Lメモへーのき番外編6『非日常的な日常』 投稿者:へーのき=つかさ
<ぶらっくあるばむ>

「なんでこんな事になっちまったんだろーなあ・・・」
「──私に言わないでください」
 控え室らしき部屋で、ジン・ジャザム・・・ただし女性化しているが・・・と、Dセリオが
背中を向けて椅子に座りこんでいた。
 ふたりが顔を合わせて喧嘩しないなんて珍しい。
 いや、それよりも・・・
「Dセリオちゃん、ジンちゃん、よく似合ってるよ」
「せめて『君』にしてくださいよぉ〜、森川せんせぇ〜」
 だーっと滝のように涙を流すジン。
 なんと、ふたりともいかにもといったアイドル風のステージ衣装に身を包んでいたのだ。
「──恥ずかしいですね。こういう格好は」
 柄に無く、ぽっと赤らんでDセリオが呟く。
 ちなみにDセリオの衣装は、フリフリのレースがついたピンクハウス系。
 本人の強い希望により、スカート丈は膝下で、胸元はしっかり閉じている。
 期待した人残念でした。
「おまえなんかまだいいだろーが。俺の衣装を見ろ!」
 真っ赤になって叫ぶジン。
 ジンの衣装は、マジックナイトの甲冑をかたどりさらに可愛く(笑)色気(爆)を出した
露出度の高い(死)ものだ。
「こんなカッコを千鶴さんにでも見られたら・・・どうする俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「──ああ、何か大切な物を失ってしまったような気がします」
 なんか既に負けているふたり。
「大丈夫だよ。ふたりとも一生懸命レッスンしたじゃない」
「それが問題なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「──私達は、何故真面目にレッスンを受けてしまったのでしょうか・・・」

 どんどん

「はーい、どうぞ」

 がちゃっ

「森川先生、ふたりの準備の方は・・・」
「出たな諸悪の根元っ!」
「──コンサートが終わったら覚悟してくださいね」
 部屋に入ってきたのはbeakerだった。
 彼を見たとたん、いきなり泣きやんで凄惨な表情になるふたり。
「ちょっと待ってくださいよ! なんで僕が・・・」
「こんな事になったのは全てお前のせいだからよってイデのもとへ辿り着け白いのぉぉぉ
〜〜〜!!!」
 ジンはなんかわめきながらbeakerの襟を掴んで吊し上げた。
「だって千鶴さんの料理から助けてくれるならなんでもするって言ったじゃないですか!」
「言葉のあやだ! 忘れろ! 俺は忘れた!」
「──それにどうして私まで巻き込まれるんですか!」
 Dセリオもbeakerにつかみ掛かる。
「それは、ジンさんがDセリオさんも一緒ならやってやると言ったので・・・」
「──ジンさん・・・?」
 ぎぎぃっと首だけがジンの方に向けられる。
「──あーなーたーとーいーうーひーとーはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「何言ってんだ、そもそも俺が女性化するようになっちまったのはお前のせいだろうが!
 修正するぞ貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ど、どうしよ〜」
 三人の争いの前に由綺はひとりうろたえていた。
「何してるの由綺、もう時間よ」
「ああっ、理奈先生! 助けてー」
 理奈に泣き付く由綺。
「助けてって何を・・・」
 理奈は部屋の中を一瞥し・・・その惨状に目を逸らせた。
「とりあえず警察沙汰になる前に始めちゃいましょう」


「「「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」」」

 校庭に作られた特設ステージは全校の生徒達で埋め尽くされていた。
 ジンとDセリオはカーテンの間から客席を覗いていた。
「すげえ人数だ・・・beakerの奴大儲けだな」
「──明日から第二購買部は出血大バーゲンですね」
 ふたりは、自分達を応援してくれる人の多さに感激していた。
「まあ、MSの一台や二台ぐらいならタダでくれるだろうな」
「──当然全品90%OFFですね」
 ふたりはにっこりと微笑み合うと舞台に立った。


P.S.1
「ええ、すごい舞台でしたよ。ふたりの歌や踊りはもちろんの事、ステージを駆け巡る
レーザーに煙幕、色鮮やかな爆発の光。そして飛び散る赤い血しぶきと断絶間の叫び声
・・・ええ、本当にすごかったです」
 のちに観客のひとり、F田君(16歳・男)は語ったという。

