Lメモ・Battle of Gate!!(前編)  投稿者:でぃるくせん
(どこでしくじったのか…………)
  急速に遠ざかっていく母なる大地を見下ろしながら、ディルクセンは首をかしげ
た。ちなみに、当然というべきか、彼に自力で空を飛ぶ能力は備わっていない。
  すでに高度は400mを突破しただろうか。望まぬ飛翔もだんだんその速度を減
じていき、重力の法則に再びとらわれるのももうすぐだろう。彼は、背中にしょっ
た物体から伸びる一本のロープの感触を手で確かめた。『この仕事』をはじめてか
ら三年、空を飛ぶことには(悲しいことに)もう慣れている。自然と自己防衛手段
も身につこうというものだ。
  ロープの存在を再確認した直後、上昇が止まった。ニュートンが発見した重力の
法則を確認するべく、彼の体は自由落下を開始する。ディルクセンはためらわずロ
ープを引っ張った。たちまち純白のパラシュートが展開し、ディルクセンはふわふ
わと空中に繋ぎ止められる。
「取り敢えず、少なくとも生きて帰ることはできそうだな……」
  徐々に近づいてくる地表を見下ろし、溜息を吐く。風もあるし、どこに降りるこ
とになるかわからんが、校舎からそう離れたところにはならなさそうだ。これなら
授業に遅れる事も無いだろう。
  だが、その考えはとんでもなく甘かった。
  ピッ、と布の裂けるような音が頭上で響いた。上を見てはいけないような気がす
る。彼は敢えて何も聞こえなかったことにした。地表まで100メートル。
  ピピッ、と布が大きく裂けるような音が頭上で響いた。心なしか、落下速度が増
しているような気がする。しかし、それでも彼は敢えて何も聞こえなかったことに
した。地表まで70メートル。
  ビリビリッ、と布が完全に裂けるような音が頭上で響いた。とたん、ディルクセ
ンの体は母なる大地に向けて自由落下を開始する。敢えて聞こえなかったことに…
…出来る訳が無かろう。地表までは…………
「なんでだ!  なんでこうなる!!  くっ、くそぉぉぉっ、これで勝ったと思うな
よぉぉぉぉぉぉ!!!」
  ぐんぐん近づいてくる地表を睨みながらの彼の絶叫は、急速に大気中に溶け込ん
でいき………………それから数秒後、すさまじい落下音がリーフ学園の敷地内に響
いた。






  時間は少し溯って、予鈴直前のリーフ学園正門前。
  大勢の生徒達が、予鈴もまだ鳴っていないというのに早足で構内に駆け込んでい
く。その傍らでは、数人の風紀委員が生徒達に睨みを利かせていた。表玄関のあた
りで「おはようございまーす」というマルチやらセリスやらゆきやらの声が聞こえ
るのはいつものことだ。
『遅刻撲滅週間 五分前登校を心がけよう』
  そう大書された、校門脇に立てかけられている看板が、生徒達が足早にならざる
をえない理由の一つだった。リーフ学園では毎月一週間、遅刻撲滅週間が定められ
ている。その一週間の間、校門は予鈴で閉められてしまうのだ。この五分という時
間は短いようで重大な意味合いを持っている。それは、遅刻撲滅週間の間の遅刻者
の累計が、通常の一週間の累計の3倍に達するという統計データからも察すること
が出来るだろう。
  …………遅刻撲滅目的で、遅刻者を増やしてどーするという異論もあるが、風紀
委員会はこの際それを無視することに決めている。
  ともかく、遅刻者には厳罰が待っている。反省房での自習一週間は当然の事とし
て、それに便所掃除一週間、グラウンドの草むしり一週間、科学部のサクリファイ
ス、千鶴先生の手料理の被検体などなど……教師からの要望もあったりでその時々
様々だが、ともかくオプションの厳罰がついたりするのだ。特に最後の二つに当た
った日など、目も当てられない惨状が遅刻者を待ち構えている。それは朝の貴重な
