<機動姉妹のバカンス> ふと気がつくと、私は船に乗っていました。 あたりは一面海ばかり。 一体ここはどこでしょう? ☆★☆ 「──なんて事をしてくれたんですか!!」 「ほんの冗談だったんですよぉぉぉ・・・ごめんなさぁぁぁぁぁい・・・」 「──ごめんで済めば警察はいりませんっ!」 げしっ! ばきっ! どこっ! 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「はあ・・・」 へーのきとOLHが、取調室(拷問室とも言う)の前でため息をついていた。 すっかり憔悴しきっていて、死人のような顔をしている。 そこへ、場違いな明るさを振りまきながら笛音がやってきた。 「お兄ちゃんたちどーしたの?」 「いや、なんでもないよ・・・」 OLHは疲れた声で答える。 「そうなの?」 不思議そうな顔で、手をあごに当てて首を傾げる。 むちゃむちゃ可愛らしい仕種だが、OLHは全く反応しない。 らしくない・・・ 「とりあえず・・・あっちに行ってティーナちゃんと遊んでおいで」 相変わらず下を向いたまま、力なく手をぷらぷら振る。 「? へんなお兄ちゃん」 まだ納得できていなかったようだが、言われたとおり背を向けてトテトテ走り出す。 しかし、ふと気がついたように立ち止まった。 「そうだ! ねえねえ、Dまるちさん知らない?」 「それは・・・」 へーのきとOLHは、顔を見合わせて再びため息をついた。 「笛音ちゃん、考え事してるDマルチさんに話し掛けちゃいけないって知ってるよね?」 「うんっ! へーのきお兄ちゃんとDせりおさんから聞いた」 「そうか、それならいいんだ・・・」 「それでぇ、Dまるちさんはどこ?」 「・・・知らない方が幸せな事もあるんだよ」 「???」 ☆★☆ ふと気がつくと、私は眩しくと輝く太陽のもと、ヤシの実を売っていました。 「──私は・・・・・・一体何をしているのでしょう・・・?」 どうやら東南アジアのどこかの国らしいのですが・・・ 「娘さんや、ひとつおくれ」 「──あ、はい、ヤシの実ひとつですね」 ☆★☆ 「うぎょわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 取調室からはまだ榊の絶叫が聞こえてくる。 「榊さん・・・大丈夫かなぁ・・・」 「さあな・・・」 ふたりとももうヤケぎみだ。 「そもそもあいつが、シミュレーション中のDマルチに「南極に行ってシロクマ捕まえて きてほしいなー」だのぬかしたのが悪いんだから・・・・・・自業自得ってやつだよ」 「それ以前にシロクマは北極ですよ・・・」 「・・・・・・・・・」 「はあ・・・マルチさんを探してガーネットさんまでいなくなっちゃうし・・・どうしよう」 ☆★☆ 「──Dマルチサン・・・」 「──Dガーネットさん!? 何故ここに?」 降りしきる雪の中、私は信じられない光景を目にしていました。 「──私を・・・探しに来てくれたのですか?」 「──タッタヒトリノ・・・大切ナ姉妹デスカラ・・・」 Dガーネットさんのカメラアイには、私の姿がくっきりと映し出されています。 「──ガーネットさん・・・」 私達は静かに寄り添うと、しっかりと抱き合いました。 彼女は頭ひとつ分大きいので、私は胸に顔を埋める形になってしまいましたが。 優しく頭を抱いてくれるDガーネットさん・・・ 彼女からは、とてもいい匂いがしました。 私の一番好きな匂いです。 「──帰リマショウ、Leaf学園ニ・・・」 「──はい・・・」 ただ、ここは本当に何処なのでしょう? ☆★☆ 「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「──つべこべ言わずにさっさと乗る!」 ここはLeaf学園の近くにある港町。 そこで榊は、今まさに世界へ向けてはばたこうとしていた。 「──さあ! 海を渡りDマルチさんとDガーネットさんを捜すのです!!」 「こんな『たらい』で出港したら明日を待たずにお魚さんとお友達ですよぉぉぉぉぉ!!」 「──足りないところは勇気で補う! さあ、進水式行きますよ!!」 がしゃーん!! ヤケになったへーのきがシャンパンでたらいをぶっ叩く。 なんかビンの破片が榊の頭に刺さっているような気もするが、もうそんな事に構うだけ の気力は残っていない。 「おたっしゃで〜」 これまたヤケになったOLHが色とりどりの紙テープを投げる。 「死んだら化けて出てやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 それから1週間後・・・太平洋の真ん中で、日干しになっていた榊が通りがかりの漁船に 発見された。 ───────────────────────────────────────── <機動姉妹の実験> 「──オプティックブラスト!」 ズバッ! 「べぐぅっ!」 「──キャプテンファイヤー!」 ゴウッ! 「あぢぢぢぢ・・・!」 「──サウザンドミサイル!」 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!! 「どぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「──ふう、やっと暴動も治まったようですね」 あたりは一面瓦礫の山になっていた。 もちろん暴動鎮圧の名の下にDセリオが暴れまわった所為である。 ちなみにへーのきは、いつものように流れ弾にぶち当たりまくって焦げていた。 そんな事には全く気をかけず、事件の解決に満足した笑みを浮かべていたDセリオだった が、センサーに飛び込んできた情報に表情が強張る。 「──はっ!? また新たな事件が起きたようです。行きましょうへーのきさん!」 落ち着いた、それでいてなんかものすごく嬉しそうな顔をするDセリオ。 その目は「また重火器ぶっ放して暴れられるわ! やった☆」と言っている。 「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」 もう嫌だと心の叫びをあげるへーのき。 だが、それがDセリオに届いた事は一度たりとて無い。 「──さあっ!」 「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 だーっ、と涙を流しながら引きずられていくへーのき。 それは、いつもどおりの、ごく普通な風景だった。 「──・・・」 しかし、ここにその風景に疑問を持つ者がひとり・・・ ☆★☆ 「──へーのきサントDセリオサンノ仲デスカ?」 「──どう思いますか? 私はあまりうまくいっていないように思えるのですが・・・」 セキュリティ本部にて、DマルチはDガーネットに意見を求めていた。 「──ワタシニハ、オフタリノ関係ハヨクワカリマセン」 まあ、予想通りの答えだ。 そのように答えると踏んでいたのだろう、Dマルチは構わず話題を続ける。 「──おふたりの関係がうまくいっていない理由ですが、私はDセリオさんの感情システム に原因があると睨んでいるのです」 「──感情システムデスカ?」 そろそろDガーネットの頭では理解できない次元に突入しそうだ。 「──へーのきさんは争い事を好みません、しかしDセリオさんには非常に好戦的な感情 システムが組み込まれています。これではうまくいかなくて当然です。」 「──ハア・・・」 「──そこで、Dセリオさんに新しい感情システムを組み込んでみようと思うのです。幸い ここにプロトマルチさんの感情システムのコピーがあります。これに適切なデータを入れれ ば、へーのきさんとウマのあう人格に生まれ変わるはずです」 「──???」 DガーネットはもはやDマルチの言葉を聞いていない。 っていうか、これ以上理解しようとしようものなら、メモリー不足でシステムエラーに なるのがオチだ。 「──ただ、1からすべて打ち込むのは非常に手間も時間もかかります。そこで、誰かの 人格データをコピーして取り込み、それをモデルに新たな人格を構成してみようと思うの です。そこで・・・」 言いながらDガーネットの方を向く。 「──誰かモデルにふさわしい人を探して来てもらえませんか?」 いいのか? そんな重要な役をこいつに任せて。 「──? ハイ・・・」 なんだかよく分からないがとりあえず返事をするDガーネット。 こうして、恐るべき計画は実行に移された。 ☆★☆ 「さてと、アルバイトに行くか・・・」 へーのきは二年の教室から急ぎ足で出る。 のんびりしてるとDセリオにお仕置きされるからだ。 ドンッ! 「うわっ!?」 運悪く、へーのきは出会い頭に女生徒とぶつかってしまった。 倒れて尻餅をつく女生徒。 「ご、ゴメンっ! 前見てなくて・・・・・・ってセリオさん!?」 なんと、へーのきとぶつかったのはDセリオだった。 しかし、なんかいつもと雰囲気が違う。 いつもなら、とっくにカウンターをかけられて瓦礫の下敷きになっているはずだ。 いや、それ以前にぶつかったぐらいで尻餅をついたりしない。 それなのに・・・ 今日のDセリオは、倒れたままポカンとこちらを見詰めるばかり。 反撃どころか、何が起きているのかもわかっていないようだ。 「せ、セリオさん・・・とにかくいつまでもそんなところに座ってないで立って・・・」 戸惑いながらも手を出すへーのき。 Dセリオはその差し出された手を不思議そうにじっと見つめていたが、やがて、おずおず と手をのばし掴まった。 「大丈夫セリオさん? なんか様子がヘンだけど・・・」 へーのきの問いに、Dセリオはぽそぽそと今にも消えそうな声で答えた。 「──・・・」 「え、なんともないって? そう? まあ、そうなら別にいいんだけど・・・」 なんか釈然としない。 「──・・・」 「本部に行きましょう? うん、一緒に行こう」 きゅっ 「せ、セリオさん!?」 Dセリオはへーのきの右の袖に掴まった。 「だ、駄目ですかって? いや、別にいいけど・・・・・・なんか恥ずかしい・・・」 ぽっ・・・ 「ほ、ホントにどうしたのセリオさん!? やっぱりヘンだよ! ・・・・・・ああっ! そんな 泣きそうな顔しないで! わかった、わかったからぁ〜〜〜!!」 「──Dガーネットさん、芹香さんでは大人しすぎでは・・・」 「──ソウデスカ・・・デハ別ノ人を探シテ来マス」 ☆★☆ 「ふう、今日は夜勤無いからここまでだな・・・」 「おつかれ〜っ」 「あ、こんばんはOLHさん。