ぷろすちゅーでんとJin 第一話「ジン・ジャザム、大地に墜つ!」 投稿者:へーのき=つかさ
「う〜ん…」
 ジンはゆっくりと頭をもたげた。
(俺は…一体…)
 あたりを見回す。
 見慣れた灰色の天井に、白い壁。
 あたりに無造作に積まれた機械部品や電子部品の山。
 どうやらここは科学部らしい。
 まあ、それは別に大した事ではない。
 困ったのは別の事である。
(何故…ここにいる…?)
 彼にはここしばらくの記憶が無かった。

「目を覚ましたか」
 後ろを振り返ると、そこには彼の師匠にして、博士の柳川がいた。
「先生…俺は一体…」
「お前はな…」
 柳川は顔を曇らせた。
「また…柏木千鶴の料理を食ってあの世に行きかけたんだ」
「そうだったのか…」
「しかも今回は一ヶ月ほど眠り続けていたぞ」
「なにぃ? い、一ヶ月!?」
 ジンの顔が驚愕で歪む。
 今まではそこまで倒れている事など無かった。

 ずぅぅぅぅん…

「な、なんだ!?」
 突然の爆音に、ジンは窓を開けると身を乗り出した。
 そこでは…

「えーい!」
 ばしゅん! ばしゅん! ばしゅん!
「「「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」」
 なんと、理緒がボウガンを乱射して一般生徒をしばき倒していた。
「な、何が起きてるんだ!?」
「実はな…」
 柳川が神妙な趣で話を切り出した。
「悪りぃ…簡潔に言ってもらえないか?」
 しかしすぐに腰を折られた。
 柳川の機嫌が少し低下した。
「…うむ、実はな、かくかくしかじか」
「なるほど、かくかくしかじかか…」
 ジンは今の事情を完全に理解した。
 ホント便利な日本語である。
「分かったか?」
「ああ、千鶴さんが期末テストの成績優秀者に特典つけるって言ったのに守らず失踪しち
まって、怒った生徒共が『憂学機団』なんて組織を作って学園に半期を翻したってわけだ
な?」
「そのとおり」
「はっはっは、全く困った奴がいるもんだ」
「ははは、本当だな」
 さて、懸命な読者ならここで「おや?」と思うかもしれない。
 そう、実はジンは寝込んでいたため期末テストを受けていないのだ。
 しかしまあ…ふたりとも気にしてない(気づいてない)ようなのでいいとしよう。
 今の事態に比べれば些細なことだ。

「「「ぐはぁぁぁぁぁ!!!」」」
 外からはまだ悲痛な叫び声が聞こえてくる。

「するってーと、あれか? あの貧乏娘もその憂学機団の一員なのか?」
「ああ」
「よっしゃ、だったら俺がぶちのめしてやるぜ!」
 ジンは窓に足をかけると、そのまま飛び立…てなかった。
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ずどこぉぉぉぉん…

 ジン、地面に突き刺さる。

「言い忘れてたがな、憂学機団の所為で物資が科学部に入ってこんのだ。だからミサイル
もバーニアも無い」
「んじゃどうやって闘えっちゅーんじゃ!」
 土の中から頭だけをぽっこり出して叫ぶジン。
「これを使え」
 柳川が窓から放ったものは…
「棒?」
 そう、丈夫そうな素材でできてはいたが、何の変哲もない棒だった。
「これで…どうしろと…?」
「殴れ」
「………」
「それが嫌なら突け」
「…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 ヤケになったジンは棒を振り回しながら理緒に襲い掛かった。
「!?」
 理緒はすぐさまその殺気に気が付いた。
「みんなお願い!」
 その一声で理緒の後ろに待機していた憂学機団の生徒達がわらわらとジンに向かう。
「しゃらくせえ!」
 片っ端からなぎ倒すジン。
 しかし多勢に無勢、じりじりと押されてゆく。
「畜生! ロボット兵器が使えれば!」
「うーん、仕方ないな…量産セリオ! 出撃だ!」
 その声と共に科学部の窓から、モーニングスターを手にした赤い髪のセリオ、ライフル
を構えた青い髪のセリオ、回復アイテムを備えた黄色い髪のセリオが飛び出した。
「お前達、ジンをサポートしろ!」
「「「──了解」」」
 すぐに彼女たちはジンを取り囲んでいた敵に攻撃を加えはじめた。
 赤セリオはモーニングスターを振りかぶる。
 分銅は勢いを付け、ジンにしがみついていた敵を”ジンもろとも”殴り飛ばした。
「ぐはぁっ!?」
 続いて青セリオがライフルの照準を合わせる。
「お、おいお前…」
 バシュン、バシュン、バシュン
「俺の近くの奴を撃つな! こっちに当たる!」
 最後に黄セリオが回復弾を持ってジンに近づいてきた。
「まったくおまえら…ちゃんと敵狙って攻撃しろよな」
 ぐちぐちいいながら黄セリオの撃った回復弾を受けるジン。
 しかし、それは劣化ウラン弾だった。
「ぐべばぁっっっ!!!」