五分(転移装置はそんなに端末があちこちにある訳ではないので、端末から遠いも
の(電車通学とか)は10分以上になるが)の睡眠時間を削るに足る恐怖であった
……普通なら。
「ひのふのみ、っと。ふぅ、まだ300人以上来てませんね〜、今月も修羅場にな
りそうですよ、先輩」
  校門脇のパイプ椅子に座り、カウンターを使い校門をくぐった者の数を数えてい
た風紀委員Aが、その隣に立つ別の風紀委員に報告した。その声は心なしか楽しげ
だ。
「まだあと三分ある。あそこまでの30人ほどは間に合うだろうな。それより、各
所の転移装置閉鎖班からの報告はどうなっている?」
  話し掛けられた方の風紀委員−−−ディルクセンは面白くも無さそうに応じた。
左腕に視線を落とし、時刻を再確認する。予鈴まであと、正確には2分42秒。そ
れは、ほとんど毎日繰り広げられている決戦までの残り時間でもある。
「はい、AからJまでいずれも今のところ異状なし、だそうです」
  ディルクセンの質問に答えたのはとーるだった。やはり遅刻狩りのために駆り出
されたクチである。彼らの前には折畳式の机に広げられた地図がある。赤く書き込
まれているのが転移装置の設置個所だ。A〜Jまでの10基に各5人ずつの閉鎖班
が展開し、いつもより五分早い審判のとき−−−8時20分の到来をてぐすねひい
て待ちわびている。まったく毎朝早くからの乱闘騒ぎ、ご苦労な事である。
「そうか、何度もいうようだが、遅刻撲滅週間中とは言え転移装置の転送先変更自
体は本鈴の25分だ。連中の仕事次第でここに殺到する遅刻者の数が大きく増減す
る。その事、もう一度連中に伝達しておけよ」
「はい、そう伝えておきます」
  神経質な彼らしく、やや苛立たしげなディルクセンとは対照的に、とーるは騎士
らしく落ち着いた感じで頷いた。
  今日は広瀬ゆかりはまだ学校に来ていない。女優業の方が忙しいとかで、今日は
二時間目からの登校らしい。そんなこんなで今日は貞本夏樹が全体の指揮をとるこ
とになっていたのだが、その貞本は一番遅刻者との激戦が予想されている転移装置
−−−男子寮前の転移装置−−−閉鎖から離れられず(彼女かとーるの他の人間が
赴いても、無駄に被害を拡大するだけである)、自然とディルクセンが正門前の最
後の決戦の指揮をとることになっていた。ディルクセンは普段からこの遅刻取り締
まりを担当しているから、というのがその理由である。
「やあやあ、ディルクセン先輩、ここんところ負けが込んでますけど、今回の自信
のほどはどーですか?」
  そんな妙に緊張感溢れる校門前に現れたのは、情報特捜部の長岡志保とシッポだ
った。志保が手にしたマイクを突きつけられ、ディルクセンはにやりと自信ありげ
な笑みを浮かべる。
「ふふん、負けが込んでるって?  なめてもらっては困るな、今までは少々読みが
甘かっただけだ」
「それが一番駄目なんじゃないですか?」
  シッポがすかさず突っ込む。だが彼はそれを見事にスルー。何事もなかったかの
ごとく話を続けた。
「今回は秘策がある。遅刻者など一人も通さんよ」
「秘策って、なんかいつもどおりっぽいんだけど?」
  志保が疑わしげに周囲を見渡した。志保の言うように、いつもの遅刻取り締まり
と違うところがあるとすれば、全風紀委員が動員されているため正門前の守りがや
たらと厚いというぐらいのもので、『遅刻撲滅週間』中の体制としては代わり映え
しない。機動隊が使うような放水銃が二基ほど取り付けられているのも、風紀委員
がやはり機動隊が使うような、強化プラスティックの楯やら特殊警棒やらゴムスタ
ンガンやらを装備しているのもいつものことだ。
  ………………一見すると、学園紛争中の大学に見えない事も無い……………似た