P.S.2
 コンサートの券は全て払い戻しになったそうだ。


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<魔法の歌姫アイドルユキ>

「助けてくれー!」
「えっ!?」
 廊下を歩いていた音楽教師、森川由綺は、男子生徒の助けを求める声に立ち止まった。
 生徒が助けを求めている!
 自分は教師、だから生徒を護る義務がある!
 由綺は熱い使命感を胸に声の発生源へ走って行った。

 何度か道を間違えアルタ前やマリアナ海溝へと寄り道しつつも、由綺は現場へとたどり
着いた。
「誰なの!? 生徒を襲・・・」
 ばっ!
 さっきの威勢はどうしたのか、由綺は慌てて物陰に飛び込んだ。
「な、なにアレ・・・」
 なんだか原色バリバリのケバケバしたツンツンの塊が男子生徒達を襲っている。
 生徒を助けなくては・・・
 そうは思っているのだが、あの得体のしれない物体とは関わりたくないと人としての
本能が悲鳴をあげる。
 どうしよう・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
「誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」
 由綺が悩んでいる間にも、生徒達は次々に襲われてゆく。
「た、助けを呼んでこよう・・・うん、そうしよう・・・」
 足音をたてないようにその場を離れる。
 しかし、生徒達に悲痛な叫びが彼女を引き留める。
「違う・・・私は逃げるわけじゃない・・・ただ助けを・・・」
 そう言いながらもぶるぶる震えている。
「ああっ!」
 彼女は葛藤に耐え切れなくなり頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「私が歌手の道を捨てて教師になると言った時快く背中を押してくれた音楽教室の先生
(当時32歳独身男)っ!! 私は・・・いったいどうすればいいんですか・・・!」
『甘ったれるな森川!』
「先生っ!」
 由綺は青空に浮かんだ(天井は?)自分の恩師を仰いだ。
『もし俺がお前の立場なら、自分の事など後にして生徒達を救うぞ』
「自分の事は後回し・・・?」
『そうだ、お前は公僕だ! 奉仕の心だ!!』
「ボランティアですね!」
 明るい太陽の光が由綺を包みこみ、祝福のラッパを鳴らす天使が周りを飛び回った。
『分かったら行け! 今日こそ0点に押さえるぞ!!』
「ありがとうございます、音楽教室の先生(当時32歳独身男)!」
 由綺はゆっくりと立ち上がると、アレな物体を見据えた。
 すうっと息を吸い込む。
「あなたを倒して今シーズンはいただき・・・やっぱり恐いよー」
 両手を握って頬に当て、乙女チックにぶんぶん頭を振る。
 なんか涙が滲んでいる。
「ああっ、どうしよう!」
 両手で壁をばんばん叩いた時だった。

 かつーん

「あっ!」
 由綺のポケットから落ちたピンク色の妙に可愛らしいマイクが固い金属音をたてた。
「・・・そうだ、このマイクがあるじゃない!」
 由綺はマイクを掲げると呪文を唱え始めた。
「ぴぴるまぴぴるま、ぷりりんぱ、ぱぱれほぱぱれほ、どりみんぱ、アイドルタッチで
魔法少女になぁーれぇ」
 ぴかーん
 マイクが輝き、何故か現れたスポットライトの光に包まれる。
 光が晴れた時、由綺はステージ衣装のようなものに身を包んでいた。
「魔法の歌姫アイドルユキ、皆の幸せ護るため、レザムヘルムから参上です!」