「うむうむ、戦局はかなりこちらの方が有利だな…」
 ひとり満足げに肯く柳川。
 確かに敵はバッタバッタ倒れている。
 ジンの被害はもっと酷いが。
「しかし、まだひっくり返される可能性も無いとは言い切れない。完璧を目指すのが正し
い狩猟者…もとい博士の使命! つーわけでお前も出撃しろ!」
「らじゃ〜☆」


 しゅごごごごご…

「ハア…ハア…ハア………ん、なんだ?」
 味方(?)から逃げ回りつつフルパワーで敵をなぎ倒していたジンは、頭上から妙な音が
聞こえてくるのに気が付いた。
 上を向く、そこには…
「ジンさ〜ん♪」
 バーニア背負ったティーナが浮いていた。
「なんでお前がいるぅぅぅ!」
「もちろんジンさんを手助けするためだよ。それっ、冷却シャワー!」

 ひゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…

「寒い冷たい凍る凍る凍るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
 ジン、市場のマグロ状態。
「あれ? オーバーヒートした時はすぐ冷やせって言われたんだけどなあ」
「息があがってただけだ! それに俺はサイボーグだ! オーバーヒートなどせんわい!」
「ちぇっ」
「なんだ今の「ちぇっ」っていうのは! おいコラ! 降りてきて勝負しろ!」


「うーむ、ティーナは出さん方が良かったか…まあいいか、おもしろいから今度の出撃の
時も出そう」
 柳川は全然反省した風もなく、戦いの記録を取っていた。


「なんか仲間割れしてるみたい…もしかしたらチャンスかも!」
 理緒はこそこそとジンに近づいた。
 そしてボウガンを構え…

「危ないジンさん! 出力500%ツインミサイル!」

 どきゅーん、どきゅーん

「へ?」

 ちゅどどぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!

 ティーナは理緒を倒した。
 レベルが上がった!
 ティーナはジンを倒した。
 レベルが上が…

「てめえのミサイル一撃なんぞでやられてたまるかい!」
「えーい♪」
 ティーナのミサイル攻撃!
「どわわっ!? コラッ! 降りてきて正々堂々戦え!」
「やだよ〜」
「てめぇぇぇ…絶対ブチ殺す!」


 ジンとティーナの熾烈な口論(ティーナが降りてこないため戦闘にはならない)の横で、
ひとりぶちのめされた理緒は泣いていた。
「しくしくしくしく…私は一体何のために出てきたの…」



〜憂学機団本部〜

 暗い室内。そこに3つの人影があった。
「理緒が科学部にやられただと…? それは本当か」
「ああ、本当だ」
 淡々と答える怪しげな男。
 しかし報告を受けた男は、焦りもせずに笑みを浮かべた。
「それぐらいやってもらわなくては張り合いがないというものだ。ふふ…祝電でも打って
やれ」
「あら、意外とキザな事するのね」
 傍らの少女がくすりと笑う。
「そうか?」
 それを軽く受け流して、男はどっかと椅子にもたれかかった。
「科学部か…おもしろい、はたして俺に勝てるかな?」



次回予告!
 科学部のエースとして戦う事になったジン・ジャザム。
 しかし、新人の猫娘たまのある行動によって、彼は精神的敗北を喫しふさぎ込んでしまう。
 どうする科学部、彼無しで憂学機団と戦えるのか!?
 その時、ひとりの少女が名乗りをあげた!
 「私が戦います!」