ようなものか。過激派(ダーク13使徒)だっているし、内ゲバ(?)だって毎日
だし。
  しかし、その志保の指摘にも自信ありげな笑みを崩さず、「見ていればわかる事
だよ」とディルクセンはなにげなく背後を振り返った。その視線の先にあるのは校
舎の屋上である。
「はは〜ん、なんか屋上に仕掛けてあるって訳ですか…………おい」
  ディルクセンの視線に引っかかるものを感じシッポは志保の小脇をひじで突つい
た。志保もやはり感じるところが有ったらしく、にやりと笑いかえし、
「わかってるわよぉ、あんたこそちゃっちゃと急いでよね!」
「ちょ、ちょっとまて、放送用の器材ってのは結構重いんだぞ!?」
  言うが早いが踵を返して校舎へと急ぐ。その背中に念を押すように、ディルクセ
ンは声を掛けた。
「わかってるだろうが、事前に遅刻連中にばれたりするような事があれば、問答無
用でお前らのせいだと断定するからな!  今回の罰則のうち先着五名までは千鶴先
生の新作料理の毒…………あー、味見だからな!  忘れるなよ!」
「「わかってますって!」」
  大丈夫かな、ちょっと調子に乗って情報与えすぎたかな〜、などと後悔しつつ、
風のように去っていく二人の背中を見送る。まぁ、千鶴先生の手料理の恐ろしさは
十分な抑止力の働きをしてくれるだろう…………少なくともこの学園の生徒であれ
ば。
  転移装置閉鎖班との連絡のため、一時正門前を離れていたとーるが戻ってきたの
はそんな時だった。
「先輩、予鈴まであと30秒です」
「よし、いま正門前をうろついている連中に警告を発しろ。まだ登校してきてない
問題児はあと何人だ?」
「まだ100人以上残っています。SS使いも複数含まれているようです」
「むぅ、閉鎖班がどれだけ削ぎ落としてくれるか…………それにかかってるな」
  ふたりは机上の地図に目を落とす。決戦まであとわずか。広瀬委員長がいなけれ
ば何も出来ないなどという失態を晒すわけにはいかない。一方的にやられるような
事になれば、それこそ長岡辺りに面白おかしく書かれてしまうに違いない。ディル
クセンは深刻な表情でとーるへと視線を移した。とーるはディルクセンの『秘策』
とやらがあまり気に入らないらしく、どことなく覇気にかける表情をしていた。こ
れではまずいとディルクセンは重々しく、さももっともらしげにとーるに話し掛け
る。
「とーる、SS使いはお前に任せる。お前の力を見込んでこその頼みだ、騎士とし
て……やってくれるな?」
「もちろんです、先輩。騎士の名と誇りにかけて、必ず強行突破を食い止めてみせ
ます」
「……ああ、期待している。一騎打ちで仕留めてくれ」
  騎士という言葉に目覚ましい反応を見せ、とーるは長剣の柄を胸に当てて騎士風
の礼を返す。よぅし、してやったりと小躍りしたくなるのを抑え、ディルクセンは
にっこりと微笑んで見せた。



  きーんこーんかーんこーん……  他と隔絶したリーフ学園において、こればかり
は全国共通のチャイムが鳴り響く。風紀委員が30秒前から警告を発していた事も
あり、予鈴が鳴り始める直前に駆け込んだ生徒を最後にすでに目に見える範囲にお
いては登校中の生徒はいない(ちなみにマルチはセリスとゆきに伴われて、いつも
より早く姿を消している)。ディルクセンはすかさず裂帛の叫びを挙げた。
「校門を閉めるぞ、急げ!!」
  ガラガラガラガラ、ガチャン!!!と数人掛かりでひどく乱暴に校門が閉められ
ると、すぐさま校門の前にプラスティックの楯と特殊警棒を手にした風紀委員がず
らりと整列する。その背後にゴムスタンガンを手にした風紀委員(含むレミィ)が
前方に狙いを定めるという鉄壁の守りだ。
  …………本当に学校なのかここは?