 ユキはだっと跳躍すると、得体のしれない物体のすぐ後ろに着地した。
 普段はどん臭く運動音痴な由綺だが、変身した後は身体能力が常人並にまで上昇する
のだ!
「生徒を襲う悪者よ、この魔法の歌姫アイドルユキが相手です!」
「アイドルユキですって?」
 形容できない物質がゆっくりと振り返った。
 なんと、それは派手な羽飾りをべたべたとはりつけ極限まで露出度の高いぎらぎらな
衣装を身にまとった、いわゆるリオのカーニバルな格好をしたエルクゥユウヤだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと何気絶してるのよ! 失礼ねっ!!」
「はっ!? いけないいけない・・・・・・生徒を襲う悪者よ、この魔法の・・・」
 それはもうやった。
 さすがのユウヤもそのあまりに頼りない様子にあっけに取られている。
 しかしそこは狩猟者、すぐに自分のペースを取り戻した。
「そう、あなたも魔法少女なのね・・・」
 妖艶な笑みを浮かべると、ゆっくり近づきユキの顎を掴んだ。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
 ユキはもう泣いている。
「残念だわ・・・あなたが可愛い男の子ならたっぷり可愛がってあげるのに・・・」
 ユウヤの目が狂暴な光りを放った。
「あ、あ・・・」
 アイドルユキ、何もしてないのにいきなり大ピンチ!
 その時だった。
「天呼ぶ地呼ぶヒトゲノム変態倒せとボクを呼ぶ、我田引水四面楚歌、魔法少女マジカル
ティーナ変態倒しに参上です!」
 お馴染みの訳解らん口上と共にマジカルティーナが現れた。
「まあ、またあなた?」
「学園に薔薇をばらまくド変態! 魔法の懲罪人マジカルティーナがきれいさっぱり退治
してあげるわ!」
 ブンブン
「エルクゥユウヤ☆」
 嫌になるほど可愛らしい仕種で訂正するユウヤ。
「・・・えーい! エルクゥでもシズクゥでもプリティでもなんでもいい! 覚悟!!」
 ティーナはユウヤに躍り掛かった。

「ううっ、負けた・・・」
 ティーナは瓦礫に埋もれ、思うように動けなくなっていた。
 そこに無傷のユウヤがゆらりと近づいてくる。
 にいっ
 凶悪な笑みを浮かべると、ジャキンと爪を伸ばしペロリと舐めた。
「さあ、あなたの命の炎・・・見せてもらうわよ」
「え・・・?」
 今までうーっとユウヤを睨んでいたティーナの顔が、さーっと真っ青になった。
「い、命って・・・・・・や、やだなあ・・・そんないきなりシリアスな・・・」
「私はいつでも本気よ」

「ああっ、ティーナちゃんが・・・」
 ユキは再び物陰に隠れてしまっていた。
 ティーナを助けなければ・・・
 そうは思っているのだが、足が竦んでしまって動けない。

「死ねっ!」
「きゃ・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あ・・・!」
 ユウヤの爪がティーナの頭に振り下ろされる。
 ティーナはぎゅっと目をつぶり、逃げる気配は無い。
 このままでは・・・ティーナちゃんが・・・・・・死ぬ・・・?
 どうして死ぬの?
 自分がユウヤと戦えないから。
 じゃあ自分が全ての原因なの?
 自分のせいでティーナちゃんが死ぬの・・・?
 嫌だ!!
 そんなの嫌だ!!
 その時、彼女の体に強力な魔力が生まれた。
 いつもにこにこしている彼女には無い、狂暴な魔力の奔流。
「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 カッ!
「!?」
 ズガガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
 一瞬の閃光の後・・・
 最強最悪な魔力の込められたユキの叫びが、ユウヤもろとも全てを吹き飛ばした。

「はあ、はあ、はあ・・・」
 ユキはなかば呆然とした顔で、自分の破壊の跡を眺めていた。
「私が・・・これをやったの・・・?」
 あたりには建物の瓦礫すら残っていない。
 全て消し飛んでしまったのだ。
「凄い・・・」
 ユキの表情がぱあっと明るくなる。
「凄いよ、本当に凄いよ! 私って頑張ればここまでできるんだ」
 当初の目的をすっかり忘れてしまったユキは、変身を解くのも忘れ、小躍りしながら
去って行った。


