非常に困っていた。
  そう・・・迷子になってしまったのだ。
 「ここ、どこですか〜〜(泣きべそ)」
  実は3年の教室の近くなのだが、いままで来たことがないだけに困っている。
  おまけに、どういう風にきたのか記憶にない。
 「あぅあぅ・・・」
  爆発、5秒前。
 「おや・・・どうしたのかな?」
  突然声をかけられたため、カウントストップ。
 「あぅ?」
  振り向くと、そこには可愛いという表現がぴったりな人が立っていた。
  隣には芹香が慎ましやかに立っている。
 「え〜〜と・・・お姉さん達は?」
  不思議そうに聞く響に、お姉さんが苦笑いで答えた。
 「僕は男なんだよ・・・神無月りーずっていうんだ。
  こちらは来栖川芹香先輩、3年生。ところで、お嬢ちゃんは?」
 「あぅ・・・わたしも男なんですけど・・・水野響って言いますぅ〜〜」
  二人は、互いに困ってしまった。
  お互いに性別を間違えられるのには馴れているが、互いに間違えるという経験はさすがに始めてだからだ。
 「・・・・・・」
 「話を続けないでいいんですか、って?  ああ・・・ごめんね。
  ところで、響君はなにをしてたのかな?」
  芹香に言われ、りーずが場を取り繕うように質問を戻す。
 「えっと・・・道に迷ったんです〜〜。一年の教室はどこか知りませんか?」
 「君も一年生なの?  じゃあ、連れてってあげるから一緒においでよ」
  りーずは優しそうな笑みを浮かべながら言う。
 「はいです〜〜」
 「芹香君、それじゃあ、また今度」
 「・・・・・・」
 「来栖川先輩、またです〜〜(ぺこ)」
 「・・・・・・」
  響はおじぎをしてから、てこてことりーずの後をついていった。
  うんうん、仲良きことはいいことかな。  


 「ふ〜ん・・・それじゃあ、響君は転校してきたばかりなんだ?」
 「はいです〜〜だから、よく場所がわかってなくて・・・」
  二人は仲良く雑談をしながら歩いている。
  はたからみると仲のいい姉妹だが、真実は男同士。
  妙に怪しい雰囲気をかもしだしているのは気のせいだろうか?


 「おや?  見かけない顔だね?」
  二人は突然声をかけられて振り向く。
  そこには3年のOLHが立っていた。
 「おや、OLH君、こんにちは」
 「あぅ?」
  響は不思議そうだ。
 「ああ、お兄ちゃんは、OLHっていうんだ」
 「あぅ〜こんにちはです〜(ぺこ)」
  さすが(?)に、今日一日で何人も知り合いになっただけあって、頭が混乱しているようだ。
 「こんにちは。よしよし、いいこだね」
  OLHは響はなでなでしながら話し掛ける。
  すっかり女の子だと思い込んでいる。
  響もなでなでに御満悦の様子だ。りーずは冷静に状況を見ている。
 「OLHぃぃっ!!  いきなし響をナンパしてんじゃねぇぇぇぇっ!!」
  突然、向こう側から走ってくるシッポ。
  どうやらおにいちゃんと呼ばれて、父性に目覚めたようだ。
  美しい兄弟愛・・・か?
 「ええい!  人聞きの悪いことをいうなっ!  だいたいなぜお前がここにいる!」
  OLHは反論するが、響をなでなでしたままなので、何とも説得力に欠ける。
 「響がビデオカメラを落としたみたいだったから、届けるために捜してたんだよ・・・」
  シッポは、なぜか稼動したままのビデオカメラを手に持っている。
  おそらく、今の状況の一部始終が記録されているのだろう。
  というか、なぜ撮影前に出てこなかったんだろう?
 「ええい!  お前にどうこう言われる筋合いはないわ!」
  OLHはさらに反論する。
  しかし、なでなではやめない。
  ある意味、賞賛に値するだろう。
 「ふぅん・・・。あっそう。そんな事言っていいんだぁ・・・」
  シッポは不適な笑みを浮かべてOLHにプレッシャーを与えている。
  そして、更に精神的一撃加えようと一歩横に出たその時だった。
 「おーにーいーちゃーん?」
  シッポの背後から地の底から響くような声が聞こえた。
  響はびっくりしているが、りーずはやはり平然としている。馴れているせいだろうか?
  OLHだけが、顔面蒼白だ。
 「あ、ああ、笛音。どうしたんだい?」
  OLHは突然おたおたしだした。
  なにかやましいところでもあるのだろうか?
 「ぶ〜〜おにいちゃんのばかーー!」
  笛音は拗ねたと思ったら、OLHの膝をおもいきり蹴った。
 「うぉ!?  いたた!」
  膝を押さえるOLH。
  そこへシッポの追い討ち。
 「ああ、笛音ちゃん、今ね、とっても面白い物が撮れたんだ。後でティーナちゃんと一緒に
  見るといいよ」
  シッポは不適な笑みを浮かべたまま、ビデオテープを笛音に手渡した。
 「ありがとう、シッポさん」
  にこっと天使の笑みを浮かべ、ビデオテープを受け取る。
  しかしOLHの目に写っているのは悪魔の笑み。死刑宣告ともいえる。
 「それじゃ、さよなら」
  冷たい一言をかけ、笛音は去っていく。
  OLHにとっては致命傷だ。
 「ああ!  まってくれ〜! ・・・じゃあね、響ちゃん。笛音〜〜誤解なんだってーー!」  
  涙しながら追いかけていくOLH。
  結局、女の子と勘違いしたまま去っていった。
 「あぅあぅ・・・」
  響はまだ困ったままだ。思考能力は完全にフリーズしている。
  しかし、間接的な原因は響にあることに本人は気づいていない。
  ここにまた一人、天然ボケの犠牲者となった・・・めでたしめでたし
  OLH「めでたいことあるか!(泣)」
  ずず〜〜(お茶をのむナレーター(無視))
  OLH「くそ〜〜〜!!!笛音〜ティーナ〜誤解なんだって〜(滝涙)」