  それはさておき、予鈴が鳴り終わるや否や、各転移装置閉鎖班から報告が入って
くる。もちろん、転移装置の奪取を試みる遅刻者との攻防の結果報告だ。
「だめです、F装置、閉鎖に失敗!!」
「C装置閉鎖班、突破されました!」
「J装置閉鎖班、二人を捕縛したものの、残りに突破されました!」
「やった、E装置閉鎖班、遅刻者全員を捕縛!」
「B装置、遅刻者によって奪取された模様!」
「A装置、貞本さんから連絡ありません!!」
「H装置閉鎖班、封鎖に失敗!」
「D装置閉鎖班、応答ありません!」
「G班、壊滅の模様!」
「I班より連絡!  ワレ、ソウチシシュニシッパイス、コウモンシュビタイノフン
トウヲイノル」
  …………予想出来た結果とは言え、ほとんどが悲報ばかりだった。
「ちょっとは規則を守ろうとする奴はいないのか…………E班は一級鉄十字章もの
だな…………」
  ディルクセンは思わず涙である。
「みなさん、封鎖班の奮闘に応えるためにも、ここで必ずや食い止めましょう!」
『おう!!』  
  一方のとーるはむしろこの苦境に士気が高まったのか、周囲の連中に檄を飛ばし
ていたりする。風紀委員の士気に+10。なかなか効果があったらしい。
  その時、ブゥンという震えるような音とともに、やはり10基ある校門前の転移
装置のうち、一つのシグナルが蒼く光った。誰かがこちらに到着したのだ。一度に
10人までが転送されるが、中の人数までは分からない。
「来るぞ!  総員警戒態勢に入れ!」
  号令とともにすべての風紀委員が得物や楯を構え直す。扉が開くまでの緊張の一
瞬。ゆっくりと扉が開いてゆく。そして−−−
「くそっ、間に合わなかったのか!?」
「って、閉鎖の風紀委員突破してきたんだからあたりまえだろーが」
「げぇっ、やっべー……」
「またかよ…………引っ込め木っ端役人!」
 最初の10人が転移装置から出てきてから30秒後には、すでに校門から30メ
ートルの距離に200人を超える人だかりが出来ている。もちろん素直に捕まる気
などかけらもなく、隙あらば突破してやろうとタイミングを伺っている気配が伝わ
ってくる。
「遅刻者諸君。おとなしく投降したまえ、抵抗すると罪が重くなるぞ!」
 プラ製の盾を構え、拡声器を使ってディルクセンが投降を勧告する。
「今回の罰則は何なんだ?」
 遅刻者の集団の中からそんな声が上がる。
「先着五名までは千鶴先生の新作手料理の試食だ!」
 …………ディルクセンのその返答が、場の雰囲気を一気に険悪なものと変えた。
一瞬の沈黙を置いて、遅刻者達から切実な非難が轟々と沸き起こる。
「…………馬鹿野郎、俺達を殺す気か!」
「まだ科学部のサクリファイスのほうがマシだ!!」
「それはどうかと思うけど?」
「耕一先生にでも食わせとけ!!」
「打倒アメリカ帝国主義!!」
 遅刻者集団、誰ともなく投石開始。風紀委員側は盾を上に掲げてこれを防ぐ。な
んともイ●ンかインドネ●アといった光景である。予想通りの展開に、ディルクセ
ンはほくそえんで背後の味方を振り返った。
「よぉし、放水銃班、放水開始! 手はずどおりに頼むぞ!!」
「おうっ、わかってる!」
 門の両側にすえつけられた放水銃が、高圧の水流を遅刻者の集団に向けて吐き出
した。冷水を勢いよく浴びせ掛けられ、遅刻者達はあわてて放水銃の矛先から逃れ
ようとする。誰だって朝から濡れ鼠にはなりたくない。
 水に追い回され、逃げ惑う遅刻者達が次第に中央の一点に追いつめられていくの
を見て、ディルクセンはほくそえんだ。これで、少なくとも一般生徒の大半は一網
打尽に出来る。
「よし、適度に濡らして、一個所に追いつめる事が出来たな…… あとは屋上の連
中がうまくやってくれればな…………」