「ううっ、ひどいよ由綺先生・・・」
 再び瓦礫の下、一緒に飛ばされたティーナはしくしく泣いていた。
 そして、そのすぐ後ろには目を血走らせたユウヤが・・・ 


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<エイリアンなふたり>


「フフ・・・コトネ、今日こそ決着を付けるネ」
「どうしてもですか? 宮内さん」
 薄暗くなった放課後の校庭、レミィと琴音が対峙していた。


「ふっふっふ・・・今こそミヤウチ星人とヒメカワ星人の秘密を見せてもらうぞ」
 浩之は校舎の陰に隠れてふたりの様子を観察していた。
 ご丁寧に双眼鏡とメモ帳まで用意してある。
「浩之ちゃん、秘密を見てどうするの?」
「もちろん暗躍生徒会に売るのさ。そしてそれをネタに一員に加えてもらう!」
 墜ちきった男には、もはやプライドの欠片も残っていなかった。
「そう、頑張ってね」
 あかりは幼馴染みの最後の悪あがきににっこりと微笑んだ。


「イザ勝負ネ!」
 レミィの全身から金色のオーラが放出され、ポニーテールをぶわっと吹き上げた。
「Let’s Hunting!!」
 引き絞られた弓から矢が放たれた。
 矢は琴音の額を狙って一直線に突き進む。
「すみませんけど射られるわけにはいかないんです」
 ぎゅいんっ!
 突然矢の軌道が変わり、それはあらぬ方向へと飛んで行った。
「ヤルワネ」
「これでも女王候補ですから」
 ふたりは間合いを取って再び構えた。


「あががががががが・・・」
「浩之ちゃんっておもしろい防御の仕方するんだね」
「刺さっとるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 浩之の脳天には琴音が弾いた矢が深々と突き刺さっていた。
「なんかアンテナみたいだね。ラジオの受信ができるかも」
「できるかボケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」


「Fire!」
 どごぉぉぉぉぉん!
 レミィの放った気弾が校庭にクレーターを作る。
 対する琴音は念動力で自らを飛ばしそれらを回避しつつ衝撃波を放つ。
 がごぉぉぉぉぉん!


「うひょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「あ、浩之ちゃんが飛んでる」
 浩之はレミィと琴音の攻撃をいい具合に喰らって宙を舞っていた。
 もちろん浩之を狙ったわけではなく、ただの流れ弾である。


「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
「いいかげん・・・しつこい、ですよ・・・」
 ふたりとも既に満身創痍だ。
 おそらく今日はこの辺で諦めてくれるだろう。
 琴音はそう踏んでいた。
「フフフフフ・・・」
「?」
 レミィはふいに、不敵な笑みを浮かべた。
「コトネ、アナタの負けヨ」
 そう言って頭上を指差す。
 琴音はゆっくりと顔をあげ・・・真っ青になった。


「ううっ・・・」
「浩之ちゃんってすごいね。だって宮内さんの気も姫川さんの衝撃波もまるで磁石みたい
に引き寄せるんだもの」
 引き寄せてるわけじゃねぇ・・・
 そう言いたかったが、彼は既に喋る事もままならない状態だった。


「月が・・・満月が出てる!?」
「時間をかけすぎたみたいネ、コトネ。今日こそワタシの勝ちヨ!」
 レミィの姿が変化してゆく。
 腕が膨れ上がり、背が急激に高くなってゆく。
「ああ・・・」
 琴音は恐怖におののき、レミィの変化を見守る事しかできない。
 そして・・・
「チュ─────────────────────────────────!!!」
 レミィは、校舎ほどの大きさの生ハムになっていた。


「浩之ちゃん、起きてる? こんなところで寝たら風邪ひくよ?」
「・・・・・・・・・」
 返事が無い、ただの屍のようだ。


 シュゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
「きゃあっ!?」
 巨大生ハム・・・もといレミィの口から放たれたぶっといレーザーは、校舎を薙ぎ倒し
校庭に深い溝を掘った。
 琴音はわずかに残った力を振り絞り必死に回避する。
 しかしそれにも限界がある。
 琴音はとうとう壁際に追い詰められてしまった。
 ゴウッ!
「テ、テレポート!」


「ぶぎょえっ!?」
 浩之は原子レベルで分解された。


「どうやら逃げられたみたいネ・・・でも今度は逃がさないワヨ」
 レミィはぐっと拳を握り締めた。
 でも着てた物は全て破れてしまい素っ裸だった。


沙留斗(塵)  「何してるんですか?」
浩之(原子崩壊)「うるせえやぃ」


                                    終わり
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