  後日談:OLHが笛音とティーナに許してもらうのに3日ほどかかったらしい。



  <・・・夕方・・・>

  りーずと別れた響は帰り支度をしていた。
  延々と長話をしていたせいで、すでに日は暮れてしまっている。
  もう辺りには誰もいない。
「あぅ〜早く帰らないとお化けが〜あぅあぅ(泣)」
  いまだに姉が早く家に帰らせせるために言った作り話を信じているようだ。
「あぅ?」
  どうやらなにかを感じたらしい。
  不思議そうな響がきょろきょろと辺りを見ると、そこには女の子が立っていた。
  どうやら、なんと声をかけていいのか分からないらしい。
「だれ?」
  先に女の子が声をかけてきた。
「あぅ〜〜え、えっと、わたしは水野 響ですぅ〜〜」
  混乱しながらもきちんと自己紹介する響。
  成長はしているらしい。
「わたしは瑠璃子っていうの」
  淡々としゃべる瑠璃子。
  無垢な瞳が静けさをよりかもしだしている。
  響も徐々に落ち着いてきたようだ。
「あの〜なにされてたんですか?」
  不思議そうに聞く響。
「うん。夕焼けが綺麗だから」
  そういってにっこり笑う瑠璃子。
  汚れのない、笑顔。
  瑠璃子が空に視線を戻すと、響もつられて空を見上げた。
「・・・ほんとです。とっても綺麗ですね」
  見ほれたように空を眺めながら呟く。
「うん。綺麗だね」
  真っ赤な夕焼けの中、誰もいない校庭で綺麗な目をした二人の子供が空を眺めている・・・
  それは、周りから見ると涙が出るような光景だったかもしれない。
  子供の頃の光景・・・忘れかけていたもの・・・
  何処かに置き忘れてきたもの・・・それは、ノスタルジーの予感。



  二人は、そのまま日が完全に沈むまで夕日を眺めていた。






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  第二段です・・・長い割には、あんまし、おもしろくならなかったですね・・・
  しかも、一日の割には長いし・・・困ったものです。
  ラストだけ雰囲気が変わってますが、おそらくねらった効果はでていないでしょう(泣)
  多少シリアスがほしかっただけです(笑)
  これで、しばらくは響主体のLメモは終わりです。
  なんか、安心(笑)
  長編SSと長編Lメモを書きたいと思ってるので、見捨てないで見てやってください(汗)
  ・・・また長いんでしょうけど(笑)

  最後に:
  修正してくれたシッポさん、検閲を頼まれてくれた貴姫さん、OLHさん、りーずさん。
  ありがとうございました(ぺこ)