  ところ変わってこちらは屋上。
「うん、方角とかもこれでええはずや。あとは…………これとこれの使い方は聞い
てるやろ?」
「ああ、そこらへんはディルクセンからきいてるよ。ありがとな、保科。へへへへ
へ、これで連中に一泡ふかしてやる、名もない一般生徒でもSS使い相手にやれる
事があるって事を思い知らせてやるんだ」
 そこには、怪しげな発射筒の前に立つ保科智子と名もなき風紀委員数人の姿があ
った。発射筒にはそれなりの太さを持ったケーブルがつながっている。その筒先は
校門の方角へと向けられていた。
「ちょっと、なんであんたがこんなとこにいるのよ?」
 屋上にたどり着いた志保が、不信げに智子に詰め寄った。シッポはと言えば、怪
しげな発射筒のほうを目ざとく見出し、そちらのほうへと近寄っている。
「先週、三年のディルクセン先輩が工作部に来てな、これ作るの手伝ってくれって
ゆうたんや。勉強のわからんとこ教えてもらってる事もあるし、なんやわからんま
ま手伝ってあげたんやけど…………」
「で、出来上がったこいつの使い方を教えるために、正門にいる先輩の代わりに保
科さんがここにいる、って訳だ」
 風紀委員の許可を得て発射筒をしげしげと眺めていたシッポが智子の言葉を受け
継いだ。
「そうゆう訳やな。なんかえらい貧乏籤引いた気分やわ」
 屋上の縁に立ち、智子は下界の喧燥を見下ろした。正門前では風紀委員側の巧み
な牽制で、だんだん遅刻生徒側は一個所に集められつつあった。
「もうすぐ合図があるな」
 いつのまにか、風紀委員達も下界の様子を眺めに来ている。発射筒のセットは終
わっているし、あとは合図があるまでやる事がないのだ。合図と同時に発射スイッ
チを押し、それですべてがおしまい…………のはずだった。
「一個所に追いつめて、そこにネットをかぶせて一網打尽…………単純だけど、効
果的って奴ですね」
 シッポもそこに加わる。傍らの風紀委員がそれに不敵な笑みを浮かべて応じる。
すでに作戦の成功を信じて疑っていない。
「そういうこと。さて、もうそろそろか?」
 ばしゅん。
 彼らの背後でサイダーの栓を抜いたような音がしたのはその瞬間だった。全員が
ハッとした表情を浮かべて振り返る。その視線の先には、筒先から空中に向けてケ
ーブルが伸びる発射筒と、その傍らで完全に硬直し、ぎごちない笑みを向ける志保
の姿があった。その視線が呆然とした状態の智子のそれとぶつかる。
「な…………長岡さん、あんた、今…………?」
「あ、あはははは、いや、なんていうかさぁ、ちょーっと、あたしの知的好奇心っ
て奴が…………ほら、こんなとこにスイッチとかバルブとかついてたら、誰だって
押したくなるじゃん」
「志保…………お前から目を離した俺が馬鹿だった…………」
 シッポが頭を抱えて呟く。シッポと智子は呆然とするばかり。しかし、風紀委員
達にはそんな余裕は与えられていない。下界で起こっている事態は、すべてが予定
と狂いはじめていた。
「ああっ、くそ、やっぱり早すぎた! 全体の三分の一しか捉えられていない!」
「いや、これは予想以上に弾着に誤差があるぞ! 発射角を間違えたんじゃないの
か!?」
「おいっ、流れてる電流が強すぎるぞ!! 早くっ、早く電流を調節しろ!!」
「おい志保っ、お前どれだけ弄くったんだ…………って、いない!?」
 風紀委員の狼狽した叫びに気を取られたシッポが志保のほうを振り返ったときに
は、すでに志保はどこへともなく逃げ去っていた。やらかすだけやらかしといて、
たいした逃げ足である。
「あ、あいつ…………どこいった、待て志保!!」
 あまりの事に一瞬呆然としたシッポだったが、すぐに気を取り直すと屋上から駆
け出していく。後に残された智子と風紀委員達は、ただただ呆然とするばかりだっ
た。