今日は夜勤ですよね?」 「そうなんだよー。でもまあ、笛音ちゃんとティーナちゃんも一緒だから」 そんな他愛も無い世間話をしていた時だった。 「──やっほー、へーく〜ん」 「「へーくん!?」」 へーのきとOLHは声のした方に振り向き・・・・・・凍り付いた。 そこには、体操服に赤ブルマ、右手にはバレーボールといういでたちのDセリオがいた からだ。 カチンカチンに凍ってしまったふたりだったが、へーのきが最後の気力でなんとか口を 動かし言葉を紡ぎだした。 「ど・・・どうしたの、そのカッコ・・・」 「──え〜っ? 見てわからない? 体操着だよ」 なんか無意味に明るい表情を浮かべ、ルンルン言いながらへーのきに近づいた。 「──どうしちゃったのかな〜〜〜? もしかして私に欲情しちゃったの?」 頬をつんつんつつきながら、そんな事をのたまう。 「──もうっ、いくら夜の学校は人気が無いからってそんな事しちゃだめだぞぉあーっ、 もしかしてふきふきしたいの?」 「な、なななな・・・ち、違・・・」 真っ赤になってうろたえるへーのき。 まあ当然だろう、彼はその手の物にはあまり免疫が無い。 「へーのき! おまえ既にDセリオとそこまでいってたのか!?」 「違うっ! 誤解ですよぉぉぉぉぉぉ・・・オレとセリオさんはあくまでも上司と部下で、 強いて言えば兄妹みたいな関係・・・」 「やだなあへーくん。セリオさんだなんて他人行儀な・・・せりりんって呼んでよぉ」 「へーのき・・・・・・・・・そうか、男としてちゃんと責任取れよ。そして、もし万が一うまく いったら、ついでに幸せになれよ・・・」 「万が一ってなんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「へーくんっ☆」(抱きっ) 「なんとかしぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「──この性格は隊長には向かないと思いますが・・・」 「──スミマセン」 ☆★☆ 「大丈夫・・・?」 「だ、大丈夫・・・」 榊が心配そうに声をかける。 へーのきはおもいっきりやつれていた。 榊の聞いたところによると、昨日、体操着姿のDセリオに引きずられ、何処かへ監禁され ていたらしい。 あくまでもらしいというだけなのだが・・・ 「──へーちゃんっ☆」 来たよ・・・ へーのきは、諦めたような顔で声の方を向いた。 そこには、セーラー服にミニスカートといういでたちのDセリオが立っていた。 やっぱり最後はこれで来たか・・・ さっきまで一緒にいた榊は、既にどこかへ行ってしまった。 実に懸命な選択だ。 「──ささっへーちゃん。ふたりの愛を深めましょっ」 ずるずると介護室に引きずっていくDセリオ。 もう好きにしてくれ・・・ へーのきの心は既に遠いところへ旅立っていた。 絶体絶命の大ピンチ! へーのき・・・いや、Dセリオの貞操はあえなく散らされてしまうのか!? 次回! 第16話『愛の果てに・・・』 そうご期待!!(嘘です、書きません) 「──Dガーネットさん・・・」 「──皆サンガオ約束ダト言ウノデ・・・」 ───────────────────────────────────────── <機動姉妹の趣味> ちゃかちゃかちゃか・・・ 茶道部にて、Dマルチはお茶をたてている。 ばしっ、ばしっ、ばしっ 剣道部にて、Dガーネットは稽古をつけている。 すっ 「──どうぞ・・・」 たてたお茶を、同席している楓、初音、芹香、水禍達に勧める。 ばきっ! どかっ! ずげしっ! 「──次ノ相手ハ何処デスカ?」 部員を全て血の海に沈め、関係無いマネージャー達や、たまたま見に来ていた久々野を 撲殺する。 「・・・ご馳走さまでした」 「──お粗末さまでした」 楓にお辞儀をするDマルチ 「な、なんだいきなり!?」 「──稽古デス」 きたみちと佐藤に切りかかるDガーネット 「──そろそろ戻らなくてはならないので、さようなら」 「・・・また来てください」 楓達に見送られ、セキュリティ本部へ戻っていく。 「──デハ、ワタシハ帰リマスノデ」 「・・・二度と来るな」 傷だらけのへーのきに引きずられ、セキュリティ本部へ戻っていく。 「──今日はとても充実した一日でした」 「ねえねえ、こんどやるときはわたしもよんで!」 「あーっ、ズルイよ笛音ちゃん。ボクも行く!」 「──そうですね、今度のお茶会の時は一緒に行きましょう」 「「やったー!」」 「──OLHサン、今度一緒ニ剣道ノ練習ヲシマセンカ?」 「え・・・いいっス、俺は」 「──榊サン、今度一緒ニ剣道ノ・・・」 「あ、館長のところに行かないと・・・じゃあ、ガーネットさんまた・・・」 「──へーのきサン・・・」 「絶対虚無!・・・・・・・・・聞こえない・・・何も聞こえない・・・」 「──・・・」 「もしもしbeakerさん、全然切れなくて痛くない刀ってありませんか?」 ───────────────────────────────────────── たったこれだけ書くのにいつまでかかってんだか・・・